● 「音楽的」なピアノ演奏のヒント

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もう既に読まれた方も多いと思うが、これは大変にお勧めの本です。

日々、師匠から伝授されてきた事の裏付けがとれたような気がした。

野村三郎氏著のこの書、目次を見るだけで興味を持たれるでしょう。

 

第1章 まずバッハから

・バッハの技の秘密
・インヴェンションの仕掛け
・恐るべき可能性を秘めた「インヴェンツィオ」
・作品に秘められた「コトバ」

 

第2章 「愛の6度」を知っていますか?

・音楽の約束事
・シューマンに見る「愛の6度」
・クララを飾る愛の音型
・「愛の6度」あるいは花開く反行形
・「嘆き」の音型を読む

 

第3章 ショパンとリストのファンタジー

・ショパンに刻まれた祖国の運命
・語り尽くせぬショパンの悲劇
・演奏者の解釈と聴き手の需要
・現代へ先駆けたリスト

 

第4章 ショパンとブラームスのバラード

・音楽と文学の関わり
(ショパンとミツキエヴィチ1/バラード第1番)
・リトアニアの悲劇
(ショパンとミツキエヴィチ2/バラード第2番)
・水の精の物語
(ショパンとミツキエヴィチ3/バラード第3番)
・ポーランド愛国の詩
(ショパンとミツキエヴィチ4/バラード第4番)
・バラードに聴くブラームスの精神生活
・ブラームス晩年の作品

 

第5章 ファンタジーの翼を広げて

・絵画の描写と音楽の描写
・ドビュッシーの音楽と絵画
・音楽の原点はやはりバッハ
・音楽の性格を決める要素

 

作品へのアプローチとヒント

 

どの章も非常に興味深く、ワクワクして何度も読みました。
その中でも特に!というところについて、少し触れてみます。
この緑で表示している文章は、私荒井の注釈です。

 

 

・バッハとウィーン古典派

 

フォルケルがバッハの最初の伝記を書いたのは1802年。
メンデルスゾーンによるベルリンでの「マタイ受難曲」の初演は1829年でした。

一見、バッハはウィーン古典派の頃には知られていなかったようにすら思われているが、そうではない。
実は大きな影響を与えていたのだ。

具体例では、モーツァルトの最後のソナタK.576 二長調の出だし
(ら|れられふぁれふぁ|らーららー…)

この生き生きとする上昇するメロディは、まるでバッハの「平均律第二巻第5番」ニ長調のプレリュード
(・れみふぁそ らふぁら れられ ふぁれふぁ|らー)
これになんと似ていることだろうか。

テーマだけではなく、モーツァルトが対位法的手法を用いていることがわかる。

 

 

・お母さんの声、お父さんの声、ぼくの声

 

(平均律のテーマの弾き分け)←と副題として書かれていますが、私は平均律に限らず、バッハのフーガ、またポリフォニックなその他の作品全てに通じると思っています。

バッハ「平均律第二巻第6番」ニ短調のフーガ。
「れみふぁそふぁみふぁそらしらそら れー ど#ー どー|…」

出だしの声部はアルト。
次に出て来るテーマはソプラノでイ短調、その次に出て来るのはバスで、ニ短調に戻っている。

アルトはお母さんに言われていること、
そしてソプラノは自分が それに答えている。
そしてバスはお父さん。

対旋律も家族だけれど、同じ家族ではない。

そう考えると非常にキャラクター付け(分け)/弾きわけをどうしたら良いか、想像するのは面白く、容易いことを、昔から師匠に幾度と言われてきた。

 

 

・バッハの「ラメント」

 

「ラメントLamento」とは「嘆き」である。
これがバッハには良く出て来る。

そもそも「ラメント」とは、モンテヴェルディのオペラ「アリアンナの嘆き」に端を発するといわれているが、バッハがこれを用いたのは、決して偶然ではない。

「平均律第1巻第6番」ニ短調のプレリュード終結部の右手の16分音符フレーズ、ここには4度の半音階下降が出て来る。
これが「ラメント」の音型。

これは、ラヴェル「クープランの墓」の第1曲プレリュードの第14小節でも見る事ができる。

もちろん、バッハもその他の作曲家の作品にも、探せばたくさん見つける事ができる。
例をあげていてはきりがない。

この「ラメント」は、嘆きを表している通り、非常に憂いを感じさせる。

 

 

・愛の6度

 

「愛の6度」がよく用いられたのはロマン派に多く見られるが、その代表株はリストの「愛の夢」である。

冒頭から「愛の6度」だ。(みー|どー)

シューマン作品にも「愛の6度」は多い。

しかし、ベートーヴェン作品にも「愛の6度」は登場する。

 

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これを読んでいる方々は、ショパンのバラードについての項、これについて知りたいと思っている方が多いだろう。

が、それを書いていると、とんでもなく長くなってしまう。

興味のある方は是非、この書を手にとってお読みください。

 

 

 

お読みくださり、ありがとうございました。

荒井千裕 拝

 

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投稿者プロフィール

Chihiro ARAIピアニスト / ピアノ講師
香港在住24年。ピアニストでピアノ講師。
香港演藝学院のエレノア・ウォン教授に師事。
ピアノ・ソロ、ヴァイオリンとのデュオ、二台ピアノ、オーケストラとのピアノ協奏曲などの演奏活動をしながら、香港と日本で「体も心もラクにピアノを弾く」をモットーにレッスンをしております。