● ピアノ演奏の根本原理とは?

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「ピアノ演奏の根本原理」

トバイアス・マテイ著
大久保鎭一 訳

ドバイアス・マテイ、1858年ロンドン生まれ。
王立音楽学校の教授を経て、自ら創立した「マテイ・ピアノスクール」で、重量とリラクゼーションによってコントロールされたタッチに重点をおいたメソードを確立。

この書を開くと、「まえがき」の最初のタイトルが以下のようになっている。

日本語版発行によせるコンラート・ハンゼン教授のメッセージ並びに助言

親愛なる大久保さん

この書の訳をされた大久保先生を、ご存知の方もいらっしゃるだろう。

私の大事な友人二人の先生でもあります。

2011年秋の、東京での「東日本大震災のためのチャリティ・コンサート」を聴きにきて下さり、
私は初めて大久保先生の お姿を拝見した。

友人から、大久保先生とハンゼン氏のことを聞いていたので、この書に興味を持ち、手にとったわけです。

以下、読んで私が気になったところを書き出します。

意図する音の強さや音の特性を正確に出すためには

 音の出始める瞬間ばかりを考えるだけでは不十分で、
 一つ一つの音符について正しいタッチの形態、
 つまり鍵盤の正しい下ろし方を選ぶ必要がある。

 しかし、それは鍵盤を押し下げる時に、
 どの位の抵抗が指にかかるかを、実際に「感じなくては」不可能である。

鍵盤を最も弱い音で下げる時、筋肉は鍵盤を下げる間もその後も同じ状態にある

 それゆえ、これは唯一の「単純なタッチ」である。

 その他のタッチの形態は、全て色々と複合されている。

 と言うのは、鍵盤を下げた後では、鍵盤の動いている時とは
 別のことをしなければならない、ということがわかっているからである。

自然なレガートとスタッカートと、あらゆる種類のテヌートとの差異は

 静止中に使用される重さのわずかな相違による、ということがわかる。

 つまり、レガート あるいはテヌートでは、鍵盤を下げておくために
 指に重量がかけられるのに、スタッカートでは鍵盤を跳ね返させるために
 指に重量が与えられる。

全ての力の発動は、鍵盤を扱っている間には

 上方へ向かっていると感じなければならず、
 よく間違ってするように、下方へ向かっているのではない。

筋肉に関する大きな間違いは

 フォルテにおいて、手と指だけを使おうとする時、
 腕を肩から押し付けて力を浪費し、
 非音楽的な結果を招いてしまうことにある。

人為的なレガートの技術的原則

 
 非常にわずかな、しかし「継続して途切れない」指と手の運動で、
 すでに押し下げられた鍵盤に、軽い二度押しを加える。

注意深く聴くこと

 何の注意も払わずに演奏するならば、その演奏は
 ただ機械的な活動にすぎない。

 しかし、演奏が精神によって支配されている芸術であるためには、
 音楽的な感覚を我々に起こさせるものを正確に聴き取り、
 それからそれを楽器へ伝達するように試みなければならない。

それぞれの音が、デッサンの線と同じような結果を目指すものであるべき

 という点に注意を払わないから、誤りが生じる。

 一つの音は、普通の人にとって、光の印象よりもさらに稀な現象である、
 ということだ。

リズム

 ゆっくりした速度の時には、それぞれの音符に前もって
 注意を向けることができる。

 それゆえ、音の出だしと音色を前もって正確に決定できるだけでなく、
 音が楽器でどのように形成されるかを正確に確かめられる。

 そのような慎重な手順は、勿論それぞれの音符を弾く前での
 確かな思考を必要とし、また、かなりの時間をも必要とする。

 大方のピアニストには遅かれ早かれ、
 「本当にゆっくりした練習」の必要性が感じられるようになる。

ピアノの才能

 一般的な音楽的天分と並んで、ピアノの才能には
 更に次のような特殊な素質が必要である。

 1. 十分に発達した筋肉と、筋肉の自由な動き、
   筋肉の働きを識別し、すねての拮抗(きっこう)する
   筋肉の力を排除することのできる能力。

 2. リズムに帯する感覚、ならびに音量(音の強さ)、
   音質(音色)、そして音の長さにおける繊細な
   ニュアンスに対する優れた感覚。

 3. ピアノ演奏に必要な注意力。
   それは特殊な注意力で、個人的な傾向と結びついている。

付け加えるならば、

忍耐力がなければ決して芸術家にはなれない、ということである。

これは、学習者の性格の強さと芸術に対する
真の愛情に左右されるものであると同時に、
ピアノ演奏に結びつく肉体的、精神的労苦に
耐えられるだけの健康と強さに関わってくるものである。

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この他にも、ピアノのメカニズムについて、主要な筋肉活動と筋肉弛緩について、

垂直に推進する指の構えと垂れ下がっている指の構え、
指の活動の違い、それに関連する腕の状態について、

筋肉、鍵盤、音楽的効果の関係や、
筋肉練習、タッチ法の分類、

スタッカーティシモ・グリッサンド・スタッカートとレガートの形態について、

正しい指のテクニックと正しくない指のテクニックについて、

親指運動について、親指の構えについて、

腕タッチの際の運動について、

不必要な運動について…..

あらゆる観点から、非常に細かく説明されています。

ただ一つ、難点を上げるとすれば、それは、日本語文体が、やや難解に感じられる点だ。
硬いんです。大久保先生のお人柄、といえばそうなのでしょうが。

しかし、初版は1993年だ。そんなに大昔、というわけではない。
だから、これは読み手を選ぶかもしれません。

この書は、非常に有意義な事が多岐にわたり、たくさん、書かれています。
しかし、分厚い本ではないの。
1センチあるかな?1.5センチはないよ?くらいの厚さです。

でも、文体によって読み難い、難しいと感じる人もいるかもしれません。

私自身、初めての時は、「読むぞ!」と気合いを入れて、外気を遮断して集中して読んだ。

(そうしなければ、何も頭の中に残らなかったか、
 或は、読破するのに一年ほど必要だったかもしれない。)

ともあれ、本気でピアノ演奏の根本を知りたい方は、

一読も二読もすべき本だと思います。

お読みくださり、ありがとうございました。

荒井千裕 拝

 

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投稿者プロフィール

Chihiro ARAIピアニスト / ピアノ講師
香港在住24年。ピアニストでピアノ講師。
香港演藝学院のエレノア・ウォン教授に師事。
ピアノ・ソロ、ヴァイオリンとのデュオ、二台ピアノ、オーケストラとのピアノ協奏曲などの演奏活動をしながら、香港と日本で「体も心もラクにピアノを弾く」をモットーにレッスンをしております。