バッハの時代の演奏習慣はどうだったのか?古楽器でもモダンでもバッハを味わおう!
ピアノ学習者なら、割けて通るのはむずかしいバッハ。
中にはバッハと聞くだけでパタッと楽譜を閉じて見なかったことにしちゃう学習者も少なくありません。

もしかしたら、私たちは大事なことを見落としているかもしれませんよ?
バッハは鍵盤楽器のスペシャリストでしたが、バッハが生きていた時代には私たちが触れている現代のピアノはなかったのです。
さぁ、こちらはずいぶん前に発行された本ですが、とても興味深いのでご紹介します。
バッハ 古楽器でもモダンでも!
文藝別冊KAWADE夢ムック
Contents
バッハ「古楽器でもモダンでも」の目次
ではまず、このバッハ「古楽器でもモダンでも」の目次から見てまいりましょう。
- エッセイ
宇野功芳:「マタイ受難曲」の神髄
小池昌代:出現するバッハ
村上陽一郎:バッハは芸術家? - インタビュー
片山杜秀、バッハを語る—-平民と聖人 - 座談会
いま、バッハをどう聴くか?
渡邊順生×磯山雅×那須田務 - バッハ先生の追想
ある無能な弟子の手記 - バッハ演奏今昔物語
1. モダン楽器演奏家の歴史
2. 「ピリオド楽器演奏」によるバッハ - コラム
バッハとジャズ - バッハの音楽は、どう演奏されているのか?
那須田務:バッハの時代の楽器と古楽の演奏習慣
☆日本人バッハ演奏家の証言
・チェンバロ:渡邊順生
・オルガン:今井奈緒子
・バロック・ヴァイオリン:渡邊慶子
・フラウト・トラヴェルソ:前田りり子
・バロック期のトランペット:神代修
・ソプラノ:鈴木美登里
☆外国人著名演奏家が語ったバッハ
・アンナー・ビルスマ
・レオンハルト、S・クイケン、コープマン、ヘレヴェッへ - 古楽器でもモダンでも!
ジャンル別3段階バッハ鑑賞法
あなたが興味深いのはどの項目でしょうか?
カノンは面白い!
「どーそーみ♭ーーれ どみ♭れどしれそ….」
という主題から始まって、追いかけるように他の声部が同じ旋律を繰り返す。そして次第にそれはずれて重なって行く。
繰り返しを土台に自由に追いかけっこする、楽典形式としての「フーガ」。あるいは本当に同じ旋律をずらして重ねて行くだけの、楽典形式としての「カノン」は、子供には面白く感じられるだろう。
そうそう。フーガって考える(思う)と、難しく感じてしまいがちですが、「カエルの歌」を輪唱するのは子供たち、大好きよね。
そして、老若男女問わず大人気なものに「パッヘルベルのカノン」があります。
ちょっと違うかもしれませんが、カノンは私としては「椅子取りゲーム」に似た感覚が。
ピアノによるバッハ
音楽学者であり、バッハ研究で知られる磯山雅氏の談をご紹介します。
ピアノによるバッハは、現代楽器によるバッハという意味では一番可能性がありますね。
ピアノによる演奏の良さが出やすいのは、バッハの曲でも特に後期の作品です。「クラヴィーア練習曲集」、とりわけ「ゴルトベルク変奏曲」と「パルティータ」は、鍵盤の斬新なテクニックが、ピアノによく合う。
当時実用化されつつあったシルバーマンのフォルテピアノをバッハは受け入れなかったと言われます。が、その方向性は、どこかで感じていたんでしょうかね。
バッハ演奏、キーワードはリズム
同じく磯山氏の談をご紹介します。
リズム、メロディ、ハーモニーという音楽の三要素のうち、
バッハの最大の特徴は、
リズムの生命力です。
ピアノはその特徴を出すことが得意なわけで、ジャズ的な要素を取り入れる事もたやすい。
リズムの生命力という点で、バッハの音楽は古くは舞曲と、新しくはジャズとつながっています。
バッハに関する謎の手記発見!
「バッハ 古楽器でもモダンでも」には、興味深い一つの手記が訳されて掲載されています。
それは、2012年4月1日に、ドイツ中部の都市ライプツィヒのアンティーク店で販売されていた「木製の机」の引き出しの中から見つかった書類、とされているもの。
羊皮紙約10枚からなるその書類は、18世紀中頃に執筆されたものとみられています。そしてそれが、
「ヨハン・セバスティアン・バッハに関する追想記」となっており、執筆者は「ある無能な弟子」とあるだけ。
真偽のほどは定かではありません。バッハ研究所で鑑定中とのこと。しかし、実に興味深い手記だと思います。
ピリオド楽器演奏の誕生と革命
1950年、ウィーン国立音楽院でのこと。グラーツ生まれのチェリスト、ニコラウス・アーノンクールが、アムステルダムから来た一つ年上のチェンバロ&オルガン奏者のグスタフ・レオンハルトと議論をしていた。
彼らは意気投合して共演し、友情と理解が生まれました。アーノンクールとレオンハルトが目指す方向は同じだったよう。
このアーノンクールとレオンハルトこそ、バッハの「古楽器演奏」を「ピリオド楽器演奏」へと変換した革命家なのです。
※この辺りについても、非常に興味深いので、ぜひ本書をお読み頂きたいですね。
1957年に最初の公式コンサートを行ったアーノンクールですが、アーノンクールはその準備期間として、4年も必要としたのだそう。
しかも、それに至るには、ある友人からの手紙が必要だったといいます。その内容がこちら。
(こんなに充実した演奏をしているのにデビューしないなんて、あなた)
ばかじゃないのか?
ぎゃははは!失礼、思わず声を出して笑ってしまいました。意外と自分のことって自分ではわかっていないもの?バカ呼ばわりまでされてはねぇ(笑)。
バロック音楽に大事なものとは?
オルガン奏者の今井奈緒子氏が本書で語っています。
タッチとアーティキュレーションが命!
そして、バロック音楽は言葉を話すこと、
鍵盤の上でいかにしゃべるか。
なるほどね。「弾く・演奏する」ということは、「おしゃべりする」ということ。誰かに「何かを伝える」ということなのですよね。
チェロ奏者のアンナー・ビルスマ氏も語っています。
バッハでは、「話すような」演奏を心がける。
モダンとバロック演奏での大きな違いを見ています。
当時のバロックの流儀では、音楽はより「語られ」、
現代はより「歌われ」るということです。バロック音楽にも「歌」はありますが、その際の歌のフレーズは多くが短いもので、
息の長いものではありません。バロック音楽では、音の発音を明瞭にして、
より「話すような」演奏を心がけています。
話す時の滑舌とか抑揚、そんなものが、タッチやアーティキュレーションを生むのではないでしょうか?
私にとっては、とっても面白い本です。読み応え十分!でしたよ。
また読み返します。
エンジョイ!あなたのピアノ・ライフをもっと豊かに!
もっとラクに心と体を使ってピアノを弾くお手伝いをしています。
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