ツェルニーの教えは今も生かせるのか?ツェルニーからの手紙で10のピアノ・レッスン!
ツェルニー(チェルニー)と言えば、ピアノに関わった事がある人なら知らない人はいないでしょう。
ツェルニーで苦い想いをした人は多そう。
そうね、ツェルニーの練習曲がピアノ・レッスンの必須なのがイヤでピアノを辞めてしまった人もいるかも?
えぇ、私の元生徒ちゃんたちの中にも、課題だったツェルニーの楽譜をレッスンに持ってこない(忘れたふりをする)のを続けてツェルニー様をなかったことにしてしまった子たちがいましたよ。
でもね、そんなツェルニー様、本当はなかなか良い事を後世の私たちに遺してくれたんですよ。
この記事は7年前に書いたのが最初。
そして3年前にリライトしたのですが、もう一度見直して書き直しました。
是非あなたもツェルニーの教えに触れてみてくださいね。
Contents
ツェルニーからの手紙で10のピアノ・レッスン
数年前に、Twitterでお友達に教えて頂き、早速注文したのが「カール・ツェルニー 若き娘への手紙」という本。
ツェルニーといえば、ピアノ学習者の多くが散々悩まされた「
指の訓練のための退屈なエチュード製造家」という認識ではいでしょうか?
とは、この書の冒頭で元東京芸術大学教授でピアニストの故・田村宏氏が書かれています。
思わず笑ってしまいましたよ。
この「若き娘への手紙」は、ひとりの辺鄙な土地に住む、ある娘を対象にした紙上ピアノ・レッスンの形をとっています。
これはそもそも、1837年に即位した英国女王、クィーン・ヴィクトリアの勅命によって、英国のみで出版された教則本Op.500の補足として書かれた小冊子だということ。
ツェルニー自身の「序」として、この小冊子が作られた「わけ」が書かれています。
それはこの本を出版することとなった出版社から、
ツェルニーが長年ピアノ教師として生徒を指導してきた階段を一歩一歩のぼるような独特の教授法を、
手紙の形で簡潔に、しかも親しみやすく書き下ろしてくれ
と依頼されたそう。
ツェルニーはこの「若い娘への手紙」を書いているうちに、「手紙の形とは、口移しに教える方法に一番近いことに気付き、たいへん乗り気になった」とも語っています。
また「解説」では、この本の日本語訳をされた中村菊子氏が、以下のように補足を。
一つだけ注意したいのは、この本のピアノ楽習に対する基本的な教えは今も昔も変わらないが、
打鍵法そのものについては、現在のピアノの構造が当時のピアノのそれよりも画期的に発達改良されているので、
その点に留意して読まれた方が良いと思う。
ピアノ学習者である少女への「レッスン」の手紙は、ひと月に1回、全部で10回、つまり10ヶ月に渡って10通が送られた、という事になっています(=10章に分かれている)。
ピアノレッスンの基本的条件について
あなたはまず何よりも先に、正しく、優雅にピアノに向かって座る事を身につけて下さい。
椅子は、両手を垂らしているとき、ひじがピアノの黒鍵よりちょっと下になるくらいの高さにしてください。
もし足が床に届かなかったら、小さな踏み台か、適当な高さの小箱を足のせに使うと良いでしょう。
以下、姿勢について、鍵盤上の指について、打鍵について他、指の中で一番大切なものについてなど、細かく記されています。
ピアノの打鍵法、音質、音階について
上手なヴァイオリニストが弾けば素晴らしい音を出す名器でも、不器用な人が弾くと、まるで何匹かの子猫がうめいているような音を出すもの。
ピアノでも同じ事が言えます。
もし、弾く人がピアノを正しく扱わなかったり何も考えずにただ鍵盤を叩けば、いくら良い楽器でも、固い汚い音しか出さないでしょう。
このことは私たちピアノに関わる者は、いつも念頭に置いておかねばならないと私も思います。
拍子、音符の分け方、指使いについて
音符の長さとは、指が鍵盤をおさえている時間によって決められ、反対に休止符の長さとは、指が鍵盤から離れている時間によって決められます。
私たちはこの二つの事柄を、混同しないように気を付けなければなりません。
ピアノの演奏上、次の二つの点は最も基本的なことなので、よく注意しましょう。
- 必ず正しい音を弾く事(はずさないこと)
- 拍子を正しくとる事
ピアノの勉強の仕方について
ピアノの勉強の仕方について、ツェルニーはこのように語っています。
あなたは時間を上手に使えば、一日のうちにどのくらいたくさんの事ができるか、それを知らないのですね。
あなたは、もしピアノを早く上達させようと真剣に考えているのなら、毎日3時間だけでもいいですから、ピアノのために費やしてください。そのうちの30分は指の練習と、前に習った曲をさらう時間にあてる。
残りの時間を新曲の勉強に使うのです。
毎日3時間というのは誰にでも出来ることではありませんが、毎日ある程度の時間をピアノのために作ることはできますよね?
たとえそれがたった5分であろうとも。ピアノのために、ですよ。
ピアノを実際に弾く練習時間とは限りません。
練習はピアノ上だけでの事ではありませんから。
調性の勉強、曲の練習法、人前での演奏について
ピアニストにとって、どの調性も同じように弾ける練習ができていて、何調の曲でも楽に弾けるということは、必ず身に付けなければならない事です。
よく、ピアニストとして半分完成しかけている人の中に、いきなり有名な作曲家の大曲を舞台で弾きさえすれば、うまく行くと思っている人が大勢いるよう。
しかし、それは演奏する人にとっても、その作品にとっても、決して誇れることではありません。
そればかりか、聴衆を飽きさせ、よくしたところで社交辞令か同情の拍手を送られ、陰では批判されたり笑われたりするという、危険に自分をさらす事になるのです。
自分に適した曲を選ぶ事について
ピアノ学習者が曲を選ぶとき、やさしい曲から次第に難しい曲へと進む事が、いかに大切であるか、ツェルニーは述べています。
どの作曲家も演奏家も、仕事をする時、彼らは自分たちより前の人が築いたものを土台にして、その上に新しい創造を加えて芸術なり、科学なりを打ち立てていきます。
したがって、現在(1840年当時)のピアニストたちが弾いている曲は、そのような自然の過程により、あらゆる面において、一昔前の曲よりずっと難しくなっているといえましょう。
そのような曲を勉強するなら、音楽に対して相当深い知識と高度な技術を持たなければなりません。
他、
- 通奏低音に関する基礎事項について
- 和音の構成について
- 通奏低音(続き)
- 即興演奏について
という章があり、譜例を交えて詳しく語られています。最後に、
J.N.フンメル著の「ピアノ奏法への理論と実技全般」は、ピアノ楽習の基礎から最高度の演奏段階に到達するまでに必要な知識が全て含まれている本であり、また、現在までに知られているピアノのメソードの本として、もっとも完全なものと言えましょう。
今日のピアノ動画*ツェルニー「10の小さなロンド」Op.316
ティブレイクは、ツェルニー様の「10の小さなロンド」Op.316を。
ツェルニーさん、練習曲ばかりじゃないんですよ。
ツェルニーからの手紙で10のピアノ・レッスン!ツェルニーの教えは今も生かせる!?のまとめ
- ツェルニーの手紙でレッスンとは、遠く離れた学習者に手紙でピアノの練習・弾き方や姿勢について教えるものだった
- ピアノレッスンの基本的条件である、姿勢や指・打鍵などについて教えてくれている
- ピアノの勉強の仕方で大事なのは、毎日必要な時間を確保すること(その覚悟を持つこと)
- 自分に適した曲を選ぶ事が上達する上で大事なこと
教育・方法にはいろいろなやり方があり、これが絶対!というものはありません。教育も常識も言葉も、どんどん変わっていくものですから、固定観念に縛られることなく自分で判断することこそが必要。固定観念の最たるものは「この人はだめ」と、その人の考えや教えを全否定することかもしれません。
ツェルニー(チェルニー)を嫌がる人も多いけれど、全てを受け入れないのではなく、いい事も言われている。今の自分に役に立つこともある(かもしれない)と中庸な姿勢でいられると、きっとあなたはもっとうんと上達しますよ。
エンジョイ!あなたのピアノ・ライフをもっと豊かに!
もっとラクに心と体を使ってピアノを弾くお手伝いをしています。
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