ピアノは打楽器とも言われます。ピアノで発した音は、その瞬間から減衰していきますね。弓や呼吸で、音の伸びをコントロールできる弦楽器や管楽器とピアノでは違います。

ですから、ピアノでは伸ばす音でのクレッシェンド(だんだん強く)は現実的ではありません。それでも実際には伸ばす音でクレッシェンドの指示があります。じゃあ、伸ばす音でのクレッシェンドって、どうやったらいいのでしょう?

少し「聴こえ方のトリック」を使ってみましょうか。

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減衰して行く音の本当のしっぽの先まで聴く!

あなたはピアノを弾いている時、減衰していく音の終わりの終わりまで、本当に響きが聴こえなくなるところまで聴いたことはありますか?

これは、意識しないと出来ません。意識しても最後まで聴けない事も少なくありません。意識しているのに、消えゆく音の最後まで聴けないのは、どうしてだと思いますか?

意識しても響きの最後まで聴けないのは「待つのが怖い」からです。なんだか手持ち無沙汰になってしまうような気がするからなのです。

でもね、本当に音に意識を集中しきっていたら、決して怖いことではなくなります。そして、手持ち無沙汰を感じる事もありません。

だからまずは、発した音のホントの「しっぽ」まで、発した音がかすかな響きとなって、空気を振動するのが全く聴こえなくなるまで、聴いてみましょう。

大丈夫!誰もそんなあなたを見ていません。今ピアノに向かっているあなたの周りには誰もいませんから。

どうですか?響きのしっぽまで聴けましたか?響きのしっぽの、最後の毛先が指先からするっと離れて行く「その時」を感じられましたか?

私は、この「瞬間」を感じることが好きです。

ピアノという楽器を弾く上で一番怖いのが、「音に鈍感」になってしまう事だと思います。他の楽器や歌と違って、ピアノは鍵盤を「ぽん」と押しさえすれば、簡単に音が出ます。音色や響き方にこだわらなければ、ピアノで音を出すのは簡単です。

しかしピアノ学習を続けていくと、次第に「音の出し方」を考え、悩み、こだわるようになっていくでしょう。それでも「出し方」にはこだわっても、「音のしっぽ」にこだわる人はあまり多くありません。

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ピアノで「音のしっぽ」を聴き届ける必要性の理由

長く伸ばす音・フェルマータやセクションが変わる時の小節間のポーズ(一時停止)や、曲の最後の和音など。それらの音の長さには、意味があります。それは作曲家がその作品に込めた気持ちです。

作曲家がそのように弾いて欲しいと思ったから、楽譜にそう書いてあるのです。

子供たちは時々、フェルマータの音を「どのくらい伸ばすの?いくつくらい?」と聞いてきます。

フェルマータの長さは、「元々の音符の長さの1.5倍」と言われています。しかしフェルマータの長さは、その曲・そのフレーズ・その音に至るまでの経緯や 込める気持ちによってケース・バイ・ケースだと思っています。

ただ「1、2、3、4、・・・」と数えているのではちょっと…。音楽ではなくなってしまっています。

アンサンブルやコンチェルトなど誰かと合わせる演奏の場合は、「大体何拍」と、決めることを要求される場合もあります。それでもやはり、そこには「気持ち」があって奏でるわけですから、その時によって実際は異なるでしょう。

私はピアノ学習を始めたばかりの小さな生徒さんたちには、「音のしっぽ」を捕まえる練習をさせています。これはゲーム感覚でね。

あなたが今練習している曲の中に、長く伸ばす音やフェルマータの音はありませんか?もしその後、そんなに間をおかずに次のフレーズへ行くものだとしても、今日明日の練習では、その音の打鍵で「止めて」みてください。そして、是非とも音のしっぽを捕まえてみてください。

ちょっと感動しますよ。あぁ、なんていい音なんだろうって。音が空中を響いて行く振動を感じるのは、かなり気持ちいいですよ。