ラヴェルのピアノ曲「鏡」から”道化師の朝の歌”練習ポイントを解説!
フランスの作曲家モーリス・ラヴェル作曲の「鏡」に収録されている”道化師の朝の歌”。
リズムが特徴的なかっこいい作品ですが、この曲が一躍有名になったのは、アニメ「のだめカンタービレ」に登場して以来のように思います。
そうそう、ミシェル・ペロフ氏が講師を勤めた「スーパーピアノレッスン」の「フランス音楽の色彩」でも取り上げられましたね。
今日は、そのラヴェル作曲「道化師の朝の歌」について、練習のポイントを解説して参ります!
Contents
「道化師の朝の歌」の作曲者ラヴェルとは?
作曲者はフランスを代表する作曲家、モーリス・ラヴェルです。
ラヴェルは1875年3月7日に、フランス南西部のバスク地方のシブールという街で生まれました。
ラヴェルはバスク系フランス人なのだそうです。
バスク系って何?と思って調べると、バスク地方に居住する系統が不明な民族で、バスク地方で生まれた人か、バスク語が話せる人のことだそう。
そんなバスク地方シブールという街は、スペインにとても近いところにあるようです。
ラヴェルは、お母さんがバスク人で、お父さんはスイス出身の発明家で実業家。
そのお父さんが音楽好きだったそう。
それでラヴェルは小さなころからピアノや作曲を学ぶことができて、お父さんはラヴェルが音楽家になることを喜んだそうです。
お父さんに認められる・後押しされるって嬉しいですよね。
ラヴェルはピアノ曲・管弦楽曲・オペラ・バレエ音楽・歌曲などたくさんの作品を生み出しました。
特に有名なのは、バレエ音楽「ボレロ」「ダフニスとクロエ」「マ・メール・ロワ」、ピアノ曲では「水の戯れ」「亡き王女のためのパヴァーヌ」「夜のガスパール」などでしょう。
また、ムソルグスキー作曲の「展覧会の絵」を、管弦楽曲に編曲した事でも知られています。
ラヴェルは、1937年12月28日に62歳で亡くなりました。
ラヴェルのお葬式では、作曲家のダリウス・ミヨー、フランシス・プーランク、イーゴリ・ストラヴィンスキーといったそうそうたるメンバーが参列してお見送りしたとのこと。
亡くなる直前までラヴェルの頭の中は、オペラの作品のことでいっぱいだったようですが、それを書き残すことは叶いませんでした。
ラヴェルのピアノ曲「道化師の朝の歌」とは?
ラヴェルはスペインに近いバスク地方の生まれ、バスク系のフランス人だとお話しましたね。
ラヴェルのお母さんがバスク人だったこともあり、ラヴェルはスペインの音楽に影響を受けていたようです。
さて、ラヴェルのピアノ曲「道化師の朝の歌」は、「鏡」という組曲に収録されている作品です。
「鏡」は、1904年から1905年にかけて作曲されました。
1905年というと、ラヴェルは30歳の時のこと。
「鏡」に収録されているのは以下の5曲です。
- 蛾
- 悲しい鳥
- 海原の小舟(洋上の小舟)
- 道化師の朝の歌
- 鐘の谷
全曲通して演奏すると、約30分。
通しで聴くのもいいですが、「海原の小舟」と「道化師の朝の歌は、それ単体で演奏される機会も多いようです。
また、「海原の小舟」と「道化師の朝の歌」はラヴェル自身が管弦楽曲に編曲。
ピアノ版とはちょっと雰囲気が違いますが、音や空気の動きを感じるにはとても良いので、是非探して聴いてみる事をオススメしますよ。
ラヴェル「道化師の朝の歌」練習のポイント!一番重要なことはリズムだ!
ラヴェル作曲「道化師の朝の歌」で、一番重要な事って何だと思いますか?
それは、リズムです!

8分の6拍子ですよ。1小節に2拍で捉えましょう。
「1 2 3 12 3 」ですよ。
「121212」とか「123456」にならないように気をつけてね。
左手の第一音は、スタッカートではありません。
そもそも第一音どころか、スタッカートはないですよね。
そう、ラヴェルはスタッカートは、書いていないんです!
だから第一音は、指の腹で打鍵する時、素早く手前へ引っ張ってみましょう。
引っ張るというか、手前へ指をはじくように。
左手の8分音符は、スタッカートではないよね。
でも、レガートでもありません。
キレの良い音が必要だけれど、短く強すぎる必要はない。
「短い」という印象を与えるけれど、音は打鍵と同時に止まらないように気をつけましょう。
音は、常に次に打鍵する音に向かっていくものです。
音は、必ず、上がって回って行く。
だから、打鍵して落としっぱなしにするということは、そこで終わってしまうということ。
音を回す支点は、指の第三関節ではなく、手首です。手首から上がって行くので、それに肘が自然に伴って(連れ立って)動いて行くのがいいですね。
決して肘から持っていかないように。
「手首から上げる」というのは、打鍵した瞬間に、手首が鍵盤の向こう側まで飛んで行く程の、瞬発力が要ります。
後付け動作では、ダメなの。
そして、その動きは決して止めず、次の音の打鍵に向けて落ちて行くように。
これはダンスですよ。2拍子の中に、それぞれ「123 123」という動きがあります。
ここでは、「1」から「2」へ入るタイミングが重要。決して急がないでね。

2小節目の左手、「れ・れらどそ」もラインですよ。
「れ・れ」の二つ目の「れ」は、きちんと次の「ら」へ向かっていきましょうね。
この「ら」は、アクセントが付いているという事が重要なのではなく、ラインを意識して感じることが重要です。

右手の16分3連符は、装飾音ではありません。気をつけポイントですよ。
リズムを大事にね。
この3連符は、三音全てを流して弾いてしまわないように注意しましょう。
三音全てが大事です。
一音目の「ソラ」の重音から二音目「ドミラ」の重音への打鍵は、一度「5の指側を広げて」、ノン・レガート気味に弾いてみましょう。
ラヴェル「道化師の朝の歌」から
この画像のところも同じですよ。
「123 123」の2拍目の「1」に、きちんと乗りましょう。

ここは、全ての指を鍵盤に非常に近い所に。
鍵盤に付けておくようにして打鍵してみましょう。
その上で、2拍子にのるのがコツ。

ここも!16分3連符は、決して装飾音にならないように!

右手「シーラシラファー」の「ファー」を弾いている時に、内側で伴奏を右手が受け持ちますね。
ここはドスンとなりやすいので注意が必要です。
その上で、メロディの歌としての「シーラシラファー」の「ファー」を、きちんと大事に歌ってあげましょう。

この画像のところでは、2拍目にアクセントは付いていません。
最初とは違いますよね。その違いに気をつけましょう。
ただし、アクセントはないけれど、その2拍目を乗らないと3拍子になってしまいます。
「12 12 12」という3拍子。ちょっと意識してみましょうね。

ここは冒頭とは違って、少し深さが出てきますよ。
冒頭とは違う「キレ」が必要だ、と考えてみましょうか。
日本語で考えないで、スペインの踊りの感じをイメージしてみることが役にたつかもしれません。
フラメンコのカスタネットやステップを想像してみてね。

ここも、指は鍵盤に非常に近い所に寄り添わせておいての打鍵が、効果的に音が出ますよ。
そして、フォルテシモの第1拍=左手低音の「B♭」は、グーの手で打鍵する!
ちょっと大胆かもしれませんが、とっても良い響きの音が出ますからね。オススメです。

さぁ、ココはオーケストラなら、あらゆる楽器が出て来て、わぁわぁと華やかに賑やかに歌う所だと想像できます。
「しーらしらふぁーーーーーーーそーーー」、長いトーンでたっぷりと。
伸びる音の響きを味わって、音を聴き続けて弾きましょう。

最後のフォルテ。
右手でアルペジオになる音は、手首と肘を ギャッと使って弾いてみましょう。
(伝わります?)

3拍目のトレモロ(左右交互に弾く)は、左手高音と右手低音が繋ぐラインがメロディになっていますよ。
だから、右手だけとか左手だけとか、どちらか一方だけではなく、どちらの音もつながって聴こえるように意識して弾きましょう。
もし両手の音がつながって聴こえないなら、それは打鍵の仕方がふさわしくないのだ、と疑ってみましょうか。
右手は親指でメロディの音を弾きますね。
その親指は、低温側に傾ける。
そうして、親指の側面全部を使って打鍵してみましょう。
その時の手はこのような感じになりますよ。

側面から見ると、このように

親指が押しつぶされちゃった!みたいな状況に。
左右の手を合わせて(♭省略して言うと)「ラシラソファミ|レ」というメロディになります。もう一度、画像を出しますよ。
この「ラシラソファミ|レ」を、フォルテシモだからとただドタドタと同じように出すだけじゃもったいない。
もう一歩、踏み込んでみましょう。
「ラシラソファミ|レ」を、効果的に歌ってみるんです。
どう歌うかというと、上の画像に、○を書き入れたので、その○の大きさを感じてもらえたらいいなぁ。
その○の大きさの感じで音量コントロールをしてみましょう。

まず、左手3音目の和音は、音を上と下に分けてみましょう。
上の音は右手で、下の音は左手で取ると弾きやすくなりますよ。
和音の後の右手の同音連打は、3連符の1音目を左手で取ってみると、同音連打は格段に弾きやすくなるのでオススメ。
同音連打、左手でも助けてあげるけれど右手で二音連打しますね。
その時に使う「二指」を、同じように改めて打鍵しない事を考えてみましょう。
画像楽譜には、「2-1」という指使いが書いてありますが、「2−1」の指使いより「3-2」の方が美しく弾きやすいですよ。
もちろん人によって違いますから、お試しあれ。

画像の2小節目です。右手の指使いは「321 321」で取り、次の和音は「5と2」の指で取ってみるという方法もありますよ。
そもそもこの楽譜に書き入れられている指使いだと、多分「321 432」と弾いて和音を「5と1」で取るのだと思います。
あなたにとって、どちらの指使いが弾きやすいか、試してみてくださいね。
ココは、同音連打だけに気を取られないでね。
メロディは8分音符の「シ」(重音のトップ音)ですよ。
右手にその「シ」を含む重音があるけれど、その打鍵は流してしまわないでね。
「シ」を弾く「5の指」は、きちんと開いて(広げて)打鍵してみましょう。

右手の、3連符ではなくなる音の所の指使いに注目してみましょう。
ここは「43 21」と書いてありますよ。
これは、ラヴェル自身の指示ですから、この指を使ってみましょう。
そしてポイントは、右手の16分音符が、3連符から3連符ではなくなる所で急かない事ですよ。

ただただ、リズムに気を取られないように気をつけたいところです。
このように、重音の中にメロディが隠れている所をきちんと聴かせて、聴いてみましょうね。しかも半音で動いていますよ。

「Plus lent」のフレーズ。
ここは、深く厚い音を出すことをイメージしてみましょう。
深く厚い音を出すなら、その打鍵は手を低い位置から鍵盤にもっていく。
そして指の腹で打鍵して、その指の腹を自分の方へ引っ張るように鍵盤をなぞって。
第一音、深く深~く落とす。指を落としきる。そして、本当に指が鍵盤から外れて落ちてしまう!という寸前に、上げてみましょう。
打鍵して落として「上げる時」に使うのは、手首です。
決して、指の付け根である第3関節を使って指を上げないよう意識してみましょうね。
指の付け根の関節を使って指を上げる打鍵をすると、深い音は出てきません。
もちろん、曲やフレーズによって使う関節は変わります。
「いろんな関節を自在に操るための練習」として、机の上に小さな紙を置いて、それを各指のいろんな関節を使って引っ張る、という練習がオススメですよ。

このフレーズも、リズムが命です。
こんなフレーズですら、ダンスなんですよ。
「1&2&3&|1&2&3&」の「&」を大事に取ってみましょう。

このフレーズは歌い上げたくなるかもしれません。
でもね、歌い上げるのではなく、スペインのダンスの動きのノリを感じてみましょうね。

ココからのこの両手ユニゾンのメロディは、深~~~~~~~くね。
両手ユニゾンのメロディとは、付点2分音符の「ドー」で始まる音の動きですよ。

6小節かけての、ピアニシモからフォルテシモまで向かっていくフレーズです。
ここは計算して盛り上げていきましょう。
どうやってピアニシモからフォルテシモまで盛り上げるのか?よく考えるのが、この曲を弾くあなたのお仕事(課題)ですよ。

右手の32分音符は「ラソファソ」は、一音一音が等しい!ということを意識して弾きましょう。
そしてその32分音符は、次の左手のアクセント音につながるんですよ。
ここからの4小節は、息を止めないで!1小節で一呼吸。
きちんと、各小節間で息を吸う事で流れが出てきます。1小節ワンライン!

二重グリッサンド(和音のグリッサンド)はね、鍵盤に対して指を傾けるのがポイント。
上の音の指=4を、鍵盤に対して45度近くに(出来ればもっと)してみましょう。
そしてね、この二重グリッサンドは、第一音と、駆け上がったトップの音は「はっきり弾く」のがキレイに聴かせるコツです。
右手で弾く重音アルペジオは、打鍵した瞬間に手首を時計回りにひねり上げ(つまり、親指側が上、てのひらを上に)、手を握るようにすぼめる!という動作が必要。
この動きが出来るようになれば、イン・テンポでの演奏ではいちいち握る必要はありません。
しかし、それと同様の「ひねり」、「ひねる動作から生まれる瞬発力」が必要となります。
まず一つ目のグリッサンドは四度のグリッサンドですね。
(グリッサンドは4回ありますが、ここでは一つ目だけお話します)
楽譜指定では指使いは「2と4」になっています。
(上昇時。下降時は「1と3」。)
だけどね、美しく自然に弾けるかどうかを考えると、ここは「1と3」の指を使った方がいい、上昇時でもね。
なぜなら、「1」の指はグリッサンド上昇時、爪も爪の横側をも使わないで指の腹だけでグリッサンドできるからです。
それでも「2と4」で上昇グリッサンドを弾くとするなら。
次の練習を試してみましょう。
- 低音側の「2」の指だけでのグリッサンドの練習をやる
- この時、「2」の指は、鍵盤に対して垂直に90度を保つこと
- 指の爪の部分でグリッサンドをするのではない
決して、グリッサンドの時に「2」の指を傾けないようにしましょう。
垂直のまま、90度のままね。こんなふうに。
「2」の指が傾くのを防ぐ&支えるために親指を
「2」の指に添わせてあげると効果的。
そして二つ目からの二重グリッサンドは全て「三度」のグリッサンド。
こちらでは「1と3」の指を使ってみましょう。

上昇時は親指の腹を使ってグリッサンド。

下降時は親指は爪側でグリッサンド。

そしてコーダ。

画像2小節目、右手の重音打鍵は、腕を落とし、その反動で上がって来る。
そしてまたそれが落ちる、その繰り返し、という打鍵をしていきましょう。

画像の中で鉛筆で丸で囲んだ所。
ここは、スタッカートではありません。
指は、鍵盤に非常に近い所に、常に置いておきながら打鍵してみましょう。
決して飛ばないようにね。
つい、はずんでしまいそうになるので注意が必要です。
左手の重音打鍵も飛ばないように気をつけましょう。
ただし、左手の打鍵後、てのひらは上がっていくように。
決して打鍵で落したまま、止めてはおかないようにしてみましょう。
大事なのは、リズムです。そして相応しい音と技術ですよ。
ピアノ動画*ラヴェル「道化師の朝の歌」
さて、さんざん弾き方・練習法について書いてきましたので、この「道化師の朝の歌」を弾いた時の動画を載せます。
でもね、まぁいろいろ散らかしてますので、寛大なお心でお聴き頂けると嬉しいです。
これは、2017年9月3日開催荒井千裕ピアノリサイタルのプログラムの一つでした。
この時のプログラムは、テーマが「ダンス&ファン」だったんです。
東京代々木リブロホールにて。
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