バッハ「平均律第1巻第21番プレリュード」を練習するポイント

2021年7月16日

ピアノと言えば、というよりも、クラシック音楽/西洋音楽を代表する作曲家と言えば、まずはヨハン・ゼアスティアン・バッハ様があげられるのではないでしょうか?

バッハの作品はとても面白く(面白がってるわけではなく)、実に学び甲斐のあると言えます。

どの作品をとっても、向き合うたびに新鮮な発見があったり、その時の自分の状態で感覚も変わってくるから不思議。

今日はそんなバッハ様の「平均律第1巻第21番」プレリュードを練習するポイントをお伝えしちゃいます!

エクササイズにしない

バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード出だし
バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード出だし

このバッハの平均律第1巻第21番プレリュードは、指がよく動くことが求められます。

だからと言って、指を動かすためのエクササイズのようにはならないよう、気をつけましょうね。

まず出だしの左手の練習方法。

  • 8分音符一つずつ、みんな同じにならないように
  • 右手の32分音符も、みな同じにならないように
  • 半拍ずつコードで取って(和音化して)弾く練習をすること

楽譜どおりじゃなくて、それをコード化して弾くと、響きや進行がよくわかりますよ。
コード(和音)の響きをよく味わい聴きながら、弾く練習をしましょう。
するとね、音の行方や和音の性格がはっきりわかるんです。

その上で、左手は8分音符一個ずつ弾かないで、ちゃんと拍を感じて弾いてみましょう。
「シラシファソファソレ」を。

肘に気をつけるのがポイント

バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード出だし
バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード出だし

次に右手ですよ。
32分音符の「ファレファ」を弾く時は、肘に気をつけてみましょう。
あなたの肘が開放されて自由かどうか?
もし、あなたの肘が開放されていなくて固まっているまま弾くと、出てくる音は死んでしまいます。

手首から「ファ→レ」へと動かすのではありません。
手首は支柱です。
肘を開放してふわっとさせましょう。
決して大きくは動かさないように。大きく動かすと、ロマン派の音になってしまいます。

肘を動かすことを意識するのではありません。
肘はあくまで開放する。
手首は支えの役目。
てのひらで広がりを助けてあげましょう。

バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード1小節目
バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード1小節目

この赤丸で囲んだ音、右手は特に上がった音(32分音符二つ目の音)は、へこまないよう気をつけましょう。
もっと肘を自由にして小指を意識すること。

小指は、親指の付け根のあたりの手首まで、その骨が伸びていると意識してみましょう。
そして、この右手の動きは全体的に、手の甲が「蛇口をひねって戻す」という動きで。
だから、ただ指先だけで弾かないようにね。
その蛇口をひねって戻す動きを、すばやく。

ただし、赤丸で囲んだ音だけは、「蛇口をひねって戻す」手の甲の動きではなく、指先をものすごく緊張させて、打鍵はほんの一瞬。
打鍵したと同時に離鍵。

その打鍵の表現=イメージは、次のようなものでどうかしら?

ココは小さい子供がキャッキャ言いながら遊んでる。
「いないいないいないバ~」
みたいな感じで、そこのところは、子供の楽しさが一瞬で増すところ。みたいにね。

ラインを感じる

バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード5小節目
バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード5小節目

2小節目後半、左手「ドシラファ」と降りていくところは静かにね。
だんだん音が下がっていってますから。

そして次の小節から3回続く、左手の8分音符「シファレシ」「ドソミド」「レラファレ」は、その動きがわかるよう、意志を示すようハッキリ弾いてみましょう。
そして、それは回数を重ねるごとに増大していく感じでね。
※青のラインです。

この青のラインは、

  1. シ・ファ・レ・シ・ソ
  2. ド・ソ・ミ・ド・ラ
  3. レ・ラ・ファ・レ・シ

と3段階で上がっていく。
つまり、幸せ空間が増殖していくのを味わってみましょう。

ただただ、そのラインを強調するだけの歌い方ではなく、
①より②、②より③は大きな表現になっていく。

その後の32分音符のフレーズ(赤のライン)は、実は一続きではありません。
ここは二つのラインが組み合わさっているので、それを意識して弾きましょう。

音の波のとおりに弾く(歌う)

バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード3小節目
バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード3小節目

左手は、8分音符の動き「シファレシ」と下りてきた後の32分音符の「ソ」が、それまでのフレーズの終わりの音ですよ。
だから大事にね。

続く32分音符の動きも、ただ指を動かして弾かないように。
音の波の通りに、トップの音に向かっていく事を意識して弾く。

それの繰り返しですよ。

ノンレガートか?レガートか?

バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード5小節目
バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード5小節目
バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード6小節目
バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード6小節目

バッハの作品を弾く時、ノンレガートで弾くか?レガートで弾くか?
というアーティキュレーションを考える問題は、なかなか面白いけど悩ましいですよね。

どうやって弾いても間違いじゃないのですから。
ただ決め手というか基本は、「音楽的」であるかどうか?
あなた自身がそのように弾いて「きれいだな」と感じられるか?
これがポイントです。

だから、ここの左手を、全部ノン・レガートで弾くのもあり。
そして、シとソをレガートで弾くのもあり。
その後の「シ♭→シ(ナチュラル)→ド→ド♯」という半音の動きも、
レガートで弾く人もいれば、ノンレガートで弾く人もいる。

いずれにしても、あなたの弾き方の選択肢に入れておく。
そして、どうするかは、あなたが決める。
何度も弾いてみて。様々なアーティキュレーションで弾いてみてね。
面白いですよ。

音型を意識する

バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード8小節目
バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード8小節目

ここの音型を意識してみましょう。
煮ているようだけど、左手の「ラドレミファ」と右手の「ソラシド」は同じじゃありません。

要は1小節目の右手のような感じです。

右手の方が音域が上がっていますよね。
そして右手の「ソラシド」の「ド」は、この音型の中で一番高い音=頂点です。

だから、肘を開放させて。左手で「ラドレミファ」と上がってくる時よりも、ですよ。

裏切りのシーン

バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード10小節目
バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード10小節目

ココは、カデンツァに向かって、ただ32分音符のフレーズが増幅していくように弾くだけの、フレーズではありません。
実は、左手でとる赤○の音。これが、ラインですよ。

ファーードーーとくれば、普通なら次を「ドーーファーー」となることを予想するでしょう。

でも、そうじゃないの!
ファーードーーレとなるの。

まるで、予期せぬ裏切りのような展開に陥るところですよ。
突然、海に放り投げられたようなシーンですね。

和音の響きと呼吸

バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード10小節目から
バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード10小節目から

さぁ、ここからは第二セクションに入ります。

画像のはじめ=10小節目は、第二セクションに向かって行く所。
※第二セクションは11小節目から。

だから、10小節目終わりの右手「ラドミソ」は、それまでのように流して弾かないようにしましょう。
そして、その結末は11小節目の左手の1拍目です。だから、この音はたっぷりとね。

さぁ、その後は和音の響きをたっぷり味わって弾きましょう。
ハープシコード(チェンバロ)で弾いてる事を想像してみるのも良いですよ。

11小節目の付点のリズムで和音を弾く前に、ブレスする。
息をたっぷりと吸い込んでね。

ここで気をつけることは、息だけ吸って終わりにしない事。
つまり、息吸った後に固まってしまわないように。
水泳と同じです。肩も背筋も広げるように。

その動作は「突く」。

「押す」だと、押したところで終わってしまうけれど、
「突く」は「突き放す」までが一つの動作。

突いた時点で力を放って逃げる感じです。
あ、これね、付点の和音の打鍵の動作ですよ。

あなたがもし、どうしても付点8分音符の和音打鍵で動きが止まってしまうなら。

あなたはここから指揮者になる事をイメージしてみましょう。
ただカウントとってるだけの指揮ではなく、マエストロになったつもりでね。
イメージするのは自由ですよ。

その後の32分音符の下降は自由に。でも音の波の動きは見てね。

音の動きの切り返しポイントはテヌート気味に

バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード16〜17小節目
バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード16〜17小節目

16小節目の最高音「ソ♭」は、少しだけ溜めてみましょう。
その音にテヌートが付いているかのように。
すると、あ、特別な音だ、切り返し点だとわかりやすくなりますよ。

17小節目第2拍の付点16分音符の「シ♭」もね。

大事な音はクリアに

バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード19〜20小節目
バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード19〜20小節目

第2セクションの終わりは、20小節目の第一音「シ」です。
その後は、ただのエンディング。
(「ただの」というのは語弊があるかもしれませんが、最後のお飾りのようなイメージで)

というわけで、ここで一番大事なのは、19小節目最後の「レドシラ」と下降する終わりの「ラ」です。
この音を十分に味わいましょう。
そして、それを次の1拍目の「シ」につなげるのです。

いつもラインを意識しよう

バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード20小節目
バッハ「平均律第1巻第21番」プレリュード20小節目

プレリュードの終わりですよ。

ここは一つのラインではなく、やはり二つのラインで出来ています。
一つ目はやや強調。
二つ目は軽くやわらかく。

そうして、気持ちは次のフーガへと馳せていきましょうか。

ピアノ動画*バッハ「平均律第1巻第21番」

ティブレイクは、バッハ様の「平均律第1巻第21番」をお送りします。

バッハはいつも新しい発見があり、何度向き合っても新鮮な喜びに包まれます。

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