バッハ「平均律第1巻第22番」プレリュード練習のポイント
「音楽の父」ことヨハン・ぜバスティアン・バッハ様は、後世の私達にたくさんの素晴らしい作品を遺してくださいました。

そんなバッハ様の作品を、クラシックピアノを学ぶなら避けて通る事は出来ません。
バッハの作品は、簡単に弾けるものではないし、楽譜を深読みするのも、はじめのうちは大変でしょう。
それでもね、トレーニングと同じでね、何度も向き合っていると見えてくるものがあります。
今日は、バッハ様の「平均律第1巻第22番」プレリュードを取り上げて、どのように楽譜を読むのか?
どう練習したら良いのか?
そんなポイントをお話していきますよ。
Contents
大きな流れ・構成を理解しておく

大事なのは、
- 大きな流れ
- 構成(構築)
- どこに向かっていくのか
ということを把握して、それを伝える必要があるという事。
そして、もう一つ大事なのは、「拍を感じること」。
出だしはね、ドレスを着た女の子が、裾を広げてお辞儀をしている。
そんなイメージを持って弾いてみてはどうかしら?
この曲は短調だけども、なんだか「ふわっ」とした、ちょっとした明るさが見えます。
細かいアーティキュレーションは、小さな赤のラインの通り。
そこで大事なのは、「右手部の黄緑のライン+左手の青のライン」の、音の響き。
ベースはずっと「シ♭」を刻んでいるのに、そこに音色の変化が感じられますよ。
1~2小節目は、右手がメロディで上昇していくのを感じつつ、また、内声で変わり行く和音の響きを聴かせてみましょう。

続く3~4小節目は、1~2小節目と何が違うかしら?
気持ちがマイナスになっちゃう?
それとも同じかなぁ?
それとも、もっと高揚?
って、考えてみてね。
ソプラノの音の動きは大事だけどね、そこだけに注目しないで俯瞰してみましょう。
ほら、わかるかしら?
左手に、メロディが登場していますよ。
それならば、1~2小節目より、少し高揚させてみましょうか。
この曲はプレリュードですが、4声で、まるでフーガのような曲ですね。
画像の青のラインの終点となる赤○の音は、小さなアーティキュレイションでの終点でもあります。
そしてまた、大きなフレーズでの通過点でもあり、長く伸ばす音なので、とても大事ですよ。
だから、よく響かせてね。
その音を打鍵する前に、指先、手のひらの筋肉、肘、それぞれを準備して打鍵するのがポイント。
そして、一つ目の大きな流れは二段目までで・・・

ココ、5小節目に来ると、流れが変わります。
一つ目の流れは上へ上へと進んでいきましたが、二つ目のこの流れは降りていく。
この画像で一段目の終わりで左手がどんどん降りていくのは、次の段の初めの和音(青○)の「シ♭」に向かっています。
そこが、終結するところですよ。
ソプラノとバスを、どう意識するのか?

さて、4小節目で最後に響かせた音「ソ♭」(この画像1段目2小節目)は、この画像での2段目2小節目、右手の「ファ」に続き、3段目の左手「シ♭」が最終点となります。
続くフレーズは、青ラインで示すように、ソプラノとバスの動きを意識して、聴かせていきましょう。
そして青ラインの(右手で言うと)「ドシドードードー」「シラシーシーシー」~のように、16分音符二つの後に8分音符三つ続く時のポイントです。
その8分音符三つ目は、二つ目とは和音が変わりますよね。
だから、それを響かせたい。
では、どうやって響かせたらいいのでしょうか。
もしあなたが、それを意識していて、出そうとしているけれども、はっきり出てこないとしたら?
ちょっと考えてみましょう。
ピアノは歌と同じですよ。
ピアノは、イコール、歌。
ということは、手は歌う時の口と喉を表しているんだ、と考えてみましょう。
だから、歌ってみることが大事です。
あなたが歌う時の、口の動きはどうなるかしら?
喉の開き方は?
頬の動きは?
腹筋の使い方は?
ブレスの仕方は?
それを、全てあなたの指先、手のひら、手首、肘、肩にあてはめてみましょう。
文字にして伝わるかどうか微妙ですが。
「(うん)タタターターター」って弾いていないかしら?
つまり、縦の動きね。上下の動き。
これだと、歌にはなりません。
なぜなら、1音ずつ分断されてしまうから。
声を出して歌うなら?
「タラタ~タ~~タ~~~」というように、気持ち、吐く息の量が増えていくんじゃないかしら?
だとしたら、指先だけで弾いてしまうのでは足りません。
次第に手首を柔軟に回していく。
そして肘でも助けていって、最後は肩が脱力で手が伸びていく感じでね。
歌う時も、最後に吐き出したいところは、体中の毛穴が開くみたいに。
顔は下は向かず、上向きに声が広がるように歌うでしょう?
こういった事を、意識して弾いてみましょうね。
セクションの変わり目をイメージする

そしてココが第一セクションの終わりですよ。
右手の赤のラインに緊張感が走っていきます。
左手の赤ライン「ミファソーソーファ」で終止。
そのまま続くところが第二セクションになります。
ココは、二人で踊っている、と想像してみましょうか。
それなら、どんな人が踊っているイメージがわくかしら?
色白で細身の少女かな?
どんなドレスを着ているんだろう?
それは何色かしら?
その少女はどんな表情をしているのかな?
という事を、想像してみましょう。
ちなみに私の場合は、ゴールドのバロック・ドレスを着た細身の少女が、少し微笑みながらも緊張している感じを想像しました。
(今後はイメージが変わるかもしれませんが)
もう一つ表現力を上げるポイントをおすそ分け。
それはね、あなたがもし、微笑んでいる少女を思い浮かべるなら、ピアノを弾くあなたも、微笑むことです。
他の曲でも同じ。
もし、あなたがめっちゃ楽しい!と感じているなら、楽しそうな表情をして弾きましょう。
間違ってもムッツリしないでね。
逆に、怖さや不安を感じて、それを表したいなら、ニコニコして弾くのは変だと思うでしょう?
そういう事です。
もう一度、画像を出しますね。

ココは、左手の青のラインが大事です。
でもね、そこだけ緊張して強調するような弾き方をしても、伝わりません。
じゃあ、どうしたらいいか?
それはね、その後に8分休符があるでしょ。そこね、ブレスするところですよ。
これが「伝える」コツです。
しっかり、指を離して、次の打鍵に向かって用意しましょう。

さてこちらは、第二セクションに入った所。
ここの右手のラインは、赤と青では違いますよね。
音が上がっていくのと、降りてくるという違いです。
だから、性格が違うので、キャラクターを変えてみましょう。
問いかけと答え。
その性質を出すことを意識してみましょうね。
到達点を感じる

この画像で上段の初めの青○は、「家へ帰る」過程の到達点=家に到着したところ。
「はぁ~~っ」て、肩の荷が下りてホッとしてるところですよ。
二つ目の青○は、次の終止。
少し余韻を持って、聴いてみましょうか。
続く赤のラインは、どんどんストレットしていくの。
GO ON ! GO ON ! とね。
そして下段のはじめの赤○が、到達点。
ここに向かっていく事を覚えておきましょう。
ここの弾き方は二通りありますよ。
- ココまでを、めっちゃ盛り上げていく。
がお~~~!ってな感じで。
そしたら、その後の部分も、テンションを下げずに大きな盛り上がり(空間)のまま突き進む。 - ココまでを、盛り上げはするが過度ではない。
そしたら、次の(最後の部分)は、緊張感は緩まないけれど、ややソフトにいく。
それは、あなたがやりたい方、あなたが弾いてしっくりくる方を選ぶといいですね。
でも、選んだら弾き方は統一しましょう。
そしてね、どちらにしても、気をつけたいポイントは?
下段の赤○の到達点の響きをたっぷり味わうこと。
その後の、黄緑○の休符は呼吸をする所。
ただ音を切るだけじゃありませんよ。
あなた自身が大きく呼吸することです。
呼吸音が聞こえてくるくらいに。
そして終わりのフレーズ、左手「ファーシー」は「Ⅴ→Ⅰ」の動きを感じましょう。
感じて、たっぷり弾くこと。
左手は、最後に一つだけ「ミファソーソーファー」と、冒頭の再現が出てくることも意識してみましょう。
テンションを考える

どんどんストレットしていく所ですが。
「あ~、これでやっと家に帰れるよ~っ」てな感じで、息が抜けていく所。
でも、腑抜けにはならないように気をつけたい。
ここは、ソプラノとバスの動きが(方向性が)逆になっている事。
そして「シ♭」に帰り着くことを、意識してみましょう。
ココまでの第二セクションはヘ長調。
だけれども、到達点からは変ロ短調に戻りますね。
この画像の2小節目4拍目の左手は「ラ」。
それが、次の到達点の直後には「ラ♭」に変化しますよね?
それを感じましょう。

変化をよく感じて。
調性が変化するところですよ。
全ての音は、調性に基づいています。
だから、到達点の後のこのバスのフレーズは重要。
そして赤○の和音が再び「へ調」のごとく、ドミナントに変化するのを感じるのがポイントです。
続くフレーズは、出だしが、ソプラノとテナーが並行であることを受けて、そこからテンションを上げていく。
第二セクションに入る前のフレーズは、和音の変化を十分に味わって弾きましょう。
ピアノ動画*バッハ「平均律第1巻第22番」
ティブレイクは、バッハ様の「平均律第1巻第22番」BWV867変ロ短調をお送りします。
切ないような、寂しいような、でも心のともしびを感じるような、そんな感じがしませんか?
練習のポイントまとめ
- もっと歌う
- 到達点がもっとはっきりわかるように盛り上げる
- 肘をもっと使う
音を空中にふわっとふくらますのに、手首だけでやっていませんか?
手首ではなく、まず、肘です。
肘の自由な動き=声を出していく(息を吐いていく)時の喉や頬の動きで、それによって連動して声が出る=連動して手首が動く。
それから、これは4拍子の曲なので、8拍子に聴こえないように拍子感を意識しましょうね。
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