バッハ「平均律第2巻第1番」フーガを練習するポイント
音楽の父、ヨハン・ぜバスティアン・バッハ(1685-1750)は、数え切れないほどの鍵盤楽器のための作品を生み出しました。
バッハの「平均律クラヴィーア曲集」は、第1巻と第2巻があり、どちらもそれぞれ24曲の(24の全ての調による)プレリュードとフーガが収録されています。
フーガは3声から5声まで、曲によりいろいろ。
第1巻より第2巻は、より音楽的に豊かな作品が多くなっています。
バッハ「平均律クラヴィーア曲集」の第2巻から、第1番フーガを取り上げ、キャラクターや打鍵をどう考えていくのか?のヒントをシェアしますね。
Contents
プレリュードとフーガはどう違うのか?

練習し始めは、すぐにはテンポを上げられませんよね。
もちろん、すぐにテンポを上げて弾く必要もありません。
しかし、ゆっくり練習をする中でも、気をつけなければならない事があります。
まずはその点について、考えてみましょう。
プレリュードとフーガは、どう違うの?
プレリュードとフーガは対称です。
この平均律第2巻第1番の場合は、プレリュードに比べるとフーガは、もっと軽くて浮かれている印象。
その軽さや浮かれた感じが出せていないとしたら、原因はテンポにあるのかしら?
もちろん、テンポを上げられれば良いけれど、無理にテンポを上げてもね。
テンポが上がららなくても軽さや浮かれた感じを出す事は出来ます。
この時に考えるのは「呼吸」について。
もし、あなたがこのフーガで軽さや浮かれた感じを出したいけれど、テンポを上げるのがやさしい事ではないなら?
もっと呼吸を意識しましょう。
そして、強固なリズムをあなたが感じる事です。
赤○の休符は、しっかりと呼吸しましょう。
そして続くフレーズは、キビキビとね。
曲のキャラクターに応じた打鍵を考える
では、このフーガは、どんなタイプの曲かしら?
- 穏やか?
- 幸せ?
- 温かい?
- 生き生きとしてる?
さぁ、あなたはどう思うかしら?
私はね、「生き生きと」していると感じます。
あなたも「生き生きと」していると感じるなら、生き生きとした音を出す打鍵をしましょう。
そのためには、どうしたらいいのか?考えるんですよ。
もう一度画像を出しますね。

この最初のテーマの終わりはどこかしら?
「・ソファソッドッ|ラーーーソーー」で終わり?
それとも、その後の「・ファミファソミファ|レファミファソラファソ|ミ」まで?
答えは後者。
だから、「ラーーーソーー」で終わってしまわないようにね。
もし、あなたの演奏が「ラーーーソーー」で終わっているような気がするなら。
その後の8分休符の感じ方が、始めの8分休符と同じになっているからでしょう。
最初の8分休符は、素早く大きく息を吸ってみてね。
もし、素早く大きく息を吸っても、吸った後に「ゆったり」してしまっているとしたら、「ソファ」の打鍵がうまききません。
呼吸は、全てに連動します。
呼吸がゆったりしてしまうと、打鍵が遅くなってしまうんです。
そうなると、まるでロマン派のように。
1音目の「ソ」は、呼吸直後の出だしの音なので生きます。
次の「ファ」は沈まないように。何故なら次のソに向かっていく音だからね。
沈ませないためには、指を伸ばさず立てて(丸める感じで)素早い動きの打鍵をしてみましょう。
次に、2小節目の「ラーーーソーーー」。
何故、この「ラ」にモルデントが付いてるのか、考えてみましょう。
バッハのこの曲は、何の楽器のために描かれたのかな?
ハープシコード(チェンバロ)とかオルガンとかですよね。
もしあなたが、ハープシコードに触れた事があるなら、その構造や音の出方がわかるでしょう。
あまり音が続かない(伸びない)ですよね。
だから、そこにモルデントが入る。そうしないと、切れちゃうから。
その後に二声でテーマが絡み合う所にモルデントなどの装飾がないのは、多声になっているからです。
でも、この始めの所は違いますよね。
(ピアニストによっては、二声でテーマが絡み合っているところにも
モルデントを入れている方もいらっしゃいます。
入れる事そのものの良し悪しを、問題にしているのではありません。)
それで、その2小節目の「ラーーーソーー」に話を戻します。
このテーマは、続く16分音符のフレーズにつながっていますよね。
だから、「ラーー」の後の「ソーー」は少し抜きましょう。
同じ比率で弾かないようにね。
そして次の8分音符は、きちんと呼吸して。
そして16分音符一つずつの打鍵を素早く、全ての音に指を用意でキビキビと快活に弾いていきましょう。
これがバッハ。
これがバロックと古典の弾き方です。
16分音符のところから、レガートすぎると、ロマン派になってしまうので、自分がどう弾いているのか、客観的にチェックしてみましょう。
もっと生き生きとさせるには、きっちり用意で素早い打鍵がポイントですよ。
どこへ向かっていくのか?

最初のフレーズは、
「ウン ソファ ソッドッ|」の次の「ラー」に向かっていきますよね。
だから、続く主題も、ちゃんと向かっていくのがわかるように弾きましょう。

こちらのフレーズも。
赤→のように、音は向かっていくことを、はっきり伝えるように弾きましょう。
そして、それは増大していくのだという事がわかるように。
最後の青○の「C」は、長く響かせる事を意識してね。
アーティキュレーションと打鍵を考える

ここ(後半にもありますが)、右手で二声が入り乱れています。
アーティキュレイションがごっちゃにならないよう、気をつけましょう。
「ウン タタ タッタッ|タ~ タ~」というアーティキュレーションで弾くなら、その弾き方(切り方伸ばし方)を最後まで意識して。
二声での絡みは、どちらも動きを持って弾く事をわすれないでね。
どちらか一方ではなく、どちらも大事です。
- アルト、「・ドシドッソッ|レー」に向かっていく
- ソプラノ、「・ラソラッレッ|シー」に向かっていく
このフーガはとてもいい練習曲なので、バロック作品をどう弾くか?
そのバロック弾きを、あなたの中で明確にするよう意識して練習しましょう。
16分音符のフレーズは、特に注意してね。
まずはゆっくりだけど、打鍵は素早く。
それからイン・テンポで。
ストレッタの練習法

左手の16分音符の弾き方ポイント。
- 「ソファソラ」はソフトに、「シドラシ」で盛り上げて
- 「どしどれ」はソフトに、「ドレシド」で盛り上げる
そしてココは、2小節を1フレーズでとらえましょう。
ソフトに=レガートで。
盛り上げては、クレッシェンドするという意味ではありません。
指をきちんと上げて、パキパキ動かして素早い打鍵をする。
では、右手の二声ストレッタの練習法を。
- 左手だけの練習
- ゆっくり両手で合わせる練習
この2つをしてみましょう。
そう、練習の基本ですよ。
ソプラノとアルトは別のライン

このフレーズでは、ソプラノのラインを意識して聴き届けるように弾きましょう。
アルトとラインが一つにならないようにね。
カデンツからコーダへ

ここは、カデンツであることを意識して、味わって弾きましょう。
さてここ、私が師匠のレッスンを受けた時、「Coda」って小さく書きこんでいたのですが、これに師匠が唸りました。
うーん、Codaねぇ…?
これに対して師匠は次のように言われました。
そうねぇ、確かにカデンツがあって、コーダを思わせるニオイぷんぷんよねぇ。
でも・・・カデンツの最後(二小節目の第一音のバス)が、「A」でしょ?
コーダに入るなら、ココが「C」にならなきゃね。
まぁ、Cになってもおかしくはないフレーズなわけだからね、
でも、でもでも、Cにならないんだよね~。
思わせぶりで、コーダじゃないっていう(笑)。
まぁ、ミニ・コーダってところかね。そう、だから、ココの「A」は、特に大事よ。

さぁっ!そしてココが、本物のコーダ。
意気揚々と弾いていきましょう。

あとはコーダの右手の、「高い音」の出し方を意識してみましょう。
- 青ラインがレガート
- 赤→が、音の方向(矢印の的の音が、出るべき音)
5の指打鍵を意識しているだけでは、いい音は出てきません。
ここで「いい音」を出すために。
腕の付け根の胸のところの筋肉から、手首へ力を直結させる事を意識してみましょう。
これは、後ろ(背筋)ではなく、前です。
(胸というか、腕の付け根、背中じゃなくて前身の)
総じて
この「平均律第2巻第1番」フーガは、もっと生き生きと。
決してシリアスな曲ではありません。
生き生きとした表情・音色・雰囲気を出すために、あなたに必要な事は何か?
打鍵の仕方なのか?打鍵のスピードなのか?
呼吸なのか?
別の音色なのか?
体の使い方なのか?
考えてみましょうね。
ピアノ動画*バッハ「平均律第2巻第1番」
ティブレイクは、お題のバッハ「平均律第2巻第1番」BWV870ハ長調をお送りします。
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