バッハ「平均律第2巻第8番」プレリュードを練習するポイント
ピアノを学ぶなら、いえ、西洋音楽を学ぶなら避けては通れないのが、バッハ様の作品。
バッハの作品は難しいと感じる人達が多いのも事実。
でも、バッハの作品の美しさに惹かれてやまない人たちが多いのも、また事実です。
バッハの作品をどう学び、どう演奏するか?
これは一言で表せる事ではありません。
指導者の数だけ、演奏者の数だけ方法があり、正解があるとも言えます。
自分で考える事が出来る人たちもいるけれど、そこまでは難しいと感じる人達も多いでしょう。
というわけで、今日はヨハン・ゼバスティアン・バッハ様の「平均律第2巻第8番」プレリュードの練習のポイントを、解説していきます。
Contents
バッハはもっと直角的に

バッハ「平均律第2巻第8番」プレリュードの始まりは、右手に注目しましょう。
拍頭の音にアクセントつけないよう、気をつけて。
打鍵する時に、第三関節から弾きにいっていませんか?
第三関節ではなく、手首を使って打鍵してみましょう。
そして、全ての16分音符をしっかり弾こうとしないようにね。
これはさ、レゴと同じだと考えてみましょ。
小さなパーツを組み合わせて出来てるの。
この主題はこの1小節全部ですよね。
でも、もう一つ小さい「アーティキュレーション」は1拍ずつですよ。
そして、更に一番小さなレゴ(アーティキュレーション)は、
- れふぁ
- みそ
- ふぁら
- そし
- られどし
- らそふぁみ
となります。
これらのレゴが組み合わさって、一つのオブジェが出来るんだ、と考えてみましょう。
アーティキュレーションを考える

1小節目の右手。
音が多すぎる印象を与えているとしたら?
全ての音を主張・押した弾き方をしないよう、気をつけてみましょう。
それぞれにレイヤーがあります。
そのレイヤーをどうとらえるか?が、アーティキュレーション。
気をつけたいのは弾き方。
もし、上半身から「弾きに行ってしまう」と、ロマン派みたいになってしまいます。
バッハの場合、重要なのは、「高い音」に向って行くということ。
拍頭に乗るのはいいんですよ。
だけどね、拍頭を出しすぎると、非常に「スクェア(正方形)」な感じになってしまうの。
もし、「押して弾きに行く」としたら、それはハープシコード(チェンバロ)では出来ないこと。
カラダで押していっても、それで音色を変えることは出来ません。
ここがバッハを弾く上での重要点の一つ。
バッハを学ぶということは、本当に大事なこと。
どの作曲家もみな、バッハの影響を受けて作品を書いています。
ベートーヴェンもシューマンも。
だけどね、各時代の様式がありますよね。
だから、ロマン派をバロックみたいに弾いたらおかしいし、その逆も然り。
そういう事を知って理解しておくことが大事です。
さて、高い音に向って行くという方法について。
1小節目の右手。
「れふぁみそ ふぁらそし られどし らそふぁみ」
これの「とらえ方」=「アーティキュレーション」について、先程
- れふぁ
- みそ
- ふぁら
- そし
- られどし
- らそふぁみ
となりますよ、とお話しました。
しかし、他にも方法がありますよ。それは
- れ
- ふぁみ
- そふぁ
- らそ
- しら
- れどしら
- そふぁみ|ふぁ
と捉える方法と
- れ
- ふぁみそふぁ
- らそしら
- れどしら
- そふぁみ|ふぁ
と捉える方法。
どちらも間違いじゃありません。
どのように「とらえるか」は、あなた次第ですよ。
いろいろ弾いてみて、あなたの中でしっくりくるアーティキュレーションを見つけましょう。
実際に弾く時のポイントは、
- 上半身から弾きに行かないこと
- 肩の力を抜く
- 背筋を落とす
その状態で弾いてみてね。
あなたの体の状態を知るために、ちょっと立ってみましょうか。
上半身を前に倒して。
腰から上の力を全部抜いてだら~んと。
腕も全部だら~んとさせてね。
頭の力も抜いて
首の力も抜く。
そのまんまの状態で、両腕を前後にぶらんぶらん振ってみましょう。
そうしたら次は、左右にぶらんぶらん振ってみる。
そして体を起こす。
これを毎朝の日課にしてみるといいですよ。
上半身の力を抜くいい体操になります。
それでももし、上半身から弾きに行ってしまうようだったら、顎を意識してみましょう。
そう、あごです。顎を引きましょう。
顎を引くことで、上半身は余計な動きができなくなりますよ。
それから、4拍目(らそふぁみ)について。
音階の下降の時はね、レスにしていきましょう。
決して主張していかないように。
主張していくのは音階の上昇の時です。
下降の場合、一音一音を全てはっきり弾かないのがポイント。
第一音から弧をかくようにdim. =タッチを変えてみましょう。
もっとリズム(拍)に乗る事を意識してね。
アーティキュレイションを、はっきりさせることは大事です。
でもね、それをより明確にさせるには、リズム(拍)に乗ってアーティキュレイションを変えること。
このテーマでは3拍目に向っていきます。だから、
- 1拍目より2拍目を
- 2拍目より3拍目を
よりアーティキュレートさせ(明瞭に伝え)、音量も上げていきましょう。
一音ずつのcresc.ではなく、拍ごとに段階を上げていくように。
ちゃんと拍に乗るのがポイントです。
第二主題の性格は?

ここからは第二の主題が出てきます。
第一主題と同じものが出てくると思わせての、展開。
だから、もっと明るい性格に変えてみましょうか。
左手8分音符、もたもた(どたどた)弾かないように気をつけて。
もっと生き生きと!を意識してね。
8分音符をどう弾くか?考える

全てを同じに、「どんどんどん」って弾いていないか、あなたの音を聴いてみましょう。
低音を弾く場合の音のバランス(音量)に十分に気をつけること。
=中音域を弾く時と同じ打鍵をしない。たとえ1拍目であっても。
例えば3小節目の左手「ふぁ・ど・れ・ふぁ」。
「どれふぁ」と上昇して行くのを表そうというだけで弾くと、「ド(ダブル#)」が飛び出てしまいます。
低音の場合は普通に弾くだけで音量も響きも増すもの。
だから、たった半音違いの音であっても、コントロールをしっかりしましょう。
8分音符打鍵は、指先でピックアップするように。
音を、鍵盤をつまみ上げるようにね。
これは、話す時の舌の動きと同じです。
「タッタッタッタッ」て言う時の、舌先の動きのように、指先は鍵盤をピックアップする。
ピックアップすることで、音が生きて来ますよ。
「8分音符二つ+4分音符」で上がっていくこのフレーズも、一音ずつcresc.するのではなく、拍に乗る。
拍頭できちんとステップに乗る弾き方をしてみましょう。
動きを理解する

左手8分音符、ただ拍に乗っていませんか?
もちろん、拍に乗るのは大事ですよ。
ここでは、第1拍から第2拍へいく過程「レ→ソ」で、きちんとその動きを伝えましょう。
右手、赤ラインを弾いた裏拍の動きの音が飛び出ないようにね。
ここはただ「なぞるだけ」の弾き方で。
違いは何なのか?

(画像は5小節目~)
6小節目から始まるフレーズ。
7小節目では同じフレーズが二度下で、そして
8小節目は更に二度下で繰り返されます。
そこからは展開されて9小節目に。
それは9小節目の右手第3拍に向って行く。
その9小節目の左手は主題を奏でていますが、

これが10小節目。
9小節目の左手の主題は10小節目の、この右手へと受け継がれていきます。
そして

これが11小節目。
10小節目より三度上で展開されています。
でもね。10小節目と11小節目は別物ではありません。
きちんと、「ステップ・アップするのだ」という繋がりが、聴いている人にわかるように弾きましょう。
(10小節目の4拍目でしぼないように。)

そうしてこの11小節目から展開されるフレーズは、第一セクションの終わり(16小節目の第4拍)まで、ずいずいと向って行く。
そこが、目的地です。
では改めて、10小節目と11小節目だけを見直してみましょう。
さぁ、この二つの違いは、何でしょう?
二つ目の方が「より明るく」なっています。
そう、転調してるからね。
では、「より明るい音」にするには、どしたらいいでしょうね?
「もにょもにょもにょ」って話していたら、伝わらないよね。
誰にでもわかるようにはっきり話すためには、どうするかしら?
「よりクリアに話す」ですよね。
では、「よりクリアな音」にするには、どしたらいいんだろう?
それは、「より、アーティキュレート(より明瞭に発音)」することです。
そうするには、指先をもっともっとア積極的に機敏に動かす。
10小節目の第4拍にある「ラ#」と、11小節目第1拍の「ラ#」は、その間に一音しかありません。
でもね、この2つの「ラ#」は、完璧に性格(音色)が違います。
きちんと用意して打鍵しましょう。
何となく弾かない。
呼吸や性格を考えよう

画像1段の2小節目が16小節目。
ここで一つ終わります。
だから、ここの呼吸は「しっかり」とね。
そして17小節目から始まる新しいフレーズ。
これは第三の主題ですね(右手)。
第一の主題が「声明」だったら、第二の主題は「少しおどけて明るく」なる。
この第三の主題は、第一の主題でも第二の主題でもなく、ガラッと性格が変わりますよ。
もっと「ひょうきん」なのね。
そして同時に、左手では第一の主題が絡んでいるんです。
だから、左手もきちんと考えて弾かないとね。
主題はどこまで続くのか?

(この画像の二段1小節目)
この第三の主題は、どこまで続くんでしょう?
「そーみどらー」で終わりかしら?
違いますよね?
この小節全てが第三の主題。
それなのに、各拍の終わりの音を聴かずに弾いてしまうと?
1拍ごとに終わってしまう印象を与えてしまいます。
何故かというとね、1拍ごとに動きが止まってしまうから。
「そーみどらー」の最後の「らー」はその後、音が膨らんでいきます。
その音が膨らんでいく様子を想像して、音を持ち上げてみましょう。
そのためには、打鍵してから指・てのひらを持ち上げても、遅いんです。
アクションが遅い。
打鍵する前から用意して、その音が広がって行くのを「聴く」。
そして打鍵と同時に、音を持ち上げる。
※ 指先ストレッチみたいな感じで、てのひらを上げて広げて行く。
リズムに気をつけよう

右手のシンコペーションは、つっこまないように(速くなってしまうから)。

(タイの後に始まる拍頭からではない)16分音符の出だしの音が飛び出ないように気をつけましょう。
右手第4拍の「しれそふぁ」の「し」、左手第2拍の「ふぁられど」の「ふぁ」が、主張しすぎないように。
拍の終わりは最後まで意識しよう

拍の終わりの音を怠けないように。(青○のようなところ)
拍の終わりの時、気持ちが先に行ってしまうと、聴き届けるのは難しくなります。
音楽は次へ・先へと流れていきますし、次の音への準備もありますから、難しいですよね。
そして最後(赤○)は、前半の終わりとは違いますよ。
一音ずつのアーティキュレーションをはっきりと、強調するように弾いてみましょう。
ピアノ動画*バッハ「平均律第2巻第8番」
ティブレイクは、お題のバッハ作曲「平均律第2巻第8番」BWV877 嬰二短調をお送りします。
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