ショパン「エチュード」Op.25-12”大洋”をラクに弾く11の練習のポイント

2021年4月12日

ポーランド出身のロマン派を代表する作曲家、フレデリック・フランソワ・ショパン(1810-1849)は、ピアノの詩人と言われているだけあって、ピアノ作品を多く残しました。

エチュード(練習曲)と言うと、「なんでやらなきゃいけないのかわからない、つまらないもの」という感じがするのか、練習曲が原因でピアノ離れしてしまう学習者も少なくありません。いえ、それはショパンの事ではありませんよ。

チェルニー(ツェルニー)とかハノンとかね。って名前を出してしまうと大変失礼で恐縮です。チェルニーさんやハノンさんが悪いわけじゃなくて、指導者が学習者に興味を持たせることが出来ず、ただ課題として与え続けてきた事が最大の問題でしょう。

さて、そんな「つまらない」イメージを持たれがちな練習曲も、ショパンの「エチュード(練習曲)」となると、何故か話は別・違う次元の話になってしまうから面白いものです。

ポーランドの作曲家、フレデリック・ショパン
ポーランドの作曲家、フレデリック・ショパン

さて、ショパンのエチュードは、作品10が12曲、作品25も12曲、そして3つの新エチュードと、全部で27曲あります。

どのエチュードも、演奏会用エチュードとも言える、魅力いっぱいの作品ばかり。「別れの曲」「黒鍵」「蝶々」「エオリアンハープ」「木枯らし」など、タイトルで親しまれている作品も。

今日はそんなショパンのエチュードから、「大洋」Op.25-12を取り上げて、練習のポイントをお話します。尚、この記事は1万字を超えているため、有料記事となっています。途中まではどなたでも読めますので、もっと読みたいと思われたら、ぜひご購入くださいね。

アルペジオは押して弾かない

ショパン「エチュード」”大洋”Op.25-12から
ショパン「エチュード」”大洋”Op.25-12から

ショパンのエチュード「大洋」は、全編両手でのアルペジオで出来ています。

ということは、アルペジオの弾き方そのものを考える必要が。アルペジオの弾き方に問題があるなら、この曲は弾ききれません。すぐ体力が尽きてしまいます。

この曲は全てがメロディであることを感じてみましょう。アクセント音は「押す」のではなく「キック」することでエネルギーが発せられます。あなたがもし、押して弾いているとすれば、それは音に表れますから、聴いている方はすぐわかりますよ。

こんなアルペジオのフレーズは、まずスタッカート練習がオススメ。ただし、スタッカートで弾く時に、ジャンプしないように弾くのがポイントです。

肩・肘はリラックスで、臀部が沈んだ状態で。そして回るような感じで、指先のみタイトにして打鍵はキック!

ポジションが変わる時は、肘をリラックスさせること。そして5の指打鍵の直後に1の指を瞬間的に持ってきてそして直ぐに手をオープンにする(すぐ次のポジションのコードに全ての指がいくように手を開く)。
※逆の動きなら1の指打鍵直後に5の指を瞬間的に持ってくる。
この動きが遅くても速すぎてもダメなので、気をつけてみましょう。

何故スタッカート練習をするのか?スタッカート練習をレガート奏法の時に生かせなければ、意味はありません。

  • 全ての指は均等で
  • 凸凹しないこと

あなたが出す音がどうなっているのか?よく聴いてね。

もしあなたがポジション・チェンジする音に違和感を持ったなら。

最初なら(右手なら)「ミソミ」までが一つのコードでしょ。これらは、和音でつかむそのままの指先で打鍵する事を意識してみましょう。それらが分断されないように。

次にポジション・チェンジした「1の指打鍵の音」がまた違う響きになってしまうなら、1の指打鍵の時、あなたの親指は「沈んで」しまっていないか、見てみましょう。

アルペジオはエネルギーをコントロールする

上に書いた事ができるようになったら、次に、エネルギー・コントロールを計ってみましょう。

ショパン「エチュード」”大洋”Op.25-12から
ショパン「エチュード」”大洋”Op.25-12から

第一の(低音の)アクセントは左手で行う。右手は余計な事しない。この時の左手の5の指打鍵も、決して「沈んで」押さないよう気をつけましょう。左手5の指打鍵の時、左手が落ちていないか、確認しましょうね。

この音打鍵は、突く!キック!放たれる音色が全然違いますよ。

そうしてアルペジオが上昇するに従って出てくるのが右手です。高音折り返し地点では肘の回転を使いましょう。

下降してきてハーモニーが変わるところを、急がずよく聴かせる事を意識する。このハーモニー・チェンジの変わり目は重要です。ハーモニーが重なる・混じり合うことを感じてみましょう。

アルペジオは全て、(打鍵していない)3の指を支点として意識・感じて動くのがポイントです。

リピーテッド・ノートの打鍵を考える

ショパン「エチュード」”大洋”Op.25-12から
ショパン「エチュード」”大洋”Op.25-12から

「ミソミ ミソミ ミソミ・・・」と続くそのフレーズ、ミが「リピーテッド・ノート」。つまり「繰り返される同じ音」ですね。

リピーテッド・ノートの打鍵は、いつどんな時でもちょっと注意が必要です。この「大洋」の場合は、二回目のミの打鍵が惜しい事になりやすいの。それはね、一回目のミの音が戻ってくるのを聴いていないから。

「ミソミ」が「み~~っミ!」となっていないかしら?そうじゃなくてね。「ミソミ」の1音目の「ミ」が「み~~」と伸びて行きます。そしてその響きが戻ってくる時には減衰していますよね?それを受けて、「ミソミ」の二つ目の「ミ」が出るんです。響きのバトンをきちんと受け取りましょう。

そしてね、ここは次の「ミソミ」というグループの始まりでもあります。つまり、二段階目に入るということ。1の指を用意して、ドカンと尻餅つかないようにね。

このグループ(=一度につかめるコードの構成音、1小節目の右手なら「ミソミ」で1グループ)、
1グループ=1テンションを維持する。
2グループ目ではテンションが上がる。
3グループ目はもっと。掌と2の指の腹側の筋肉は緊張状態を維持する。

そうして、このアルペジオのトップの音(アクセント音)に向っていきます。そこから下降しますが、アクセント音の次の音「ソ」=2の指で弾く音で、いきなり緩まないように気をつけましょう。

この時の2の指の緊張状態は、上昇して行く時の同じグループの(アクセント音の直前の)同音と全く同じを保って。そして下降の次のグループではテンションを落としていきます。

次に、上昇で2グループ目の「ミソミ」について。
「ミはソへ」「ソは次のミへ」向って行くので、ソより次のミのテンションが落ちないように

この弾き方は、このパターンのところは同じです。これが基本。

下降時の2の指は、アクセントが付かないように気をつけましょう。

一番最後の(下降した時の最後の)2の指で弾く音は、それまでの打鍵の仕方とは違って、決して指の関節で打鍵しないように。
2の指は手首まで繋がっていることを強く意識して、手首から弾いてみましょう。そうすることでソフトになりますよ。

指の付け根の関節だけで打鍵していると、「強い音」か「弱い音」しか出ません。

音をコントロールしたい時・コントロールしにくい指で打鍵する時は、手首で助けてあげましょう。

アルペジオは呼吸も大事

それから、アルペジオは呼吸が大事。上昇して行く時と、下降して行く時では呼吸の仕方が違いますよ。上昇して行く時は、ゆっくり吸っていく。そして下降で息を吐いていきますが、息を吐く時、その量に気をつけましょう。いきなり多くの息を吐き出してしまわないようにね。そうすると、すぐに緩んでしまいます。

コントロールして。少しずつ吐いていくのがポイント。

拍を感じる

この曲には「大洋」という副題が付いていますよね。だからね、「水遊び」にならないように気をつけましょう。「大洋」の大きな水の塊のうねりを出す事を意識して。いちいち切れて、短い小さな水が常に襲ってくる感じとは違いますよね。

まず、8小節で1ラインととらえましょう。

それがどのようなハーモニー変化をしていくのか、それを感じ取って表していくことが大事です。そして同時にハーモニーはメロディ。

ショパン「エチュード」”大洋”Op.25-12から
ショパン「エチュード」”大洋”Op.25-12から

あなたは「拍」を感じて弾いているかしら?この曲は何拍子かわかって弾いていたかなぁ?

気をつけたいのはね、一音ずつ主張しすぎないように弾くこと。

音階・アルペジオの場合は原則があります。

上がっていく時は低音から出していく。だから始まりの左手「ドソドド ソドドソ」を出して(聴いて)みましょう。
そして降りてくる時は右手「ミソミミ」を出す。トップの「ミ」だけが出るわけじゃないですよ。

気をつけたいのは、体で引っ張って行かないように。体が先行してて手が後からついてくるように弾くのでは、コントロールできません。

「ドソド」は1ポジションで用意しておけます。用意しておいて、息を深く吸う。一瞬で吸う呼吸じゃなくて、水泳の時のように深く吸ってみましょう。そうして体を乗せて「ドソド」を弾く。

もし、あなたの「ドソド」の「ソ」が弱いとしたら。「てのひら」の筋肉を、もっと緊張させてみる(感じてみる)。練習として、最初の「ド」と「ソ」を和音で弾いてご覧。和音として弾いた時の緊張度を保ったまま弾くのです。

8小節で1グループなのに、1小節ごと1フレーズとして弾いていませんか?もしそうなっているなら。

各小節の最後の音と、次の小節の最初の音のつながりが良くないのが原因です。それは、最後の音を「聴いていない」から。もう気持ちが次の小節の第一音に先行してしまっているから、最後の音まで聴く事ができないのです。

最後の音をきちんと聴く!忘れないでね。

弾くだけじゃない、音色を考えてみよう

ショパン「エチュード」”大洋”Op.25-12から
ショパン「エチュード」”大洋”Op.25-12から

構成を考えた時、もしもあなたが「大洋」の出だしをソフトに弾いてしまうとしたら?その気持ちはよくわかりますよ。でもね、ショパンの指示では出だしからフォルテなの。

腕や肩の使い方で、リリカルな音色にも緊張感を持った意志の強い音にもなります。

例えば...肩を広げて腕も広げて背筋も広げて、上半身を自由にして弾いたら、ナイスな豊かな音が出る。でも、緊張感が伴うわけではありません。

もしもあなたが深い緊張感を持った音を出したいなら、肘が体の内側に入って「てのひら」の緊張はゆるめない。ただ大胸筋だけラクにして弾いてみて。すると、テンション(緊張感)のある音になりますよ。どっちがいいか悪いかじゃないの。どっちの音色の出し方をも、あなたの弾き方の引き出しとして持っておくこと。

その引き出しを、いつでも自在に開けられるようにしておく事が大事なんです。あなたの音楽を、より豊かにするの。

同じフレーズ・よく似たフレーズは、どの曲にも何度も出てきます。それらを変えて弾く。それだけで、ただの繰り返しではなくなります。それぞれが生きてきますよ。

上昇では「もっと左手」が出てきていい。波が押し寄せるのを想像してごらん。

波の始まりは、水の深いところから蠢いてどんどん大きくなって巻き上がってくる。巻きあがった波のトップのあの感じ、それが上昇した右手の1オクターブの音たちです。(1小節目ならば、上がりきった「ミソミソミ」の5つの音)

だから、トップの音一個だけを意識して出すのではないの。波のしぶきが上がる感じを想像してみてね。

アルペジオ、切り返しの弾き方を考える

もしもあなたが、アルペジオで降りる時の「ソミ」が出て来ないとしたら?弾き方を見直してみましょう。

もしかしたら、頂点から折り返して降りてくる時に、手の甲からふわりと返しているかもしれませんよ。その勢いで指が鍵盤に触れてるだけだから、意志のない音になってしまうのです。

ショパン「エチュード」”大洋”Op.25-12から
ショパン「エチュード」”大洋”Op.25-12から

上昇の「ソ」と下降の「ソ」は同じ指で同じ鍵盤ですが、打鍵のアクションは同じじゃありません。何故かって?それは音の意味が違うから。では、どうやったら同じ音を同じ指で弾くのに、打鍵を変えられるのか?

下降の「ソ」は別の音だと思ってみて。違う音を弾くなら、指はきちんと打鍵のアクションをし直しますよね。それを、同じ音でもやるだけですよ。それをやるのに効果的な方法があります。

これは人によって、骨や関節の具合でどっちがより弾きやすいかは違うので、二種紹介します。

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