ショパン「ノクターン第13番」Op.48-1の理解を深めて練習する13のポイント
ピアノの詩人と言われているポーランド出身の作曲家でピアニスト、フレデリック・フランソワ・ショパン(1810-1849)。
ショパンはピアノのための作品を多く残しました。
ショパンの作品は、ワルツ・エチュード・マズルカ・ノクターン・即興曲・バラード・スケルツォ・ソナタ他、多岐に渡っています。
どの分野にも、世界中から愛され続けている作品が多くあるんですよね。
ショパンの1番はこの曲!って決めるのは、とても難しい気がします。その時々で好きで弾く曲はあっても。
そして、自分が弾いて(練習を重ねて)嬉しい作品も多いし、他の誰かが弾くのを聴く機会が多いのも、ショパンですよね。

今日は、そんなショパンの作品から「ノクターン第13番」Op.48-1を取り上げて、ちょっとした練習のポイントをお話致します。
あなたが少しでもこの曲の理解を深めて演奏できますように。
Contents
止まれば音は沈む

ショパン「ノクターン第13番」の冒頭です。ここはまず、右手から。
打鍵して、そこで腕の動きが止まっていたら、音が沈んでしまいます。
右手の打鍵はね、飛行機のランディング(着陸)を想像してみて。
ストンと落とさないで、スライディングさせるように。
そして左手。楽譜を見ると、4分音符が四つ続いていますね。
だからと言って「ズンチャッズンチャッ(よいしょっよいしょっ)」と弾いていたら、なんだかちょっと疲れた行進曲みたいになりそう。
ここの左手は、こんなふうに捉えてみましょうか。
- オクターブで低音を弾く1&3拍の流れが一声
- 2&4拍を弾く中音域の重音の流れが一声
つまり、左手は二声になっていると考えてみる。
そして、それぞれの流れを十分に意識して弾いてみましょう。
筋肉を使って打鍵する

画像の赤○のところは、お尻から腹筋から背筋から、全ての筋肉を使って音を出す事を意識してみましょう。
指先だけで弾く時と、どう違うのか?その感覚と、実際に出てくる音の質や響きの違いを感じてくださいね。
もしあなたが、弾く時によって音の出方が変わるとしたら?
それはね、あなたがそれぞれのフレーズを「どこの筋肉を使って弾いているのか」を自覚していないからです。
だから気持ち次第で良く弾ける時もあれば、筋肉が使われていなかったり、別の筋肉を使っていたりで思うような音が出なかったりするの。
「あ!今の弾き方良かった!」と思ったら、必ず
- 今、どこの筋肉を使っていたか?
- どうやって力を伝えてきたか?
ということを考えてみましょう。
それから、左手部に記載のある(実際は右手で弾く)青線の三度和音下降のところは、リラックスしていくように弾くのがポイントです。
コラールは教会での混声合唱を想像しよう

セクションBは、コラールですよ。
ショパンの音楽にはコラールが良く出てきます。
教会での合唱、四声で歌っていることをイメージして、それぞれの音の動きと響きを十分に意識して大事にしましょうね。
決して急激に盛り上げないで。
あなたはまず「この曲をどう弾くか」、計画を立てなければなりません。
そうしないと、必要以上に盛り上げてしまうから。
この曲で盛り上がるところはね、一ヶ所しかないんです。それは、ココ。

このショパンの「ノクターン第13番」は、ここのフォルテシモで全てを出すんです。
だから、ここに到達するまでは盛り上げが過剰にならないように気をつけましょう。
クレッシェンドはするけれども、それでもまだピアノだったりメゾ・ピアノだったり、次はメゾ・フォルテだったりと、フォルテにはならないんです。
そこを計算しておきましょうね。
アーティキュレーションを意識しよう

大きなフレーズの中のアーティキュレイションを意識して、それを音に表していきましょう。
ココのアーティキュレイションは赤線のライン意識で。

アクセントが付いているからといって、最初の重音がピークにならないよう気をつけましょう。
決してフレーズの最初の音がピークで、その後テンションが下がっていくわけじゃありませんよ。
このフレーズのピークは、画像2小節目の2分音符。
そこまで持続させて、そこからテンションを下げていきましょう。
主要なメロディ・ラインを理解しておこう

全ての重音打鍵を、横スクロールで鳴らしていかないように気をつけてみましょうか。
この画像内の、赤丸の音が主要メロディのラインです。
その主要メロディ・ラインと次のメロディ・ラインの間でオクターブの16分音符が動いていても、それはさざ波のようなもの。
盛り上がりすぎると感じるなら、ペダルがポイント!
あなたがピアノを弾いていて、どうも盛り上がりすぎるような気がすると感じたら?
その原因の一つに、ペダルがあります。
あなたが思っているより、楽譜の指示より、もっともっと細かくペダルを踏み変える事に挑戦してみましょう。
例えばこの「ノクターン第13番」なら、16分音符一つずつ踏み変える事をオススメします。

赤丸の音の響きをかすかに残しておくために、ペダルは1音ずつで完全な踏み変えはしません。
じゃあどうするのか?と言うとね、16分音符でのペダルはハーフ・ペダル程度で細かく踏み変えるのです。
ペダルも練習と慣れが必要ですよ。
トレーニングを重ねれば、耳も育ちますし、どんどん細かく踏み変えられるようになります。
上の画像の後の、

ココも、出来る限り細かくペダルを踏み変えていきましょう。
肘から先を柔軟に、チョップ奏法

両手共にオクターブで降りてくるところ。
ココの弾き方について考えてみましょう。
体中の筋肉を使って怒涛のように弾いてはいないかしら?
ここはそんなに重く弾かなくてもいいんです。
これはチョップと同じ。
肘から先を柔軟にしてね、チョップチョップって動かしてみて。
手は8度の幅を保って、てのひらの筋肉をギュッと引き締めて(てのひら筋が)リラックスした状態にならないように。
かと言って、固めすぎると力が溜まってしまうので、ゆるめすぎず頑なにならずにね。
そうするとね、濁った音は出ません。クリアな響きになりますよ。
筋肉を引き締めて弾く

ここは、それまでオクターブで16分音符で降りてきた右手が4分音符・8分音符へとリズムが変化します。
そんなところでは、お尻・腰・背筋・二の腕筋と、上半身のあらゆる筋肉をギュギュギュッ!と引き締めて弾いてみましょう。

セクションBの最後の小節です。
- ココは初めの和音が、筋肉を使って出す音
- 続く8度下降のうち初めの二つ”ミレ”はテヌートで少々”筋肉使いの音”
- 続きはチョッパー
- 右手のフレーズが終わる最後の二つの重音は”筋肉フル使いの音”
と、弾きわけてみましょう。

あなたの気持ちとして、オクターブ出だしの”ミレ”をテヌート気味にして、その後は加速して”ラソソ”でまたrit.と弾きたくなるかもしれません。
でもね、”ミレラ”から”ラソ”まで、遅さとテンションは同じを維持して弾いてみましょう。
これも、まずはこの2種を弾いて体感してみること。
あなた自身がどんな違いを感じて、どっちが良いと思うのか?
あなたの感じるところを大事にしましょう。
ここで言いたいのは、自分の感情の「思い込み」だけを定着させないようにすること。
いつもフレキシブルに対応できる感覚を身に着けたいということです。
脱力と緊張感

この右手の内声(青○)は、指は死んだ状態で。
言い換えると、脱力しまくっているということ。
そうは言っても、脱力しまくっていると、実際はフニャフニャになりすぎて、ピアノを弾くことは出来ませんよね。
そこで緊張感も必要になります。
ここで緊張感を持って弾くのは、右手は上声だけ。
内声は「あら?そこに指があったの?」くらいの意識で弾いてみましょう。

セクションC、4小節目の最後(赤○)は”死んだ指”=「あら?そこに指があったの?状態で弾きましょう。
左手での内声(赤○)はね、指の形は”フック”で。
かゆいところを軽く掻くような指で、「引っ掻くように」弾くのがポイントです。
そしてその後、次のフレーズに入る前に呼吸することを忘れないようにね。

赤線を付けたところは、気持ちフェルマータで大事に弾きましょう。
青○の所は急がないように。
一つずつ筋肉をはっきりと使う事を意識して打鍵する。
画像2段め終わりの黄緑○も、テンションと上半身の筋肉をフルに使って弾いていきましょう。
内声と外声のバランスを考えて弾くポイントとは

ここのフレーズで気をつける事は、「1の指」打鍵がうるさくならないようにする事。
それまでのところでは、高音を出して内声を抑える事が出来ても、高揚するところになるとつい、内声も一緒になって大合唱してしまいがちです。
ではその弾き方・内声と外声のバランスのとり方について。
「1・2・3」の指側の、てのひらの筋肉はリラックスさせておく。
そして「4・5」の指側の、てのひらの筋肉だけを使います。
「4・5」の指側の「てのひら筋」を、ギュッと緊張させてみましょう。
その状態で弾くと、内声が抑えられて外声が浮き出ますよ。
練習方法は、一つの和音を四つずつ繰り返して、よく音を聴きながら打鍵する。
それができるようになったら、次は一つの和音を二つずつ繰り返して弾く。
次に楽譜どおりに。
※16分音符の速さで始めない。ゆっくりですよ。
ベース・ラインとペダルの関係

赤○のベース・ライン(進行)は、とても大事です。
こんなところは、ペダルの踏み替えに気をつけましょう。
赤○のベース1音ずつ、ペダルは踏み替えるように。
右手青○は、怒りの頂点を表していますよ。
6連符だからと、さらっと速く弾いてしまわないよう意識してみましょう。

引き続きベース・ラインの動きとペダルの踏み替えを大事に。
右手のフレーズは、とまどいが増して行く事を意識してみましょう。

このあたりも、ペダルに十分に気をつけましょうね。
ペダルのせいで音が濁るのは勿体ないこと。
その上、音が濁ると、音そのものが明確でなくなります。
ここで出したいのは、低音の8度の動き。
だから、これらの音は気持ち長めに弾いてみましょう。
ペダルは後踏みでね。
エンディングのバランス

さぁ、いよいよ終わりです。
最後のフレーズ、右手の「ソドレ~」は、左手の第1拍を弾いたのを受けて、すぐ入らないのがポイント。
何かを感じてから入るよう意識してみましょう。
そして、ゆっくりゆっくりね。焦りを感じさせないように。

さぁ、本当の終わり。
この最後の和音を弾く時ですが、この前の小節の(4分音符)重音と何が違うのか?を考える・理解することが重要ですよ。
ハ短調の主音である赤○の音が響くことを、強く意識してその音の響きを想像して前聴きして、そしてポンと打鍵しましょうね。
ショパン「ノクターン第13番」Op.48-1で大事にしたいポイント
このショパン作曲「ノクターン第13番」Op.48-1で大事にしたいポイントは、2つあります。
- テンポ
- 盛り上げの計画性
では、この2点についてお話しましょう。
1,テンポ
この曲は、セクションごとにテンポの指示が変わります。
セクションAはレントですが、遅すぎないように気をつけましょう。
なぜならセクションAの後にはセクションBがあるのですから。
セクションBはAより遅く、教会のコラールのように豊かに歌います。
だから、セクションAが遅すぎたら、セクションBは、遅さの中で歌えなってしまうでしょ。
そのうえ、セクションCは”倍のテンポで”という指示です。
セクションAが遅すぎたら、”倍のテンポ効果”を出すのは難しいことになっちゃいますよ。
歌う・ルバートはしますよ。それでも、テンポは維持する事。
セクションAの、テンポの目安がわからなくなったら、まずセクションBの出だしを弾いてみましょうか。
それよりはセクションAは若干速めになるのですから。
2,盛り上げの計画性
二つ目の注意点は、セクションBとCの盛り上げの計画性について。
言い換えれば「ダイナミクス・レンジ・プラニング」です。
どちらのセクションも、出す音・控える音の差に気をつけるのはよい事ですが。
そこばかりに気をとられていて、大きなフレーズの流れの中でのダイナミクスの変化がなくなっていないかしら?
はじめから飛ばしすぎていない?
弾く前に、計画を立てておきましょうね。
ピアノ動画*ショパン「ノクターン第13番」Op.48-1
ティブレイクは、ショパン様の「ノクターン第13番」Op.48-1をお送りします。
香港シティ・ホール内リサイタル・ホールにて、2005年のサロン・コンサートから。
ピアノはベーゼンドルファー。
🌟こちらの記事もオススメ🌟
- ショパン「幻想即興曲」Op.66を美しく弾くための練習のポイント
- ショパン「スケルツォ第1番」を仕上げるための10の練習ポイント
- ショパン「スケルツォ第2番」からペダル・離鍵・呼吸・アルペジオのポイント解説
- ショパン「ノクターン第2番」をもっと美しく弾くための練習ポイント
- ショパン「華麗なる大円舞曲」練習のちょっとしたポイント教えます!
- ショパン「ワルツ第4番」Op.34-3”子猫のワルツ”譜読みと練習の8つのポイント
- ショパン「黒鍵のエチュード」は、音をイメージして体をラクに使って弾こう!
- ショパン「別れの曲」で弾きにくい所を弾きやすくするポイントを解説します!
- ショパン「英雄ポロネーズ」練習のポイント教えます!
エンジョイ!あなたのピアノ・ライフをもっと豊かに!
もっとラクに心と体を使ってピアノを弾くお手伝いをしています。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません