ショパン「ワルツ第4番」Op.34-3”子猫のワルツ”譜読みと練習の8つのポイント
ポーランドが生んだピアノの詩人ことフレデリック・フランソワ・ショパン(1810-1849)。
ショパンはワルツは全部で19曲あります。
ショパンのワルツには「華麗なる大円舞曲」や「小犬のワルツ」「別れのワルツ」など、老若男女問わず世界中で愛されている作品は少なくありません。
そんなショパンのワルツの中に、「子猫のワルツ」として親しまれている作品があります。
それが、「華麗なる円舞曲」Op.34-3。

ショパンの「華麗なる円舞曲」Op.34は3曲からなるワルツ集。
ショパンの初期の作品で、第1曲と第2曲は1831年に、第3曲の「子猫のワルツ」は1838年に作曲されました。
「華麗なる円舞曲」というタイトルの通り、とても華やかなワルツです。
この「華麗なる円舞曲」Op.34-3が「子猫のワルツ(猫のワルツ)」という名前で親しまれている理由は、81小節目から始まるフレーズの、メロディに装飾音が散りばめられているところが、まるで猫が突然飛び上がったり走り回る様子を連想させるかのようですよ。
さて、今日はこのショパンの「華麗なる円舞曲」Op.34-3”子猫のワルツ”を題材に、演奏効果が上がる譜読みのポイントと練習のポイントについてお話しますね。
Contents
1つのフレーズはどこまでなのか?を理解しておこう

序奏でいきなり問題が起こりやすいので危険信号。
画像の1段目は、矢印を書き入れた通り、2段めの第1音に向かっていきます。
画像の1段目、同じ和音が続きますが、打鍵が和音ごと(1小節ごと)にならないよう気をつけてみましょう。
ここでは打鍵が和音ごとになってしまうと、これらの音が「どこへ向かっていくのか?」を伝えるのは難しくなります。
その上、推進力がなくなっちゃうのね。
付点2分音符の和音には、アクセントも付けられていますが、だからと言ってそれぞれの打鍵が1つずつになる(1つずつ強調する)と、先へ進んでいかず、1音ずつで終わってしまいますよ。
この時、呼吸も出だしの第1音から画像2段めの第1音まで、1呼吸で弾くことを意識すると、一つのフレーズとしてつながりを持ってらくに弾けるようになります。
フレーズとグルーピングは違う

さて、フレーズとグルーピングとは、別物です。
ここでは関係ないですが、フレーズとアーティキュレーションも別物ですよ。
フレーズとアーティキュレーションについては、そのようなフレーズや作品を取り上げる時にお話しますね。
上の画像ですが、スラーはこの6小節にかかっています。
実際はこの後まで続きますが、これが「フレーズ」(決して1つのスラーが1つのフレーズを意味しているわけではありません)。
赤で縦線を入れたのが「グルーピング」。
はじめは2小節ずつですが、その後は1小節ずつになっています。
どうしてこのようにグループを分けるか、わかりますか?
わかれば大丈夫。あなたの演奏にそれを反映させられますよ。
はじめの4小節は、2小節かけて、同じところで(ドを中心にして)音が動いています。
次の2小節は半音上がった「ド#」を中心に音が動く。
しかし、その次「レ」を中心に音が動くのは1小節だけで、次の小節は「ミ♭」が軸になっているのがわかるでしょうか?
これが、グルーピング。
それぞれのグループで、音域が少しずつ上っていくので、あなたが見える世界もどんどん高く広がっていく感覚を持って弾く事ができます。
このように楽譜を読むことで、あなたの表現が豊かになっていきますよ。
グルーピングは拍子とマッチしないこともある

さて、こちらのフレーズでは、やはり赤で縦線を入れたようにグループ分けしてとらえます。それは何故か?
音の動きの方向が同じところでとらえるのが、グルーピングです。
赤線を入れたものより、もっと細かくグルーピングすることもできます。
- ラソファド
- ミレドラ
- ラソファレ
- ミレドラ
- ラソファレ
- ミレドラ
というように4音ずつのグルーピングも可能ですが、8音ずつでとらえるか4音ずつでとらえるかは、あなたがどちらの方が気持ち良く音楽的に弾けるか?で判断すると良いでしょう。
ちなみに私が8音で1つのグループとしてとらえたのは、一番高い音「ラ」を起点にしたいと考えたからです。
そして、4音ずつでとらえるよりも8音ずつでとらえた方が、打鍵の動作を少なくする事ができるから。
さぁ、あなたはどうとらえますか?
動きの中で追いたい音のラインを見つけよう!

右手は「ミレドソ ミレドラ ミレドソ ファミファ…」と音が動いていますね。
このように「4音ずつ」の音の動きの中で「ミレド」が共通の動きになっている時は、変化する音の動きをちょっと追って(聴いて)みましょう。
- ミレドソ
- ミレドラ
- ミレドソ
「ソ→ラ→ソ→ファ」という動きは、ちょっとしたメロディですよ。
では左手を見てみましょう。左手は和音での動きですが、青で囲った音の動きを見てください。
「ラ→ソ→ファ」となっているでしょう?右手とリンクしていますよ。
こういう動きを見つけると、ちょっとワクワクします。
あぁ、右手の動きのある音を聴いてあげよう!→わぁ、左手で音が追っかけてくる〜♬ってね。
ワルツをマーチにしないために

ワルツは、左手の動きに気を取られやすいんですよね。
だってね、飛ぶでしょ。
飛んで戻って来たら、和音をつかまないといけないでしょ。
そしたら和音をつかむので必死になるでしょ。
な〜んて感じで必至に弾いていると、たちまちマーチの出来上がり!
じゃあ、どうしたらマーチにしないで、ちゃんとワルツとして弾けるんだろう?それはね…
メロディをもっと聴いちゃおう!味わっちゃおう!
この画像のように、メロディで音が伸びる所は、左手の和音によって伸びる音はかき消されがちです。
でもね、右手の音の伸びを味わっていると、左手は丁度良いバランスに抑えられますよ。
「ふぁー あ~ぁ~み」とね。
ここはタイにもなっているので特別ですが、タイはなくてもたとえ短い音符でも、その響きの最後まで、次の音にバトンタッチするギリギリまで味わってあげると、ステキになりますよ♪
ワルツをマーチにしないために、音の伸びを聴いちゃおう!味わおう!
装飾音は和音として打鍵の準備をする

さぁ、ここが「子猫のワルツ」たる動きのところですよ。
右手の4分音符には皆、装飾音が付いています。
これをね、「レファッ」「ファシッ」「シレッ」と、装飾音も1音ずつしっかり打鍵してしまうと、子猫というよりは、ちょっと膨よかで飛んだりはねたりしなそうな猫さんになってしまいそう。
子猫ちゃんの身軽さを出すには、こんな装飾音付きのフレーズは、和音化して弾く練習をしましょう。
「レとファ」を同時に弾く和音として。
「ファとシ」を同時に弾く和音として…以下同じ。
和音として弾く時と同じように、装飾音として弾く時も、「装飾音と4分音符の打鍵」は、同時に落とします。
ただ、鍵盤に触れるのが本当にわずかにずれるだけ。
まるでドミノ倒しのような。鈴がチャリンとなるような、そんなイメージで。
ほぼ一緒に弾いていい!と、自分に許可を与えてみましょう。
とにかく、ポイントは「きちんと弾こうと思わない」事ですよ。
和音の打鍵は要注意

こんなところは、きっとあなたも気をつけているつもりで弾いているでしょう。
でもね、左手の和音が強くならないように、重くならないようにと気をつける前に、やることがありますよ。
それはね、右手の音を「よーく聴く」こと。
「ソ♭」から、7度も下に降りての「ラ♭」へ。
その音程差は尋常じゃない=ただ事じゃないってハナシです。
そしてその間、3拍の「伸び」がありますよ。
これはね、その伸びを「聴いてくださいよ」って事。
それを、台無しにしかねないのが左手和音の方々なんです。
が、左手を気をつけて弾こう!ではなく、気をつけるのは実は右手ですよ。
気をつけるべきは、右手の「ソ♭」を、いかにして聴くか?聴き続けるか?ということ。
そして、それを聴き続けるためには、はたして、どんな打鍵と呼吸をしたらいいのだろうか?
考えてみてね。
トリルの終わり方に気を配ろう

トリルの終わりは、次の音につなげていきます。その響きは次につながっていきますよ。
「シ」にトリルが付いていて、次の音が「シ♭」なら、そのトリルの終わりの音は「シ」。
「シ♭」にトリルが付いていて、次の音が「ラ」なら、そのトリルの終わりの音は「シ♭」です。
「シ」のトリルから「シ♭」に向かうのに、「ド」で終わらない。
「シ♭」のトリルから「ラ」に向かうのに、「ド」で終わらないように、気をつけてあげましょうね。
意外と無頓着な人、多いんですよ。それはあなたがどう弾いているかを聴けていないからなの。
ここでも「聴く」ことは重要ですよ。
動きのある音のラインと音の方向性を見る

こちらもグルーピングと音の方向性のお話。
まず右手を見てみましょう。
赤のラインを付けたとおりにグルーピングすると「音の方向が一致」します。
これを見てみると、はじめの3つのグループはいずれも音が下りていきますが、最後の3音は「ファ→ファ#→ソー」と上がっていきますよね。
これは、3回音が下りるのが繰り返されたので、どんどん気持ちはナーバスになるかと思いきや、最後の「ファ→ファ#→ソー」で切り返し、音が上がっていきますから気持ちは逆転!
ちょっとした希望が見えるよう?
気持ちに変化が見えるところですよ。それを見落とさないで。
左手は和音ですが、青で矢印を付けた和音の下の音の動きに注目しましょう。
ただ4分音符で和音が並んでいて拍を刻んでいるわけじゃありません。
「ドシレドラファ」というメロディを作っていますよ。
聴いてね。気にかけてあげようね。歌ってね。
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