もっと美しく弾くために、ショパン「ノクターン第2番」を練習するポイント
ポーランドの作曲家フレデリック・ショパン様と言えば、ピアノの詩人と呼ばれるほど、たくさんのピアノ曲を生み出しました。
たくさんのピアノ曲を生み出しただけではなく、今も多くのピアニスト・ピアノ学習者・ピアノを聴くのが好きな人達から愛されている作品が、本当にいっぱいあるんですよね。

ショパンのピアノ曲と言ったら、あれもこれもあげたくなります。しっとり大人の雰囲気で少年少女から大人まで幅広くの人に愛されている曲の代表が、「ノクターン(夜想曲)第2番」Op.9-2ではないでしょうか。
今日はショパンの「ノクターン第2番」を、少しでも美しく弾くための練習のポイントをお話しますよ。
Contents
歌の終わりまで聴き続けるのが、ノクターンを美しくするポイント

ショパンの「ノクターン第2番」は、歌い始めも気をつけることがいっぱい!
「シ|ソーーーファソ ファー~」って、あなたは美しく奏でてくれたのに、そのフレーズの最後の音「ミ♭」でドスン!と飛び出たら台無しよ。大残念賞獲得マチガイナシ。不名誉だわ。
さて、ではどうしてそんなことが起きるのか?考えてみましょうね。「たまたま」ではないはず。もし「たまたまドスン!」となってしまったのだとしても、どうしてその時「ドスン!」となってしまったのかを、あなたは知っておく必要があります。
どうしてかって?だって、「ドスン!」となってしまった理由がわかれば、二度とそんな弾き方をする事はなくなるからですよ。他のどの曲を弾いていてもね。
さて、フレーズの終わりの音が「ドスン!」となってしまった原因は二つありますよ。
- フレーズの最後まで聴いていない
- 黒鍵打鍵に気をつけていない
では、この2つのポイントについて説明しますね。
フレーズの最後まで聴いていないとは?
あなたは1つのフレーズの始まりを、きっと大事にしているでしょう。さぁ、きれいに歌うわよ!ってしっとりと弾き始めるかもしれません。
しかし、あなたがフレーズの最後の音を打鍵する頃には、
「終わりだ!」と心のどこかで思ってしまわないかしら?
そうすると、あなたはもうフレーズの最後の音の響きを聴き届けるどころか、あなたの心は次のフレーズのことに気持ちが移っていることでしょう。
そのフレーズの終わりの音を打鍵するところまでで終わりではありません。その打鍵した音の響きの行方まで聴き届けてこそ、美しく歌い継ぐことができます。
大丈夫。あせらないで。ちゃんと最後の音の響きまで聴き届けて、それから次のフレーズを弾き始めればいいのだから。
黒鍵打鍵に気をつけるとは?
どうして黒鍵打鍵に気をつけなきゃいけないの?って思ったかしら?
それはね、黒鍵は白鍵に比べて打鍵への距離が近いからなの。黒鍵は、白鍵よりも高さがありますよね。だから、打鍵する(鍵盤に向かっていく)指からは、白鍵より黒鍵の方が近いでしょ。
それをわかったうえで打鍵しないと、あなたが思っているよりも、早くに鍵盤に触れてしまうんです。だから、あなたが思っている通りの音は出ないのね。打鍵のタイミングが早いから。
あなたが思っているよりも早くに打鍵してしまうと、鍵盤へのあたりが強くなってしまうのね。だからあなたが思っているよりも音が飛び出た印象になってしまいます。
黒鍵の打鍵に気をつけるには、あなたの耳であなたが出す音をよく聴くこと。耳もトレーニングしていきましょうね。
ペダルを踏む時こそ、手の左右逆の動きにはこだわろう!

画像の右手は、16分音符フレーズ。そしてその16部音符に付いている2音ずつのスラーは、左手の打鍵とは動きが逆になります。この2音間スラーには、意味がある。
左手の8分音符を弾く時に、右手はぬくことになる(離鍵することになる)ので、手の動きが逆になりますよね。左手が打鍵するために動きが下へ行く時に、右手は離鍵するために動きは上がる。
でもさー、ペダルを踏んだらスラーを2音ずつで切っても切らなくても同じじゃない?なんて思っていませんか?本当に、ペダルを踏んでいたら、音が繋がって聴こえると思います?
ペダルを踏んでも、2音間スラーを意識して弾くのとそうでない場合は、聴こえ方は随分変わりますよ。そのフレーズの雰囲気・性格・ニュアンスが別物になります。
めんどうがらずに、ここは実験くんですよ。
- 右手だけで2音間スラーが付いているとおりに弾いてペダルを踏む
- スラーの付き方を意識しないでペダルを踏む
この二通りをぜひ、試してみてね。そうしたら、あなたにも何がどう違うのか、わかるでしょう。
左右逆の動きは、慣れるまで難しいですよね。弾きにくさを感じるでしょう。私もそう思います。
それでも、適当にしないでゆっくりていねいに練習してみましょうね。あなたが美しい音でノクターンを弾くために!
装飾音の弾き方に気をつけてみよう!

「装飾音」、それは書いて字の通り、音に装いを飾り付ける音のこと。
装う・飾り付けるって、パターンはひとつじゃないですよね。お洋服にしてもアクセサリーにしても。季節の飾り付けだって、毎年同じじゃないかもしれません。
音を美しく飾りたい、もっと美しくしたいのに、弾き方次第で台無しにしてしまうコトもあります。
飾り付ける音から、飾り付けられている音への距離感、空気感を感じるように味わってみましょう。それが装飾音を美しく、大人の味わいを出す秘訣です。是非、意識してみてくださいね。
変化(変奏)する時は違いを理解するのがコツ


ここは、何がどう違うのだろう?まず、それを知る。あなたはわかったかしら?
違いがわかったら次にやるコト。ここ大事ですよ。
- それは、どんな表情なのだろう?
と想像してみること。
音の動きには、下降には下降の・上昇には上昇の気持ちがあります。
同じ下降でも、それは半音階なのか?音階なのか? 音が飛んでいるのか?それによっても気持ち、ニュアンスは変わるよね。
ショパン自身が「ノクターン第2番」を弾くと、この部分はいつも即興的で、楽譜と同じには弾かなかったそう。
微妙に何かが変化している時は、
- 何がどう違うのか?
- 気持ちはどう変わるのか?
これに気を配れたら最高です!あなたの音楽は、もっともっと!素敵になりますよ。
連符は速く弾かなきゃ!という思い込みを捨てよう!

画像の右手の動きに注目してみましょう。
8分音符から16分音符へ、そして32分音符へと音価が短くなっていく場合にちょっと気をつけたいこと。それぞれの音の長さは短くなっていきますよね。
でもね、「いっぱい音符があるから、速く弾かなきゃいけない!速く音を入れなきゃならない!」という感覚に襲われてしまいませんか?
連符であっても、それは歌。その音の動きには歌があります。連符は決してスピードを競うゲームではないよね。さぁ、連符は速く、という先入観を捨てて!
その音の並び(メロディ)は、どう歌ったら素敵?
どう奏でたら美しいかしら?
いつも、音を大事にしましょうね。
そのアクセントはどんな意味があるんだろう?

アクセントの意味って、なあに?と聞いたら、あなたは「その音を強く」と答えるでしょうか。
確かにわたしたちは、「アクセントはその音を強く」と習ったんじゃないかと思います。多分、楽典の本には今でもそう書いてあるんじゃないかしら。「強調」とかね。
それはそれ。机上のお勉強の話として胸の中に置いておきましょう。
ここからが大事。アクセントが付いていれば、どんな状況の音であっても「その音を強く」「強調する」と思い込んでいると、ちぐはぐな音楽が出来てしまいますよ。
あなたはアクセント記号(>)を見ると、いつもどんなフレーズでも、同じように強調する打鍵をしていませんか?
特に上の画像のように、アクセント音の前が「タッカ」のリズムで短い音価の時は要注意!なぜって、そのアクセントが付いた音に、ぶつかるような打鍵をしてしまいがちだから。
ちょっと考えてみて。その音は「ぶつけたい音」なのかな?ここね、「ピアニシモ」なんだよね。ピアニシモのフレーズで、いきなり「ぶつかるような音」を出したら、ビックリしない?それとも、驚かせたいのかしら?
うん、もしかしたら驚かせたいのかもしれないよね。それも、前後関係をよく見る必要があります。ケースバイケース。だから、「アクセント=その音を強く・強調」って、一律で同じ打鍵をしないように意識していきましょう。
じゃあ、「アクセント」はどう考えたらいいのか?
「強く」を「強調」ととらえる。うん、そもそもアクセントは「強調する」という意味がありますね。ではね、その「強調」を、強くではなく「他の音よりも大事にして!」と受け取れないかしら?
あなたはそのアクセント音、どんな音が欲しいの?自分で音をよく聴いてね。
この曲はマーチじゃないの、ノクターンなのね。わかってるよね?
オクターブの動きはエキスパンダーを想像するのがポイント

画像の右手の、こんなオクターブの動きも、ちょっと意識するだけで良いタイミングを持って弾くことができますよ。
「オクターブをつかむのがギリギリだから」としてもね、1音ずつポンポンと跳ねて行くと、クライマックスの緊張感が損なわれてしまいます。
それに、オクターブがギリギリだとしても、跳ねなくても弾けますよ。
意識をこっちに持って行きましょ。

オクターブでの動きは、まるでエキスパンダーを使うように腕を意識してみましょう。エキスパンダーを使ったことがなくてもいいから、想像してみましょうね。
- 音と音は、引っ張り合う
- 今、鳴らした音は、次の音が鳴るギリギリまで聴き続ける
- 今、鳴らした音は、そのエネルギーが次の音が鳴る瞬間まで、次の音に向かって行く
その緊張感を感じてみましょう。
音と音の間の緊張感。それは、弾く手の中で感じるのは「てのひらの中心のくぼみ」です。てのひらの中心から音を発するためのエネルギーが出てる!と想像してみてね。「氣」が出るのと、同じよ。
あとは、「脳」ね。「脳の中で、音の響きを感じ続ける」コト。
緊張感のある響きを、弾く(打鍵する)前から聴く(想像する)。そして、実際に聴き続ける。てのひらも、脳も、音の響きも、拡張し続ける。
あれ?何だっけ?と、もやもやしたら、エキスパンダーを思い出してね。ご参考までに。
今日のピアノ動画*ショパン「ノクターン第2番」
ティブレイクは、ショパン様の「ノクターン第2番」Op.9-2をお送りします。
2016年8月に東京渋谷のラトリエホールで開催したリサイタルでの演奏です。ピアノはシゲルカワイ。
ショパン「ノクターン第2番」練習のポイントまとめ
- フレーズの最後の音の響きを聴き届けるのが美しく弾くコツ
- ペダルをいれる時こそ、打鍵の具合(アーティキュレーション)にはこだわろう!
- 装飾音は、美しく飾り付ける音だということを意識しよう!
- 変化するフレーズは、その違いを理解して味わうのがポイント
- 連符は速く弾かなきゃという思い込みを捨てよう!
- アクセントは「大事にする音」だと思ってみよう
- オクターブの動きは、エキスパンダーのように音と音との空間を想像してみよう
さぁ、ショパンの「ノクターン第2番」を弾いたことがあるあなたなら、もう一度弾いてみませんか?
これからショパンの「ノクターン第2番」を弾きたいと思っているあなたは、この記事を参考に意識してみてね。あなたのピアノ・ライフがもっと豊かになりますように!
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