ショパン「スケルツォ第1番」を仕上げるための10の練習ポイント

2021年2月12日

ピアノの詩人と呼ばれるポーランド出身の作曲家でピアニストのフレデリック・ショパン(1810-1849)。ショパンはピアノのためのたくさんの作品を生み出しました。

ピアノの詩人 ショパン
ピアノの詩人 ショパン

ショパンは、ワルツ・マズルカ・即興曲・バラード・スケルツォ・ノクターン・ソナタ・エチュード・協奏曲他をピアノのために作曲しました。今も多くのピアノ弾きが、ショパンの作品に恋焦がれて練習していますよね。

今日はそんなショパンの作品から、1833年に作曲されたスケルツォ第1番Op.20を仕上げていく上での練習のポイントをお伝えします!

大きなつながりを理解する

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」出だしから

画像の一段目、この三つの赤○の重音はつながっています。一個ずつ別個にならないように、意識と呼吸に気をつけましょう。

最初の重音の緊張感を保ったまま、絶対に緩めないで次の音へ行きます。次の音打鍵に移る時に、「てのひらの筋肉」が瞬間的に緩みがちなので注意。

一段目、三つ目の赤○左手で取る「ミ♯とレ和音」から始まるフレーズは、「てのひら筋」を緊張させて指は鍵盤を突き刺すように弾いてみましょう。でもね、刺しっぱなしにしないで、打鍵で刺しこんだら瞬時に抜くことも忘れないでね。

この左手の三つの音「ミ#ファシ」でスラーが付いていますが、スタッカートのような打鍵をしてみましょう。このフレーズはテンポが速いので、スタッカート打鍵をしても聴いてる感じではスタッカートには聴こえません。じゃあどうしてスタッカート打鍵をするのか?それはね、緊張感と激しさが増すからです。

画像二段目、右手は青○の音は、上の左手突き刺しの音と同じ。右手の打鍵後ふわっと上げず、突き刺して瞬時に抜きましょう。

そしてその前の小節の左手、1&2拍目の4分音符は二つ目が弱くならないように。ここは、ペダルも踏みましょう。1拍目で踏んで2拍目で踏み変えてその小節の残りはハーフペダル。次の小節、右手突き刺しの音のところはアクセント・ペダルで。

この画像の始めの段の最後の左手の出だし=一回目のテーマの出だしは、静かめでも十分に伝わります。

ただし二回目はもっと強調しないと、その前のフレーズの音にかき消されて、始まりの印象が薄くなるので注意しましょう。

苦しさ・痛さを表す

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」9小節目

全体的に、そんなに速くなくていいの。この曲はめっちゃ速い!という思い込みは、とりえあず横に置いておきましょうか。

苦しさ、痛さは、こんなところに表現されています。

あなたは、この冒頭のセクション・メロディは、どのように流れているととらえていますか?考えてみてくださいね。

上の画像の、左手8分音符の一つ目の和音とその次の単音は、セットです。この音の移り変わりを、十分に味わって感じましょう。これと同じパターンは沢山出てきますね。みな、同じようにあなたが感じてみることが大事。

これを味わうためには、速く必要はないのです。

カタマリを意識する

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」13小節目〜

続く右手のフレーズ。

これを1拍ずつ、または一つおきに強調しないよう気をつけて。ここは出だしから、「8分音符四つずつの塊」で進んでいきましょう。右手は4音で1つという事を、強く意識してくださいね。

さて左手も問題が。

この左手4分音符のスタッカートは、軽やかに弾かない。エネルギーは増大していきますよ。それを助けるようにペダルは、踏みっぱなしで。なぜなら、コード(ハーモニー)は同じだからですよ。

ショパンのルバートとは

ショパンのルバートは、「1.2.3.」のテンポは揺るぎません。(各小節のテンポに大きな変わりはない、という意味です)

ただ、各小節内で、1拍目が気持ち長めだったり、それが2拍目だったり3拍目だったりする、というだけのこと。

ショパンは、1小節単位でとらえないように気をつけてね。大きなフレーズで呼吸することを意識しましょう。

例えばここ。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」25小節目〜

右手と左手、ユニゾンのフレーズがあるの、わかりますか?出だしの「ふぁーそ」がユニゾン。そして1拍目が4分音符であるという点が共通点。

このフレーズも何回も出てきますが、いつも同じように弾かないで、

  • ある時は この1拍目を強調して長めに
  • ある時は、そこをさらりと
  • ある時は、2拍目の冒頭に意識を置いてみる

全て、弾き方を変えて「痛さの度合い」を変えてみましょう。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」29小節目〜

このフレーズは、左手の3拍目から次小節の1拍目へとつながっている重音の流れを、よ~く感じて弾くといいですよ。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」46小節目〜

ココはテンポにとらわれずに、本当に自由に、あなたが思うままに弾いてみましょう。

あなたの「ソロ」に当たる部分だと思って良いですよ。

同じようで違うフレーズを考える

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」98小節目〜

すぐ後のこのフレーズでは、左手1拍目の強調に続いて2拍目右手も強調しましょう。そうすることで、この前のフレーズとの違いを表わす事ができます。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」127小節目〜

このフレーズは続けて二回、そして、それがこの曲中何回も出てきますね。二回目の表現が、全てのセクションで同じにならないよう、考えてみましょう。同じようなフレーズが繰り返される時は、どんな表現でもいいけれど、何かを変えて弾くこと。例えば・・・

  • 1回目は左手一拍目だけを強調
  • 2回目は左手を強調せずに右手の出だしだけを強調
  • 3回目は、左手の最後の音と右手の出だしと両方強調

というようにね。

フレーズの終わりなのか?次へ向かっていくのか?

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」144小節目〜

ココは、赤○の音を弾いたらそこでフレーズ終わりではありません。次に向かっていくのです。その解釈を間違えると、休符のところでどっぷり終わって沈んじゃうので注意。

そこの赤○の音を打鍵したら、両手共に飛び上がる。そして、瞬時に両手はグーの手にして。そしてそのまま次の音に向かって(青ライン矢印)エネルギーがぶつかっていきますよ。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」145小節目〜
ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」148小節目〜

このフレーズ、左手は軽く弾かないように。ここで盛り上げを作っていきましょう。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」163小節目〜

ここのffの三つの4分音符は、緩めないで一気にいきましょう。アクセント・ペダルを踏んでね。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」166小節目〜

左のこのライン(そそどー)を、強調しましょう(聴きましょう)。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」193小節目〜

ここは赤○の音を強調(意識します)。特に右手の赤○はテヌート気味でね。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」199小節目〜

このフレーズは右手の最後の音(赤○の音)を強調テヌートで聴きましょう。ペダルも長めに踏んでね。

中間部はどこから始まるのか?

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」309小節目〜

ここから中間部が始まると思っていませんか?

実は、

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」307小節目〜

中間部は、直前の、セクションAの最後のコードを十分に感じて。それを感じながら、セクションB(中間部)の最初のコードに入ります。

中間部の表現法

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」309小節目〜

中間部の表現法で注意すること。

1小節単位にならないように。メロディは外声ではなく内声にありますね。フレーズのとらえ方が短すぎないように。8小節で一つのフレーズです。最初の4小節はルバートなしに弾いてみましょうか。ルバートをかける(テヌート気味で弾く)のは5小節目から。

中間部のここのメロディ・ラインは右手の内声にあたるところ。でも、あなたの右手1の指の打鍵の仕方がその時で違ってしまうと、メロディ・ラインの音が緩んでしまったりするので、親指に意識を集中しましょう。1の指の緊張状態は常に同じに保ってね。

ここは、ゆったりと。この前のセクションのテンポ指示は1小節単位。でもここからは1拍単位になっています。だから、もっとゆっくりでいい。「もっと大事に」を、いつも心に置いて。

さて、あなたにはこのセクションは、どんな絵(映像)が浮かぶかしら?

私の場合をお話しますね。

私は森の中を一人で歩いています。
空気がきれいで、とても気持ちいい!
穏やかで幸せで温かい気持ち。

あぁ、気持ちいいなぁ...と思って歩いていると、
森が開けてきて、陽の光が差し込んできて
パァッと明るくなるの。
そして、もっともっと、幸せに満ちてくる。

ところが突然、雷が鳴る。
空が真っ暗になって怯えてしまう。

次に、2005年に香港で受講した夏期講習でのヘレン・ウォン先生の絵(映像)もお伝えします。伺った時、あまりにおかしかったので、強烈に覚えているの。

私は彼のことを想って幸せなの。
あぁ、私は彼が好き!彼も私を好き!とっても幸せ...

そしたら手紙が来たの。あぁ、彼からだわ!って、
もっと気持ちが高揚してくるの。

ところが、封を切ってみたら、それは第二の女からだった。
ガーン...突き落とされる。

なぜ?なぜなの?でも私は彼を想っている...
だから私はまだ幸せ...

ね、彼も私を想ってくれているのよね。
私は幸せに浸っていていいのよね...

うそっ!うそっうそうそっ!
私じゃなくてあの女を取るの?

いやよいやよ
いやよぉおおおっ!

先生の絵の方が、リアリティありますよね。恋愛話にしちゃったら臨場感増しますって(笑)。

さぁ、あなたも「あなたの絵(映像・お話)」を描いてみましょうね。

内声の音の変化を感じよう

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」329小節目〜

中間部の第二テーマね、二回出てきます。

ここでは、一回は上声を意識、もう一回は内声の音の変化を意識するといいでしょう。もちろん、その逆でも良いかもしれませんよ。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」356小節目〜

中間部、続く二つ目のテーマです。

この次のテーマに入る赤○のところ、ここに入る直前、気持ちフェルマータを入れてみましょう。そしてココからのバスの青○のラインはテヌート気味にね。

コーダ

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」593小節目〜

ココ(シド&レド)の左手はどちらも「1と2」の指で、弾きましょう。その時の指の形は、1の指チョッパーで!つまり、1の指(親指)の側面を使って打鍵してみましょう。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」598小節目〜

コーダですが、ココで初めて「fff」が出てきます。初登場ですよ。それだけのパワー(エネルギー)を出し切る!くらいの気持ちで弾きましょう。ただし、鍵盤を必死で叩くわけではありませんので、出てくる音(音質)に気をつけましょうね。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」605小節目〜

1拍目から2拍目への間は、あけすぎないように。タイミングを図るのは必要ですが、間を取りすぎると勢いが止まってしまいますよ。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」612小節目〜

コーダの続きの左手、半音階フレーズに入る直前です。

ココに至るまでの左手4分音符は、淡々と弾かない。cresc.で盛り上げる。この赤○の音は「チョッパー」で弾いてみましょう。打鍵瞬時にチョッパーの形にして。

そしてココから続く半音階フレーズは、各小節にペダルを入れましょう。
始めはアクセント・ペダル。
段階を経てペダルを踏むのを長くして、
半音階フレーズの最後では1小節丸々ペダル踏んでる感じに持っていく。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」615小節目〜

コーダの半音階のフレーズ。

ここには強調したい「ランドマークとなる音」があります。各小節の第一音にアクセントが付いていますよね。それは「シ」と「ミ♯」の二つだけで繰り返しになっています。これらの音に意識を置きましょう。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」624小節目〜

さぁ、カデンツです。でもね、ただのカデンツではありません。ロ短調のII7度からⅠ度へのカデンツ。それを強く意識して、青ラインの進行は気持ちを入れましょう。

赤(オレンジ)ラインの進行は、左手重音の中の音「ソーファー」という動きを強く意識して。

ショパン「スケルツォ第1番」
ショパン「スケルツォ第1番」626小節目〜最後まで

そしてこれが二回目の「fff」、最後の「fff」ですよ。「fff」がこの曲で何回、どこに出てくるのかを理解しておかないと、最後へのエネルギーの持っていき方が変わってしまうので気をつけましょう。

いつも、和音の意味・方向性を考えて意識して弾くのがポイントです。

ただ弾くだけなら、そう難しい曲ではありません。指だけ回れば弾けます。難しいのは、そこから先ですよ。

曲が頭に入ったらやるべき事は、音を追求する事

暗譜してて構造は頭に入っているなら、次にやることは「音の追求」。

この曲は同じセクションが何度も出てきます。これは全部、表現を変えましょう。

ショパンのスケルツォは「痛み」の表れです。あ、つねられたり、ぶたれたりして感じる痛みじゃなくて、心をねじふせられるような痛みね。しかもこの第1番が、ショパンの4曲のスケルツォの中で一番痛みが大きいの。

ショパンのスケルツォは、「4番→3番→2番→1番」という順番で、痛みが増していきます。だから、「4→3→2→1」という順番で練習する人も少なくありません。

大事にしたいこと

sf」や「アクセント」を強調しすぎないように。「強調」とは、強く弾くという意味だと思わないほうがいいでしょう。どちらかと言えば「大事にしてあげる音」。

それぞれのフレーズの中のコード進行を味わって。
全ての小節をコードにして弾いてみましょう。

そして、とてもゆっくりで、右手のフレーズと左手の和音進行の響きを感じながら弾く練習をすること。その後にイン・テンポで。クレイジーな演奏にならないように、あなたが出す音をよく聴きながら。

もし、あなたが演奏するホールの響きがデッドで乾燥した感じなら。リッチな音を出すために、もっと音量を出してみる(音量の幅をもっと広げてみる)。それから、ペダルももっとたくさん入れる。今までアクセントで入れてたところは、もっと長く踏んでみましょう。

ピアノ動画*ショパン「スケルツォ第1番」

あまり参考にはならないのですが、私自身がこの曲のレッスンを受けた後に、学校の体育館という、非常に響きがデッドな空間で演奏する機会がありました。

2005年に受講した、香港サマー・ミュージック・キャンプ(いわゆる夏期講習)の修了演奏会での演奏。

あまりにデッドな響きなので、当日直前にペダリングを全部直された事を思い出します。

こちらの記事もご参考にどうぞ。

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