クレメンティのソナチネから会話に例えて表現する6つのポイント
ピアノ学習を進めていくと、きっと多くの人が通る道、それが「ソナチネ・アルバム」。
ソナチネはとても愛らしくて軽快な作品で、形式を理解する上でも良いものです。でもね、まずはあなたが音をどう感じるのか?を意識してみましょうか。
クレメンティのソナチネには、会話にたとえられるフレーズがたくさんあります。
あなたの家族や友人など、身近な人との会話を想像して当てはめていくだけで、とっても生き生きとした、あなたの音楽が出来上がりますよ!
今日は、クレメンティのソナチネを取り上げて、会話にたとえて表現するポイントをお話しますね。
Contents
音のイメージを感じよう!第1音はとても大事!

クレメンティの可愛いソナチネ Op.36-3 第一楽章。キレイだよね。楽しいよね~。それで?あなたはこのソナチネ、他にどんなイメージがわくかしら?
こんなにも愛らしい曲ですが、気をつけないと軍隊行進曲のようになってしまいますよ。
どんな音にも「命」が宿っています。中でも抜群にそのエネルギーを発するのは、1音目。
各フレーズの1音目、そしてフレーズの終わりの音から次へ…という余韻。
誰もが続きを(せめて1小節は)想像できるような、この第1音に、あなたはどんな音のイメージを持っていますか?どんなふうにイメージできるかしら?
私はね….言いませ~ん!(笑)だってね、あなたに想像して欲しいから。
レッスンでは、生徒さんには私のイメージも言いますよ。もちろん、生徒に想像させた後ですけれどもね。
身振り手振り、大股開きで手を大きく広げて~!
ほ~ら、こんな場所にいてね~!って(笑)
あなたがこの第1音に、何かをイメージ出来たら、最初のフレーズの状況を思い描くことが出来たら、それをね、弾く前に想像してみましょう。
右手の第一音「そー」は、ただの「そー」じゃない。
- 「そ~ぉみ」かもしれないし
- 「そ~おみ」かもしれません
つまり、どこにストレス(ノリどころ)を置くのか?で、出てくる音楽は変わってきますよ。あなたはどうしたいのかな?
右手から左手へ同じリズムが受け継がれるのは、会話

右手と左手、交互に同じ8分音符で始まるリズム「タッタッタッタッタン」がやってきますよ。これはまさに、会話。
パパとママの会話かもしれないし、あなたとママとの会話かもしれません。
「出かけるよ」
「まあだだよ」
「早くして」
「もうちょっと!」なんてね。予定の時間どおりに出かけられるように支度ができるパパと、あ、何か服が変!何かアクセサリーしたい!とか、何かと準備が出来るまでに時間がかかるママ?
さて。こんなフレーズは誰かとの会話を想像するととても面白くなります。
それは想像するだけでもニマニマしちゃいますよね。身近な人を登場人物にすれば、弾くたびに愉快な気持ちで、まるで目の前で起こっている出来事のような感覚を持って弾けるでしょう。
そんなイメージはとっても大事です。イメージしたらね、ちょっと気をつけることがありますよ。
それはね、8分音符の「タッタッタッタッ」には気を使って弾くでしょ?でもね、その終わりの「タン」=4分音符には、気を使ってあげてないんじゃない?もちろん、あなたは気を使っていないつもりはないでしょう。
だけどね、その4分音符の時には既に、もう一方の手で「タッタッタッタッ」と語り始めてるんだよね。だから、
「ワタシの脳みそは一個しかないんです~!一個集中型ですぅ!」状態になっちゃうわけですよ、きっとね。無意識のうちに。
そりゃね、「10人の話を一度に聞けた」という聖徳太子には、無意識じゃなれませんよね。
この8分音符に続く4分音符は、ただの4分音符じゃないんです。「終わり」には、終わりの意味がありますが、ここは終わりじゃないですよね。ちゃんともう一方の手に音の/会話のバトンを渡さないとね。
もう一度言っておきますよ。それぞれの音に、意味がある。
会話だもん。
- ね?ところでワタシの話、聞いてんの?
- 何回言わせるわけ?
みたいな。ね!
伸ばす音の時にもう一方の手に動きがある時は

この画像のようなところも同じことです。気をつけるべきなのは、左手。
歌は右手ですね。だからと言って、左手は添え物じゃありません。ただの伴奏じゃないのよね。ちゃんとね、右手の歌を「ふ~ん、そうなんだ~。素敵だね~!」とか聴いて、愛の手(合いの手)を入れてるわけですよ。つまり、会話の「相づち」だよね。
それなのに、もし、あなたが大好きな人と話をしてる時に、相手が気のない適当な返事をしてたら、どう思う?なんか悲しいよね。
実際の会話と同じだよ。ちゃんと、相手の話は聞いてあげようね!
同じ音が繰り返される意味を考える

やったー!やったぜベイビー!終わったぜー!じゃ、ないっての(笑)
(※ 間違っても、我が生徒がレッスンでそのような感じで弾いたわけではございません。
これは脚色しました。創造力です、ワタクシの。)
最終小節は、4分音符3つ、同じ音ですね。3音共、同じようにスタッカートが付いています。
それでも、その3音は全く同じではないのですよ。
さぁ、どうしてだろう?って考えてね。だって同じ音だし、同じ長さの音だし、それなのにどうして3音共、違うってこの人、言ってるんだろう?って。
じゃあね、もし、この3音を全て同じに弾いたらどうかしら?
あなたは気持ち良く終われるかなぁ?
打鍵の(離鍵の)タイミングも然り、腕の使い方も、呼吸も、離鍵後の余韻の聴き方も、全てが異なります。
だけど、「変わるはずだよ」と教えられてやるものじゃないですよね。あなたが納得して変えないと、意味がありません。
何で違うの?違わないといけないの?つうか、違うべきなの?っていうところを考えないと、ね。
え?違うわけ?っていう疑問から入るので、いいんですよ。
もしあなたが、お友達とか大事な人に、すっごーい経験とか想い出を話す時、途中から相手が話を聞いてなかったら?イヤでしょ。
だけど、最後までワクワクしながら話を聞いてくれたらどう?
相手もあなた自身も、話が終わる/終わった!っていう時の呼吸とかアクションって、どうかなぁ?
…….そういう事を、大事にしてみましょう。普段の何気ない事を。
一見、あなたのピアノとは関係なさそうな、普通の普段の経験。それが全て音に生きてくる。生かせるんです。
さぁ、明日もあなた自身の経験を音に重ね合わせてみてください。
レガートへの意識
お次はクレメンティ「ソナチネ」Op.36-4 第一楽章を見ていきますよ。
ヘ長調のこの曲、可愛いですよね~♪

画像は5小節目。同じリズムで4度下での動きが6小節目も続いています。
問題は、第3拍から次の小節の第1拍への3度音程の和音のレガート。
せっかく指使いを正しくしていても、「つなげよう」「仲良くしよう」という意識がないと、ノン・レガートで弾いてしまいがちです。
レガートのフレーズは、あなたの指先と鍵盤が仲良し♪で手をつないでいるような気持ちで弾いてあげましょうね。
ページが変わる時は危険信号!

全音楽譜出版社の楽譜だと、この画像の後にページが変わります。つまり、視線が下から右上へと移さなけれなりません。
この時、「先を見よう」としている良い子が見落としがちなのが、この画像の左手の最後に書かれている「音部記号の変化のお知らせ」です。
この画像では左手はヘ音記号。でも、次の小節からは「ト音記号になりますよ」とお知らせしていますよ。見えていますか?(画像、暗くてごめんなさい)
この画像が1ページ目で、次が2ページ目。つまり、中とじの部分になるんです。だから、ちゃんと楽譜にクセをつけて開ききった状態にしていないと、小節最後のお知らせを見落としやすいんですね。
お知らせを見落とすと、恐ろしい事が起こります。

左手、次の音はト音記号の「ファ#」。でも、ここからト音記号だとわかっていないと、この愛らしくも ちょっと不安げな音を、低音部の「ラ#」で、ひたすら恐ろしい音を出してしまいます😓
もう一つ、ここで気に留めたいことが。それまでの4小節は「フォルテ」で陽気です。ところが、デクレッシェンドもなく、ページが変わると突然の「ピアノ(p)」になりますよ。
何かが(誰かが)やってきて、怖くなってちょっと隠れる。
恐る恐る覗いてみる、そんな感じがしませんか?
そうじゃないかもしれないけど、そういう何かの気持ちを(表情を)伝えるために大事なのが、左手の「ふぁっふぁっふぁー」。
つまり、始めの二つの「ファ#」は8分音符でスタッカートが付いていますが、終わりの「ファ#」にはスタッカートは付いていません。しかも、8分音符ではなく4分音符になっていますよ。気をつけないと、全てをスタッカートで弾いてしまいます。こんな所は、
- え、何?
- どうしたの?
- 何か起こってるの?
- なんなの?
と、何かを聞いている、「質問系」だと考えてみましょう。
あなたが「どんな風に疑問に感じているのか?」を想像できたらしめたもの。それに合わせるように、右手の音も変化していきますよ。
こんな事を感じとって弾いて欲しいですね。それこそが、あなたの音楽が生まれる時ですよ。
まとめ
- まず第1音はどんな音なのか、イメージしよう
- 右手から左手へと同じリズムが受け継がれる時は、会話を想像しよう
- 伸ばす音の時、もう一方の手に動きがある時は大好きな人の話に相槌を打つように
- 同じ音が繰り返される意味を考えてみよう
- レガートへの意識は、指先と鍵盤が仲良しになること
- ページが変わる時はお知らせを見落とさないようにしよう
どんな作品でも、日常のちょっとした事にたとえたり、想像してみましょう。それだけで、どう弾いたらいいかが明確になりますよ。
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