ドビュッシー「喜びの島」演奏効果を上げる13の練習ポイント
フランスを代表する作曲家の1人、クロード・アシル・ドビュッシー(1862-1918)。
印象派の作曲家と言われています(本人はそう言われることを嫌がっていたそうですが)。
ドビュッシーのピアノ曲には、「月の光」や「亜麻色の髪の乙女」などの、世界中の人々から愛され続けている名曲が。
そして1904年に作曲された「喜びの島」は、「のだめカンタービレ」で取り上げられて以来、様々な世代の人達が「弾きたい」と憧れる曲となりました。
私も「のだめカンタービレ」以来、何人の生徒さん達に「喜びの島」のレッスンをしてきたことか。
「のだめカンタービレ」以前にはなかった事です。
というわけで、今日はドビュッシーの「喜びの島」を取り上げて、演奏効果が上がる練習のポイントをお話していきますね。
Contents
全ての音を主張しすぎない

画像のように32分音符や16分音符が連なっていても、それらの音の動きの中で「出したい音や控えたい音」があります。
トリルの後、「シレソシ|ラドファラ|ソシレソ」と音が動いていますね。
その中で出したい音は「シ○○シ♭|ラ○○ラ♭|ソ○○ソ」という動き。
半音づつ下りていき、最後にはオクターブ上がるという動きを、ちょっとだけ意識して聴いてあげるように弾いてみましょう。
1小節目と2小節目は続けない(突っ込んでいかないように)。
なぜなら、1小節目と2小節目ではカラーが全く違うから。
だから、一息に弾かないように気をつけてみましょう。
出だしの2小節の注意点は、
- 遅くしない
- 間をあけない(続けないけど明らかに間をあけすぎないように)
- トリルはテクニカルに弾かない
トリルは小鳥の鳴き声のように。
静かに、でもコロコロと。
コロ(ドレ)と次のコロ(ドレ)の歌い方を、変えていくことを考えてみましょう。
指使いを考える
上の画像と同じく、出だしの指使いについて。
画像の楽譜には、初めから指使いが書き込まれています。
でもね、この通りでなければいけない、ということはありません。
だけど、せっかく書いてあるなら、ちょっと見てみましょうよ。
一度は、その指使いで弾いてみましょう。
その上で、その指使いではどうしても!あなたにはしっくりこない、うまく(綺麗に)弾けない、という事なら、そこから、あなた自身で、あなたの指に合う、あなたが綺麗に聴こえるように弾ける指使いを、考えてどんどん試してみたらいいのです。
忘れないで。行き当たりばったりで、適当に弾かないでね。
忘れないで。綺麗な音で、綺麗な流れで弾けているか?
それを考えてね。
こだまを感じる

3小節目ですよ。左手3拍目は、その前の動きが「こだま」するように。
その前に伸ばしている音、打鍵後のcresc.をよく聴いて感じて、それから「こだま」を弾くのがポイントです。
32分音符の動きと装飾音の違い

左の「ラミラミっ」という動きはその後も何度も出てきます。
しかし、一小節の中で1回目は32分音符、2回目は装飾音によるものですよね。
楽譜を見れば違うのはわかるのですが、これを同じように弾かないよう、気をつけましょう。
その前の1拍目の休符を感じてね。
ここは「踊り」を表しています。
だから、1拍目の休符「ワン」を感じて飛び出すように。
あなたの左手は、腕の付け根からダンサーの動きと同化するような感じで。
そうして、この32分音符は跳躍します。
跳躍なので、「ラミラミ」と上がって8度降りる「ミ・ミ」は軽く。
1回目は32分音符最後の「ミ」を短く。
そして、「ラミラミ」と上へ上がるに合わせてcresc.
2回目の装飾音による「ラミラミ」最後の「ミ」は少し残す・置いておく感じで。
こちらは着地なので、落ち着きましょう。
音の動きで意識するライン

「ドレミファミレ ドレミソミレ」という音の動きでは、
「ドレミファ○○ ドレミソ○○・・・」というところに意識を置いて弾いてみましょう。
まず大事なのは、音階の動きですが、はじめは「ドレミファ」と素直に上がっていくのに、次は「ドレミソ」と変化するのを味わう感じでね。

左手の「8分休符+ミ・ミ・ミ+8分休符+ファ♯・ファ・ミ」は、8分休符を十分に感じて入りましょう。
後の「ファ♯・ファ・ミ」は弦楽器の音色を想像すると、よりレガートで弾けますよ。
強弱の変化に敏感になろう

16小節目はpからpiu pで。
17小節目、mfから色を変えてすぐにp。
「p→piu p」、「mf→p」、「p→piu p→pp」というダイナミクスのレンジを幅広く持つこと。
あなたの中でハッキリとその差を確立して弾くようにしましょう。
※この部分に限らず、この曲全体を通して。
最初はpですが、コーダの最後はfffに更にcrresc.がかかるのだから、この曲のダイナミクス・レンジは、ものすごく幅広い。
その場その場での幅で捉えず、全体を通して考えて創っていきましょう。
大事にする音とラインを考える

左手全音符の「ラ」は、他とは全く別の低音楽器の音色を想像して打鍵しましょう。
簡単に(安易に)弾いてしまわないこと。
はっきりと響かせてね。
そして、その低音「ラ」は5の指で、指の腹を緊張させて沈ませるように弾いてみましょう。

右手、「ドミソファっ」「ドミソファっ」と、「ファ」がスタッカートのように切ってしまわないよう、少し気をつけてみましょう。
エネルギーが次へ向かって増殖していくように。

6連符は、2音ずつ両手交互に弾きますが、2音ずつの塊としてとらえないように。
3連符のように、3音ずつとらえて弾くと、流れがスムーズになりますよ。
ポリフォニックでのバランスを考える

右手が16分音符で「ドミドドレドシレファ」と動いていきますが、これらを一音ずつはっきりしっかり弾かないよう気をつけてみましょう。
「ド#○○ド○○シ○○」という、16分音符と一緒になっている8分音符のラインを意識するのがポイントです。
左右両方に8分音符の動きがありますが、出だしは右手より左手の8分音符の流れを重視してみましょう。
左のメロディ(8分音符のライン)は、指先だけで力を入れて弾かない。
手首から回して指の関節が浮き上がらないように気をつけてね。
その上で、バレエの「アン・ドゥ・トロワ」とカウントする踊りのテンポで。
この時、「アン」から「ドゥ」への空間が、ふわっと広がるように感じてみて。
ほんの少しだけ、吸う息の量が増えるような感じでね。
メロディは歌うけど、ダンスの軽さを持って。
ルバートしても、テンポを変えないのもポイントです。
それは、基本のテンポの中でのルバートを保つという意味ですよ。

画像の左手8分音符「ソーラー、ソーラー」、「ラ」が短く切れないように。
「ソ#」は「ラ」に向けてのcresc. 気持ちが「ラ」に向かっていくという事。
35小節目はcresc.で進みますが、36小節目はpiu ppで始めるのを忘れないようにね。
メロディを探そう

音がいっぱいです。
こんな時は、音を追う事・弾く事だけにとらわれないで欲しいの。
忘れないでね。
- メロディは、あるの?
- どこにメロディがあるの?
両手で弾くこと・合わせることやインテンポで弾くことだけに、気持ちをとらわれないでね。
聴いてね、メロディの音を。
聴いてね、メロディはどう動いていくのか。
聴いてね、ハーモニーはどのように変化していくのか。
メロディと並行奏になっている音とのバランスも、聴いてみましょう。
そうしたら、もっとステキになりますよ。
うんと、味わってね。
バランスと段階を考える

ここはクレッシェンドが多いですね。
48小節目と49小節目では、それぞれにクレッシェンドが書かれていますが、どちらもその始まりは「mf」だということを忘れないで。
48小節目でクレッシェンドするけど、49小節目、一度引いてまた48小節目と同じ「mf」からクレッシェンドするという事ですよ。
そして50小節目からは、惜しみなくcresc.していきましょう。

1拍ずつオクターブで、上がって降りてくるものをはっきりと伝えるように。
決して機械的に弾かないこと。
この少し前まで、左足はペダルを使っていると思いますが、ここからは左足で大地を踏みしめ、体中の体重を支えましょう。
そうして、上体は音の動きの方(鍵盤右側の方)へ向かっていくように。
音の動き同様の山をつけて弾くと良いですよ。
3対5、重音と単音の動き

右手の重音は、全ての動きをはっきりと1つずつの打鍵をしないように気をつけましょう。
ポイントは、どの小節目も1拍目に体重を乗せること。
右は3拍子、左は5拍子ととらえて別々の練習を徹底しましょう。
左右の合わせを気にしてルバートしないように。
決してフレーズの終わりで遅くならないように。
テンポを厳守する事も意識してみましょう。
アルペジオを含むフレーズで気をつけるポイント

左右交互で弾く32分音符のアルペジオは、音の波の(高さの)通りにcresc.とdim.を「弧を描くように」つけてみましょう。
過度にならない塩梅でね。
各小節の1音目は打鍵を素早く。

左手の「8分休符+8分音符+8分音符のアルペジオ」は、1拍目の8分休符を感じて(そこで息を吸うような感じで)。
単純にポンポンと、勢いをつけては弾かないようにね。
踊りの「間」「弾み」「テンポ」で。
静かに、でも、素早く。

左手のメロディは、極力レガートで。
手首を使って弾いてみましょう。
指の付け根を使って弾くのは×。
指を伸ばしたような状態で、鍵盤に指全体を沈めたような状態で弾いてみましょう。
鍵盤が上がりきらないようにね。

117小節目からの一つ目の左のメロディの盛り上がりと、同様パターンの129小節目からのメロディの盛り上げ方は、歌い方を変えてみましょう。

158小節目、左右交互で弾くオクターブの16分音符は、それぞれをはっきりと打ち出すように打鍵しましょう。
159小節目後のフェルマータは、実はそんなに長い時間を必要としません。
あなたが思っているよりも、もっと早く次に入って見ることを試してみてね。

182小節目からの音階下降のフレーズは、ただの音並べのように淡々と弾かないで。
よりスピーディに、疾走するようなシーンをイメージして弾いてみましょう。
テヌートとスタッカートの違い

装飾音が付いている音には「テヌート」が。
続く音には「スタッカート」の指示があります。
オクターブに付く装飾音なので、装飾音は「5」の指で、オクターブの下の音は「4」の指で弾くことになるでしょう。
オクターブを「1と4」の指でとるのが厳しい方の場合、テヌートがつい、スタッカートになりがち。
もし、これをテヌートではなくスタッカートで弾いてしまうと、全く違う印象になってしまいます。
装飾音が付いてのテヌートで、スタッカートになる、という動きが面白いと思いませんか?
何かの動き、何かが起こる感じがする…
譜読みする時に気をつけたいこと。
メガネをかけたり外したりと、日常生活の中で分けている方。
ピアノを弾く時、つい面倒がってメガネをしないと、譜読みミスはいっぱい発生しちゃいます。
もったいないですよね。
せっかく時間をかけて譜読みするのに、最初から間違っているとしたら。
テヌートとスタッカートの読み違いや、シャープとナチュラルの読み違いは特に多いもの。
メガネが必要な方は、譜読みの時・楽譜を見て弾く時は、必ずメガネをかけましょうね。
盛り上げ方の注意点とイメージ

193小節目と195小節目の第2拍・第3拍でcresc.をかけますよね。
でもね、196小節目では「piu p」で弾き始める事。
そして左手の重音それぞれの響きを大事に、よく聴きましょう。

200小節目の3拍目、スタッカートは長めにね。
16分音符に付けられたスタッカートと、8分音符に付けられるスタッカートは同じではありませんよ。
そもそもの長さが違うことを忘れないで。
楽譜上、ここでペダルを切るようになっている版もあるでしょうが、第3拍のスタッカート音のペダルは長めに。
ここはラッパの音がイメージされるところ。
でもね、つんざくような鋭い音ではありません。
余韻が残るようにね。

だーっと204小節目に向けて勢いをつけてcresc.しましょう。
この後の211小節目も同様に。
打鍵の仕方を考える

ここからは、打鍵をどうするか、考えていきますよ。
右手は、指が鍵盤に座った形(どっしりと指の全面を乗せた形)で弾かないように。
指先を立たせて打鍵してみましょう。すると、明快な音が出ますよ。
1拍目はスタッカート。だから、指を立たせて弾くの。
そうすると、音が生きてきます♬

244小節目からは、どんどん加速していきますね。
ここで出すべく音のラインはテナーですよ。
(ラーシー|ドレミーファー|・・・)
248小節目からは、出すべきラインがバスに移ります。
こんな所では、打鍵する時に、あなたの指が鍵盤の中に入っていくような感覚を持ってみましょう。
すると、少し深い音が出ますよ。

左右交互の32分音符トレモロは、音価どおりにきちっと弾こうと思わなくていい。
そのまま最後のAまで、エネルギーを絶やさず突っ走るように。
ピアノ動画*ドビュッシー「喜びの島」
2016年のリサイタルから、ドビュッシー「喜びの島」をお送りします。
ピアノはシゲルカワイでした。
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