ショパン「幻想即興曲」Op.66を美しく弾くための練習のポイント
ピアノを弾くことが大好きな人達、子供から大人まで幅広い世代で大人気のショパン。
そのショパンの作品の中でも、「幻想即興曲」は「いつか弾きたいあこがれ曲」の上位に上がっています。

「ピアノの詩人」と言われるだけあって、ショパンのピアノ曲は人を惹き付ける作品がたくさん!
だけど、どれをとってもあまりカンタンではないのが痛いトコロ。
今日はそんなショパンさまの「幻想即興曲」の練習のポイントをお伝えしちゃいますよ。あなたの練習の参考になりますように!
Contents
ショパン「幻想即興曲」Op.66とは?
「幻想即興曲」とは、ポーランド出身の作曲家フレデリック・フランソワ・ショパン(1810-1849)が作曲したピアノのための作品。
ショパンは「即興曲」を4曲作曲しました。
実はこの「幻想即興曲」は、ショパンの「即興曲」の第4番と位置づけられています。
しかし、「幻想即興曲」はショパンの4曲の即興曲のうち、最初に作曲されたのだそう。
それなのに、即興曲4曲中、4番目に位置するのはどうしてなのでしょうか?
それはね、ご存知の方もおられるかと思います。
ショパンはこの「幻想即興曲」を気に入っていなかったよう。
ショパンは「幻想即興曲」を世の中に出したくなかった
ショパンは自分の死後、「この幻想即興曲の楽譜を燃やして処分して欲しい」と言っていて、ショパンが生きている間に「幻想即興曲」の楽譜が出版されることは、ありませんでした。
それなのに!ショパンの遺書ともとれる「幻想即興曲の楽譜を燃やして処分して欲しい」という願いは無視され、今、世界中で愛されるピアノ曲として存在しています。
ショパンは1849年に亡くなりました。
その後、ショパンの友人ユリアン・フォンタナにより「幻想即興曲」というタイトルが付けられ、1855年に出版されたのです。
ショパンの「幻想即興曲」は、ベートーヴェンの「月光ソナタ」と同じ調性・構成だということもあるのか、両者共に今なお、世界中に愛されているピアノ曲であることは、間違いありません。
お知らせする音は、無呼吸で弾いてはならない!

最初の音は、今から素敵なファンタジーが始まりますよ~!というお知らせの音です。
ということは、鍵盤に指を用意して、そのまま弾き始めるのは「ちょっと待ったー!」。
どうしてかと言うとね、それでは、意志(気持ち)のない音になっちゃうから。
芯がないって言うのかな。
鍵盤に指を用意したらね、顔を上げて、その音の響きを弾く前に想像してみましょう。
そして息を吸って!(ここ重要!テストに出るよ!)体を膨らませる!
体が内側から外側へ広がるように、膨らませるイメージで。
そして、おなかの下の方で息を溜めておくようにして、打鍵すしてみましょう。ストンとね。
でもね、そこで終わりじゃないですよ。
タイで伸びる音は数えない!?
上の画像のタイで伸びている音は、カウントしないようにしましょう。
もちろん、正しい長さは必要です。
でもね、大事なのは「数えること」ではありません。
ここで大事なのは、あなたの体の中から「拍」ごとに音の響きが向こう側へ飛んでいく/膨らんでいくのを感じること。
聴き続けることです。
そうすることで、聴いてくれる人を惹き付けられるんですよ。
だから、不用意に弾かないでね。
ノリ方を変えてみよう!

この「幻想即興曲」の場合、「右手の16分音符4音に対して左手は8分音符を3音」を合わせる、と言う感覚を掴むのが、最初の試練でしょう。
ショパン「幻想即興曲」最初の試練の理由
どうしてショパン「幻想即興曲」の「右手の16分音符4音に対して左手は8分音符を3音」を合わせる事が、試練だと思うか?
それはね、
私自身、小学生の時の先生にこう言われました。
「これを合わせるのは難しいのよね」と。
そう言われた記憶が根を深く張っているからです。
でもね、難しい人には難しいし、そうじゃない人もいるわけですよ。
頭でわかっても感覚に繋がらなかったり、ね。
ちなみに私自身にとっては、これは難しいことではなかったのです。
しかし、今まで多くの子供から大人の生徒達に教えてきて、この4対3を合わせる事がとても難しい、という人たちに出会いました。
これを難しいと感じる人達の傾向についても、見えてきましたよ。
でもね、今日はそれはさておきますね。
じゃあ、どうノリ方を変えるのか?
左手4対右手3ですから、ピタッと合う所と、合わない所(合ったらおかしい所)がありますよね。
もう一度、画像を出しますよ。

まずは「合う所」がズレないよう、そこに「乗って」合わせて弾く練習をするでしょう。
それでうまい塩梅で合うようになったら「やったね!」です。
ただし、問題はココから。
「合う所」に乗っていると、4拍子感覚になります。
しかし、この曲は2分の2拍子なのですよ。
「2拍子」なのん♬
ということは、1小節の中で4ヶ所も乗りどころがあると、4拍子になってしまいます。
そりゃまずいですよね。
だから、まずは、ちゃんと2拍子で弾くということを意識するところから始めましょう。
左手のベース音にだけ乗るような感覚で。
それが出来たら次です。
次は、乗りどころを更に少なくしますよ。
1小節で1ヶ所、1小節の頭だけにします。
それが出来たら、もっと長い小節=1フレーズにする。
と言うのを試みて行くと、流れが良くなりますよ。
ちょっと「乗り方」「乗りどころ」を、変えてみると、また違う世界が見えてきます。
テンションを維持したい時は、オシリから根っこを生やしてみよう!

画像は、劇的に下降してきて場面が変わるところです。転調しますね。
それでも、いきなり変わるわけではなく、転調するところは同じテンションを保って入りたいところ。
テンションを、そこまで上げてきたエネルギー量を落としたくなかったら、下腹部に息を貯めておくこと。
(呼吸を止めるのではなく、それまで吸ってきた息を、貯めておく)
言い方を変えれば、臀部(オシリのあたり)をデッシリとね。
もし、息を止めてしまうと、体中がカチカチに固まって自由じゃなくなってしまいますよ。
だけど、息を下腹部に貯めておく。
そして臀部をデッシリさせると、上半身はとてもゆるゆるとして、自由にラクに動かせる状態になります。
そうするとね、フォルテは向かっていかなくても、腕の重みだけで出せますよ。
その「質」は、呼吸=エネルギー量で調整出来ます。
さて、この臀部デッシリ状態が今ひとつ、わかるようなわからないような・・・だったら。
あなたのお尻から、根っこが生えてくる事を想像してみてね。
その根っこは、下にまっすぐとどんどんどんどん伸びていって、地球の中心まで根を張りに行きます。
って事を、想像してみてね。
あなたの体は、お尻から地球の真ん中まで繋がっているから、ちゃんと支えられています。
安心ですよ。
お尻から根っこ。
お尻からしっぽ。
私のレッスンでは「オシリ」がよく出てきます(笑)。
4分休符の書き方も、「下からオシリオシリしっぽ〜」という掛け声で、みんな覚えてます(汗)。
脱線しちゃいましたね。
シーンが変わるところはキャラクターを明確にするのがポイント!

ショパンの「幻想即興曲」、転調したここでは胸を張って堂々と。
自分の前を広くとってね。少し顔を上げて。
次の小節も音は同じですが、見える景色は変わってきますよ。
少し背筋が落ちて穏やかになっていくように。
見えるものがセピア色になっていくような感じ。想像してみてね。
だけど…

ここでまた変わりますよ。
一つ前の画像のところが男性だったとしたら、こちらは女性の歌が始まるところ。
それまで輝いていた男性は女性の歌声を聴きたくて、耳を澄ませていますよ。
それをちゃんと聴いてあげなきゃね。1つ前の画像と同じ状態で弾いてしまうと、大事な人の声が聴こえないよ。
だから、右手の第1音を弾く前の一瞬、その音をあなたの中で強く想像すること!
これがキャラクターの変化を明確にするポイントです。
ピンク色の世界を想像してみる?

ここはね、あなたはどんなイメージを持っているかしら?
ねぇ、もっと、ピンク~!な世界を想像してみたらどう?お姫様の世界のような。
ほら、憧れの王子様がやってきて、「お嬢様」って話しかけられるぅ!な状況で、目がぽわ~んってなっちゃうみたいに☆ふふふ。
あなたがもし男性なら、逆ね。素敵な女性を見かけて、紳士としてどう話しかけよう?と想像してみて。
全てがぼやけてしまうみたいな、あなたのロマンティック全開で。
うっとりしまくっちゃいましょう♬
跳躍の方向を考える

ちょっと弾きにくい、と感じる人が多いだろうフレーズです。
「幻想即興曲」のコーダですね。
右手も左手も、微妙な跳躍で動きがこんがらがります。
(頭の中も、こんがらがります。)
今日は左手のお話ですよ。
「ど# み ど# そ#」と、
「ど# ふぁ# し# そ#」の二種類。
一つ目の「ど#」から「10度上の み」への跳躍と、
二つ目の「ど#」から「11度上の ふぁ#」への跳躍。
あなたはこんな風に弾いていませんか?

ここから、鍵盤の手前を這うように10度上の「み」へ・・・

この画像だけで見ていると、あまり違和感はないかも、しれません。
ただ、このように動くと手を手前に・自分の体の方に「引っ張って」しまいます。
このような動きを続けていると、力を逃す機会を失って力を溜め込んでしまう。
そして腕が辛くなっていくの。
これが、弾く事に必死になってしまう理由です。
じゃあ、どうしたらいいんだろう?

「ど#」の打鍵は、しなやかなバネを使うスタート・ダッシュのように
(実際のスタート・ダッシュの、スローモーションだと想像して下さい)立ち上がって、鍵盤の向こう側へ回していきます。
すると、向こう側へ立ち上がった手の親指は、もう

10度上の「み」に届いていますよ。もはや、跳躍ではありません。
うわっ!簡単!弾きやすくなりましたっ!
とは、生徒さんの言葉。うふふ♬
跳躍が辛い、弾きにくい…と思ったら、ちょっと方向を考えてみるといいかもしれませんね。
少し、補足します。
同じフレーズの左手。同じ事なのですが、続く「ど# ふぁ# し# そ#」について。

画像1小節目の後半(左手)ですよ。やはり、ここを無意識に弾こうとすると、

このように弾き始め、手は鍵盤を這うように

「ふぁ#」へ「行こう!」とします。
一つ前の「ど#→み」より、つらいですねぇ。
だって、音程が広がるだけじゃ、ありませんから。
黒鍵へ上りに行かねばならないのです。それを、

やはり「ど#」は、立ち上がるように。
打鍵と共に、手は向こう側へ。
右斜め前へ円を描くように回しましょう。すると

「ふぁ#」は、とても近くなります。
「弾きに行く」という感覚ではなくなりますよ。
軸を作ってみよう!

さて、問題は右手です。
音の動きは、そう難しくないと思いますが、でも、弾きにくい感は半端ありません。
(今までこの曲を教えた生徒たち、見事に全員。)
16分音符の動きで、「らそ」から始まるフォルテシモのところに注目してみましょう。
「らそ」を「3 2」の指で、その後のオクターブの動きを、「5 1」で弾くでしょうか。
ずっとその指づかいで弾くなら、「らそ」=「3 2」が「軸」となります。
軸は、ブレない方が弾きやすく、安定しますよ。
ただ、どうもブレて弾きづらさが出るのは、その軸が、無意識のうちにずれて(ずらして)いるから。
ではどうして、ブレてしまうのでしょう?

「らそ」の後に弾く八度の動き。
軸がズレてしまうのは、「らそ」の後の音が白鍵か黒鍵かで、「らそ」を弾く位置が変わってしまうからです。
上の写真は、「らそみみ」なので白鍵。
無意識に、白鍵を弾こうとすると、手は手前(自分側)に。
しかし、黒鍵を弾こうとすると、手は奥へ置かれるでしょう。
これは「てこの原理」ですから、なるべく鍵盤の手前で弾く方が弾きやすい(発音しやすい)と言うのが、無意識にあるんだろうと思います。
確かにね、ずっと白鍵のフレーズなら、あえて鍵盤の奥で弾く必要はありませんよね。
ただ、このようなフレーズの場合、「らそ」の後が白鍵だったり黒鍵だったりするなら、軸となる音を弾く指はなるべく同じ所にあった方がいい。
その方が動きが少なくて済みますから。すると、

この画像のように、「らそ」の後の音が(みみ)白鍵でも、「らそ」を打鍵する指が少し奥に位置して弾くと?
続く黒鍵が入る音の動きの時も、軸の「らそ」を打鍵する位置を変えずに弾く事が出来ますよ。
要するに、「らそ」の軸が前後で動くと、手を引っ張ったり押したりという動きが続きますよね。
そうすると不要な力が腕に溜まっていくのです。
こんな事を考えて練習していくと、不要な力を使うことなく、体をラクに使って「幻想即興曲」を弾くことが出来ますよ。
ここで取り上げたことフレーズに限りません。どんどん応用してくださいね。
コーダは中間部の再現

コーダでは、左手のココ(赤丸のところ)から、中間部(だいぶ前のピンク色画像)のメロディの再現になっていますよ。
これは懐古シーンのよう。
ぼやけたイメージですが、でも、この左手の赤丸の和音の入りはとっても大事。
ピアニシモなのは右手です。
左手までピアニシモだと思って打鍵したら、欲しい音が聴こえな~い!
赤丸和音の打鍵は素早く。ただその鍵盤に指を用意して、「ストン!」と落とすだけ。
中でも和音の上の音の打鍵をする指に気持ちを集中させて!
そして、その後の4分音符の打鍵は「ズブズブと泥沼にはまっていくような」感覚を持ってみましょう。
実際、打鍵した指が鍵盤の中に入り込んでいっちゃう~!って、めっちゃイメージしてね!
ピアノ動画*ショパン「幻想即興曲」Op.66
最後に、2016年のリサイタルから、ショパン作曲「幻想即興曲」をお送りします。
ピアノはシゲルカワイ。
あなたのピアノ演奏が、もっともっと豊かに、そしてあなたが心も体もラクに使ってピアノを弾けるようになることを、応援しています!
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