指づかいはどうして考えなくちゃいけないの?
ピアノを弾くのは楽しいよね!
いろんな曲や演奏に出会うのはワクワクするもの。
あれ弾きたい、この曲弾けるようになりたい!って、夢はいっぱい。
でも実際に向き合ってみると、仕上がるまの長い道のり、たくさんの壁に当たりませんか?
壁があまりにたくさんあり過ぎて、優先順位すらわからなくなってしまう。
そうして、優先順位がどんどん落ちていくものの一つに、「指づかい」が。
両手に有る10本の指は、人によって長さも太さも強さや柔軟さが違いますよね。
だから楽譜に書かれている通りの指づかいは私には向かないのよ!なんて決めつけてはいませんか?
ん?音符を追っていると指づかいの指示が目に入らない?
うん、そうかもしれませんね。でもね、指づかいってとっても大切なんです。
今日は指づかいに意識を置くと、どれほど音楽的に弾けるようになるのか?お話していきますよ。
Contents
アルペジオの指くぐりをキレイに弾くには?

画像左手の動きに注目してね。
第3拍と第4拍は、下降のアルペジオになっています。
「ミシソ」という下降を「123」の指で弾いたら、次の第4拍の「ミ」に「1」の指をくぐらせて持っていく。
ここは意識しないと、綺麗に弾けません。でこぼこした印象を与えてしまいます。
指くぐり直前の「ソ=3」の打鍵をしている時に、「1」の指は付け根(手首)から「むんぎゅー!」って「5」の指側へ「ハグしに行く」ように。
恥じらっていないで、正面からハグしにいく!という勢いを持って弾いてみましょう。
その時、気持ちが先走って「ソ=3」まですっ飛んで行かないようにね。
そこで「ソ=3」も気持ちが次へ行ってしまうと、まだ次の「ミ=1」を弾いてもいないのに、指が離れちゃうんです。
そしてジャンプしてしまうのね。ここが危険な落とし穴。
アルペジオでの指くぐりは、親指が小指へ直球でハグしに行くように!
指づかいはスムーズに次へ進むためにある

左手のベース音を受けて、アルペジオで上がっていく右手の動き。
始めの三つは「ソシソ」ですが、四つ目は「ソシレ」になっています。
「ソシソ」の時の指づかいは「1 2 5」。
ところが「ソシレ」になると、そのづかいは「1 2 3」になります。
上がって来てこれで終わりだ、と脳は簡単に騙されて、「1 3 5」の指で弾いてしまいがちよね。
だから注意・意識しておきましょう。
しかも、ココで譜面は段が変わるのです。

すると、右手は「ソ」のオクターブになりますよ。
つまり、下の「ソ」は「1」の指で、上の「ソ」は「5」の指で取りますよね。
だから、上の画像の終わりの「ソシレ」は、「1 2 3」の指で弾いて欲しかったのです。
「1 2 3」の指で弾いたら、「ソシレ」に続く「ソ」のオクターブの上の音へと続けて「ソシレソ」=「1 2 3 5」の指で、一息に弾く事が出来るでしょう♪
もし、「ソシレ」を「1 3 5」や「1 2 4」などの指を使って弾いたとしたら?
次のオクターブの「ソ」で、手をパッと広げる動きが必要になります。
なんでこの指づかいなんだろう~?と思ったら、次の音の動きを見てみましょう。
きっとそれは、次へ向かいやすく、次の音を弾きやすくするための指づかいです。
和音の指づかいは癖づけしよう!

左手の和音の動きを見てみましょう。
「ドミソ(531)」から「ドファラ(521)」へ。
そしてまた「ドミソ(531)」に戻ります。
「ドミソ」も「ドファラ」も「3つの音を同時に弾く」からと、どちらの和音も「531」の指づかいで弾くのはオススメできません。何故って?
それはね、和音の形が違うから。
そして、人の指の構造が関係してくるからです。
人の指は、親指(1)と人差し指(2)の間が一番、広げ易く出来ています。
それぞれの和音の上二つだけを見ると、「ミとソ」「ファとラ」で、どちらも「三度音程」。
しかし、和音の下二つを見ると、「ドとミ」は「三度」ですが、「ドとファ」は「四度」ですよ。
この「ドミソ」と「ドファラ」の和音を、もし右手で弾くなら、どちらも「135」の指でOKです。
でもね、左手で弾く場合は、「ドとファ」を「5と3」の指で取るより、「5と2」で取った方が弾きやすくて自然ですよ。
このような和音の指づかい・動きは、「クセ付け」してしまいましょうね。
もちろん、目の前の生徒さんには、レッスンでわかるように手を取って説明する必要があります。わかるようにね。
弾きやすくなるのですから、やらない(直さない)のは勿体ない事ですよ。
和音の指づかいは効率的になっている

三つの音を同時に弾く和音は、指づかいに気を付けたいところ。
それは音の組み合わせによって違います。
「1.3.5」の指を使って弾く和音もあれば、「1.2.5」の指づかいの時も。
この画像の場合、一つ目の和音の指づかいは「1.3.5」。
ところが二つ目の和音は「1.2.5」。
和音を弾き始める生徒たちには、注意が必要です。
「1.3.5」の指だけで弾き続けるのは、一見、考えなくて弾けるからラク…実際、そうやって練習してきちゃう生徒さん達も多くいました。
でもね、そこで「2」の指を使うのには意味があります。
たとえば画像の二つの和音。
これを二つとも「1.3.5」の指で取ったらどうなるでしょうか?
実は「弾きにくい」はず。
だけど、「1.3.5」の指を使いがちなのね。考えなしに弾けるから。
こういうところを、ピアノの先生方はレッスンでよくチェックし続ける必要があります。
そして、何故「3」の指を「2」に変えなければならないのか?その方が良いのか?
ということを、生徒さん達が理解・納得できるまで(できるように)伝え続けること。
手の構造と、和音の「音程関係(音の開き具合)」を考える。
そして、たとえそこにスラーがなくても、スタッカートや休符やノン・レガートの指示がない時は、「レガートで弾く」事です。
両手同時の音階は、片手ずつ指づかいを身につける事

両手で同じ音を弾いて行く音階ならば、普段の音階練習で指づかいを身に付けているから、問題はないかもしれません。
でもね、この画像のように両手で弾く音が違う場合、その指づかいは適当になりやすいのね。
こんな音階フレーズで指づかいがあやふやになると、どうなるかしら?
それは音を間違えやすくなる。抜けやすくなってしまいます。
そして、始まりの音が違うといえど、音階は音階。
指づかいの規則(基本)はあるのですよね。
だから、このように両手で違う音から始まる音階フレーズは、片手ずつでの指使いを完璧に身につける事が肝です。
指づかいが完璧に身に付いたら、必死になって弾かないように。
ピアノと闘わないで。
よく指示を見てね。
低音から高音へ駆け上がる音階ですが、フォルテから始まってデクレッシェンドで終わりはピアノになっていますよ。
駆け抜けて遠くへ行く、というイメージ。
風がシュルル~~~っと吹き抜けていくように。想像してね。
指づかいの指示には意味がある

画像の右手を見てね。
一つ目と二つ目の和音は全く同じですよ。
同じなのに、指づかいが違うのは何故かしら?
ふふふ、イジワルじゃ、ないですよ。
ここはね、二つ目の和音で「指づかい」を変えた方が、その次が弾きやすいの。
次の音へ、より美しく奏でられるように….
そのための指づかい指示なのです。
同じ音なんだから、同じ指づかいで弾く方がラクじゃん♪ではないのよね。
今、ラクをすると、その後が大変になる。
って、日常のあらゆる事に通じますね。
この指づかい、言い換えれば「時短的指づかい」といったところでしょうか。
指づかいを考えるだけで、弾きやすくなる!

ん?何故か「間」があいてしまう….何故だろう?
と、生徒さんが弾いている様をガン見。
あら~、それは指づかいだわ~。
左手ですよ。
「ラシラ」「レミレ」と弾いた後に「ド#とラ」の和音をとる。
ポジション移動に、時間がかかるのね。
だって、「レミレ」を「212」の指で弾いているんだもの。
これをね、「213」もしくは「214」にしてあげるだけで、パッとポジション移動出来るようになります。
だけど、指づかいを変えるのって、なかなかね。すっかり、それまでの指づかいに慣れちゃっているから、すぐに指づかいを改めるのって難しいんですよね。強い意志がないと。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
おお!生徒さん、出来るようにしてきましたよ。いいぞいいぞ~!
「ん?なんか弾きにくいよ?」と思ったら、指づかいをもう一度考えてみましょうね。
さぁ、指づかいを考えよう!

大学生の生徒さんのレッスンで、
「センセ!ここの指づかい、いいのあったら、教えてください!
色々やってみたんですけど、なんかうまく弾けない…」と。
レッスンに質問を持ってくるって、イイね♪
ちなみにこの画像は、私がレッスンを受けた時に使っていたもの。
版(エディション)にこだわりはなく、当時居た場所で手に入る版は、これしかなかったというだけです。
この画像に書き込みのある(右手の)指づかい、上段に書いてあるのは、私が必死で試行錯誤して第1段階で固定したもの。
下段に書いてあるのは、師匠から教えて頂いて、今はそれで定着している指づかいです。
師匠が教えて下さったその指づかいは、師匠ご自身がフランス留学中に師事していた先生の一人、ペルルミュテール氏から「ラヴェルはこの指づかいを推奨していた」と、教わったもの。
「指づかい」というのは、考え出したらキリがないというか、人によって(手の形やクセによって)違うので、正解、という「決まり」があるとは言い切れません。
ただ、作曲家自身の「こだわり」があったとするなら、それを知っておくのは、悪くない事。作曲家の意図・考えを知っておくのは、その作品を創る上でも大きく役立ちます。
作曲家にしろ、校訂者にしても、どういう考えでその指づかいを推奨したのだろう?と、想像してみる。
他の指づかいでは出せない何かがあるのかな?とね。
今日のピアノ動画*ラヴェル「水の戯れ」
ティブレイクは、ラヴェル作曲「水の戯れ」をお送りします。
これは、神戸芸術センターのシューマンホールにて開催したリサイタルでの演目の一つ。ピアノはザウターでした。
まとめ
- アルペジオの指くぐりをキレイに弾くには親指と小指がハグをする感覚がコツ
- 指づかいは、次へスムーズに音楽的に進むためにある
- 和音の動きの指づかいは、手の造りに逆らわず癖づけして覚えよう
- 両手同時の音階は、片手ずつの指づかいを完璧に身につけるところから
- なんか弾きにくい?は指づかいを考えるだけで弾きやすくなる!
あなた自身が疑問に思って、考えて試行錯誤して得たものは、あなたの音楽の幅を広げますよ。
さぁ、今日も一歩一歩。丁寧に目の前の事に取り組んでいきましょう。
エンジョイ!あなたのピアノ・ライフをもっと豊かに!
もっとラクに心と体を使ってピアノを弾くお手伝いをしています。
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