「聞く」を「聴く」に変えてピアノ演奏を豊かにする5つのポイント

2021年3月2日

ピアノを弾く上で、きっと一番難しいのが「自分の出す音を聴く・聴き続けること」でしょう。

多くのピアノ弾きさんは「聴いている」と思っています。うん、きっと「聞こえている」んですよ。
でも「聴いている」のとは違うんですよね。
「聞こえている」のは受動的で、「聴いている」のは能動的。
自ら「聴きに行く」という姿勢と、BGMのように、外を走る車や子どもたちの声のように、無意識でも「聞こえてくる」のでは、全く違うのです。

その事に気づけると、あなたの演奏はより豊かになっていきますよ。

多分ね、自分で音程をとる必要がある弦楽器や金管楽器・声楽などだと、自分が発する音をいつも意識して「聴いている」でしょう。
ただ、ピアノの場合は幸か不幸か鍵盤にポンと触れれば音が出ますよね。
調律していれば正しい音程でキレイな音が出ます。
だから、ピアノ弾きは自ら発する音を聴く事に無頓着になりやすいの。

ここであなたも腹をくくって、あなたが出す音を意識して聴く習慣を身に着けませんか?
あなたの音楽をもっと彩り豊かにするために。

どうやって音を聴くのか?

音の聴き方にも、色々あります。

  1. 音を聴くには、発音する前に聴く「想像」が、実際に出す音の響きを「創造」する。
  2. そして、実際に発音した音の伸びを、まさに「現在進行形」で「聴き続ける」。
    その音の響きがなくなるまで、音の尻尾まで追い続ける。
    次の音へバトンを渡すまで、聴き続ける。

この二つがあります。

「音を聴く」事の難しさは、音は一つじゃないって事。
同時発音数も一つではない事の方が多い。
右手も左手もあるし、ペダルも使う。
ペダルも3本ありますよね。3本同時に踏む機会は少ないでしょうけれど。
でも右側のペダルと左側のペダルを同時に使うのはよくある事です。

その上、多声である場合も。
すると、それぞれの音が、まるで洪水のように現れるわけですよね。
その中で「音を聴く」と言うのは、果たして何をどこまで聴けるのか、わからなくなりそう。

聴き方にも色々ありますが、あなたの聴き方次第で、あまたの音の出方は変わり、表現も変わるでしょう。

音の聴き方の例

ベートーヴェン「ピアノソナタ第19番」から
ベートーヴェン「ピアノソナタ第19番」から

赤丸を付けている所を、聴きたい・聴いて欲しいの。
このように伸ばす音は、その響きを聴き続ける事で、次への繋がりが明確に現れてきます。

ただし、画像例のように伸ばしている時に左手が和音で動いている場合は注意が必要。
実際に弾く時は、左手の動きが気になってしまうので、右手の「伸びゆく音」を聴き続けるのは、相当に意識する必要が。
じゃあ、どう聴くのか?

色々ありますよ。
例えばね、この伸びている音、そこまでは8分音符で動いています。
伸びている間も、左手は8分音符で動いていますよね。
なので、その8分音符の発音ごとに、まるで光が点滅するように「どーおーおーおー」とね、音が点滅しながら振動していく様を想像するように聴き続ける。

それは正しいとか正しくないとかの話ではありません。
あなたにとって「正しい」かどうかは、あなたが、

  • どんな風に弾きたいか?
  • どんな音楽にしたいのか?
  • どんな響きにしたいのか?

そういう事で、変わってきます。

もう一つの聴き方の例。

8分音符が刻んでいく「時」は意識しない。
ただその2拍の間、2拍という「間」「時」をかけて、「どー」という響きが、増殖していくように、聴いてみましょう。

あなたが金管楽器の音を聴いた事があったり、実際に吹いた事があるなら、想像しやすいでしょう。
発音して、ロングトーンでクレッシェンドする感じです。

車が遠くからやってきて、目の前を疾走して行く時の音の動きを想像してもいいですね。

音の伝わり方・響き方は、状況によって色々です。
だから、聴く・聴き届けるについても、あなたがどんな風に聴きたいのか?どんな風に音が響いているのが欲しいのか?を大事にすることですよ。

ご参考までに。

音の始まりはどこにあるのか?

文書にも「始まりと終わり」があるように、音楽にも「始まりと終わり」があります。

「音楽」の話をする前の、一番大事なお話。
それは「音の始まり=音が発音される時」と「音のしっぽ=音の振動がなくなる瞬間」を聴き届ける事です。

まずここでは「音の始まり」について取り上げますね。

では、あなたに質問します。
あなたは「始まりの音」をどうやって聴いていますか?

初めに打鍵する音に指を置いて、「これでいいかな?いいかな?」と思って、えいっ!と打鍵?その音が「あ、出ちゃった~始まっちゃった~」という感じかしら?
それとも指の用意も何もしないで、いきなりタタン!と弾いて「あ~ぅ、間違えちゃった~」?

あなたは、自分がどうやって音を出しているのか、あなたの習性に気付いていますか?

さぁ、答えは見つかりましたか?あなたがどうやって音を出しているのか?
どうやって音の始まりを聴いているか、どうやって弾いているのか?

あなたは「始まりの音」は、どんな音を出したいのでしょう?

楽譜に書かれている音をただ打鍵していくだけでは音楽にはなりませんね。
それは音の羅列に過ぎません。

それぞれのフレーズ(メロディ)の歌い方を考えて、バランスを考えて音を出します。
しかし、それを考えるのは「あなた」ですよ。
何故ならあなたが奏でるのは「あなたの音楽」だから。

歌には、いろんな気持ちが入りますよね。実にいろんな気持ちがあります。
例えば「喜怒哀楽」という言葉がありますが、感情はその四種類に限りませんよね。
「喜」一つとっても、いろんな種類の感情があります。「怒」の感情もそう。

そういえば、なかなか結末を迎えない往年の名作漫画、「ガラスの仮面」の初期のお話を思い出しました。
主人公のマヤちゃんが、月影先生に演技のお稽古をつけて頂いていた時も、そういうシーンがありましたよ。

「喜」:希望が叶って嬉しい気持ちを抑えられずに出すのか、
ちょっと恥ずかしくてはにかみながら静かに心の内で喜んでいるのか、
ワクワクした気持ちも混じって、言いたくてたまらないのか?

「怒」:思うように事が運ばず、自分にイライラしているのか、
何回同じ事を言っても、少しも言うことを聞かない子供や伴侶に、思わず怒号を浴びせてしまうのか、
或はそれが出来ずにムキー!となっているのか?
それとも苦痛を伴う痛みなのか?

他にも、いろいろありますよね。

では、あなたが今まさに弾こうとしているその「始まりの音」は、どんな種類の音だと考えているのでしょうか?
その「始まりの音」に、あなたは何を感じるのかしら?まずは、そこから。

それを考えるところからスタートです。
今あなたが練習している曲の中から一曲、その曲の最初か曲中の一つのフレーズを取り出してみるのでもいいですね。
是非「始まりの音」について、考えてみてください。

そして、「うん!わたしはこの音はこういう気持ち!このフレーズはこんな気持ち!」と決まったら、その感情をその音に・そのフレーズに重ね合わせてみましょう。
きっと呼吸から変わってきますよ。

感情の「再現」です。
その感情をあなたの中に保った状態で(強くイメージして)、その最初の音は「どんな音が鳴り響くのか?」想像してみましょう。

想像できましたか?
そうしたら、そのまま弾き始めてみましょう。
想像できなければ、弾き始めてはいけません。
躊躇しないでね。恥ずかしがらないで。誰も!見ていませんから。

始まりの音を、あなたが打鍵する前に「想像して自分の内側でそれを聴く」かどうか。
その違いで、実際に出てくる音は天と地ほどに差があります。

始まりの音が思うように出れば、その後を続けるのは、精神的にも実際の打鍵のフォームとしてもとてもラクなの。

是非試してみてね。

音の行方を追ってみよう

モシュコフスキー「15の練習曲」Op.72-6
モシュコフスキー「15の練習曲」Op.72-6から

右手も左手も動きがあって、どこをどう追っていったらいいんだろう?
指が絡まらないように弾くだけで、精一杯になりそうですね。

右手は16分3連符なので、3音ずつでとらえやすいでしょう。
きっと無意識に「3音ずつ」。
でもそれを、こんな風にとらえるとどうかしら?

「ファ」「ソファミ」「ファミレ」「ミレド」「レドシ」...

このような「とらえ方」をするメリットは二つ。

  • 弾きやすい
  • 推進力が出る

これは弾き方についてですが、このように音の動きをとらえる事で、音がどう動いていくのか?
という事を理解して、聴き続けられるようになります。

次に左手。

全て、8分音符で半音の動きだな〜と思っていると、ちょっと引っかかります。
ここは半音の動きなんだ!という所に目がいくと良いですね。
でもね、よく見てみましょう。

「ラーシ♭ーシードー レーレ♭ードーシー」という動きではないんです。
じゃあどうなってるのか?と言えば、

「ラーシ♭ーシードー ファーーーーーー」。
ここはその、2分音符の「ファ」に向かって行く事を理解しておきましょう。
そして、その「ファ」は伸び続けている事、それを聴き続けるんです。
音の行方と、それを追い続けるという事が大事ですよ。

人間は、どうしても次に弾く音の事だけで、頭がいっぱいになりやすいからね。
向かっていく先の音、伸び行く響きを、聴き届けるように意識してみましょう。

聴かせたい音は、押さないのがポイント

シューマン「子供の情景」”おねだり”から
シューマン「子供の情景」”おねだり”から

画像のソプラノの、8分音符の動きに注目。

8分音符は「シーソーファーミー|レーシードーーー」と、美しいメロディを奏でています。
でもね、内声の16分音符は2音ずつ「右手→左手」と交互に弾きますよね。
だから物凄く気をつけないと、「シソそー ファソみー|レファしー ドミ・・」と、違うメロディとして聴こえてしまいます。

そっか、「シーソーファーミー|レーソードーーー」を「出せばいい」んだね!
と思ってしまうと、その8分音符メロディ音の打鍵が、「押す」=手指は下へ落ちたままになりがち。

そうするとね、音量としては出るかもしれない。
だけど、綺麗な音にはならないの。
音は落ちて終わってしまいます。伸びやかにならないの。

じゃあ、どうすればいいのでしょうか?

それはね、それぞれの音を、打鍵する前に「聴く」こと。
私はこんな音が欲しいいう音を、聴くことです。

実際打鍵する手指はどうするか?
それはね、それぞれの鍵盤に指は真っ直ぐ入るように。
そして、イメージとして深く、斜め下に指先が入っていくように。
そして「てのひら」側から、ふわっと上がって鍵盤の向こう側へ行くように動いていきます。

そうしたら、音は綺麗に伸びていきますよ。

何を聴いたら終われるのか?

バッハ「平均律第1巻第1番」プレリュード
バッハ「平均律第1巻第1番」プレリュードから

ちゃんと「終わり」に向かって行きたいのに、何だかしっくりこない。
何が良くないんだろう?どう歌ったらいいのかしら?とモヤッとした時に。
右手の動きを歌うだけじゃない、もう一つ「大事」なコトがあります。

左手の「ドシーー」に注目。ここは何故、伸びる音なのだろう?
どうしてここは「ドドーー」ではなく、「ドシーー」なのだろう?と考えてみましょう。

すると、「ドシーー」の「シーー」は、最後の「ドーー」に向かっていくためにある、と気づくかしら。
ここは、ただの伴奏ではありません。「シーー」は「ドーー」に繋がってるの。繋がりに行っているんです。

でもね、伸ばす音でしょ。だから、ちゃんと「聴いて」あげないとね。
「シーー」は「ドーー」に「向かって行く」コトを、わかって弾きましょう。

だから右手の動きを、音の動きの波の通りに歌うだけにしない。
その一方で、この左手の「シーー」が伸びて伸びて、ぐんぐんと、次の「ドーー」へ向かって行く響きを、聴きましょう。
そう、聴き続けるコトが、大事なんです。

大事な音を聴いてあげていないと、終わりに向かっているコトに納得できなくなってしまいます。
だからもやもやして、良い塩梅で終われない。
あなたの中での、「良い塩梅」を見つけられなくなります。

伸びている音も、とっても大事なの。
打鍵して終わりじゃ、ないですよ。その音は、意味があって伸びている。
音は流れて繋がっていく。
楽譜は横に読んでいく。ちゃんと繋がりがあるんです。

だから、わからなくなったらもう一度よく楽譜の「横の繋がり」を、読んでみましょうね。

最後まで聴き届ける事に意味がある

ブルクミュラー「アラベスク」
ブルクミュラー「アラベスク」から

演奏する事において、一番大事なことは何だと思いますか?

それはね、最後の最後まで、音の行方の全てを聴き届ける事

画像の曲を、最後まで指が動かせるようになるだけで、満足してしまう生徒さんたちを、たくさん見てきました。

どんなに最後に至るまでの過程を細かく詰めて創り上げて行っても、この最後の音を打鍵した瞬間に、まだ指こそ鍵盤から離れてはいなくても、私の顔を、意気揚々とした表情で見るんですよ。
「どうだ!」と言わんばかりに(笑)。まさに「ドヤ顔」。

気持ちはわかるけどね、そうじゃないの。
その音の行方をちゃんと聴き届けようね!
最後の和音を打鍵したら「終わり」じゃないよ。

あなたの手は、その音を打鍵したら、そのまま腕が・手首が落ちてしまう。
それでは、音は落ちて終わってしまうの。
あなたの気持ちも、私の顔を観ているようでは「音など聴いていない」と言っているも同然。
音が可哀想だよ。

こんな終わりの音は、打鍵で手を落してしまわない。
鍵盤をつかみ上げるように、音を持ち上げて空中に飛ばしてごらん。
ほら、落したままの時と音の出方が違うよ。
ね?聴いたらわかるでしょう?

フェルマータは、「1.2.3.4.」と数えるものじゃないの。
音の行方を聴きましょ。
「あぁ、いい音がふくらんでいった!あぁ、素敵♡」って、聴いてみましょうね。
それからですよ、指を鍵盤から離すのは。

最後まで聴き届ける
最後まで聴き届ける

この休符のフェルマータは、ただ数の分だけ「お休み」するんじゃありません。
音の無い空間を聴いて、そして呼吸をしなさい、という事。

ガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」
ガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」から

何のためにその音にフェルマータが付いてると思う?

その音を、もっと味わってね。「う~ん♡」って、その音にしびれて!
そうやって味わえないと、次が生きてきません。
次につなげていけないですよ。ちょっと気をつけましょうね。

ピアノ動画*モシュコフスキー「15の練習曲」Op.72-6

ティブレイクは、モシュコフスキー作曲の「15の練習曲」Op.72-6をお送りします。

よくアンコールで弾かれるようです。楽しくて大好きな作品♬

「聞く」を「聴く」に変えてるポイントまとめ

  • どうやって音を聴いたらいいのかは一つじゃない
  • 音の始まりはどこにあるのか、どんな音で始めたいのかを聴く
  • 音の行方をきちんと追って聴き続けよう
  • 聴かせたい音の打鍵は「押さない」のがポイント
  • 最後の最後まで音を聴き続けることで、きちんと終えられる

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