キリ・テ・カナワのマスタークラスからピアノ演奏に活かせるものは呼吸法とエネルギー維持だ
ニュージーランド出身のオペラ歌手・キリ・テ・カナワ(1944-)女史。
キリ・テ・カナワ女史が香港にいらして、香港演藝術学院で招聘して開催されたマスタークラスを聴講した時の内容をシェア致します。

学院の声楽科の生徒5人と、キリ・テ・カナワ女史のお弟子さん3人(オーストラリア人男性、アルメニア人女性、韓国人男性)、合わせて8人への公開レッスン。
ピアノを弾く時に実際に自分の喉を使って歌う事のないピアノ弾きにもたくさん得るものがある!と期待度マックスでピアノ科の学生たちも聴講。
さて、キリ・テ・カナワ氏のレッスンはどんなものだったのか?
ピアノに活かせるキリ・テ・カナワの呼吸法とは?
Contents
お客様を前にして演奏するために必要な事とは?
キリ・テ・カナワ氏の公開レッスン。まずは8人の受講生それぞれが持ち曲を披露するところから始まりました。
ピアノも同じことですが、同じ曲ではなくても続けて聴き比べると、それぞれの持ち味・個性がはっきり出ますね。
声楽にはうとい私ですが、師匠がこのマスタークラスを聴講するよう私に勧められた意味がよくわかりました。
師匠が常々仰っていること。
それはオーディエンスを前に演奏するために必要な事です。
特に声楽の場合は、お客さんに面と向かって歌いますよね。
だから顔の表情から身振り手振り、まさに体中を使って観客を捉えねば・訴えねばならないでしょう。
つまらないと、途端に頭を抱えてしまったり、眠くなる。
ピアノ弾きの場合は、顔を正面からお客様に見せているわけではありません。
それでもお客様は全員、ステージにいるピアニストを「見て」いるんすよね。
本当は音を聴きに来ているのだけど。でもね、目に飛び込んでくる印象は強いもの。
過剰なアクションは気持ちが引いてしまうこともあって危険だけれど、全くその奏者の体から発せられるエネルギーを感じられないと、つまらない演奏になってしまう危険が。
そこに過剰なアクションがなくても、奏者に物凄いエネルギーがあれば、それはオーラとなって会場中を包むでしょう。容姿の問題ではありません。
はじめに、ピアノの伴奏(前奏)だけのところでも、その時に歌い手がどのようなエネルギーを発しているのかが、重要なことだとわかりました。
(実際にマスタークラス最後の個々のご指導の際にかなり注意されていました。)
自分の演奏中(歌っている最中)だけでなく、ステージに出た時から、もうあなたはお客様に見られている。
あなたは演奏中と同じ緊張感・エネルギー・オーラを発している必要がある、ということです。
キリ・テ・カナワの呼吸法
8人の歌が終わってから、まず、キリ・テ・カナワ女史が8人をステージに円をくんで立たせてやったことが、呼吸法です。
まず、足を軽く開いて、肩を開いて立つ。
右手を顔の前に上げて、その手を円を描くように自分の体の左側→下へと落としながら上半身をも落としながら、息を吸う。深くゆっくりと。
そして、右手を右側へ→上へと上げながら上半身を起こしていく。
次に、右手が頭上に上がるまで息を吸い続ける。
いつの時の呼吸も、このサークルの呼吸が大事であるとキリ・テ・カナワ女史は仰り、何度も何度も受講生たちに体感させました。
そしてその後、「さ、皆さんもやるのよ!立って!」と客席を振り返って。
聴講生だった私たちは各々の席から立ち上がって、それぞれスペースをとって
(そんなに多くの聴講生がいたわけではなく、学院の声楽科の生徒とピアノ科の師匠の弟子たちくらいでしたが)、同じ事を何度も何度も体感させられましたよ。
その後、
「では同じ事をやりながら、最後に右手が頭上にきて息を吸い込みきったら、左手の人差し指を唇の前にかざして、”うーーーーーーー”と声を出しましょう。息を吐ききるまでゆっくりと。」
と仰られ、全員やらされました。
あぁ、この呼吸だな。これはそのままピアノに使える。師匠が常々仰られること。師匠がこのマスタークラス聴講を勧めてくださった意味がよくわかりました。
そして呼吸法はまだまだ続きます。
うん、この点がピアノのマスタークラスと違いますね。ピアノのマスタークラスの場合は、受講生一人ずつ、持ってきた曲に対して、その奏法・表現法についてやるだけ(だけって、それだけでも物凄い勉強になるわけですが)。
声楽のこのマスタークラスは、受講生全員に対して、まず同じことを、それも重要なことを客席も巻き込んで指導されました。
キリ・テ・カナワのテクニック秘技を伝授❗
そして受講生それぞれ、もう一度一人目から歌わされ、途中で止められたりしながらテク秘儀伝授に入りました。
キリ・テ・カナワの秘伝のテクニックの一つをご紹介します。
それは、高音を発する時(主に盛り上がって、その音を長く伸ばす時)の呼吸法。
さきほどの「サークルの呼吸」と要領で、深く体に息を吸い込むのが大前提です。
そうして腹部に取り込んだ息を、わき腹から体の後ろ(腰の上の筋肉)まで吹き込むように(横隔膜を広げるように、ですが、更に本当に背骨まで回す勢いで)。
そうすると、更に豊かで美しい声が出てきます。
もう一つは発音の問題。
キリ・テ・カナワの「V」の発音
キリ・テ・カナワ女史曰く、「V」の発音は要。
普段、歌詞で歌っていますが。その歌詞をとっぱらって、メロディを「ぼぼぼぼぼV(ヴィ)~」と歌ってみましょう。
普通の歌詞のところは「ぼぼぼぼ」発音で歌い、「Vワード」のところは「V(ヴィ)」で歌う。
また、フレーズの終わりの発音を「V」にする。
ピアノを弾くあなたも、何か取り入れられることがあると思いますよ。
キリ・テ・カナワのマスタークラスから活かせることのまとめ
- ピアノ伴奏の前奏や間奏で待っている時に、体をねじってくつろがない
- その間でも体中で呼吸をし、エネルギーを満たしておく
- 体はピアノにもたれかかったりせず、前方へ(前にいるお客さんに気を発しておく)
これをピアノ弾きに置き換えると、ステージの袖から出る前から気持ちを演奏中と同じレベルに持っていくこと。
演奏が終わって鍵盤から手を離しても、お辞儀を終えて舞台袖に戻るまでは、緊張感を途切れさせない。舞台袖に戻るまでが、あなたの演奏本番である、ということですね。
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