リスト「超絶技巧練習曲」第10番ヘ短調を練習する7つのポイント
ピアノを弾いていると、「ピアノの魔術師」と呼ばれているハンガリー出身の作曲家、フランツ・リスト様の作品に強いあこがれを抱く時が訪れるでしょう。

リスト様の作品もたくさんありますし、美しい曲・激しい曲など様々。
そんな中で、今日は「超絶技巧練習曲」という、これまた凄いタイトル付けたなぁと感心してしまう曲集から、第10番ヘ短調を取り上げて、練習のポイントをお話していきますね。
リスト様の「超絶技巧練習曲」は、2度の改定を経て1852年、リスト様が41歳の時に第3稿である現在多く弾かれているバージョンが世に出ました。
全12曲あり、タイトルが付いている曲もありますが、第10番はタイトルなし。
ただし、「熱情」と呼ばれる事もあります。
Contents
自分勝手に盛り上がらないのが最大のポイント

このリスト作曲「超絶技巧練習曲第10番」は、全てにおいて「うるさすぎない」よう注意を払うことが大事です。
フォルテばっかりにならないよう、気をつけましょう。
出だしは「ピアノ(p)」ですよね。
ちょっと気合が入ると、ついフォルテになってしまいませんか?
出だし。あなたが思っているよりも、もっとエネルギーを押さえてみましょう。
この両手で交差させていく重音を弾くフレーズ(1〜2&4〜5小節目)は、どちらもトップの音がメロディ・ラインになっています。
それが歌として聴こえるように。
まず、あなたが重音のトップの音のつながりを歌う事を意識してみましょう。
拍の意識の仕方
この超絶技巧練習曲第10番は、4分の2拍子です。
しかし気をつけないと、うっかり「4拍子」になりがち。
16分音符3音ずつのカタマリで、あなたの体は拍を取っていないか?見直してみましょう。
これがね、重音を打鍵することに意識がいってしまうと、最悪12拍子になってしまうんですよ。
気をつけましょうね。
3小節目・6小節目は特に「4拍子感」になりやすいので、注意しましょう。
何がいけないって、2拍子なのに4拍子感・12拍子感が出てしまうと、演奏から推進力が失われてしまいます。
どこへ向かっていくのか?を理解しておく
もう一度、画像を出しますね。

最初のラインは、和音の上の音を出すのが第1。
でも、それだけじゃありませんよ。
この重音を交互で弾くフレーズは、全てはハイ・ノート=高い音に向かっていきます。
だから、拍頭が強くならないようにね。
フレーズとしては音の動きは下りていきますよね。
でもね、こうです。
- ファソファミファミレミレ…ではなく
- ファソファミファミレミレ…というように意識を持っていく。
これが、「高い音に向かっていく」という意味です。
打鍵に余計な動きはないか?どう打鍵するか?
3〜4小節目の左手を見てみましょう。

「ファ・ド・ファ」という音の動き全てを強調しないように。
8分音符で表記されている「ファ..ミ..|ファ..」という動きを聴きましょう。
ここで聴かせたいラインはそこだけ。あとは抜けていくように。
そのためには、打鍵においての余計な動きを、できるだけ省きましょう。
余計な動きをしていないか?
頭が動いたり、必要ないのに前傾してはいないか?
見直してみましょうね。
打鍵1音ずつで手が上下に動かないように。
ただ横に滑らすだけですよ。3の指を軸にしてね。
次に右手。もう一度画像を出しますよ。

3小節目の右手の動きです。
「シードッ レードッ」って跳ねてしまわないように気をつけましょう。
ここでね、跳ねてしまうと「シードー」と「レードー」が別物になってしまうんです。
でもね、これは別物ではなく一息。
一息で、ただ「シードー」で少し息をホールド=貯めるだけ。
この時、腕が上がらないようにね。
そのために、最初のオクターブ(シ)は上の音を、4の指で取れるといいですよ。
ここで4の指を使えれば、次の「ド」打鍵で飛び上がらず弾けます。
画像二段目の4〜5小節目、どう気をつけるか?は、1〜2小節目と同じ。
ただし4〜5小節目は、1回目とは同じじゃありませんよ。
cresc.とdicresc.の指示があります。見逃さないようにね。
どこに向かっているのか?を教えるために

初めからの流れの全ては、13小節目(画像1段目の2小節目)青○音に向かってきていますよ。
だからこの画像の1小節目は、そこに向かっていくということを、はっきり見せないといけません。
そのためには、青○音の前の赤○ラーソは、それまでと同じ打鍵をしないように。
具体的にどうすると効果的か?というと、
「ラーソ」のソも聴かせるのです。
通常だと、「ラーソ」のように音が降りるなら、軽くデクレッシェンドですよね。
でも、ここではそうしない。「ラーソ」の「ソ」を引っ込ませないんです。
「ラーソ」の「ソ」もテヌートのように大事に扱って、ちゃんと次の青○の重音へ向かう。
その目的である青○音は、スタッカートで腕が上がってしまわないように。
打鍵の瞬間に既に手首が上がるのではなく、「つかむ」。
この音はグリップするんです。
その後の青○音も全てグリップする事を意識して、弾いていきましょう。

ここ17小節目の動きは、ただ何となくシャラシャラと弾かないで、音の波(型)に沿って歌いましょうね。

さぁ、20小節目。ここは、この赤○音を溜めて弾き、そして次第に萎ませてみましょう。
アルペジオ・フレーズに有効なポジション移動の練習方法

ココからは左手が重要ですよ。
ポジション・チェンジの用意をすばやくするのがポイントです。
1音ずつ指・手・腕が動いていくのではなく、打鍵前に一度に掴めるコード全てに指を用意しておくこと。
そしてポジション変わる時、瞬時に次のポジション全ての音に指が到達していないといけません。
それが出来ているかどうか?をよく観察しながら練習していきましょう。
最初はゆっくりから。
ポジション・チェンジのところで、次のポジション全ての音に指を和音化して用意出来ているか、一度そこで動きを止めて確認してみましょう。
これが、各小節・各ポジションで弾く音をコード化(和音化)して、パッパッと掴むポジション移動の練習方法です。
重音スタッカートは飛びすぎないのがポイント

全ての音の打鍵で、飛び跳ねすぎないように気をつけましょう。
飛び跳ねすぎると、動きに無駄が多く出てしまいますよ。
これらの動きは1拍ごと、その拍内では場所移動はありませんよね。
だから、1音ずつジャンプしないで、指先だけで軽い打鍵で十分です。
右手の1音目は、指の先だけで軽く打鍵、それと同時に2音目の和音の鍵盤に指が乗るように。
2つ目の打鍵は1つ目とは違って、打鍵と同時に指は全て鍵盤の向こう側に伸びる感じでね。
でも、素早くですよ。
ポイントは、おはじきをハジク時の要領です。
左手も1音ずつ飛ばないように。
オクターブになったら、4の指も上手く使えるといいですね。
フォルテシモからのクレッシェンドのポイント

ここ122小節目からは、この前のところからのフォルテシモが続いています。
フォルテシモ・フレーズの中にcresc.が出てきたら、それは「そこで一度緩めて、落としたところから改めてcresc.する」という事ですよ。
ずっとずっとフォルテ(フォルテシモ)で大きいままクレッシェンドしても、通じないですよね。
アルペジオとポジション・チェンジのポイント

ここで聴かせたいのは内声の8度赤○ライン。
でもね、打鍵に無駄な動きが多いと、うるさくなってしまいます。
アルペジオでポジション・チェンジしていく時に、指がバタバタしていないかチェックしましょう。
ポジション・チェンジしたら、もうそこに指は用意されているんですよ。
だから、無駄な動きをしなくても大丈夫!って言い聞かせてね。
ポジション・チェンジも、ただ横にスライドさせていくだけでいいの。
上下に動かないこと。
そうするとね、これまた余計な音量は抑えられますよ。

ここ159小節目のアルペジオは、やはり始めからうるさくならないように。
スタートはピアノでね。
あなたが思うよりも、もっとソフトで十分です。
そして一気にcresc.してaccel.していきましょう。
出だしを意識して抑えるだけで、随分と演奏効果・印象が変わりますよ。
オクターブ打鍵はカンガルーのジャンプを意識するのがポイント

赤○ファの8度で上がっていく右手。
ここは「じゃんじゃんじゃん!」と、何となく弾いてしまうと、音が汚くなりやすいので注意。
手首も肩も背筋も、全ての力を抜いて。
指先の緊張感だけは失わないで。
そして、体中の重みを肘で「感じる」。
そうして、カンガルーがジャンプするみたいに腕をバウンドさせて打鍵していきましょう。
そうするとね、綺麗で抜ける「いい音」が飛んでいきますよ。
そして続く怒涛の最後の和音たちは、やはり1音ずつ「どっこいしょ」って、座ってしまわないようにね。
どんどんどんどん、カンガルー戦法で弾いていきましょう。
ピアノ動画*リスト「超絶技巧練習曲第10番」
ティブレイクは、リスト様の「超絶技巧練習曲第10番」をお送りします。
2006年10月、香港スペース・ミュージアム・ホールにて。
ピアノはベーゼンドルファーでした。
まとめ
- 自分勝手に盛り上がらない
- どこへ向かっているのかを教えるために打鍵の仕方を考える
- アルペジオ・フレーズのポジション移動で有効な練習は移動後の和音化をすばやくすること
- 重音スタッカートは飛びすぎない
- フォルテシモからのクレッシェンドは、一度ゆるめるのがポイント
- アルペジオとポジション・チェンジのポイントは無駄な動きを抑えること
- オクターブ打鍵はカンガルーのジャンプを意識してみよう
さぁ、あなたももっと体をラクに使って、もっと楽しくピアノを弾いていきましょう!
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