メンデルスゾーン「スコットランド・ソナタ」第3楽章練習のポイント
フェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)作曲の「スコットランド・ソナタ」Op.28は、3つの楽章から成っています。
日本では「スコットランド・ソナタ」という曲名で有名ですが、原題は「ファンタジー」。
この「スコットランド・ソナタ」はどの楽章もなかなか難しいのですが、とても魅力的な作品なんですよね。

今日は、その第3楽章を仕上げるための練習ポイントを教えちゃいます!
あなたの練習のご参考にどうぞ!
Contents
タッチに気をつけよう

軽く。全てを軽く。
フォルテで始まるからと、叩きつけるように鍵盤の底までしっかりと打鍵すると、重くなりますよ。
そして推進力もなくなってしまいます。
「スコットランド・ソナタ」第3楽章はね、「ロンド・カプリチオーソ」のPrestoの入りの部分と同じ。
あなたが「ロンド・カプリチオーソ」を弾いた事があるなら、思い出してね。
鍵盤の底まで打鍵しない。
指先のほんの一点のみのタッチですよ。
そして、全ての音をしっかり弾かない、聴かせない。
各拍(1拍=16分音符六つ)のはじめの三音だけです。
まずは、この点に気をつけて練習しましょう。
打鍵の仕方は

16分音符フレーズ、拍頭となる音は大事です。
でもね、それらの打鍵では手首は使いません。使うのは、ヒジの内側から。
16分音符6音かけてヒジからの動きは1アクション=1回転となります。
では、その打鍵での「フォルテ」をどうやって出すか?
それは、「腕の重みを鍵盤に乗せる」こと。それだけです。

オレンジで○をした所では「手首の回転を使っていく」のがポイント。

右手。赤で囲んだ16分音符4音に注目してね。
それぞれ4音の並びの、第1音の打鍵時に気をつけること。
→てのひらに一番近い指の第3関節を使っての打鍵で、手首を立たせてしまわないように。
ここでは、第1音の打鍵の時に、手首を使って落とします。
ただし、手首をカクンと折るように使うのではなく、打鍵のためのエネルギーの元は、肘の内側から。
だから、打鍵で手首を落としきったら、続く音を弾きながら回転させていきます。
落としたまま動きを止めないのがポイント。
もう一つ。
「れどしら」は4本の指を寄せて、指をできるだけまっすぐ伸ばし、指の腹で鍵盤をつかむようにして超レガートで弾く。
これは、第3関節を使わずに打鍵できる人なら、そうしなくても良いこと。
でももしあなたが第3関節を使わずに打鍵する事が難しいなら、この方法を取れば、キレイに弾けますよ。
指をまたいだ終わりの2音(16分音符6音の終わりの2音)を弾く2本の指は、少し指をはっきりめに動かして、
超レガートではない「少しはっきりした打鍵」をしてみましょう。
つまり、違うアーティキュレーションで弾くということです。
テンポは速いのに速く聴こえないのは?

テンポは速いのに「ゆっくり」に聴こえるのは、音が「Sit down」して(落ちて止まって)いるからです。
テンポは、結構速いのに遅く聴こえる演奏になってしまうこと、結構ありますよ。
逆に、テンポはそんなに速くないのに、結構な速さのように聴こえる演奏もあります。
つまりそこに「推進力」があるかどうか?
推進力を出すには、軽く弾く。鍵盤の底までしっかり打鍵していると、前へ進んでいけませんよ。
右手の手首を回転させながら弾いても相応しい音が出ないなら、手首を軽く上げてみましょう。
回して上げるのではなく、すっと上へ。ただし、上げすぎないようにね。
「指くぐり」があって、ポジション移動をしていく時も、必ず「3」の指を軸にしましょう。
その「3」の軸を、絶対にぶらさないこと。軸ですからね。
用意すること

左手、「シとレ」の和音の二つ目を打鍵した瞬間に、次の「ラとド」の和音へ、指のポジション用意をしましょう。
アクセント音では右手も左手も、打鍵の瞬間に軽く手首を上げると良いですよ。

オレンジで○をしているところ。ここの「間」の「音」を聴く。そのために、息を吸う。
そして、きちんと「終わる」ことを聴きましょう。

右手アルペジオは、第1音打鍵の時に、手首を使ってしっかりと落として回していきます。
そして「指くぐり」をした後の2音は弾き方を変えること。

右手「しれふぁしれふぁし」というアルペジオ。
「しれふぁし」で指くぐりをした瞬間に、次の「れふぁ」の指を用意しましょう。
「れふぁ」打鍵の時に息を吸ってね。
そしてそのアルペジオ最後の「シ」は、
5メートルくらい、ジャンプする時の呼吸と腕の感覚を、実際に座ったままでやる」感覚で。
そして、そのまま、その腕はただ「落とす」だけ。
落として、オクターブの「シ」二つは打鍵する。
決して、腕の動きと呼吸を改めない。アクションは一つですよ。
2オクターブのアルペジオは、「1」の指ではなく「3」の指が軸です。
指くぐりをした瞬間に、次の「3」が定まっているよう意識してみましょう。
そして、そこの左手は長めにね。8分音符分、きちんと置いてあげましょう(響かせてあげましょう)。

「しそふぁ」で息を吐いていきましょう。
そして、「ふぁ」から「み」で息を吸う。
ココでジャンプしないように気をつけてね。

左手の和音は、上の音「どっふぁっらっど~」がメロディなのではありません。
もちろん、それもメロディの一つですが、下の音「らっどっふぁっら~」も、メロディだということを忘れないように。
だから、一つ目の和音と二つ目の和音で同じ音がありますが、これらを同じ打鍵をないよう気をつけましょう。
同じ種類の音ではないからね。打鍵する指の「面」を変えるのがポイントです。
また、左手の和音4つは、「始めの2つ」と「後の2つ」で、同じ指を使う音が(同じ音なので)。
同じ指を続けて使う時は、必ず打鍵し直しましょう。
つまり、指の用意をし直すという事です。そのままの位置で弾かないように。
打鍵で音色を変える

しかし、それまでと違うフレーズにいくココでは、息を吸うところで呼吸は同じでも、腕の動きは1アクションではなく、2つに分けます。(「しそふぁみ」までと、16分音符の「しどしど」の入りへの動きを、分ける)
そうすることで、音の種類を変えられるから。
そして右手は16分音符フレーズの中の、オレンジ○のところで手首の回転を使って、音を聴きましょう。
そう、「音のしっぽ」を聴くのです。
左手の和音も、基本的に「どふぁらど」という動き=ラインである事を忘れないようにね。
一音ずつブチ切れにならないようにするためには、指の用意が肝心です。
「ラとド」の和音から「ドとファ」の和音へは、ポジション移動をしないで弾けるが、そこから次へは
ポジション移動しなければなりません。
その移動は、「ドとファ」打鍵後、瞬時に。
指が怠けないようにね。
右手は下降していくが、左手は上昇していくのだから、左手の方が大事になりますよ。
左右やる事が逆になっていきますね。
この左手は、ホルンをイメージしてみましょうか。
3の指が軸になる

左手の16分音符フレーズの始まりは「3」の指から。
「3」の指が「軸」となりますよ。
他の指、他の音それぞれの打鍵をしないで。
必ず、「3」が軸。=(つまり)「2」や「1」指打鍵で、手の中心がぶれないようにする事。

「指くぐり」で肝心なのは、「1」の指での打鍵の瞬間に次の2音の準備(ポジション移動)をすることです。
それぞれの音を打鍵する直前に移動させていくのでは、歌にはなりません。
何故って別個になってしまうから。
この時、移動の指令を出すのは「3」の指です。
「3」の指の方向で次の2音への指を導きますよ。
打鍵と呼吸

右手と左手が「ぶつかる音」を聴きましょう。
その「ぶつかった音」が気持ちを表していますよ。
右手の付点4分音符の和音は、その音の長さの分の時間をかけて、音を(鍵盤を)「つかみあげる!」感覚で弾いてみましょう。

息を吸うのは、「長く伸ばす音」か拍の頭(メイン・ビート)。
右手、画像1小節目の終わりの8分音符二つでは、息は「ふっふっ」と軽く吐く。
打鍵もそれにならってね。
同じ音(和音)が続いても、その最後の一つは、決して同じではありません。
「最後」と書きましたが、それらの音は全て拍頭にありますね。ここは打鍵を改める。これがポイントです。

画像2小節目の1オクターブ上がったスフォルツァンド音への打鍵は、その前の音を「踏み台」にする。
走り幅跳びのジャンプのような、飛び込み台からプールにジャンプするような感じで。

左手、「ふぁどふぁらふぁど」は、1音目「ふぁ」と、続く「どふぁらふぁど」を分けて、とらえてみましょう。
つまり、指の用意の仕方としては、「ふぁ」から「どふぁら」の和音へ移行するという方法です。
そして1音目=「5」の指打鍵は、腕の内側から「プッシュ」するように。
左手の「山型」のアルペジオを弾く時は、「3」の指が軸になります。
ただし、手を回転させて弾くとはいえ、手首を上げすぎないように。
第1音打鍵の際に、既に第2音目の「3」の音に指が用意されていること。
1音毎に出て来ないように気をつけて。
第1音とそれ以外を分けたら、そのポジション移動だけでレガートで。
拍と呼吸を考える

右手のメロディは、16分音符の「高い音」の方になります。
だから、低音側の打鍵から流されたままの打鍵をしないよう気をつけましょう。
右手は「もっと指を使って」打鍵する。
左手は拍を刻む役割です。
その上で、8分音符三つ目と六つ目の打鍵をきちんとしましょう。
その意味は、必ず次の音へ向かう=拍を知らせる事にあります。
左手の同音連打は、指先を鍵盤から離さないで。
左手は、8分音符三つの三つ目で体・腕・手首が上がって前へいかないように気をつけて。
呼吸は「拍」にのるのがポイントです。

ここから、呼吸を深くしていきましょう。
→腕の重さがどんどん乗って行く
→クレッシェンドになる。

左手は、和音一つずつジャンプしないように。
指は限りなく鍵盤に付けたままで弾くと良いですよ。

画像の前拍から始まる新しいフレーズは、付点4分音符で続きます。
その付点4分音符は、1音ずつ手首を使って上げてしまわないように。1音ずつの打鍵をしてしまうと、1音毎に終わってしまうから。
さぁ、音の目的地はどこなのでしょうか?→4分音符の「レ」ですよ。
「レ」に到達するまでは、手首を・腕を上げきらないように気をつけて打鍵していきましょう。

左手16分音符の動きのある音(画像1段目の「そ・ふぁ・み・|ふぁ・み・れ・ど・し・ら・|れ」)を、非常に軽い打鍵で、スタッカート気味に弾いてみましょう。
そうすると、それらの音のつながり・動きがわかりやすくなります。
右手はここからのフレーズは、アーティキュレーションに気をつけましょう。
スタッカートやスラーの記載がない音は、「メゾ・スタッカート」だと思って軽く。

ここは、「Urgent !!!」非常に切迫した感じで。ピアニシモですが、緊張感を持って。
手、後拍となる16分音符の「られみふぁみれ」は、変に盛り上げないように淡々とレガートで。
そこに右手の和音スタッカートが乗る事で、切迫感・緊張感が表れます。
だから、右手の和音スタッカートの打鍵の具合を、どのくらいにしたらより緊張感が出るのか、あなた自身でいろいろ試してみましょう。
オクターブ・フレーズをフォルテシモで弾くポイント

オクターブ・フレーズのフォルテシモ。ポイントは二つ。
- フォルテシモは全ての音がフォルテシモではない
- フォルテシモのスタッカートは短く、ではない
そのためには、1音毎に指先を動かさないように。
指の状態は同じにしておいて、打鍵する。
ただし、下降と上昇では異なるため、それに応じて「とらえ方」を変えてみましょう。
拍のとらえ方とタイミング(間)

8分の6拍子では、3拍目と6拍目は「その次の拍の始まり」と、とらえてみましょう。
そうする事で、音価が欠け気味で急いてしまうのを防げますよ。
どんな時でも、「1拍目に入る時の呼吸のタイミングが大事」だということです。
二声の練習法とアルペジオ(山型)の弾き方

ここの左手は、「二声」になっています。
だから練習は「上声を右手」で、「下声を左手」でとって弾く練のが理解しやすく効果的ですよ。
二声は、それぞれが「どこに向かっていくのか?」その終わりまで「きちんと向かっていく」ことを忘れないでね。
特に、ベースラインはテナーのラインを受け継いでいる(まだ終わっていない)という事に意識をおきましょう。
また、右手のこの型のアルペジオは、上昇と下降では打鍵の仕方は同じにしないように。
これは音階の弾き方の基本と同じ事ですよ。
つまり、上昇では息を吸って軽くクレッシェンド。
下降では息を吐きながら軽くデクレッシェンドです。
どこへ向かっていくのか?

左は拍を維持します。
右手は次の小節の第1拍に「向かって行く」。

右手は1拍目の音は8分音符、そして8分休符が二つ続きます。
その休符は、1拍目の8分音符の音の「響きを聴け!」という事です。
聴いていないから、その休符のところで、「間抜けに」左手の音が鳴ってしまうの。
「間抜けな音楽」にしないよう、気をつけましょうね。

右手のオクターブ8分音符連打は、1音目と2音目は同じでいいのか?と考えてみましょう。
同じ音が続く時はいつも注意が必要です。
ほとんどの場合、同じ意味を持って繰り返されることはありません。
意味が同じではないなら、同じ打鍵は絶対にしないこと。
ここの場合は2音続いて休符になりますから、1音目は落して拍を知らせ、2音目は上げるという、2音で一つの打鍵の動きをしてみましょう。
他の楽器をイメージしてみよう

右手の上声は、シリアスではないので軽く。
もしここがヴァイオリンで演奏するというイメージなら?

右手に同じ音「ド」が3音続いていますよね。
始めの2音(8分音符)は、短い弓使いで。
終わりの4分音符は、長いボウイングで弾く。
という音の出方と動作をそのまま、ピアノでも表してみましょう。
そしてここを会話で表すなら、1回目(・どどどーれ)と2回目(・しししーど)は「クエスチョン」で、3回目(・らららそふぁ…)は「アンサー」という形になります。

左手16分音符は、拍頭となるベース打鍵が重要です。
だから、他の音も拍頭と同じように打鍵しないこと。
そして左手アルペジオのトップ音は「1」の指で打鍵するとした場合、その「1」の打鍵を怠けないで。
きちんと、「手の甲を向こう側へ見せるような形」で打鍵しましょう。
そして鍵盤まで、打鍵より先に指を用意する形でもっていくこと。
ピアノ動画*メンデルスゾーン「スコットランド・ソナタ」第3楽章
ティブレイクは、メンデルスゾーン作曲「スコットランド・ソナタ(ファンタジー)」の第3楽章をお送りします。
なかなか、大変な曲でございます。
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