バッハ「パルティータ第2番」をピアノで練習するヒント!解説付き

2020年5月12日

バッハ作曲の「パルティータ」は、「6つのパルティータ」として鍵盤楽器(クラヴィーア)のために作られました。

6曲のパルティータは、どれも素晴らしい作品です。
この記事では「パルティータ第2番BWV826ハ短調」に焦点を絞り、どのような点に気をつけて練習をしたら良いか?のヒントをお伝えします。

もしあなたが今、バッハの「パルティータ第2番」に取り組んでいたり、これから弾いてみようかな、あるいは前に弾いたんだけど、もう一度弾いてみようかな?と思うなら、何か1つでも参考になれば嬉しいです。

もちろん、ここに書いてある事が全てではないですし、絶対でもありません。
音楽に絶対はありませんから。

あなたの音楽は、あなたが創る唯一無二のものです。

だから、ヒントですよ。
ここに書いてある事を読んで「いやそれ違う」と思うのも良し。
なぜ違うと思うのか?
あなたが感じる事を徹底的に追求して大事にして、あなたの音楽を創ってくださいね。

Contents

シンフォニア

では「パルティータ第2番」の第1曲”シンフォニア”から。

「シンフォニア」は「Grave adagio」「andante」「allegro」の3つのセクションから出来ています。

Grave adagio リズムから性格を理解する

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”出だし

この出だしで何を大事にしたら良いと思いますか?

それはね、リズムです。とても特徴のあるリズムですよね。
しっかり響くであろう4分音符に、16分休符を挟んでの右手三度音程での動き。

これをね、いろんなピアニストの演奏を先に聴いてしまうとね、楽譜に書かれている通りのリズムで弾いている人もいれば、「付点」の音符を「複付点」にしてリズムを強調して弾く人と、二種に大別出来るでしょう。

どっちが良い悪いではなくて、記譜通りにリズムを取ってみる。
そこに音色や厚み・深さ・強弱などのあなたのエッセンス・ニュアンスを加える表現方法もあれば、あなたの息遣いとしての、あなたのタイミングが加わっての演奏表現も有り得るということ。

ただし、ここで大事なのは、「最初に正しいリズムを確実に知り、自分の中に落とし込んで理解しておくこと」

その上で、あなたが記譜通りにリズムを取るのか否かを選ぶのは良いんです。
でもね、どちらかに決めたら、きっちりかっちりその確固たるリズムで弾ききる事をオススメしますよ。

何故かって?それはきっとあなたがこの「パルティータ第2番」を手がけているなら、気付いているでしょう。
この曲の始まりであるこの”シンフォニア”は、この「パルティータ第2番」の性格を宣言する立ち位置だから。

リズムから呼吸を考える

「伸ばす音+休符」では、息は吸い続ける。もしあなたが息を吸い続けなければ、休符のたびにフレーズが途切れてしまうでしょう。

もう一度、最初の画像を出しますよ。

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”出だし

まず一つ目のフレーズは2小節目まで続いている事を理解しておきましょう。

さて、1つ目のフレーズが2小節目まで続いているなら、2小節目までは息を吸い続けなければなりません。
2小節目まで息を吸い続けないと、その次の音へ繋がって行かないからです。
休符が入るたび、いちいち終わってしまう。

それを避けるために、呼吸を大事にしてみましょ。
息の長いフレーズを、息の長い音楽を意識してみましょうね。

休符の意味を考える

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”2小節目

一つ目のフレーズの終わりとなる2小節目を見てみましょう。

この画像の第4拍に入る右手の16分休符(左手は4分休符)を、「フルストップ/句点(。)」と捉えるのか?
それとも「カンマ/読点(、)」と捉えるのかで、その休符の意味は180度変わってきます。

16分休符であることに変わりはなくても、意味は1つではない、ということも知っておきましょう。
これはもちろん、休符に限りません。

では画像の場合ですが、答えを言ってしまうと「カンマ/読点(、)」です!

2小節目までで1つのフレーズだとは言え、まだ次へ続いていきます。
つまり「ここで本当に終わり」という打鍵をしてはならない、という事。

フレーズは、それ自体で完結するものではなく、次のフレーズへと向かっていくもの。

フレーズ→フレーズ→フレーズ・・・とつながっていって、1つのセクションを作り、そのセクションはまた次のセクションへとつながっていきます。
セクションの集まりが1つの曲となる。

そういう意味でも、2小節目の第3拍の打鍵から、次の音への打鍵と呼吸は大事にしてみましょう。
ここでの呼吸は、息を吸い続ける。

この「伸ばす音→休符」で、クレッシェンドしなければなりません。
どうしてクレッシェンドしなければならないか?というのはね、この次のフレーズは、更に高い所へ上がって行くからです。

(演奏表現に効果的に反映させる楽譜の読み方のコツですよ)

休符で音を止めてしまわない打鍵法

第3拍の打鍵後、あなたはきっと手を上げるでしょう。もう一度画像を出しますよ。

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”2小節目

もし第3拍の4分音符を打鍵した後に一度上げた手を「止めてしまう」と、そこで音が止まってしまいます。
言い換えれば、響きが落っこちて終わってしまうので、次へ繋がらないのね。

だから、第3拍の打鍵で決して手の動きを止めずに、とす!ただ、落としてみましょう。
落としたところで止めちゃだめよ。落とし切ると同時に、あなたの腕は背筋から二の腕から全てが連動して外側へ広がるように上がっていく。

例えば、太鼓を叩く事を想像してみましょう。

あなたは太鼓を打つスティックを振り下ろしたら、次にまた振り下ろして太鼓を打つ用意のために、腕を上げるでしょう。

歩くことを想像してみましょうか。

あなたは前へ進むために、右足を出しました。
でもそこで動きを止めたら、それ以上は前へ進めませんね。
だからあなたの股関節やら膝やら足首やら、また様々な筋肉は動きを止めないでしょう。
次に左足が前へ出るために。

音の響きを止めてしまわないコツは、打鍵で腕の動きを止めないこと

どこをどう歌うのか?考える

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”から

きっとあなたはこのフレーズでは、右手の内声を歌っているでしょう。(れーどしどーーそ)
それは間違っていません。

「じゃあ、ソプラノはどうなのよ?」

って考えてみましょうか。
ソプラノの動きだって、ないがしろにしていい筈はありません。
何となくそこに音が置かれているわけではないのですから。

ソプラノである4分音符(第4拍と次の小節の第1拍)「ミ→ファ」も、気にかけてあげましょう。
そう、歌うのね。

音の動きを止めないために、手首を使ってみよう

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”から

さぁ、”シンフォニア”6小節目です。

画像の左手ですが、はじめの和音打鍵で手の動きを止めると、
音がそこで止まってしまいますよ。
付点8分音符を長いと思うか短いと思うかは、曲次第・あなたの捉え方次第です。
しかしこの場合はそんなに短くはありません。

この付点8分音符は、次の16分音符へエネルギーが向かっていきます。
次の音へエネルギーが向かっていくなら、打鍵で音の響きを止めてしまうのはもったいないですよね。
ではどうしたら音を止めず、次の16分音符へ響きを(エネルギーを)つなげられるのか?

そのために、手首を使いましょう。

ロマン派は手首を横に回すけれど、
バロックは手首を縦(上下に動く回転)に回す。これがヒント。

打鍵したら上げる。上げたらいつかはまた落ちてきます。
そうして下がって来た時が、次の音の打鍵のタイミングです。

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”から

ここが、「Grave adagio」のクライマックス。
「フルストップ/句点(。)」ですよ。
「Grave adagio」の全ては、ココに向かって来るんです。

でも、忘れないでね。
「Grave adagio」は、「シンフォニア」の一部であり、「シンフォニア」は「パルティータ第2番」の第1曲であるということを。

いくらここがクライマックスでフルストップだと言っても、本当にここで終わりではありません。

andante

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”のアンダンテから

さあて、質問です。

このアンダンテのセクションを他の楽器に例えるなら、何かしら?想像してみましょ。
他の楽器なら何かしら?ってね。

これは一例なので、参考までに。

  • 右手は「オーボエ」
  • 左手は「チェロ」

右手はオーボエがレガートで吹いていると想像するのなら、そのオーボエでの歌い方をイメージしてみましょう。
もし、いや右手はフルートだわ!と思うなら、フルートで歌うことをイメージしてね。
もちろんクラリネットでもいいですよ。
ヴァイオリンでも良いかも?

1フレーズで手の動きは1回転、ということを意識してみましょう。
全ての音は、均等でなければならない。ポイントは、

  • 一音一音が「ランプ」になってはいけない
  • 一音一音は「クリスタルの輝き」であるということ

そしてそれらの一音一音が集まって、一つのフレーズとなった時こそ、「ランプ」になると意識してみましょう。

拍に乗るのとアクセントを付けるのは意味は違う

さて、左手は拍に乗るのではありません。もう一度画像を。

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”のアンダンテから

拍に乗ろうとするのとアクセントを付けるのは、意味が違います。
拍に乗ってる感を出すためにアクセントを付けて弾くというのは違うので、気をつけましょう。

左手の拍はね、ステップの一種です。
次の音への空間を感じてみましょう。
例えばね、第1拍はドから1オクターブ上のドへと飛躍します。
飛躍って言うけれど、大人なら手を広げれば比較的届く位置だと思いますから、ただ弾くだけなら難しいことではないでしょう。

音と音の間の感じ方

でもね、ドから1オクターブ上のドまでには、実際に弾かないけれど、たくさんの音がありますよね。

楽譜にしてみました。

そもそものパルティータの楽譜では、ヘ音記号8分音符で第2間のドからオクターブ上の中央の(上第1線の)ドへ上がりますね。

そのドから上のドまでの間には、実際に弾くことはありませんが、これだけの音が詰まっています。

それらの音を通過して経て、上のドにたどり着くのだ、という音と音の間を感じてみましょう。
そう、8分音符から8分音符の動きの中でですよ。
これも、どんな曲でもどんなフレーズでも意識すると、あなたの演奏が豊かになるので是非取り入れてみてね。

音の動きのシェイプ(型)を感じてみよう!

さてしつこいかもしれませんが、もう一度画像を。

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”のアンダンテから

左手はシェイプ(動きの型)を感じて歌って行く事を意識してみましょう。
どれも同じ8分音符で動いているからと、ただ一音一音をボタボタと落して弾かないのがポイントですよ。

そして、このアンダンテ出始めの「一回目」と、16小節目からの「二回目」では、左手のアーティキュレーションを変えてみる事を考えると、もっと面白くなってきますよ!オススメ。

タイの扱いをどうする?

さて、アンダンテでは右手に「タイ」が多く出てきます。

「タイ」の音を弾く時のポイントはね、この「タイ」の音が「実際には弾く音」だと思って、その音を「意識して聴く」ということ。
何故なら、そこでハーモニーが変わるからね、その変化を聴いてあげましょうね。

タイの音を意識して聴く練習は、タイを外して実際には弾かない音を弾いてみること。

カデンツは向かいどころ

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”から

さぁ、カデンツですよ。

カデンツだという事は、ココへ向かってこなければならない、という事。
それを知っておく。あなたが一体どこへ向かって弾いているのかを理解して弾く。
つまり曲の構成を知っておくということです。

あなたの演奏からダラダラ感をなくす重要ポイントですよ。

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”から

さてココからが「シンフォニア」”アンダンテ”の「二回目」ですよ。
(ん?二回目って何?って思ったら、この”アンダンテ”の項のはじめまで戻って読み直してみてね。)

ここから右手はどんどん上がって行くのだから、どんどん段階を上げて歌っていきましょう。

そして二段目の終わりは、カデンツですよ。忘れないでね。
ここにカデンツがあるって理解してここに向かっていきましょうね。

半音で上がって行く動きを見る

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”から

ここは右手のラインは降りて行きますが、左手は半音階で上がって行くというところに注目してみましょう。

半音の動きで上がっていくというのは、どんどん前へ前へと進んで行くという事。
この動きの最高音に向かって行く事ですよ。これ、ヒントね。

allegro

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”の”アレグロ”に入ったところ

さぁ、「シンフォニア」もいよいよ”アレグロ”に入ります。

ここで気をつけたいのは、8分音符が短すぎない事。
はじめの8分音符は、このアレグロの始まりでもありますが、それまでの”アンダンテ”の終わりの音でもあるのですから。
ちょっと余韻を感じるように、この8分音符の響きを味わってみるときっとあなたも「素敵」って感じられるでしょう。

さぁ、このアレグロでもただ各拍に乗っていかないで、音の動きのシェイプを感じて表していきましょうね。

バッハの3拍子はね、「ダンスを楽しむ」って事なんだよ!

by エレノア・ウォン教授の言葉(私の師匠)

16分音符の動きで気をつけたいポイントは押さないこと

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”から

ここは”アレグロ”のセクションです。
つまり、テンポは速いということですね。
こんな速いフレーズでの16分音符フレーズで気をつけたいポイント。それはね、

16分音符は、押して行かないということ。
ゴリ押しで勢いで弾かない。
つい、流されてしまいがちなのでね、気をつけましょ。
自分を後ろから操るようにね。手綱を握って。

8分音符は、拍頭のノリではなく、常に「シェイプ」を意識しましょう。

バッハ「パルティータ第2番」”シンフォニア”から

右手16分音符フレーズの打鍵は、手首の回転を使って柔軟に自然に弾いてみましょう。

左手で気をつけたいのは、16分休符を受けて入る16分音符。
決して押して行かないように。

16分休符を感じるのは大事なことですが、必要以上に16分音符を慌てず焦らず流さずにね。

このアレグロのフーガは、片手練習命!なくらい、片手ずつの練習に気持ちを込めて意識を向けてあげると、あなたへ返ってくるものが早いと思いますよ。

シンフォニア参考動画

あくまで参考程度に。

アルマンド

「パルティータ第2番」の第2曲「アルマンド」。

「アルマンド」とは、4拍子、もしくは2拍子が基本のダンスです。

バッハ「パルティータ第2番」”アルマンド”から

ちょっと画像がブレててごめんなさい。

音の動きはグルーピングするのがポイント

この16分音符の動きは一音一音ではなく、8音ごとのグループで捉えるのがポイントです。
(※ いずれも16分音符での話。)

つまり、右手の出だしで言うと、

  • 「らそふぁ|それみしど」で一つ
  • 「ふぁみれみしどそら」で一つ

というように捉えてみましょう、ということ。

その(16分音符で)8音=1グループで、手首の回転は一つこれが打鍵における腕の動きの原則

だから「ら」で手を落して(手首が落ち始めて)
「そふぁそ」までの4音で手首が落ちた後に上がりきってしまうと、
残りの「れみしど」は新たに回転し直すか、或は手首が上がったままでの打鍵をせざるを得なくなります。

新たに回転し直してしまうと何が変わるのか?
それは、8音=1グループではなくなり、4音=1グループになってしまうということ。

この曲が4拍子ならそれで良いかもしれません。
しかし、この曲は2拍子なのです。
だから、打鍵における「4音=1グループ」という捉え方は、ちょっと避けたいところ。

そしてね、「らそふぁそ」で手首を一回転してしまって上がりきったまま、残りの4音を打鍵する事になると、その残りの(後半の)4音は、「一音一音はっきり、全てが主張」になってしまいます。

それは避けたいところ。
だから計算しないといけません。
「計算」という言葉を使うのは気持ちよくないかもしれませんね。
言い換えれば「考えなければいけない」。
音への配慮をしなければね。

右手の出だし「らそふぁそれみしど」という8音の中でも大事な音があります。
どの音だと思いますか?

それはね、「らそふぁそ」。

どうして「らそふぁそれみしど」の中で「らそふぁそ」が大事になると思いますか?
3秒考えてみましょう。

では答え。

それは「らそふぁそ」という音の動きが音階になっているから。
つまり、二度音程で動いているからです。

どんな曲でも、音の動きはジグザグだったり音程が跳んだりする中で、二度音程で動くところがないか探してみましょう。
音程が動いている中で二度音程の動きが出てきたら、そこは要注意。
半音程ならもっと注意。

逆に、ずっと二度音程の音階の動きをしてきたのに、急に音程が離れるような動きが出てきたら、そこも要注意ですよ。

だから、「らそふぁそれみしど」という音の動きの中では「らそふぁそ」という二度音程の動きを大事に、十分に歌って聴かせてみましょう。
曲の出だしですから、あなたの歌(演奏)に釘付けになりますよ。

そしてね、大事に歌った「らそふぁそ」の後の4音「れみしど」では、緩めてみましょう。
対比を出すと、音は気持ち良く流れていきますよ。

攻めっぱなしじゃね、つらくなってしまいます。
好きだ好きだ好きだー!って、こちらの気持ちや状況も考えないで攻めてこられたら、逃げたくなりますよね。
駆け引きですよ。恋愛と同じ(あれ?笑)。

右手の後からは、左手が追いかけて出てきます。
同じように左手もグルーピングしてどう歌うか考えてみましょう。

右手か左手か、どちらがリードするのか見極めよう

バッハ「パルティータ第2番」”アルマンド”から

多くの作品では、左手よりも右手に歌がある事が多いでしょう。
しかし、右手にも左手にも歌が現れるのがバッハ。
右手に集中していると、左手に歌が登場することに気づかないかもしれませんよ。

画像左手の終わり「ふぁみれ」からは、左手がリードしていくのだ、ということを意識してみましょう。

バッハ「パルティータ第2番」”アルマンド”から

ここでは、左手が歌をリードしていますよ。
でもね、リードしているからと言って、左手の音を全面的に出せばいいかというと?ちょっと思い出してね。

出だしの右手のように、音階部をよく歌い8音=1グループの後半の4音は緩める。
(あるいはその逆もあり。大事にする時は必ず強調するとは限りませんよね。
 大事にするからこそ秘めた内なるエネルギーを持って歌うことも。)←ヒントですからね。

しかし、フレーズが繰り返される中で段階を上がって行く時は、
見ている情景がどんどん広がるように、
もっと高いところから俯瞰していくような感覚を持ってみる事をオススメします。

バッハ「パルティータ第2番」”アルマンド”から

こんなふうに、今リードしているのは右手かな?左手かな?
と考えて楽譜を読んでいくのも、あなたの音楽を創る上で楽しいひとときですよ。

動く音か?伸ばす音か?

バッハ「パルティータ第2番」”アルマンド”から

こんなフレーズでは、きっとあなたは内声の動きに注視するかもしれませんね。

私はあなたにソプラノのフレーズの「伸びる音」と、16分音符が次の伸びる音へ向かっていくという動きにも意識を置く事をおすすめします。

その伸びの中で内声が動いている、伸びている音の響きに内声が包まれているとイメージしてはどうでしょう?

エンディングは、ちゃんと終わらせる

バッハ「パルティータ第2番」”アルマンド”から

ここはエンディングなので、1つ前の画像のところのように、向かっていく歌い方をすると、終わらなくなってしまうので注意したい所です。

左手も、カデンツの動きをしていますよ。

バッハ「パルティータ第2番」”アルマンド”から

ここの左手は、何の楽器だと思うかしら?

スーンを想像してみて。バスーンの響きと吹き方を。テナー・サックスとかバリトン・サックスでも良いかも。

やはり、一音一音ではなく32分音符二つ+16分音符一つという塊で、32分音符の一つ目にのってみましょう。

歌い方・バトンの渡し方を考える

バッハ「パルティータ第2番」”アルマンド”から

ここの左手も「8音=1グループ」ですが、あなたの歌い方を考えてみましょう。

例をあげるなら、

  • 「そらしど(歌う)れみどふぁ(緩める)」でもいいし
  • 「そらしど(緩めて)れみどふぁ(歌って行く)」でもいい

それはあなたが考えて決めることです。
ただし、決めたらそれがきちんとわかるように弾いてみましょう。
どうやったらそれが伝わるかな?と考えてね。

そして、きちんと音のバトンを受け渡して、どんどん段階を上げて歌っていきましょう。

両手とも同じように動いている時の歌い方

バッハ「パルティータ第2番」”アルマンド”から

この画像の所は、両手とも同じような動きをしていますよね。
こんな時は、両手共に「音の波に合わせた歌い方」をしてみましょう。

素直にね、音が上がる時は「上向き」で、音が下がっていく時は「ゆるめていく」。

ベースの動きにも注目してみよう

バッハ「パルティータ第2番」”アルマンド”から

こんな左手の動きは、8分音符全ての動きを追う前に、ベースとなる低音の動きのラインを見てみましょう。

出だしの「レ」と、続く「ソ」。そして第3拍の「ラ」。

「レ→ソ→ラ」という動きです。

そのベースの動きから、右手で弾く16分音符の動きを見てみましょう。
右手も2拍単位で二度上がって同じような動きをしていますよね。
二度上るという動きを、左手ベースでサポートしてあげる感じです。

バッハ「パルティータ第2番」”アルマンド”から

バッハの作品は、どの楽譜(版)を使うかで、指使い・アーティキュレーション・強弱などの指示が変わってきます。
それらをどう捉えるかは弾き手次第ですが、

アーティキュレーションが書かれていない原典版で、スラーの表記がある場合。

これは、ッハの指示によるもの

だから、これは必ず守る事。
と私は教わりましたが、まぁ、弾くのはあなたですから、これは情報として持っておいて、どう弾くか判断するのはあなた次第ですよ。

アルマンド参考動画

こちらも参考までに。

クーラント

バッハ「パルティータ第2番」第3曲の「クーラント」は、3拍子である事を忘れないようにしましょう。
2分の3拍子は「3拍子」です。
4分音符で1拍にならないように気をつけてね。

その拍子感を明確にするのがポイントです。

拍子感を伝えるには「どこへ向かうのか?」を明確にすること

つまり、どこが1拍目なのか?3拍子なのか?が聴いている人に伝わるように弾く。

そのためには、弾くあなたがそれを感じていないとね。
どんなことにおいても、まずは「あなたがどう感じるか?」が大事です。
そして「あなたがそれをどう考えて創っていくか?」ですよ。

バッハ「パルティータ第2番」”クーラント”から

アウフタクトで始まる右手の第一音、8分音符の「ド」は、次の第1拍の同音和音に向かっていきます。
次の第1拍に向かっていくのだ、と理解して弾かないと、このアウフタクトの第一音が第1拍と捉えられかねません。

じゃあどうすればちゃんとアウフタクトで次の第1拍に向かっていくように聴こえるのか?は、呼吸も大事になります。
楽譜に書かれていない、第一音の前の拍を感じてみるとどうかしら?

始まりは8分音符ですよね。
ならばその8分音符の前に「8分休符」があるとしたら?
あなたはどう呼吸するでしょうね?

そんな事を考えていろいろやってみましょう。

  • 右手16分音符の「そらし」は第2拍の「ド」に向かい
  • 第2拍の「れみど」は第3拍の「ラ」に向かう

きちんと、次へ向かって行ってるのだというのがわかるアーティキュレーションはどんなだろう?
と考えて、いろいろ試してみるのもオススメですよ。

バッハ「パルティータ第2番」”クーラント”から

画像1小節目では右手ソプラノが、それぞれの次の拍に向かうように弾いていくとします。
しかし、画像2小節目の「ドレー」は、ここまでのフレーズのエンディングですよ。
エンディングになるなら、それまでと同じように「向かって行く弾き方」をしてもいいのでしょうか?

「始まり」と「終わり」を理解しておくことも、楽譜を読んでいく中で欠かせない事ですよ。

終わりなら、きちんと終わらせてあげましょうね。

いちいち疑問を持ってみよう

バッハ「パルティータ第2番」”クーラント”から

さぁ、唐突に最初の和音に「アルペジオ」の記号が付いていますよ。
こんな時はね、「あぁ、アルペジオで弾きなさいって書いてあるから音をくずして弾く」と安易に思わず、
WHY ? なぜいきなりアルペジオ?と、考えてみましょう。

きっと、何か意図があるからここでわざわざ書かれているんだ。
と疑ってみる。

そして、もしここにアルペジオ記号がなかったらどうだろう?
と考えたり弾いたりしてみましょう。
これもあなたがあなたの音楽を創る上でのヒントですよ。

アクセントやテヌート、スタッカート含め、このような特別な記号が敢えて書かれている場合には、必ず何か意味がある。
と立ち止まって考える癖をつける事をオススメします。

でね、私が考えるに何故ここで急にアルペジオの指示があるのか?
は、ダンス・踊っている中で、ここは「優雅さ」を出したいからじゃないかしら?
と考えると、アルペジオも素早く弾くのではなく、ゆるやかに優雅に弾くでしょう。

でも、もしあなたはこのアルペジオの意味を「優雅さ」ではない別のものだと考えるなら、このアルペジオの弾き方は変わってきますよね。

だから、あなたが考える事が大事なのです。
何故なら、あなたがあなたの音楽を創らなければならないからですよ。

教えてもらった弾き方(表現)なら、それはあなたのものではなく、教えてくれた人のものですからね。

バッハ「パルティータ第2番」”クーラント”から

このカデンツでは、画像内の丸で囲った音の響きを感じてみましょう。ヒントですよ。

そしてね、最後の音に向かっていくとは言っても、じゃあ最後の音を華々しく表したほうが良いのかどうか?考えてみましょう。
いろいろ弾いて試してみましょうね。

あなたの心で感じて、耳で響きを聴くこと。

ソプラノとアルトで弾き方を変えてみる

バッハ「パルティータ第2番」”クーラント”から

このような所は、ソプラノとアルトの歌い方・アーティキュレーションを変えて弾く事も、考えてやってみましょうね。

音と音をつなげる・切るといった明確な弾き分けではなくても、
「めっちゃレガート」「レガートっぽく」という違いでも面白いかもしれませんよ。

音色でも変えられるでしょう。
どう変えるか?可能性はたくさんありますから、考えられる限りの方法を試してみましょうね。

クーラント参考動画

サラバンド

バッハ「パルティータ第2番」”サラバンド”から

バッハ「パルティータ第2番」第4曲「サラバンド」の特徴は、メインは第2拍にある、という事。

全ての音は、同じ打鍵ではないと考えてみましょう。そして、4音=1グループで捉える事。

もう一つのポイントは、音階部=メロディである。

ソプラノの「どれみ」「みれ」「ふぁそら」などもメロディですし、
アルト4分音符の動き「そーふぁー」という音階の動きも、メロディですよ。
それを味わってみましょう。

打鍵を考える

では、打鍵を考えてみましょう。まず右手から。

バッハ「パルティータ第2番」”サラバンド”から

第1拍の打鍵で手首を柔軟に使ってみましょう。

手首を柔軟に使って打鍵する

打鍵と同時に手首を上げて行きます。
この時「手首を上げよう」と思って上げるのではなく、反動で自然に動く方を意識してね。

よくわからなかったら、トランポリンを想像して。
トランポリンにポンと乗ったら、落ちたままで終わらないでしょう?
必ず上がってきますよね。
でも、あなたが上がろう・ジャンプしようと思って上るわけではないでしょ?
それと同じです。

決して指だけで(指の付け根の第3関節だけを使って)弾かないようにするのがポイント。

第1拍で落として上がってきた手。
第2拍では、その上がった手首を落すだけでいいんです。
特に何かをしなくても、ただ落とすだけ。

ただし、フレーズはどんどん大きくなっていきます。
そしてクライマックスに向かって大きくなっていきますよね。
だから、同じパターンであっても、いつも同じようには弾かないで、いつもどうしたら良いか考えてみましょう。

そしてね、いろいろなパターンを考えたり試したら、「これ」と決めてしまわなくてもいい事も、覚えておいてくださいね。

人の感情や状況はその時々で変わるもの。
だから「いつも同じでなくていい」んです。
いつも同じなんて、逆におかしいと思いませんか?

「いつも同じ演奏」を求めるなら、録音して繰り返し聴いていればいいという事にすら、なりますよ。
変化を受け入れ、認め、それを是非楽しんでくださいね。

肘を内側から使って打鍵する

例えば、次の2小節目は

バッハ「パルティータ第2番」”サラバンド”から

第1拍では手首だけではなく、肘も使ってみましょう。

この時、肘は外側を使うのではなく、肘の内側から外側へ回転させる事を意識してみましょうね。

※ 肘を外側から使うと、ただ横へ肘が出るだけ。
 肘が横へ出た所で行き詰まってしまいます。
 しかし、肘を内側から外側へ回転させると、肘は大きく回転させる事ができる。
 この場合回転するのは「肘」というよりは、「腕」。
 「肘を回転」させるのは、「下から外側へ」ですよ。
 横へエイエイ!と小突く感じにはならないようにね。

第2拍では、手を落として打鍵しますが、第1拍打鍵後に手首だけが上がった場合と、肘も使って腕がオープンな状態になっているのとでは、違います。

腕そのものの在り方が違うので、第2拍で「ストン」と落すわけにはいきません。
だから、肘も使って腕が広がって上がってきた場合は、第2拍いっぱいの時間をかけて、自然に落ちて行く事になります。

是非その違いを体感してみましょう。
そして、打鍵の仕方の違いだけではなく、違う動きで打鍵したら、出てくる音や響きにどう変化があるかを味わってみましょうね。

変化する時は打鍵の仕方を変えてみよう

9小節目からは

バッハ「パルティータ第2番」”サラバンド”から

この画像のように(それまでとは)変わります。
だから、フレッシュに!変化があるなら、それまでと同じような打鍵はしない。何か変えてみましょう。

鍵盤に触れる指の部分を変えてもいいかもしれないし、打鍵スピードを変えても良いかもしれません。

サラバンド参考動画

ロンド

バッハ「パルティータ第2番」”ロンド”から

バッハ「パルティータ第2番」第5番の「ロンド」は8分の3拍子ですよね。
でもね、3拍子として捉えるのではなく、1拍子感覚で捉えてみましょう。

そして、さぁもしもこのフレーズを奏でるのがピアノではない他の楽器だとしたら?
と想像してみましょう。

もしこの曲を担当する楽器が「フルート」だったら?
どんな呼吸で吹くかしら?
どんなふうに歌っていくかなぁ?ってね。

もちろん、ヴァイオリンだっていいですよ。

大事なのは、あなたが何をどう想像して実行するか?です。

ロンドの打鍵を考える

バッハ「パルティータ第2番」”ロンド”から

右手の動きを見ていくと、高音の「ド」から始まったのに、いきなりオクターブ下に降りて、そして「どれミ♭ーふぁそ」と音階進行で上がっていきますよね。

それも、8分音符で動いてきたのに「ミ♭」は4分音符になります。
しかも拍頭。とすると、気をつけたい事が1つ。

「どれミ♭ふぁそ」と音は上がっていきますが、
「ミ♭」が4分音符で伸びるため、
「ミ♭」打鍵で手が落ちきってしまうと?
音も落っこちてしまいます。
もしかしたら、ぶつけるような音が出てしまうかもしれません。

「ミ♭」で右手が落ちてしまう原因はもう一つあります。
それはね、そこから左手が入るから。

手を落してしまうと、音が次へ伸びていきません。
それはもったいないですよね。
響きも次へとつなげていけるよう、あなたが出す音をよく聴いて、音を出す時の体の動きがどうなっているか、よく観察してみましょう。

落とさない打鍵のヒント

バッハ「パルティータ第2番」”ロンド”から

この「ミ♭」の打鍵で音を落とさないためには、どうしたら良いのか?ヒントですよ。

何かを掴む時の指先の状態=指先グリップで打鍵してみましょう。

ただし、打鍵直後に「てのひら」の筋肉を緩めること。

打鍵直後に「てのひら」の緊張感を解かないと、音は止まってしまいます。手も固まっちゃいますよ。

追いかけて2小節目から入る左手も軽く。

第一音「ド」の打鍵は、落さず上げるとどうかしら?試してみてね。

アーティキュレーションと打鍵の関係を考える

バッハ「パルティータ第2番」”ロンド”から

右手のアーティキュレーションは、ノン・レガートで弾いてもいいし、レガートで弾いてもいいでしょう。
単純にそう考えると右手のアーティキュレーションは二種類ですね。

いずれにしても、ここで考えたい事がありますよ。

この各小節の右手の二音には、それぞれに違う意味があるのでは?と考えてみましょう。

すると、もしもレガートで弾くとしても、一音目で手を落として二音目の打鍵に持って行くのでは、もしかしたらあなたが欲しい音は出ないかもしれません。

考えてみてね。想像してみて。音が落ちて上るのか、音が上がってふわっと降りてくるのか。

例えばテニスやバドミントン、はたまた卓球などで、サーブは下からラケットを回すのか、上からかで違うような、そんなイメージが出来たらいいかな?

下に落としてから上る打鍵か、一音目で落としてしまわずに上から下へ回すような打鍵か、どちらがあなたが欲しい音が出てくるのか?試してみましょう。

「一音目で手を落としてしまわないで弾く」についてもう少し説明すると、

一音目の打鍵と同時に手首を使って腕を上げて回す。
(指先は鍵盤に触れるけれど、肘・上腕などは広がって上がっていく)

腕を上げて回した結果、二音目に指が行き(連れていかれている感じ)、二音目はただ落とす。

指が先行して打鍵するのではなく、腕の動きが先行で指がついていく感じ。

同じことが繰り返される時は変化をつけよう

バッハ「パルティータ第2番」”ロンド”から

ここからは、新しい展開になります。しかしこの後にもまた主題が来て、そして違う展開に。

この「1回目」と次に出て来る「2回目」は性格が異なる、と考えてみましょう。
全く同じ?いや何かが違うんじゃない?ってね。
だから、その2回を安易に同じに弾こうとしないで、ちょっと考えましょう。

これはね、あなたの演奏表現の引き出しを増やすことにつながります。
トレーニングだと思って楽しんでやってみましょ。

さて、その「2回目」とはこちらです。

バッハ「パルティータ第2番」”ロンド”から

「明暗」で分けるとするなら「1回目」と「2回目」、どっちを「明」で、どっちを「暗」にするか?
まず、それを考えてみましょうか。

どっちでも良いんですよ。
それは、弾き手であるあなたが決めれば良いことですから。
だけど、1回目と2回目に違いが有る!変えて弾こうと決めたら、その違いがはっきり分かるように弾く事を意識してみましょう。

音の動き=音程の差から見えてくるものがある

バッハ「パルティータ第2番」”ロンド”から

右手の「ミレミファソラ|シミシラシー」の2小節目(シミシラシー)の第1拍に注目してみましょう。

「シ」から「ミ」へ音程を開いて上がりますよね。
わずか四度ですが、それまでは二度ずつの動きでしたから、わずか四度とはいえ、ちょっとした冒険みたいな音程差ですよ。

この辺りからから、このように音程が離れる音がよく出てきます。
その、「離れて上がる音」というのをちょっと大事に扱ってみる事をオススメしますよ。

音程の開きの感じ方

では、歌う事を想像してみましょう。そうね、出来たら歌ってみて。

音程が離れている時というのは、音階のように音が並んでいるものを歌うのとは少し状況が変わります。
それは、

  • 喉の使い方
  • 息のコントロールの仕方

そんなものが変わってきます。

ちょっと音程の離れた音を発声しようとする時は、その音程を(ピッチを探るように)とても意識するでしょう。それと同じことなんです。

だから、ピアノでちょっとした音程差がある音を弾く時でも、「それなりの準備が必要」だと考えてみましょう。

このフレーズで音程が離れているのは、「シ」から「ミ」。

  • 「シ(シ♭)」の打鍵時に手首を使って、「5」の指を「ミ(ミ♭)」前もって準備
  • 「ミ(ミ♭)」の打鍵は、指先の腹の部分で鍵盤をグリップ!掴み上げる!
バッハ「パルティータ第2番」”ロンド”から

音程が離れて上がる所は、このフレーズに限らずどんな曲でも、こんな感じで打鍵を意識してみましょう。

音程差がある時のポイント=譜読みの時に理解出来ることがある!

このように音程が離れている所が出てくる時は、離れた音への打鍵をする前に、その音へ打鍵すべき指の準備をしなければなりません。
(指も手も、その音程の開きを事前に感じて意識して開く用意をします)

そして、その打鍵の時に指の腹で鍵盤をつかみ取る。

こんな動きが出てくると、大抵は似たような音型が続き、それはどんどん発展していきます。
この曲に限らず、他の曲でもよく出てきますから、ちょっと覚えておくと良いですよ。

似たような音型が続いてどんどん発展していくということは、盛り上がって行くということ。
とすると、そこにもしも強弱などの指示がなくても、次第にクレッシェンドしていく可能性があります。
そんな事を、譜読みの時に読み取っていくようにしましょう。これぞ譜読みの時短!練習の時短!ですよ。

盛り上がっていく時には、打鍵はどうするのか?

バッハ「パルティータ第2番」”ロンド”から

では、このように次第に盛り上がっていく場合、実際の打鍵はどうしたらいいのでしょうか?

もちろんね、方法は1つではありません。
これが絶対でも、ありませんよ。だからヒント、参考、方法の1つに過ぎないと思ってくださいね。

次第に盛り上がっていく場合の打鍵は、グリップ力を上げて行く(増して行く)事で、クレッシェンドしていくことが出来ます。

ん?「グリップ力?」(「グリップか?」ではなく「グリップりょく」です)

グリップとは、何でも良いのですが、例えば鉛筆をとる時、各指先で鉛筆をつまみますよね?
今近くに鉛筆とかボールペンがあったら、是非それをとってみて。
つかんでみてね。

その時、あなたの指先の(腹の)ほんの一点で「つかむ」という小さな緊張感があるでしょう。
しかし、あなたの各指の関節や手首・腕には力は入っていないはず。
ただ、指先で「つかむ(つまむ)」という動作をしていて、それを指の関節や手首・腕がフォローしているだけ。
指についていっているだけ。
どう?違うかしら?

じゃあね、例えばもっと大きな物、もっと重い物をエイヤッ!とつかみ上げる時は、どうだろう?
もうちょっと「つかむ/握る」力が増しますよね?

そういう事です。

次第に盛り上がっていくからといって、決して叩いていくという事ではありません。
力任せに弾く必要はない事を覚えておいてくださいね。

打鍵で親指をどう意識するのか

バッハ「パルティータ第2番」”ロンド”から

この画像の1小節目最後、右手の「ミ」から2小節目の「ファー」への打鍵の仕方を考えてみましょう。

まず、「ミ」を打鍵する時には「てのひらはグリップ状態」で。
「てのひらはグリップ状態」とはどういうことかと言うと、何かの物をつかみ取るときのてのひらの状態になっているという事。

うん?ピアノを弾きながら、てのひらは何かを掴み取るって?って不思議状態でしょうか?

そうですね、では「てのひらで何かを掴み取る状態」を鍵盤上でやるためのポイントから。

  • 親指を前へ(向こう側へ)、親指が前へ前へと伸びて行く!とイメージする
  • 親指までも手前へ(自分側へ)引っ張る事はしない
  • 親指は「前(向こう)へ出そう」とする!

そして。右手「ファラソファミ」の次の「ファー」の打鍵は、「ファ」を弾く指の
腹で鍵盤を「グリップ」=掴み上げる打鍵をしてみましょう。

親指が前へ(向こう側へ)出て行くほど、グリップする事は容易になりますよ。
親指をこのように前へやる事で、各指の付け根である第三関節を使わずに指先グリップ打鍵ができます。

指の第三関節を使わない打鍵ってどういうこと?

ピアノの打鍵をする時に、指の付け根である第三関節を使わずに打鍵するとは一体どういうことなのか?
第三関節を使ってはいけないのか?と疑問に思う方もいるでしょう。

ピアノの打鍵は、鍵盤に触れる指だけで行うものではありません。

ピアノを弾くためのエネルギーは、あなたの内側から出てくるもの。
そのエネルギーは、呼吸を伴う事で、あなたの全身が使われ、
あなたの下半身はあなたの体を支え、
あなたの背筋はエネルギーを上腕から肘→下腕→手首→てのひら→指と伝わり、打鍵に至ります。

もしもあなたがピアノの打鍵をする時に、手首や指の第三関節の動きを意識してしまうと、あなたがどんなに何かを感じようと、呼吸をしてみようとしても、それらは指へ伝わることはありません。

つまり、第三関節で力=エネルギーを止めてしまわずに手首や肘他の体の中心に近い、大きな関節を使う事によって、あなたが感じるエネルギーを正しく指へ・鍵盤へ打鍵として伝える事ができます。

指の第三関節を使ってしまうと、そこから先の体の中心に近くなる大きな関節を、打鍵のために使う事はできなくなります。

どんなに何かを感じているふうに大げさなアクションで弾いたとしても、打鍵そのもののアクションが手首からだったり、指の関節からだったりすると、体の動きに意味はないということ。

黒鍵の打鍵は指先に意識を置いてみよう

バッハ「パルティータ第2番」”ロンド”から

画像後半の右手「ソシラー」の「ラー」の打鍵は、ただ流れに任せて弾かないで、ちょっと意識するだけでもっとステキになります。

それはね、指先を使う事=打鍵する時に鍵盤に触れる指先を意識すること。

そして左手「ミーソファミ」の最初の「ミー」打鍵は、打鍵したらそのままにしないで、手首を立ち上げる/立ち上げていくのがポイントです。
打鍵から手首の立ち上げまでの間、動きが止まったらアウトですよ。そこで音のエネルギーが止まってしまいますからね。

ロンド参考動画

カプリッチョ

バッハ「パルティータ第2番」”カプリッチョ”から

バッハ作曲「パルティータ第2番」の第6曲”カプリッチョ”、いよいよ最終曲ですよ。

さぁ、こちらの「カプリッチョ」は4分の2拍子ですが、1小節単位ではなく、2小節で1つだと捉えてみましょうね。

この「カプリッチョ」で大事なのは、リズムですよ。

  • うんと、元気で楽しくて幸せ!
  • 一番、自由を謳歌!

8分休符を受けて出てくる音たちを、うんと味わって楽しんでみましょう。

リズムを味わう

バッハ「パルティータ第2番」”カプリッチョ”から

さぁ、あなたはこの「カプリッチョ」、どんな印象かしら?どんなイメージを抱いているかしら?

まだこの曲の譜読みをしていないとしても、この画像から想像してみてね。

「シリアス」な感じがする?…まぁ、そもそも「カプリッチョ」ですから。

カプリッチョとは

日本語では「奇想曲」なんて言います。この漢字、キテレツな感じがしませんか?

あ、キテレツって、変な意味じゃないですよ。不思議な感じ。

イタリア語でカプリッチョは「気まぐれ」。

あなたにとって「気まぐれ」とは、どんなイメージかしら?
どんな光景を想像するでしょう?

この「カプリッチョ」の楽譜から、どんな「気まぐれ」なシーンが浮かぶでしょうね?
いっぱい想像してみましょう。

とても特徴的なリズムが動きを作っていますよ。

お友達とボールの投げっ子をしているみたい?(想像力イマイチか…)

このリズムから想像できるように、この「カプリッチョ」は”シリアス”ではないようよ。
そう、もしもあなたがこの曲を弾いてみた時に、シリアスな感じになってしまうとしたら、ちょっと視点を変えたほうが良いかもしれませんね。
弾くあなた自身がシリアスになっていないかな?ってね。

ほら、楽しい曲を弾いているはずなのに、弾くことに一生懸命になってしまうと、見た目とてもシリアスに。
楽しいなら、楽しさを伝えよう!

軽さを伝える方法

もう一度、カプリッチョ出だしの画像を出しますよ。

バッハ「パルティータ第2番」”カプリッチョ”から

軽さを出したい。弾む感じを出したいと思ったら、きっとあなたは「拍」を感じるでしょう。

4分の2拍子ですから、「1,2,」ってね。でもね、もっともっと軽くしたかったら、こんな風に感じてみましょうか。

イチニイ イチニイ ってね。

1,2,1,2,ではなく、イ・チ・ニ・イ イ・チ・ニ・イって、軽くオシリふりふりするみたいな感覚でね。

「1,2,1,2,」ではなく、何故「イ・チ・ニ・イ イ・チ・ニ・イ」なのか?
それはね、8分休符を感じるためですよ。

8分休符を受けて8分音符が入ってくる。その8分音符は4分音符に向かって飛んでいく。

そしてね、このようなリズムを感じてノリノリになっちゃうと、ついテンポが上がってしまうなら、しばらくは超ゆっくりで、全てを味わって弾く練習をしてみましょう。

バッハ「パルティータ第2番」”カプリッチョ”ぁら

この画像のような左手の動きも、常に「イ・チ・ニ・イ イ・チ・ニ・イ」を感じてみましょうね。

カプリッチョ参考動画


さて、バッハ作曲「パルティータ第2番」を練習するヒントとちょっとした解説はここで終わりに致します。

これは1つの方法に過ぎない事をもう一度お伝えしますよ。これが絶対ではありません。ただのヒントです。真似をしてもいいけれど、出来れば真似をするとどう感じるのか?をあなた自身に聞いてみてくださいね。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。
荒井千裕 拝

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