湯山昭「お菓子の世界」から”ポップコーン”9つの練習ポイント
ピアノに限らず合唱・童謡でも有名な日本の作曲家、湯山昭先生(1932〜)。
小学3〜4年生の頃に習っていたピアノの先生から、バッハにショパンやシューベルトといった課題と一緒に与えられたのが、湯山昭先生の「お菓子の世界」「日曜日のソナチネ」。これが何だかそれまでに触れてきた世界と違って、新鮮というのか、なんだか面白かった!
今や多くの日本の作曲家さん達が子供のための作品を作っておられますし、海外のいわゆる近現代の作曲家の、子供のための楽譜も、手に入れやすくなりました。
子供の頃にこのような作品に触れられるというのは、間口を狭めず意識も偏らず、とても良いことだと感じています。
私が教えてきた中で、子供たちの強い人気を持っていた曲の一つがこの「ポップコーン」。「お菓子の世界」に収録されています。
今日は、湯山昭先生の「お菓子の世界」から”ポップコーン”を弾くための練習のポイントを解説いたします。
Contents
歌の美味しさを想像してみよう

強弱記号が「p」と書かれていたら、途端に「恐る恐る弾き」に、なってしまいませんか?
この画像のように「ピアノ」と書かれていても、右手と左手のバランスは同じではありません。
何故なら、右手が歌で、左手はその右手をサポートする、引き立ててあげるお役目だから。
だから、意識としては「ピアノ」なのは左手。
右手はもう少し出していいんですよ。
だけど、「出す」と思う前にね、
この可愛いメロディ、どんな風にポップコーンがはじけて出来てくるんだろう~♪
って、ニオイまで想像しちゃおう!
そうしたらもうね、お口の中がジュワ~ッてなっちゃって、幸せ~なニコニコ顔になっちゃって、
い~いバランスで、素敵に弾けちゃいますよ!
いーーっぱい、想像しちゃいましょう。
それが、あなたの演奏表現を助けますよ。
意識すれば丁寧に弾ける!

気を付けたいのは、この画像で赤○をしている左手の4拍目の4分音符。
なぜかって?それはね、次の音に向けて、飛びやすいんです。
次の音を打鍵する「準備」をしようとして、無意識のうちに飛んでしまう。
でもね、次はこうなってるの。

1枚目の画像では左手、「ソ・シ♭・ミ♭」のポジション。
2枚目の画像では、「ソ・シ(ナチュラル)・レとファ」に指を用意します。
1枚目の画像「ソ(5)・シ♭(3)・ミ♭(1)」の指に対して、
2枚目の画像「ソ(5)・シ(3)・レ(2)とファ(1)」でとるなら、飛ばずに同じ場所で弾けます。
少し、1と2の指を広げるだけでOK。
ジャンプして飛んでしまうのとは、聴こえ方が大分変わってきますよ。
前後で何がどのくらい変わるのか?同じことはないのか?
そんな事を、見てみましょうね。
メロディはパッと見てもわからない所にもあるかもしれない

この画像のこのフレーズ、普通に考えると右手の音がメロディでしょうか。
でもね、メロディって一つとは限らないでしょ?
ポリフォニック(多声音楽)もありますしね。
どの曲も、いつどこで多声で幾つかのメロディが絡み合っているかもしれません。
明らかにポリフォニックな作りではなくても、「響きの変化」を感じられたら、素敵。
何か、違い・変わって行く事はないかしら?さ、どこにあるでしょうね?
レッスンではこのように投げかけていきながら、答えは生徒さん自身で出せるよう導いていきます。が、ここでは答えを。
左手の和音の動きを見てみましょうか。
和音の上の音が「レ#→ミ#→ファ#ー」と、二度ずつ上がっていますよね。これも小さなメロディなの。
こういうのは、どんな曲にもありますよ。こんな一見してはわからないような隠れたメロディを探したり、気づいたりするのも、ワクワクしますよね。きっとあなたの表現ももっと豊かになりますよ。
隠れたメロディの動きを、出す出さないという話ではなく、その動きをあなたが意識するかしないか。
その響きを遠くに / 内側で?/ 違うフィールドで、あなたが聴いてあげるかどうか?
それだけで、出て来るものに大きな差が出てきます。
もちろん、聴く人によって感じ方は違うでしょうけれど、実際に弾くあなた自身がそれに気付いていたら、もっと自分が豊かになると思いませんか?
聴きたい音はどこにあるのか?

あなたの中で、「ココがメロディだも~ん♪うふふ~☆」と、わかっていても、
あなたが思っているように聴いている人にも「聴こえている」(伝わっている)とは限りません。
あなたが意識して聴いてあげない限り、聴いてくれる人には伝わらないの。
右手にメロディがあるよ~♪ではなく、右手で弾く音達の中の、どこにメロディがあるのか?それを理解して意識して、その音を「聴く」、「聴きながら弾く」のです。
そうやって意識するだけで、あなたの頭で考えた事が耳に伝わって、また耳から頭の中に入ってきますよ。
するとね、あなたの頭(脳)が指先にきちんと指令を送ります。
「この音やねん!」「この音からこっちの音に、こうやってつないでいくねん!」って♪
まずは、あなた自身が「聴きたい音を聴いて上げること」です。
聴いて欲しい音は、あなたが耳と心を傾けて聴いてあげよう!
メロディを美しくするためにハーモニーを味わおう!

とっても美しく、幻想的なフレーズです。
右手がメロディ、左手は伴奏。
この伴奏のカタチは「アルベルティ・バス」と言います。
右手のメロディを、伸びやかに気持ち良く歌って弾きたいですね。
ところが客観的には、そのメロディがよくわからない場合が。聴いていてもメロディがよくわからない、なんて事にしないためにも、左手の伴奏を「頑張らない」で弾くのは正解です。
「左手、もうちょっと静かにね」と言うよりも、左手のその動きは、
4音をひとまとめにして和音化して弾く「響き=ハーモニー」を表している。
その響きを味わってみましょ♪
その響きに包まれるように、メロディも味わって歌ってあげちゃうのね。
そしたら、ほらほら!もっと美しくなっちゃっうよ♪
バランスとして、伴奏が出過ぎているようなら、あなたの意識を伴奏に置くのではなく、メロディに持って行きましょ♪ということです。
ハーモニーを味わうと、メロディが更に美しくなる魔法に、かかっちゃおう!
方向転換は気持ちが変わるサイン

楽譜は横に読んでいきます。だから「模様読み」なんて、言いますね。
音符の動きはまるで、波のようになっています。
いろんな音の動きを、「波」に例える事が出来ますね。
その波の動きが転換する時というのは、「何か」がある。
そして、それをきっかけに、動きが逆行して行きます。
この画像でも、右手がそうです。
スタッカートで二度ずつ降りてくる。
ところが拍子が変わって、動きは逆行。
アーティキュレーションも、変わります。
このような時に必要な事。それは、
その転換点に入る時に、「改める」「入り直す」という事。
つまり、それをやるためには、新たな呼吸が必要になります。
そうするとね、もっと「分かりやすい」「伝わりやすい」演奏になりますよ。
では、どうやって呼吸するのか?という事を、レッスンでお伝えしたり、一緒に考えたりしています。
ポジション移動は膨らみをもってみよう

右手は三度和音で、同じ指使いで下降の音階です。一見やさしそう?
でも、弾く本人にとっては大変なコト。
こんな時には、もう一方の手(左手)は手指の形を変えなければいけないでしょ。だから思わず慌ててしまうのね。だけどね、そんなに慌てなくていいの。
左手、更に三度ほど手を開くのは、体の(手の)小さな子にとっては、大変な出来事です。
それでも、落ち着いてね。
その和音の形が変わる、「赤→」のところ。
その「間」の空間を、感じてみましょう。
そこでね、空気が「ほわっ」と膨らむよ。
それを味わって、安心してね。
あなたの手指も、慌てなくても、「ほわっと」広げて、正しい形にしてあげられるんだよ。
何事も、あせらないのがポイントです。
「ふくらみ」を感じてあげようね。
伸ばす音はペダルを気づかってあげると美しくなる!

メゾフォルテの全音符のところに注目してみましょう。この楽譜は、指示が明確でていねいですよ。
このように伸ばす音に付けるペダルは、ちょっとした気づかいが必要です。
必要というか、気をつかってあげると、より一層、美しく響きますよ。
では、ペダルをどう踏むか?ですが、それは画像の通りです。
このような長く伸ばす音の場合、打鍵と同時にペダルを踏んだり、打鍵直後にペダルを踏むのではなく、
打鍵して、その素の音を味わってから、踏む。
すると、非常に美しく、ほわ~んと響きますよ。ぜひ試してみてね。
呼吸をコントロールしよう

画像のように、伸ばす音符でクレッシェンドをする場合について。
呼吸のコントロール一つで、音が広がっていく感じを出すことができます。
そのイメージは、ホーン・セクションの演奏。トロンボーンやチューバを吹く、と想像できるかしら?
(該当の生徒は音楽隊で金管楽器を担当しているので、そう言ってみたらすぐ想像できて嬉しかった♪)
ホーン・セクション(管楽器隊)では、音を出すには、息を吐いていきますよね。
クレッシェンドしていくなら、腹筋を使うように腹を意識して、一度に吐き出さないよう、吐く息の量をコントロールします。
それと同じ事だよ。ちょっとした意識の違いです。
まとめ
- 歌の美味しさを想像すると、バランスが良くなる
- スラーの終わりの音も意識すればキレイに弾ける
- メロディは和音の中にも隠れているかも?を楽しもう
- 聴きたい(聴かせたい)音はどこにあるのか?あなた自身が聴いてあげよう
- メロディを美しく聴かせるために、伴奏のハーモニーを味わおう
- 音の動きの方向転換は、気持ちが変わるサイン!
- ポジション移動は落ち着いて空気の「ほわっ」を感じよう
- 伸ばす音をキレイに響かせるには、素の音を味わってからペダルを踏もう
- 伸ばす音でのクレッシェンドは、空気が広がっていくのを感じよう
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