ラヴェル「プレリュード」から楽譜の読み方7つのポイントを解説

2021年3月29日

フランスの作曲家、モーリス・ラヴェル(1875-1937)。

ラヴェルのピアノ作品はどれもとても魅力的なんだけど、どれもとても難しいんですよね。
それも、半端なく難しい感じ。
もちろん、作曲家によって難しさには違いがあって当然ですから、ラヴェルの難しさが好き〜!ウズウズしちゃう!なんていう方もいらっしゃるでしょう。

さて、そんなラヴェルさんがパリ音楽院の初見用の課題曲として作曲したのがこの「プレリュード」。
わずか27小節、演奏時間も約1分と、ラヴェルとしてはお手頃な(ちょっと身近にあるような)、そんな嬉しい作品なんです。

とは言っても、曲は短いからやさしいわけじゃない。
音の数が多くなければ弾きやすいわけでもありません。

どんな曲でも、それなりに難しい事があるのは同じですよね。
というわけで今日は、ラヴェル作曲の「プレリュード」を題材に、楽譜の読み方や、ちょっとした演奏のポイントをお話していきますね。

短くて音が少ない曲だって、長くて音が多い曲でも、楽譜の読み方は同じ。
気をつけていくことにも変わりはありません。

でも短い曲を題材にした方が、わかりやすいかな?ということで、取り上げてみますね。

二声なら、二人分の呼吸を意識してみよう!

ラヴェル「プレリュード」から
ラヴェル「プレリュード」から

このような曲、あなたならどう弾くかしら?どのように弾き始めますか?

出だしに有る「8分休符」を経て、右手から美しくも儚げな歌が始まります。
ここで忘れてほしくないのは「8分休符」がある、という事。
どうしてそこに「8分休符」があるのかなぁ?考えてみましょうね。

出だしの「8分休符」を感じて、息を吸って弾き始めるのがポイントです。
指の用意だけして、なんとな~く弾き始めないでね。

右手の歌が最高音に達したのを受けて、地の底から地上へ、あるいは海底から海上へと一息に押し上がってくるような左手が、始まりますよ。

左手を弾き始める時も、左手の状況を表すためには準備が必要です。
「ハイっ!左手さん、出番です!」と言われて出てくるわけじゃありません。

左手は、右手の歌を聴きながらもそこに自然に同調するように、でも確かに息を吸って入ってくる。

いつの時も、呼吸を忘れないようにしましょう。歌うための呼吸ですよ。

あなたは一人だけど、右手には右手の呼吸が、左手には左手の呼吸が必要です。

手は音の動きの方へ「はらう」

ラヴェル「プレリュード」から
ラヴェル「プレリュード」から

ここで注目して欲しいのは、左手です。
低音から8分音符で駆け上がってきました。
最後の「ソド」を弾いたら、そこで手の動きを止めないように気をつけてみましょうか。
風がそよそよと駆け抜けていくように。

音は「ソド」までですが、まだ向こう(高音側)へ続きがあるかのように…。
「ソド」で、手首からふわっと斜め上に。弧を描くようにして、次のポジションへ。

そうするとね、音の動き(響き)は、止まらず動いていきますよ。

メロディは右手だけ?

ラヴェル「プレリュード」から
ラヴェル「プレリュード」から

そうね、メインのメロディは右手に、右手の上声ラインにありますよね。
でも、メロディはそれだけかしら?

左手の動きを、それまでのアルペジオ的な伴奏と同じだと思いこんでしまうと、ちょっともったいないです。

メロディとなり得る音の動きに、音階があります。
音階とは、二度ずつ音が上がったり降りたりする動きのこと。
さぁ、ヒントですよ。

左手の音の中に「ミ→ファ#→ソ#」がありますよね。
これはれっきとした音階の動き。

右手が「し~〜れれど」と付点4分音符で伸びる音からの動きですが、その付点で伸びている間に左手の「ミ→ファ#→ソ#」が始まります。

とすると?この左手の音階の動きは、右手のメロディを、今までよりも浮き立たせるために「サポートしている」と考えてみてはどうかしら?

そう思えたら、この左手の「ミ→ファ#→ソ#」を、ただ何となくは弾かなくなるんじゃない?

和音から単音への動きは、どの音とどの音が繋がっているのか?考えよう

ラヴェル「プレリュード」から
ラヴェル「プレリュード」から

右手、付点2分音符の和音から4分音符の単音への動きでこのフレーズが終わっています。

さぁ、こんな動きは考えるポイントですよ。

もし、この4分音符の単音が「レ」だったとしたら?
その前の和音の上の音「ミ」から「レ」へと降りてきたな、と関係がわかりやすいでしょ。

でもね、「レ」じゃないんだな。「ラ」なんです。
では?和音「ソ・シ・ミ」のどの音から「ラ」へと繋がっているのだろう?と考えてみましょう。

  • ソ→ラ?
  • シ→ラ?
  • ミ→ラ?

もちろんね、この画像の前はどうなっているのか?という事も、考えたほうが良いのだけれどね。

でも、これが音の動きをどう捉えるか?どのように歌うか?どう表現するか?がわからない時に、あなたの中で答えを見つける方法ですよ。ぜひ、試してみてね。

大事なものを伝えたかったら伸びゆく音を聴き届けよう

ラヴェル「プレリュード」から
ラヴェル「プレリュード」から

画像1段目は、右手を見てみましょう。
付点4分音符と、付点2分音符の音が長く伸びる音ですね。
そして画像2段目は、左手の2分音符が長く伸びる音。

この音を、「あなたが」聴き続けてあげましょう。
「聴く!」「その音の最後まで、聴き届ける!」という意志を持って聴かないと、その音はカンタンに消えてしまうの。
するとね、次の音へ向かっていけなくなります。

(もちろん、聴く・聴かせるための打鍵法がありますが、文章だけでは難しいので、ここでは省きます。
 こういうことは、レッスンで対面で体感して頂いています。)

どんな音でも、無駄な音はありません。ただし、その音の役割はいろいろ。
そして、その音が持つ意味や気持ち、そしてその音の方向性がどうなのか?ということは、

それを弾く「あなた」がその音を「弾く前から聴く」→「聴き続ける」→「聴き届ける」

それなしには、聴いてくださる方には伝わらないんです。
ちゃんと、聴いてくれる人に、伝えようね。

弾く姿勢が窮屈だと出てくる音も窮屈になる

ラヴェル「プレリュード」から
ラヴェル「プレリュード」から

左手で弾く音は、右手で弾くオクターブの「間」にありますよ。
手が重なるので、何とも弾きにくいんです。
弾きにくいのはね、楽譜に書かれているその通りに弾こうとするから。
あ、もちろん、楽譜通りに弾くのは正しいし、大前提です。ただね、「正しい音価で鍵盤を押さえておく」と思うと、大変なことになっちゃうのね。

この曲ではね、左手の和音は打鍵したら「ほわん」と、腕を上へ抜いてみましょう。
左手が、右手の奥(で上)に位置するカタチでね。

その音が響いていく様を聴いて欲しいのだから、ちゃんと、その響きを飛ばしましょう。
響きが飛ぶように、意識して弾いてみましょうか。

音数が少ない曲は、表現すること・美しさを追求することは、とっても難しいです。
厳しいことだよね。
でもね、それをあなた自身が欲するようになったのなら、なんて素晴らしいことでしょうか。

さぁ、あとは耳で聴いて。しっかと聴いて。
不用意に弾かないよう気をつけましょう。

歌はどこから始まるのか?小節線にだまされるな!

ラヴェル「プレリュード」から
ラヴェル「プレリュード」から

この曲に限った事ではないので、これからお話することは、覚えておいて、ぜひ実践してくださいね。

画像の右手部に、赤線を書き入れました。
楽譜をきちんと読むクセがついていれば、わざわざ赤線を入れる必要はありません。

だけど、こんなパターンのフレーズの始まり、思い違いをしてしまう人は実に多いの。

新しいフレーズは、赤線の8分音符から始まっています。
次の小節の2分音符から始まっているのでは、ありません。

だけど、拍頭からフレーズが始まっていると「思い込み」に支配されがちなの。

例えば、ちょっとこのあたりのフレーズだけ抜き取って練習しようとした時、本当のフレーズの始まりである8分音符を弾かず、2分音符から弾き始める人、多いんですよ。
あなたは大丈夫?勘違いしていない?

ページが変わる時なんかも要注意です。

このフレーズは、拍頭ではなく赤線を入れた8分音符から始まるのですから、この8分音符を弾き始める前に息を吸うことになりますよ。

もし2分音符からフレーズが始まるなら、2分音符の前で息を吸う。
この二つは全く違うものになりますよ。

忘れないでね。

ピアノ動画*ラヴェル「プレリュード」

ティブレイクは、この記事のお題のラヴェル作曲「プレリュード」をお送りします。

田中博幸氏による編曲「左手のためのプレリュード」はこちら。

こちらは前半が「左手のための」で、後半でオリジナルを弾いています。

ラヴェル「プレリュード」から楽譜の読み方7つのポイントまとめ

  • 歌は呼吸を意識!二声なら二人分の呼吸を考えてみよう
  • 音が動いていく方へ手を「はらう」
  • メロディは本当に右手だけなのか?楽譜を読み直そう
  • 和音から単音への動きは、どの音とどの音につながりがあるのかを考えよう
  • 伝えたい大事なものがあるなら、あなたが響きを聴き届けよう
  • 弾いている時の姿勢が窮屈になっていないか?客観視してみよう
  • 歌の始まりは拍頭とは限らない!

さぁ、今日も新しい目線で楽譜を見てみましょうか。

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