クラシック音楽をやるなら、楽譜を細部まで読み取って理解するのはとても大事。
そうは言ってもね、ピアノって右手にも左手にも音があるし、ペダルもあるし、指づかいもあるし強弱もあるし、テンポの指示もあるし、そんなにいっぱい一度に読めないよー!
って思っちゃうかもしれませんね。
例えばこんな画像を見るように、いったいこの中のどこに焦点を当てたらよいのか、わからなくなっちゃって、つい、次に弾く音だけを追ってしまうのかも。
今日は、ピアノ演奏に効果的な譜読みの仕方をお話していきますよ。
Contents
- 1 同じ方向を向いている音で、グループ分けする
- 2 物事がうまくいっている時ほど、備えを怠らない
- 3 違いを楽しんじゃおう!
- 4 譜読みの時に、向かう先を読む
- 5 楽譜のウォーリーを探せ!
- 6 微妙な変化を読み取ろう!
- 7 ピアノで歌や大事にしたい音がどこにあるのかわからない時のコツ
- 8 譜読みではいつも歌はどこにあるのか?を意識してみよう
- 9 和音は、音の動きを見る(聴く)
- 10 心変わりを見逃すな!
- 11 ピアノの楽譜の中から見える音とは?
- 12 あなたが何をどう感じるか?がピアノを弾く上で最も大事な感情
- 13 楽譜を俯瞰する
- 14 その曲、何調かわかってる?
- 15 覚えにくい伴奏形を覚える方法
- 16 ピアノ演奏に効果的な譜読みのポイントまとめ
同じ方向を向いている音で、グループ分けする
画像の右手の16分音符フレーズを見てみましょう。
「ドミレド シレドシ|ラドシラ ソシラソ|ファラソファ ミソファミ|レファミレ ドミレド」
何だか回転するように、坂道を転がり落ちるような動きですよね。指もちゃんと動いているのか?絡まっちゃっているのかも、微妙です。弾ききる事に、一生懸命だったりします。
うん、大変だよね。じゃあね、とらえ方を変えてみようか。こんな風にね。
「ド」「ミレドシ」「レドシラ」「ドシラソ」「シラソファ」「ラソファミ」「ソファミレ」「ファミレド」「ミレドシ」
気付いたかしら?
この分け方(とらえ方=グルーピング)は、「素直に同じ方向を向いている音の塊」で とらえています。
このようにとらえると、とっても弾きやすくなりますよ。ぜひ試してみてね♪
物事がうまくいっている時ほど、備えを怠らない
今どんなにモノゴトが順調に運んでいても、この先、どうなるかはわかりません。だから、いつも少し先の事をも、考えて動いていたいですね。
これってね、楽譜を見ながら演奏・練習する時と同じなんですよ。
楽譜を見ながら弾く時は、見て(読んで)いるのは、今 弾いている音の所ではなく、常に少し先、1〜2小節先を見て(読んで)みましょう。
そうしなければ、今 弾いている音から次の音への繋がりがわからないし、今 弾いている音から次の音への準備は出来ません。
それと似ています。モノゴトは、今だけで終わりじゃない。
区切りとして終わる事もあるけれど、一つの事が終わっても、また次がある。そのまた次がくるよね。
だから、どんなに今、順調に運んでいても、次への備えを忘れない。せめて、心に留め置きたいですね。
違いを楽しんじゃおう!

ショパン「華麗なる大円舞曲」から
上の画像と下の画像は、微妙に違います。
(画像の粗さのことでは、アリマセーン)
違う所はいくつあるかな?いくつ見つけられるかな~?

ショパン「佳麗なる大円舞曲」から
まず、譜読みは大雑把で良いので、その曲が「どんな構成で出来ているのか」を知ることが大事です。
そして、「同じ~(似ている、ほぼ同じ)」所は、どこに出てくるか?を理解しましょう。そうしたら、ほぼ同じ(らしい)そこは、どこが、何が違うのだろう?という事を探して、知っておくのです。
書き込みするのも、いいよね。自分の楽譜なのだから。
これが「譜読み」の効率を上げる第一歩ですよ。後から間違いに気付いても、直すのは簡単ではないのです。
「同じ」ではなく、「似てるけどちょっと違う」それを、味わう。
せっかくやるのだかから、楽しんじゃいましょうね~!
譜読みの時に、向かう先を読む

ラヴェル「クープランの墓」”トッカータ”から
この画像のクレッシェンドは、書き入れたように、画像の3小節目の初めの音に向かって行きます。
それを、弾く前からわかって呼吸を整えて弾きたいもの。
そうでないと、あれ?目的地って、どこだっけ?に、なってしまいますよ。

ラヴェル「クープランの墓」”トッカータ”から
1枚目と、同じようなものですが、こちらでは、この次の音に向かって行ってる!という「意識」が欠けやすいトコロなんです。

ラヴェル「クープランの墓」から”トッカータ”
なぜだと思いますか?あなたはこの画像から気付く事が、あるかしら?
それはね、段違いになるんですよ、目的地の小節が!
だから、先読みしていないと、下の段に移って初めて気付く...と言う(汗)。
ピアノに限らず、音楽は、常に「先へ先へ」と読んでいかねばなりません。
「今の音」だけを読んでいたら、音楽にならないからです。それは文章もそうですよね。
文字が読めるようになったばかりの人が、一字ずつ読んでいる様子を思い起こしてみて下さい。
文字を読めるようになった子供が、本に書かれている文字を、一字一字、指しながら読んでいく。その姿はとても微笑ましいですよね。
でもね、全体を通して何を言おうとしているのかは、ちょっとわかりにくいかも、しれませんね。
音楽も、同じ。何が言いたいんだろう?
どこに向かって行くのだろう?
おお!クレッシェンドじゃないかー!
わー!ここ、目的地だったのー?では、遅過ぎます。
だからこそ、最初に譜読みをする時から理解するよう、意識してみましょうね。
「譜読みする」とは、そういうコト。
音拾いと「譜読み」は、ちょっと違います。
音だけ拾って、指に馴染ませて、弾けてる気にならないように、しましょ。
楽譜のウォーリーを探せ!

ショパン「幻想即興曲」から
この曲の中間部では、同じフレーズが4回出てきます。
やった~!同じ!楽勝!と思うのはまだ早い。ちょっと、危険ですよ。なぜなら、まったく同じというのは、稀なことだから。1回目は上の画像の通りでしたが、

ショパン「幻想即興曲」から
2回目は「お飾り」が付きます。
そして、3回目と4回目は、

ショパン「幻想即興曲」から
リズムが変化していますよ。
これを正しく読み取り、演奏に反映させ、その通りに覚える事が大事。
このような、「よく似てるけど、何か違う」というものは、どの曲にもあります。まるで、「ウォーリーを探せ!」みたいですね。
ちょっと気をつけて楽譜を読むようにしましょう。
微妙な変化を読み取ろう!

ムソルグスキー「展覧会の絵」”プロムナード”から
画像の中で、青い四角で囲ったところを見てみましょう。
それまでの感覚のまま「あ、また同じだわ♪キャ☆」と弾いてしまうと、「ミ」に「♭」を付けたままにしてしまいがち。
しかし、ここの「ミ」は「ナチュラル」になっています。これは、終わりに向けての変化。
半音変わるだけで響きはかなり変わってしまいますよ。これが大事な所。
だから譜読みは大事なの。正しく読み取る事がね。そうして気付くことがあるのです。
ピアノで歌や大事にしたい音がどこにあるのかわからない時のコツ

ラフマニノフ「楽興の時」第4番から
ただの前奏/伴奏だと思うと危険です。その左手の16分音符フレーズの中にも、歌うべき・意識すべき音のつながりがありますよ。
それはね、第1小節目でブルーで四角く囲ってあるところ。
つまり、「半音程(半音階)」の動きのところです。半音階(半音程)というのは、特別な音程関係(響き)。
半音階(半音の動き)は、どの作曲家のどの作品に出てきてもちょっと気にしてあげましょう。
たった二つの音のつながりであっても、その音程が「半音」ならば、十分すぎるほどに意識して、超レガートで弾きたいところ。
大事な人の手に、あなたの手を重ね合わせるように、ね。
譜読みではいつも歌はどこにあるのか?を意識してみよう

グリーグ「ピアノ協奏曲」第1楽章から
こちらは16分音符フレーズが、5連符+5連符→6連符+6連符と少々ややこしいリズムです。だけど、それにまどわされないでね。もちろん、リズムは大事よ。
でもね、もっと大事なことがある!一番大事なのは「歌」ですよ。
あなたがその歌を、どう歌うのか?ということ。それを忘れないでね!
音を正しく読み取って、それを並べて終わりにしないでね。
それらの音の動きはどんなものなのか?それらの音の動きから、あなたが感じる事はどんなものなのか?いつもそれを大事に、それらに敏感になっていて欲しいです。
和音は、音の動きを見る(聴く)

リスト「愛の故」から
こんな和音の動きは、指が慣れるまで何を弾いているのか?どんな変化があるのか?わかりにくいかもしれませんね。
和音の中で、動いていく音を追って見ましょう。
例えばソプラノ。「ドーードドレド ファ」と、動きますね。そうしたら、音が動くのは、「ドーードド」の次に「レ」へ。そして、「レド」から、「ファ」へ。
同じ「ド」が続いていたのが、2度上の「レ」へ動いて、また戻る。という変化。
そして、「ド」から4度上の「ファ」へ離れて上がる。という変化。
その変化を、味わうの!
次にアルト。「ミーーミファソソ ラ」と動きます。それなら、やはり「ミーーミ」から「ファ」への動き、そして続けて「ソ」へと、2度2度という「音階の動き」をするのを、聴く。
それは続けて最終的に、さらに2度上の「ラ」に落ち着きます。
テノールは・・・
バスは・・・と同じように見て、その変化を味わってみて下さい。
何も考えないで、ポジションの変化だけを気にして弾いている時とでは、音の動きの変化を意識するだけで、あなたの中の何かが変わるでしょう。
あなたがそれに気づく事が出来れば、出てくる響きも、変わりますよ。
その響きを、どう変えたいか?それを、味わえるようになります。
ぜひ、味わって下さいね。
心変わりを見逃すな!

ラフマニノフ「プレリュード」Op.23-5から
画像の上の段と下の段は、よく似ています。メロディは同じなの。だけど、ハーモニーが変わるのね。
左手のアルペジオはちゃんと変えて弾いているのに、右手のハーモニーが変わらない。
このような微妙な変化は「ついうっかり」で、譜読みの時に間違って思い込みがち。そして、なかなか治せないの。
両手で合わせたら、気付きそうだけど、そういう曲だと思ってるから気付きません
メロディと同じように、ハーモニーも、その「響きの違い」をよく聴くようにしようね。
ハーモニーの変化は、気持ちの変化だよ。微妙なニュアンスの変化。
ハーモニーの変化は、心変わりを「におわす」もの。
いつもそこに居てくれて当たり前だと思っていると、大事な人の心が離れている事に気付かなかったりする。って、ちょっと違うかしら?(笑)
ピアノの楽譜の中から見える音とは?

バッハ「平均律第1巻第2番」プレリュードから
さぁあなたはこの楽譜を見て、何に気付くでしょう?何かに気付いたでしょうか?
画像の1小節目と2小節目の、第2拍から第4拍を見比べてみましょ。それがヒントです。
音の動きを素直に見つめて受け止めてみよう
音そのものだけを見ると、画像の1小節目も2小節目も同じです。でもね、違うことが一つあるの。気づいたかしら?
何が違うかというとね、16分音符の第1音から第2音へは上がるのか下がるのか、と言う違いです。
同じ「ラファミファ」でも、「ラ」から「ファ」が上がるのか下がるのかの違いで、気持ちや方向性に変わるものがあるでしょう。
例えば「そう」と相づちを打つのでも、平坦に「そう」と言うのと上がり調子で「そう?」と言うのではニュアンスは違うでしょ?同意か疑問かの違い。そんな事をを感じてみましょう。
あなたが音の動きから何かを感じたら、あなたはそれをどう表したいと思うかしら?
あなたが何をどう感じるか?がピアノを弾く上で最も大事な感情
全ては、あなたが自分で感じる事を大事にしましょう。
誰かに、例えば先生に言われたからそう弾かなければならない、ではありません。
音楽の感情は押し付けや決めつけではないの。再現芸術ではないんですよ。瞬間芸術なのだから、あなたが何をどう感じるかが一番大事なことなのです。忘れないでね。
方法(答え)は、一つじゃなくていい。正解も不正解も、ない。自分で考えればいいんだよ。
楽譜を俯瞰する

モーツァルト「ピアノ・ソナタ」K.545第1楽章から
こんなフレーズに出会ったら、あなたは何を気にするでしょうか?
何が気になるでしょう?
あなたの意識はどこへ行くでしょうか?
多くの場合ですが、左手の音階フレーズを「ちゃんと弾こう」とする事、つまり、指づかいに必死になりがち。
うん、気持ちはよく分かるの。だって指づかいがおかしくなると、こんな音階フレーズは、弾ききれなくなっちゃうものね。
だけど指づかいってのは、覚えてしまえばいいわけです。
(バッサリ言ってしまいました。身も蓋もない?)
じゃあね、右手の和音はどうかしら?
もしかしたら、左手の音階に「合わせること」で、必死になってないかしら?
右手の和音の動きだって、それぞれが「歌」ですよ。軽い「あいづち」のような、「鼻歌」のような、
でも、ちゃんとそこにも音楽がある、歌よ。
ただ拍を刻むためだけに、そこにあるわけじゃありません。
もう一ついいかしら?みんな同じような動きをしていますよね?
1小節ずつ、右手も左手も、同じリズムよね?同じ動きですよね?
わかるかしら?これらは二度ずつ、降りて行ってるのよね。と言うことは?
見える景色が、1段階ずつ下がる、降りていく感じがしないかしら?
そうしたら、同じ動きでもニュアンス、ダイナミクスは、微妙に変わるよね?気持ちが、変わるんじゃない?
木(細部)ばかり見ていたら、
そこには森(全体像)がある事に、気付きませんよ。
その曲、何調かわかってる?

扉を叩く音がする?
あなたは、今あなたが弾いている曲が何調なのか、わかっているでしょうか?ただ何となく、調号(#や♭)が付いている音だけ確認して弾いていませんか?
その曲の、どこから何調に転調しているのか、理解しているかな?曲の始めと終わりは、同じ調かしら?
弾く前に、ちょっと確認しましょう。理解しておきましょうね。
それだけで音読みのミスも理解も減りますよ。どんな音が並んでいくのか・どんな和音構成なのか、予測しやすくなります。
覚えにくい伴奏形を覚える方法

ショパン「バラード第1番」から
右手の動きが同じでも、左手の音型が微妙に違う...覚えられへんわ~!何なに?何が一体どうなって、こんなフクザツなのん?と頭を抱えてしまう事はありませんか?(実はこの曲、過去に何人もココを覚えるのに「ムリッ!覚えられない!」モードになっていました。)
右手のフレーズが繰り返される時、左手も全てが同じままで繰り返される事は、少なくありません。では、前とどう違うのか?じっくり、楽譜を読んでみましょう。
「音が違うのは、わかった!だけど、違うのはわかるんだけどー!」
音の動きが違うことがわかったら次にやること
では、その音が変わってる所の前後を見てみましょう。

ショパン「バラード第1番」から
ほら、この画像のように、左手の内声は、前後でちゃんと音階ラインになってますよ!これは、立派なメロディの登場です!それがわかれば、もう忘れられません!
こうやって、覚えにくい伴奏形は、その中にある動きの法則を探してみましょう。覚えやすくなるばかりか、楽譜を読むのが・弾くのが楽しくなりますよ。
ピアノ演奏に効果的な譜読みのポイントまとめ
- 同じ方向を向いている音でグループ分けする
- 備え怠らず、常に先を読む
- 違いを見つけて楽しむ
- どこに向かうのか?を読む
- 何調か理解しておく
- 微妙な変化を読み取る
- 和音は音の動きを読む
- 楽譜を俯瞰する
エンジョイ!あなたのピアノ・ライフをもっと豊かに!
もっとラクに心と体を使ってピアノを弾くお手伝いをしています。