シューマン「アラベスク」Op.18演奏に反映させる楽譜の読み方12のポイント

2021年4月19日

ロマン派音楽を代表する作曲家の1人、ドイツのロベルト・シューマン(1810-1856)。シューマンのピアノ曲として最も有名なのは、「子供の情景」に収録されている”トロイメライ”でしょう。その曲名が「トロイメライ」だと知らなくても、ピアノでの演奏を聴いたことがなくても、オルゴールや何かで誰もが耳にしたことがあるのではないでしょうか?

そういう私もシューマン作品との出会いは「トロイメライ」が最初。それは、母の子守歌代わりに枕元に置かれた「トロイメライ」のオルゴールだったのです。

さて、シューマンの作品は、短い曲の集合体とも言える組曲やアルバムもありますが、通しで弾くと30分前後という長い曲ばかり。そんな中で、演奏時間約6分の「アラベスク」Op.18は、小学生の学習者をも魅了する力を持っています。

シューマンは、「手本とする双璧はバッハとベートーヴェンです」という手紙を残しており、また、バッハの「平均律クラヴィーア曲集」をよく研究していました。ですから、シューマンの作品がバッハから影響を受けていてもおかしくはありません。

私自身、シューマン作品を弾いていて、バッハ作品を学び続ける必要性に気づき、以後バッハを好んで弾くようになりました。「トロイメライ」も例外なく、バッハの影響がそこかしこに。と言いますか、トロイメライはそもそもポリフォニックで書かれていますからね。

というわけで、あなたがシューマン作品と向き合うなら、ぜひバッハ作品とも向き合い続ける事をオススメします。

今日は、シューマンの「アラベスク」Op.18の練習のポイントをお話していきますね。

アウフタクトはそこに休符を感じてみよう

シューマン「アラベスク」から
シューマン「アラベスク」から

シューマン作曲「アラベスク」は、4分の2拍子。でも曲は第1拍からは始まりません。第1拍を4等分した4つ目から始まるの。

ということは?いわゆる「アウフタクト」の曲。アウフタクトというのは「弱起(じゃっき)」の曲とも言います。つまり、強い拍からではなく弱い拍から始まる曲ということ。

アウフタクトで始まる曲の場合、そこに休符は書かれていません(この画像では、左手部分に休符がありますが、これは右手で弾き始める音のところは左手は休符だよという事)。右手の16分音符「ソ」の前に、付点8分休符は書かれていませんよね。

これは普通の書き方なのですが、これが落とし穴。ちょっと危険です。なぜなら、本当はそこに付点8分休符分の空間があって、右手の16分音符「ソ」は始まるのに、その休符を感じていないと、あたかも16分音符「ソ」が強拍のように捉えかねないから。

だから、弾き始める前に、3つの「・(点)」が「・・・」と点滅するのを感じて「ソ」を弾き始めるよう意識してみましょう。

「・・・ソ シラーソ ドー...」とね。「・・・」は息を吸うために必要な「間」ですよ。

多声(ポリフォニー)フレーズの練習法

シューマン「アラベスク」から

三声ですよ。合唱で言うなら、ソプラノ、アルトにバスと言ったところでしょうか。

ピアノの練習はまず片手ずつ....では、ありません。まず、ソプラノ(最高音部のライン)だけを弾いてみましょうか。次にバス(最低音部のライン)だけを弾いていく。そして、内声であるアルトのラインを弾いていく。この内声(アルト)がクセモノなんですよね。何故ならピアノでの内声のラインは、左手も右手も使って弾くことになるから。

だから、この内声のラインだけを弾く時も、両手で弾くにしても、「まるで片手で弾いているように」弾くことが大事。そうなっているかどうか、あなたが出す音をよく聴きましょう。つまり、バランスを聴くということですね。

左手も右手も、「1」の指を多く使うことになります。「1」の指=親指は太くて他の指に比べると鈍感だから。だから、受け渡しはものすごく気をつけて、気をつかって、耳でよーく聴いてね。

そして、それら各声部(ソプラノ、アルト、バスなど、それぞれのパート)の動き=音楽がわかったら。次に、二つのパートを一緒に合わせて弾いてみましょう。

例えば「ソプラノ+バス」「ソプラノ+アルト(内声)」「アルト(内声)+バス」というように。この3種の中では「ソプラノ+アルト」と「アルト+バス」の練習に重心を置きたいですね。何故かはやってみるとわかるでしょう。実にこれが(はじめのうちは)ややこしいですから。

ベースラインは弦楽器を想像してみよう

シューマン「アラベスク」から
シューマン「アラベスク」8小節目から

さぁ、こちらではベースラインに注目してみましょう。どうしてスラーだったりスタッカートだったりと、動きが変化するのかな?

このようなベースラインの動きは、ダブルベース(コントラバス)を想像してみる事をオススメします。(該当の生徒さんは、学校でオーケストラの経験があったので、ヒントを投げてみましたよ)

弦楽器ってね、弓を使ってこうやってたっぷり引いたり戻したりっていうボーイングがあるよね。
そして弓を使わずに指で弦をはじくピチカートも、ある。

それぞれの様子を、想像してみようか?どんな違いがあるか、感じられるかしら?

そんなニュアンスの違いがわかったら、きっとこのベースラインをどう弾くか?ということの助けになるんじゃないかな。

ベースラインの動きは、弦楽器のあんなこんなな奏法を、想像しちゃおう!

16分休符は息を吸う所!

シューマン「アラベスク」から
シューマン「アラベスク」24小節目から

画像の上の段も下の段も、右手の上声に16分休符があります。赤で囲っていますが、そこはあなた自身が「息を吸う」ポイント。そこに「ブレス記号」があると思ってね。

上の段も下の段も、16分休符を経て、新しいフレーズが始まるのです。だから、何事もないかのように無呼吸で弾かないよう気をつけましょう。

簡単に弾けてしまうところこそ気をつけるポイント!

シューマン「アラベスク」から
シューマン「アラベスク」41小節目から

さぁ、ここでは気をつけたいポイントが2つありますよ。

1つは簡単そうに弾かないこと。この画像では右手です。右手も左手もユニゾンで同じメロディがありますが、弾く時に気をつけるのは右手の方。

なぜなら「シドシファ ソミレド」を弾くのは、そんなに大変ではないから。大して手を広げなくても届く範囲の音が続くからです。でもね、音程は変わりますよね。

「シドシ」は二度で動いていますが、「シ→ファ」は五度離れますよ。もしも声を出して歌うなら、いきなり五度も高い音を出すのは簡単じゃないですよね?それだけの(五度の)「距離感」を意識しましょう。

この距離感・音程感を意識しないとね、8分の8拍子のように音が出てきちゃいます。そう、まるで行進曲になってしまうの。

「シドシ」という二度の狭い音程を行き交うのと、「シ→ファ」と五度上がる距離感を感じることで、音楽は出来ていきますよ。ただ音を並べるだけにしないでね。

そしてもう1つのポイントは、ユニゾン。

右手と左手で同じメロディを奏でますよ。こんなユニゾンのフレーズでは、どんな曲でも「バランス」を意識しましょう。右手と左手のバランスです。いつも同じである必要はありません。

例えばこのフレーズですと、画像のフレーズは2回繰り返されます。それなら1回目と2回めで左右のバランスや弾き方のニュアンスを変えて弾くという選択肢が!

いろいろやってみる事ができますから、ぜひ、何かにとらわれず、自由にいろいろ弾いてみましょう。あなたの表現の引き出しを増やすためにも。

ピアノ練習での最大の時間の無駄とは

シューマン「アラベスク」41小節目から

こちらは「四声」。いわば混声合唱ですね。ソプラノ、アルト、テノール、バスと四人勢揃い。四声の練習法も、基本的に「三声」のものと同じです。まず、一声ずつさらう。そして、二声組み合わせて弾いてみましょう。

ソプラノとテノールはユニゾンです。音の動きは全く同じ「シドシファ|ソミレド」。

でもアルトとバスの4分音符の動きは同じではありません。アルトは「ソーラー|シー」ですが、バスは「ミーレ#ー|ミー」ですよ。

素直に二度ずつ上がっていくアルトはクレッシェンドを助ける動き。バスは「ミ」から半音下がって「レ#」へ降りる。そしてまた「ミ」に戻ります。この半音の動きは、ちょっとした不安を感じますよ。そんな動きの違いにも敏感になってみましょう。

このフレーズは四声なので、組み合わせるパターンは三声のものより増えますね。めんどくさー!と思うかもしれません。でも、これをやるのとやらないのでは、理解するのにかかる時間も、実際に弾けるようになるまでの時間も、全然違いますよ。

だから、なんちゃって合わせ弾きは、もうやめましょうね。

半音での動きを大事にする

シューマン「アラベスク」から
シューマン「アラベスク」54小節目から

8分音符の動きに注目してみましょう。半音ずつの動きになっていますね。

その動きは、どんな感じがするかしら?
その響きから、どんなモノを想像できるかしら?
どんな雰囲気かしら?

その動きから感じるモノを、大事にしましょう。その動きを見逃さないで。その動きを、十分に味わってね。

半音程の動きというのは、「不安」を与えるもの。「不安」な気持ちを、表しているのかもしれません。

どんな風に想像してもいいのです。あなたが自分で感じることを、大事にしてね。

もしかしたら、とっても狭い道を、壁や行き交う人にぶつからないようにと、気をつけて通り抜けるような、そんな感じかもしれません。

それぞれの打鍵をしていく中で、黒鍵の打鍵に意識を強く置いてみましょうか。白鍵と黒鍵は、ちょっと違う感覚を持って打鍵してみましょう。白鍵より黒鍵の打鍵に、意識を強く置いてみて。黒鍵の音は、ちょっと心に迫ってくるようなものを感じませんか?

半音での動きの時は、いつもよりちょっと大事に感じて弾くのがポイントですよ。

臨時記号の書き方から作曲者の想いを想像する

シューマン「アラベスク」から
シューマン「アラベスク」80小節目から

8分音符フレーズの赤丸のところに注目してね。

「シ♭」から、次の「シのナチュラル」にかかっているのは、「ラ#」の装飾音。
「シ♭」と「ラ#」は、実際に打鍵する鍵盤は同じです。でもね、違う音で書かれているの。なんでだろう?って疑問に思ったあなたの感覚、ステキです!

そう、そうやって疑問に思って、考えて読み解いていく。それが楽譜を読むということ。

「なんで同じ音で書いてくれないんだよ!」じゃなくて、
「そんなもんか」でスルーせず、いろんなことに「?」って好奇心を持ってみましょうね。

付点の音は何かを感じよう!

シューマン「アラベスク」から
シューマン「アラベスク」から

このフレーズは、楽譜にオレンジの付箋を貼っている、右手の付点4分音符と16分音符の「間」が重要です。

長く伸ばす音はその前にも「ドー」「シ♭ー+タイ」が。それらの音の伸び・響きを味わうことも、とても大事ですよ。でもね、楽譜の指示を見て。「ritard.」があるでしょ。どんな状況を想像しても良いのだけど、例えばちょっと眠くなっていく時のような感じを想像してみて。

すると、付点8分音符の伸びは、もしかしたら「あくび」が出ちゃってまどろんでいるのかも。付点8分音符に付いている装飾音も、速いフレーズのように素早く弾く必要はないんじゃない?

もしここが眠りに落ちるシーンだとしたら、装飾音が素早くて、付点の音もカッチリしたリズムで弾いたら目が覚めちゃうんじゃないかしら?「ritard.」では、なくなっちゃいますよね。

そんな事を考えてみましょうか。

フォルテからピアノへの切り替えはどうする?

シューマン「アラベスク」から
シューマン「アラベスク」144小節目から

何かを決意するかのようなフォルテで始まるのに、なんとすぐさまピアノへと転じます。その間わずか。そこにデクレッシェンドもありません。

こんな時、あなたならどうやって「フォルテ」と「ピアノ」を弾きわけるでしょうか?どうやって瞬時に「ピアノ」に切り替える?

と考える癖を付けてくださいね。レッスンでは考えて頂きますが、ここではヒントを。

それは「呼吸」と「間」です。まぁ、「呼吸」を意識すれば、そこに「間」が。そうね、「かくれんぼ」みたいな感じ?想像して呼吸を意識してみましょう。

メロディのラインはどのように動いていくのか?

シューマン「アラベスク」から
シューマン「アラベスク」152小節目から

ほら、バッハっぽいでしょ。右手も左手も複声になっていますよ。

複声になっていることを理解して弾かないと、メロディ・ラインがおかしなことになってしまいます。

正しくは「ドミレッド ファー ミー レソ〜...」ですが、あなたは次のように捉えていませんか?「ドミレッド ファー ミド レソ〜...」って。

左手は「ドミレッド」の後、「ファーソラーシ ドーレミーファ ソーラシード」ではなく、「ファーソラーシ ドーレミーファ ソー」ですよ。

3回続く時、どう変化するのかを見る

シューマン「アラベスク」から
シューマン「アラベスク」209小節目から

「フィナーレ」です。上の画像が「1回め」。ここのメロディは、「ミーレーー」。

シューマン「アラベスク」から
シューマン「アラベスク」210小節目から

そして「2回め」では、「ファーミーレーー」と、音が1つ増えていますよね。それも出だしの音が1回めより高い音から始まっています。

シューマン「アラベスク」から
シューマン「アラベスク」212小節目から

さぁ、3回目は「ラーファ ミーレー」と、2回めよりも更に高い音から始まっています。その上、付点4分音符が入りリズムにも変化が。

この3つの違いを、あなた自身できちんと感じましょう。そして、あなたが感じたことを、感じたままに音に表してみましょうね。

それが、あなたの音楽を創りますよ。

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