歌はどこにあるのか?繰り返される歌はどう表現するのか?

ピアノを弾くのは楽しいですよね。

だけど、弾いていると感情が曲と一体となる嬉しいフレーズもあれば、感情を伴わずに何となく弾き進めているフレーズもあるのではないでしょうか?

なぜ、感情を伴わないのに/どう表現したらいいのかわからないのに、そのまま弾き進めてしまうのでしょう?

それは多くの人が気がついている事でしょう。「弾き通す事の楽しさ」があるからです。

でも、音を紡いでいるあなたが、何も感じずに弾いているなら、そこに音楽になりません。ただの音の羅列に過ぎないから。

そんなの、何だか勿体ないですよね。せっかく練習して指が動くようになったって、心が伴っていないなんて。
でもね、どう表現したらいいか?どう歌ったらいいか?がわかれば、あなたの中にある感情が出てきて、作品ともっと仲良くなれますよ。

2小節の繰り返しに付けられる変化

バッハ「イタリアン・コンチェルト」第3楽章から
バッハ「イタリアン・コンチェルト」第3楽章から

画像の4小節は、始めの2小節がそのままもう一度繰り返されています。
これは私の楽譜なのですが、元々は何も指示はありません。
版によっては、親切に「アーティキュレーション」や「強弱記号」が書かれているものも、あります。

さて。このように、全く同じフレーズが繰り返される時は、何か表現を変えたいもの。
では、どのように替変えましょうか?

一つは、上の画像に書き込みされているように、1回目と2回目で、強弱を変える。
もし、1回目を元気良く弾くなら、2回目はちょっと物陰に隠れるように。

他には、「聴かせる声部」を変える。

その他にも、考えられる事ひらめく事があるかもしれませんね。
こうやって楽譜を見ていくと、どんどん面白くなっていきますよ。
そしてどんどん、あなたの音楽が生き生きして輝いていくのです。

是非、あなたも「小さなフレーズの繰り返し」に変化を付ける事を考えてみましょうね。

繰り返されるフレーズの変化をどうつける?例

リスト「軽やかさ」から
リスト「軽やかさ」から

1回目のフレーズは上の画像の通り。
2回目は、オクターブ上がります。
音域が変わるなら、もうそれだけでニュアンスは変わりますよね。
でもね、もっとわかりやすく変化を付けたいならどうしたらいいかしら?

左手、各拍の1音目=ベースラインの動きを「サブで」聴かせていく。

リスト「軽やかさ」から
リスト「軽やかさ」から

オクターブ上がった2回目のフレーズでは、左手、各拍の2音目の高音ラインを聴かせていく。
どちらにしても、右手がメインのメロディです。でも、左手は ただの伴奏ではありません。
「ハーモニー」であり、「影のメロディ」でもあるの。

楽譜はまるで、ジグソーパズルのよう。
見れば見るほど、いろんな繋がりが見えてきます。すると、どう歌ったらいいのか?どう表現したらいいかの「引き出し」が増えていきますよね。

つまり、いつも同じ表現をしなくてもいい、という事でもありますよ。

フレーズの三段階活用は、段階を素直に感じよう

バッハ「インヴェンション第10番」から
バッハ「インヴェンション第10番」から

「フレーズの3段階活用」は、いろいろあります。
しかし、どんな場合でも、その「段階(レイヤー)」がどんな動きをしているのか?という所に注目して理解しましょう。
そして、それを感じたままに表現するのです。それだけで、聴き手に「わかりやすい演奏」になりますよ。

例えば上の画像なら…。
わかりやすく、1小節毎に変化する「3段階活用」になっています。
音の動き方はみんな同じでしょ?
じゃあ、何が違うのかな?(コレが注目する所)はい、考えて~!




わかったかな(ニッコリ)?

そう!小節ごとに、「二度」降りていますよ。二度ずつ降りていく、という段階を経ています。
それなら、1小節毎に音量を落としていくのはどうかしら?

弾いているあなたが見えている物の高さが変わるイメージね。

  • 1段階目は、背筋を伸ばして遠くを見る感じ
  • 2段階目は、少しリラックス、背筋を丸めて割と近くの物を見る感じ
  • 3段階目は、ちょっと身を潜めて隠れるような、そんな感じ

フレーズの3段階活用は、その変化の具合を知る。それを感じたままに表すと、伝わり易いですよ。

フレーズの中で聴かせたい音は「高い音」

ショパン「ピアノ協奏曲第1番」第1楽章から
ショパン「ピアノ協奏曲第1番」第1楽章から

それぞれのフレーズの中で、「山」となる所があります。
フレーズは、最小4小節単位で、それぞれ3小節目に「クライマックス」が。

その各4小節が積み重なって一つのセクションが出来る。
セクションが幾つかあって、一つの曲になる。

各フレーズの小さなクライマックスが積み重なって、曲中の最大のクライマックスへと向っていく。

各フレーズの「クライマックス」とは別に、フレーズの中には気にしたい音があります。
それは、そのフレーズで「一番高い音」。
高い音があるなら、そこに向かっていく。
高い音へ向かっていくのだ、という事が伝わるように弾いてみましょう。

上の画像ではとてもわかりやすく、右手は二声表示になっていますよ。
二声になっている、という事を見落とさないように、気を付けたいですね。

上声の8分音符は、各拍で「一番高い音」。
この場合は「このフレーズで一番高い音」ではありませんが、その上声の8分音符ラインは、一つの歌です。
歌わなければね♪

フレーズの中で「聴かせたい音」は、「高い音」。
「高い音」が幾つかあるなら、それも一つのメロディ。

歌はどこに潜んでいるか、わからない

ショパン「ピアノ協奏曲第1番」第1楽章から
ショパン「ピアノ協奏曲第1番」第1楽章から

多くの曲では、歌=メロディが右手にある。
でも、必ずしもそうとは限りませんよね。

例えば上の画像。
確かにメイン・メロディは右手にあります。ここは一つのセクションの終わり。
その「場面転換」の手助けを、左手がやっていますよ。
左手、二声になっているのがわかるでしょうか?

まず1拍目「シ」が2分音符になっていますね。音符の棒が上下に付いている。
これは、8分音符のラインでもあり、2分音符としてもう一声でもある事を意味しています。

その後にも!「シーラ」は音符の上下に棒が。
この「シーラ」が次のセクションへの導線です。だから、とっても大事ですよ。

メロディはいろんな所に潜んでいます。
どこか一つのライン(メイン・メロディ)にだけ、気持ちを囚われないように気をつけてみましょう。

和音の中で動いているラインもメロディ(歌)だ

ギロック「ワルツエチュード」から
ギロック「ワルツエチュード」から

右手はメロディ、左手は伴奏。
だけど右手は「ミファソファ」を繰り返す「ポリリズム」。

左手は小節ごとに和音が微妙に変わっています。
和音のトップ音が動いて(変わって)いますね。

このような場合は、和音の中で「動いている音のライン」も「メロディ」になります。
だから、この「シ♭→シ(ナチュラル)→ド→シ♭」の動きをうんと聴いてね。
しかも、この動きは半音階進行ですよ。
半音程での動きは、どの曲のどこに出て来ても、必ずうんと大事に扱いましょう。気にかけてあげましょう。半音の動きは特別です。

和音進行は、伴奏だと思うべからず。
和音の中で動いている音のラインは、メロディです!

今日のピアノ動画*バッハ「インヴェンション第10番」

ティブレイクは、バッハ作曲「インヴェンション第10番」BWV781をお送りします。

長調で明るくて気分が上がるからか、15曲のインヴェンションの中でもこの10番は、今までの生徒さん達に大人気でした。
レッスンで弾いて終わりじゃなく、またいつか改めて弾いて欲しいですね。

まとめ

  • 繰り返されるフレーズは、強弱や聴かせる声部とそのバランスを変えてみよう
  • よく動く音の中で、高い音のラインを繋げられるなら、そこが歌になる
  • 単音の動きのように見えても、実は二声ならそこにも歌はある

楽譜は本当に面白いものです。版による違い(校訂者による違い)もありますが、そもそも楽譜に書かれている音の並びをじっくり見ていると、何となく弾いていたら気づかない繋がりに出会えますよ。
あなたも是非、楽譜と何度でも仲良くしてね。

エンジョイ!あなたのピアノ・ライフをもっと豊かに!
もっとラクに心と体を使ってピアノを弾くお手伝いをしています。

スポンサーリンク

心と体を楽にしてピアノを弾くヒントを月曜の朝、メールでお届け!

ブログをメールで購読

メールアドレスを記入して購読すれば、更新をメールで受信できます。

1,098人の購読者に加わりましょう