あなたのピアノをより音楽的にするための、スタッカートの意味を考える9のポイント
ピアノを弾く上で、実は重要なのだけど軽視されやすいものは、何だと思いますか?それは、「スタッカートの弾き方/奏法」への意識です。
スタッカートの記号が音符に付いているのを見ると、あなたはその音をどのように弾くでしょうか?短くはねるように弾く?
スタッカートと言っても、そもそもスタッカートが付いている音価やフレーズによって、弾き方のニュアンスは変わってくるもの。スタッカートなら画一的に同じ弾き方になるわけではありません。
今日は、スタッカートの意味を知って、あなたが状況に応じて弾きわけられるよう、スタッカート奏法のポイントと、フレーズの終わりの音への意識について。
Contents
スタッカートの意味は「はねる」でいいの?
「スタッカート」とは、音符の上か下に付いている「・」のことです。
ではスタッカートの意味は、何でしょう?「はねる」と教わったかもしれませんね。
スタッカートの意味は「切る・切り離す」です。どんな音でもスタッカートが付いていれば、「はねて短く」、もしくは「鋭く弾く」とは限りません。
スタッカートが付いている音をどんな風に「切る」のかは、スタッカートが付いている音符の
- 音価にもよって変わる
- その音に達するまでの音楽の流れ・次の音への向かい方によって変わる
つまり、ケースバイケースなのです。
スタッカートの意味は音によって違う

「スタッカート」のニュアンスは、その音によって変わります。
もちろん、スタッカートだけじゃなく、レガートの具合だってアクセントやスフォルツァンドにリタルダンドのかけ方だって、何もかもが、いつも同じという事はありません。
画像の右手、1小節目のスタッカートと3小節目のスタッカート、そして4小節目のスタッカートは、どれも同じかしら?いえいえ、それぞれニュアンスが変わってきますよ。
「どうして?」と思うかしら?
うん、どれも「8分音符」に付いている「スタッカート」なのだから、同じじゃないの?って思っちゃいますよね。「どれも8分音符に付いているスタッカート」とだけ書けば、確かに同じです。だけどね、注目するのは音価だけじゃありません。それぞれの音への気持ちまでもが、全部同じかしら?と考えていきますよ。
1小節目の「ソッソッソッ」だって、3音それぞれ、少しずつ変化するかも?しれません。
さぁ、あなたは何を感じるかしら?
あなたはどんな気持ちになるかしら?どんな風に、気持ちは変わっていくのかなぁ?
想像してみましょ。感じてみましょう。
どんなスタッカートなのか?を考える

画像左手のスタッカート、あなたならどんな風に弾くでしょう?
そこに「スタッカートがある」から、と、いつどのような曲でもどのようなフレーズでも、同じような打鍵・離鍵をしていませんか?
「打鍵の具合」と「離鍵の具合」を、少しずついろいろ変えて弾いてみると、雰囲気がどんどん変わっていくのを感じられるでしょう。
是非、固定観念(今までのあなたの常識・思い込み)に一回捨てて、いろいろ試してみましょうね。
スタッカートのイメージを想像してみよう!

スタッカートにも、いろいろあります。
曲の調によりフレーズによっても、またスタッカートが付いている元々の音の長さによっても、そしてハーモニーによっても変わってきますよ。
その音符に付いているスタッカートのイメージって、どんなものかしら?先日、レッスンにを受けてくれた方に聞いてみましたよ。
「ねぇ、このスタッカートって、どんなイメージなの?」と。そうしたら、彼女は「うーん?」と可愛く頭をかしげて
「オレンジのイメージ!」と言ったの。
その時、私はすごーく共感して、「うん、そうだね。オレンジのイメージがする!」と答えたんです。
その「オレンジ」が何だったのか、記憶が曖昧になってしまったのですが、その時の彼女と私のイメージは一致していました。感性は違っていていいのですが、一致するとこれまた嬉しいもの。共感かな?それはさておき、「オレンジ」と言ってもイメージはいろいろ。
例えばこんなだったり

こんな風だったり

こんなだったりするかもしれないし

このような

オレンジそのものかもしれない。うーん!味が口の中に蘇ります!
こんな感じで、一つ一つの音符へのイメージを細かくイメージしてみるのも、いいですよ。オススメ!
あなたがどれだけイメージ出来ているか?で、出て来る音の幅が変わってきます。
イメージがはっきりしていればいるほど、音にブレがなくなる。
だからね、ピアノや音楽以外の事で、いろんな事を経験・体感しておく事は、すごーく大事なんですよ。
どんなスタッカートなのかを考えてみる

上の画像で、赤丸で囲んだ音にスタッカートが付いていますよ。
縦読みしていると、「お!この音にスタッカート付いてる!」と突然、飛び跳ねてピアノを弾いてしまっていませんか?
さぁ、もう一度考えてみましょう。その音のスタッカートって、どんなスタッカートなのだろう?スタッカートが付いているから、はねて弾けばいいの?
楽譜をよく見ると、そこには「ピアノ(p)」という指示があります。
「ピアノ(p)」は「弱く」よね。「弱く」という意味も、一つではありません。でも「弱く」という指示があるなら、飛びはねて弾いてしまうのは注意が必要。
なぜってね、余程気を付けないと、その音が「飛び出て(目立って)」しまうから。するとそれはまるで「アクセント・スタッカート」のようになってしまいます。
もう少し、楽譜をよく見てみましょうね。
スタッカートの軽さを想像する

上の画像には、二種類のスタッカートがあります。
左手の単音で、「テヌートも合わせて付いているスタッカート」に、右手の「和音のスタッカート」。
それぞれ、どんなスタッカートなのでしょう?どんな動きが想像できるでしょうか?
この曲を知らなくてもいいので、この楽譜だけで想像してみましょう。
この曲をご存知の方もおられるでしょう?にゃ〜お🐈です。
ネコちゃんには、気まぐれちゃんな子も、そうじゃない子もいるかもしれないけれど。
体は重いかしら? いやいや、機敏に動ける軽さ?
あなたの腕に、上から釣り糸のようなものが付いていると想像して。それがまるで「操り人形」のように、上からヒョイヒョイっと、あなたの腕が引き上げられる感じを、想像できるかしら?
あるいは、ピアノを弾きに行ったら、まさかまさかの、鍵盤が超熱くて!アチッ!アチッ!て、逃げる感じは?どうかしら?
さぁさ、どんな軽さ(あるいは重さ)なのかしら?まずは、想像してみる所からですよ。
同じ音でスタッカートが続く時は?

スラー付きのレガートな動きの後、画像のように同じ音のスタカートが続きます。
※ 右手、4分音符の2つの「ソ」
では考えてみましょう。もしも、その2つの4分音符にスタッカートが付いていなかったら?
同じ音を続けて弾く時、それを「極めてレガートで弾く」というのは、神経を使うことですね。逆に言うと、同じ音を続けて弾く時にノン・レガートで弾くのは、難しいことではないでしょう。
それなのに、そんな同じ音にわざわざ「スタッカート」が付いているんです。
だったら、ちゃんと切って弾きましょう。ちゃんと、打鍵し直してね。
それは、「その次の音(付点2分音符)に向かって行く」というコト。
楽譜は語る。実に多くのことを、あなたに伝えようとしていますよ。
同じ音のスタッカートが続く時に気を付ける事

「同じ音が続く時」は、それがレガートでもスタッカートでも、その打鍵にはとても注意が必要です。上の画像では、特に注意が必要。
まず、リズムと音価に注目してみましょう。
3連符が3つ続いた後の、3連符ではない8分音符二つ。スタッカートだとか同じ音が続く事を抜きにしても、このように音価が突然変わる時は、流されやすいもの。
正しい拍感を身につけるまでは、メトロノームを活用する事も、大いに役に立ちます。今は、スマホのアプリでもメトロノームは何種類も出ていますよね。
物体としてのメトロノームが今、手元にないから…という心配は、全く不要です。
ぜひアプリ検索して、スマホに一つはメトロノーム・アプリを入れておきましょう。
(スタジオで練習する時なども、便利ですよ)
さて、問題の「同じ音のスタッカートが続く時に気を付ける事」についてです。
それはね、「同じ音」だと「動く必要がない」から。だから無意識無関心になりがち。だから問題を引き起こしてしまいます。無関心なので、問題の状態にも気付きません。
同じ音が続く場合、それをレガートに弾くのでなければ、音は繋がりませんよね。簡単に、切れちゃいます。だから、同じ音が続いてスタッカートの場合は、問題になりやすいのです。
ただ切れるだけで良いなら、作曲家は、それらの音にスタッカートは付けなかったんじゃないかしら?
じゃあどうして、そこにスタッカートがあるかな?それを考えてみるのです。「なぜ?」は、あなたに考えて欲しいのですが、打鍵するためのポイントはお話ししますよ。
同じ音が続く時のスタッカート、打鍵のポイントは、「打鍵し直すこと」。
もし「打鍵し直すこと」の意味がわからなかったら、こちらも、あなた自身で考えてみて下さいね。
16分音符スタッカートは、力まない

左手の16分音符スタッカート。
打鍵をはずしちゃうかも…という無意識のうちの怖さ。そしてスタッカートだ!と気張ってしまうと、重くなりがち。重力を感じます。(「廊下は走らない!」なんて言われそうな、そんな感じ。)
力まない。頑張らない。と言うは易し。
ポイントはね、鍵盤の底まで弾こうとするのを、やめること。
ピアノに、向かって行かない。
まるで、つま先で「トットットットッ」と軽く走るように、「ふんふんふんふん♪」と鼻歌でも歌うように。
リコーダーで、舌先のほんの一点ですごく短いタンギングをするように。
背筋から上腕を自由にしてあげてね。想像してご覧。あなたが鍵盤を打鍵しようとするのではなく
鍵盤は既に底に沈んでいて、鍵盤が自ら、あなたの指に触れよう!として、上がってくる事を。
「かったりー、飛びたくねー」なんていう、ものぐさなネコちゃんだって、いるさー、きっと。
※この曲で、それが相応しいかは別の話。まずは、自分で想像して感じて、やってみる。ね!
ピアノではフレーズ終わりのスタッカートを意識するのがキレイに終えるコツ

上の画像のようなフレーズの終わりの音は、どんなフレーズでも注意が必要です。特にこの画像のような場合はちょっと考えてみたいところ。
フレーズの終わりの音には、「スタッカート」が。楽譜を丁寧に読むあなたは、この「スタッカート」をちゃんと読み取っています。すると、あなたの頭の中は「スタッカートで終わる」という事が印象付けられている状態に。
スタッカートの印を見ると、まるで条件反射のように「ポッ」と指が上がってしまう。(無意識に「跳ねる」という動作に。)
スタッカートは、それが付いている音のそもそもの長さや、その音に至るまでどんな風に動いてきたのか?その次はどうなるのか?といった、色んな事を考えてみましょう。
「跳ねたら」どんな風に聴こえるのだろうか?と、もう一度、あなたが出す音をよく聴いてみる。
それでいいのかしら?不自然じゃないかしら?次に向かって、エネルギーは大きくなって行くのかしら?
さぁ、考えてみましょ。あなたが発する音を、よく聴いてみましょうね。
ピアノでのスタッカート奏法/弾き方のコツ

この画像の中で難しいのは左手です。左手だけを取り出してみれば、全てが8分音符のスタッカートなので、シンプルですよね。でもね、右手と左手で逆の動きをするのは、易しい事ではありません。=右手はレガートで左手はスタッカート。
右手は指先は鍵盤から離れないけれど、左手は軽く。まるで、ドリブルをする様に。うーん…
ほら、水が入った小さい風船のヨーヨー、やったことあるかしら?(縁日の定番でしたね。今の子供達は、経験あるのかしら?とふと不安に。)
ある?良かった!水風船のヨーヨーも、闇雲にバンバンと叩いてたら、大変なことになっちゃうよね。割れちゃうかも?だしね。
一定のリズムを持って、ぱんぱんぱんって、出来ないんじゃない?水風船のヨーヨーを使う時って、手の状態は、どんな感じかしら?手首は?
うんうん、そうそう。その時の手首の動きと同じだよ~。せっかく「手首」という「つなぎ目」があるんだから、そこは、固めないで、自由に使っちゃいましょう。
スタッカートの有る無しで表情が変わる?

4分音符が続きます。スタッカートが付いていますね。おお!スタッカートだ~♪ と思って弾くでしょう。すると?
目の錯覚? 思い込みしやすいのです。最後の4分音符にはスタッカートは付いていないの。
最後の音をスタッカートで弾くのとスタッカートなしで弾くのでは、表情がすっかり変わってしまいます。
だから、楽譜はいつもしっかりじっくり読んで、そして何度も読み直して確認するよう、心がけましょうね。
ピアノ動画*ドビュッシー「もう森へは行かないの様相」
ティブレイクは、ドビュッシー作曲の「忘れられた映像」第3曲”もう森へは行かないの様相”をお送りします。
2018年のドビュッシー・イヤー・リサイタルから。ピアノはスタインウェイでした。
スタッカートの意味を考えてどう弾きわける?のまとめ
- スタッカートが付いていたら、みんな同じように弾くのはやめよう!
- スタッカートの意味は、つけられている音によって違う
- 同じ音が続く時のスタッカートは、打鍵し直すのがポイント!
- そのスタッカートは重いのか軽いのか?想像してみよう
- 16分音符スタッカートは廊下を走らないでつま先で軽く
- スタッカートとメゾ・スタッカートは同じじゃない
- ピアノはフレーズ終わりのスタッカートがどのように聴こえると自然か?想像してみよう!
- スタッカートの弾き方のコツは、水風船のヨーヨーの手首や腕の動きにある
- もしスタッカートがなかったら?と考えてみよう
スタッカートがつけられた音が出てくると、チョキチョキチョッキン♬な感じでウキウキしたくなる気持ちはわかります。でもね、ちょっと考えたり想像すると、もっと楽しくなりますよ。
何より、あなたの音楽表現の引き出しが増えます!
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