チャイコフスキー「6つの小品」Op.19-4”ノクターン”8つの練習ポイント

2021年5月3日

ロシアを代表する作曲家ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)は、バレエ音楽「くるみ割り人形」や「白鳥の湖」がよく知られています。

ピアノでも、「くるみ割り人形」や「白鳥の湖」は連弾で演奏する事が多いでしょう。

チャイコフスキーのピアノ曲に、1873年に作られた「6つの小品」Op.19があります。
そのタイトルの通り、6つの小品から成るピアノ曲なのですが、この中の第4曲「ノクターン」を取り上げられる事が多いよう。

ロシアの作曲家チャイコフスキー
ロシアの作曲家チャイコフスキー

私が今まで教えてきた生徒さんたちも、コンクールの課題曲だからとレッスンに持ってきた子たちがいました。

第4曲の「ノクターン」は、嬰ハ短調で物悲しく、悲痛ささえ感じる作品。
今日はチャイコフスキー「6つの小品」Op.19から第4曲「ノクターン」を取り上げて、練習のポイントをお話していきます。

息の長い演奏をするために

チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4
チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4、16小節目

人は「待つ」ことが苦手なのかもしれません。かくいう私も、待つのはイヤです。
でも、「待つ・待たなきゃいけない」と思うから、イヤなのかもよ?

楽譜の中に「伸ばす音符」「長い音符」(休符やフェルマータも)が出てきても、十分にそれを感じる事ができない。
もしくは感じにくい、と思うことはありませんか?
だから、急いてしまうのかもしれません。
でもね、急いてしまうと、拍子感が崩れてしまいます。

例えば、上の画像のような所。タイの音の、その長さを待つことが難しい。
タイで繋がれた4分音符は、その前の3連符「たたた」と同じだけの音価です。

このようなタイで、待つことが難しい人の練習法→「ミシシ(タタタ)」と自分の中で数えるように歌う。

私の場合はこうです。「ミシシ(イイイ)」(伸ばす「シ」の響きが増殖していくように聴きますよ)

もう一つのポイントは、その後の2分音符。

ここでは、歌が左手にバトンタッチされるので、右手の2分音符は打鍵と同時に、その存在を忘れられてしまいがち。
左手の「レミファ...」という歌を歌いながらも、右手の響きを遠くに聴き続ける。

左手の歌が終わる時にも、あなたの中で聴き続けられていないなら、その歌の響きは誰にも聴こえません。

ぜひ、「待つ」のではなく「響きを聴き届ける」と意識してみましょう。

重なる音の中で歌を探してみよう

チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4
チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4、18小節目から

あるセクションの始まりです。

そしてこの後に出て来るフレーズは...

チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4
チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4、26小節目から

右手に切ない歌が登場しています。
でも、それだけじゃないよ。左手を見て!
左手は二声になっているでしょ。
内声がこのセクションの第1フレーズの歌になっていますよ。

音をつかむことだけに、必死にならないでね。

それが歌だと思ったら、横に流れていく美しい歌だとわかったら、あなたの中からうんと素敵に音が出てきますよ。

軸をしっかり持とう!

チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4
チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4、20小節目から

画像のように、一度上がった音から降りてくる時に、それまでよりも「音価」の短い速い音符で、ストレートに降りてくる時は、ちょっと危険です。

あなたが考えているよりも速くに、まるで「連れて行かれる」ように、「引っ張られていく」ように、速く転がってしまいがちだから。

人生も同じ。自分をしっかりと持っているようでいても、ふとした事で、他人の動き(勢いや波)に乗せられて、自分軸を失ってしまう。

音楽も人生も同じだね。「拍」という軸を、しっかり意識しましょう。

息継ぎする「間」を大事にしよう

チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4
チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4、29小節目から

この画像の1小節目は、それまでのフレーズの終わり。
そして2小節目は、次のフレーズの始まりです。

楽譜に書かれていることを、そのまま正しく、丁寧に読み取ってみましょう。
ただし、そこで大事な事が一つあります。

それは、「ロボットにならない事」。正しく、でも機械的に弾かないという事。

何故なら、音楽は「人」が、「あなたが」奏でるものだから。
ピアノは素晴らしい楽器ですが、演奏するには、気をつけるべき事があります。

もしもあなたが、このフレーズを声を出して「歌う」のなら、何も問題はないでしょう。
ところがピアノは演奏する時、自分の喉を使わなくても、発音(打鍵)出来てしまいますよね。
指を、手を、腕を動かす事で、音は出てしまう。その時に、実際に声を出して歌うわけではありません。

本当に歌うのなら、フレーズとフレーズの「間」は、呼吸が必要です。
次のフレーズを歌うために、息を吸いますよね?

ピアノは、喉を使わなくても音を出せるから、ピアノを弾く時に、「息をする」事を、忘れてしまいがちです。
忘れないで!息を止めないでね。

楽譜には、書かれていない事が一つだけあります。
それが、息をする「間」。

でもね、その「間」も、「ここで息をする間を取りなさい」とは書かれていなくても、じっくり楽譜と向き合っていると、わかるようになります。

行間を読むように。空気を読むように。

生きていくための無意識の呼吸ではなく、歌うための呼吸です。

2音間スラーで注意すること

チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4
チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4、40小節目から

この画像の、左手パートを見てみましょう。ピアニシモ(pp)のところ。

低音部記号(ヘ音記号)なので、「そら らし しそ|そら らし しそ」となっています。
「そら」で一つのスラー、「らし」で一つのスラー...

2音の間に付くスラーの弾き方、基本は、

  • 1音目の打鍵で手を落す
  • 2音目の打鍵をもって、手を上げる

です。手を落す時に1音目の打鍵を。そして2音目の打鍵をしながら上げる。
この時、気をつけたいのが、この譜例のケース。
ここ、ピアニシモですよ。2音目で勢い良く手を上げながらの打鍵をすると、どうなるでしょうか?

このピアニシモの前は「ピアノ(p)」で、その前は「クレッシェンドの後のフォルテ」が。

つまり、「クレッシェンド→フォルテ→ピアノ→ピアニシモ(ココ!)」です。

そしてこの後、「riten.」でフェルマータがあって、セクションが変わってテンポが変わる。
という流れを考えると、この2音間のスラーの打鍵はどうしたらいいんだろう?って、考えてみましょう。

勢い良く跳ねない。「落して上げる」という基本の打鍵をすることに変わりはありません。
だけど、「落す」「上げる」の幅をおさえる。

腕は動いても(回転させても)指先は極力、鍵盤から離さないようにしてみましょうか。

大事なのは「今」

チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4
チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4、42小節目から

この画像例のように。それまでの経緯があって、そのフレーズの頂点となる付点4分音符に「フェルマータ」が付いている。
しかも、そのフェルマータが付いている音がそれまでのフレーズの中で一番高い音です。
となれば、このフェルマータの音は、とても重要な音だということ。

ちなみにアクセントがついていますが、ここは、「ピアニシモ」のフレーズですよ。
だから、気を付けたいのが、
「その音を強く」という、日本語的な「アクセント」の意味で理解して弾いてしまっていいのか?ということ。

「アクセント」は、「その音を事にね”」と思うのがふさわしいです。覚えておいてくださいね。

そして、もう一つ大事なことがあります。
多くの人は、この「フェルマータ」の音に気をつかいます。

でもね、大事なのはそのフェルマータの音だけじゃありません。
そのフェルマータの後の8分音符も大事なのです。
何故なら、その音の後からセクションが変わる。転調しますよ。

この8分音符の「ソ」こそ、労ってあげましょう。ぶっきらぼうに扱わないでね。
大事な、大切な、愛しい人とつないでいた手をはなす時のような、そんな切ない気持ちでね。

フェルマータはどのくらい待つの?

もう一度画像を出しますね。

チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4
チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4、42小節目から

この画像で問題なのは、「フェルマータが付いている付点4分音符」
フェルマータが付いていなくても、それまで8分音符で動いてきたのと違って、付点4分音符になっているのです。
尚かつ、ここは「pp(ピアニシモ)」のフレーズ。
そして、このフレーズの後、場面が変わりますよ。

あなたはこの音を、どのくらい待つべきと思いますか?

「待つ」と書きました。でも、本当は「待つ」のではありません。
じゃ、何なのか?というと、それは「聴く」こと。

そのピアニシモで8分音符で動いてきたものは、どこへ行くのか?何を表しているのか?
どうしてそこで8分音符から付点4分音符になるのか?
ということを考えれば、「待つ」のではなく、その音の行方を「聴き続け(届け)てしまう」でしょう。

その長さが、フェルマータの分だと思えたらいいですね。

フェルマータは「その音を(約1.5倍分)長く伸ばす」という意味で教えられる事が多いと思います。
でも、その数の分、数えて伸ばす(待つ)のでは音楽から遠く離れてしまいませんか?

バランスを良くするために優先順位を考える

チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4
チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4、47小節目

楽譜を読んで弾いていく時、まず「どこにメロディがあるのか」を、知る事が大事です。

メインのメロディではなくても、掛け合っているサブ的なメロディもある。
音階の中にもメロディはある。ベース・ラインにもメロディが。そして、ハーモニーがある。大事にすべきコトは、たくさんありますよね。

だから、それぞれの役割を知っておく事。
優先順位を知っておく。理解しておきましょう。

そうすると、それら全てが融合した時、響きのバランスがどうあったら美しいか?という所に意識を持っていけるでしょう。
考えられる余裕が生まれるでしょう。

だから、優先順位を見ていくと、バランスが良くなるのです。

速いパッセージはエクササイズじゃない

チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4
チャイコフスキー「ノクターン」Op.19-4、47小節目から

この画像例で言えば、メインの歌は、内声(左手の上声)にあります。
でもね、このようなフレーズを弾く時に気を付けたいのは、右手。
何故なら、メインの歌よりも、音数が多いから。

音階のフレーズは、指くぐりもあり、ただ「弾くこと」だけに、気持ちが行きがちです。
すると、マシンガン奏法になってしまう落とし穴に。

その右手の下降音階フレーズだって、「歌」なのです。
メインの歌ではないけれど、でも、歌なの。歌ってみたら、わかるかしら。
とても、綺麗に美しいフレーズになりますよ。

だから、このような速いフレーズは、指のエクササイズだと思わないでね。
速弾きすればカッコイイ!なんて、思わないで。その逆ですよ。

速いパッセージは、エクササイズじゃない!

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