だんだん強くする「クレッシェンド」実践7つのポイント

「クレッシェンド(crescendo)」は「だんだん強く」という音楽用語で、知らない人は居ないくらい、馴染みのある用語ですよね。

ただ、「フォルテ」は「強く」、「アクセント」は「その音を強く」のように、「これはコレ」って考えなしに覚えてしまった身近な用語は、ちょっと危険が。

つまり「思い込み」に支配されやすいという危険です。

そもそも「クレッシェンド」は「だんだん強く」なのに、「クレッシェンド」の指示を見た途端に鼻息荒くピアノに立ち向かい、「フォルテシモ」になってしまう演奏は少なくありません。人のことは言えたものではなく、私自身、長いことそのように弾いていました。しかも本人自覚がなかったのですから、そのまま気付けずに今もピアノを弾いているとしたら?と想像するだけで、怖すぎます。

というわけで、今日考えるトピックは「クレッシェンド」。
クレッシェンドを演奏に効果的に表すにはどうしたらいいのか?お話していきますよ。

頑張ってるのに頑張った努力が報われない演奏になっちゃうなんて、悲しいですよね?

スタッカート・クレッシェンドは瞬発力が大事

ギロック「ソナチネ」から
ギロック「ソナチネ」から

画像の左手を見てみましょう。
5度音程の和音で「上がって降りて」の音型になっていますね。
その型通りに「クレッシェンド&デクレッシェンド」をしてね、という指示があります。

クレッシェンドは、「だんだん強く」ですね。でも、始めから強く、ではありませんよ。
その上、ここの動きにはスタッカートが付いているので、打鍵する時の「指先の瞬発力」が必要です。

そのためには、クレッシェンドで腕の重みを乗せていないように。

スタッカート・クレッシェンドでは、指先の瞬発力を増していく=鋭敏にしていくのがポイント。

1音ごとに瞬発力を増していきましょう。
決して1音目からイキナリではありませんよ。

伸ばす音でクレッシェンドできないから意識すべきポイント

エステン「アルプスの夕映え」から
エステン「アルプスの夕映え」から

こちらの画像でも、左手の和音を見てみましょう。
右手はオクターブ・トレモロの動きで、クレッシェンドすることが出来ますよね。
でもね、右手だけに頼っていると、左手の重要な和音の「繋がり」がかき消されてしまいます。
つまり、左手の付点2分音符の音(響き)の伸びが失われる。

だから、左手の付点2分音符の和音は打鍵する時に、気持ち強めに。
そのために、打鍵のスピードは速くする。
そして、息を吸っていきながら、指先は鍵盤に吸い付いたまま。
で、「てのひら」にある小さな風船がどんどん膨らんで大きくなるように、「てのひら」の緊張感を増しながら、手を立たせていきます。
まるで重いスーツケースを持ち上げるようにね。

エステン「アルプスの夕映え」から
エステン「アルプスの夕映え」から

こちらの右手の、伸ばす和音の連続も同じ事。
息は吸い続けて。身体を大きく開くように。
息を止めないようにね。

クレッシェンドは段階を見て表現するのがポイント

フォーレ「ドリー組曲」”優しさ”から
フォーレ「ドリー組曲」”優しさ”から

1小節目は「cresc.(クレッシェンド)」と書かれていて、2小節目は「クレッシェンドの記号」があり、3小節目で「f(フォルテ)」の指示。
つまり、1小節目も2小節目も「クレッシェンド」(だんだん強く)なわけですよね。
それ、少しずつやっても、聴く方にはわかりにくいんじゃない?
うん、伝わりにくいでしょ。

1小節目と2小節目はリズムが同じ。ただ、微妙に音が変わりますね。
第3拍の音程差は明らかです。

このような場合は「段階(レイヤー)」を見てクレッシェンドをかけていくと良いですよ。
1小節目より2小節目の音量を上げる。

2小節目は「ラソファラ」から「ファーミレ」の「ファ」への音程=6度の開きを感じましょう

リスト「軽やかさ」から
リスト「軽やかさ」から

上の画像の2小節目からを見ていきます。
同じ音型が3回繰り返され、発展しますよ。いわゆる「フレーズの3段階活用」です。
さぁ、このクレッシェンド、どうする?

まずは、「フレーズはどこから始まっているか?」を知るのが大事。
「フレーズの始まり=スラーの始まり」です。
「クレッシェンド」は「段々強く」ですが、本当に「段々」強くしても、聴き手にはわかりにくいもの。いえ、多分、弾き手自身にも明確にはわかっていないでしょう。
だって、「だんだん」って、すっごーく曖昧なんですもの。

この3段階フレーズの目的地は、この画像の後にあります。
そこへ向かって行くことを知らせるための、「クレッシェンド」。
せっかく、同じ音型で3回フレーズが繰り返されるのです。
こういう時はね、1フレーズごと、音量を上げて行く!
そして3フレーズ目では第4拍の右手、16分音符の音の動き方に変化が出ますよ。
そこで更に気持ちが大きくなります。(つまり、ストンストン、さっさか進んでいかないようにね)

フレーズの3段階活用の法則、覚えて実践してね。

クレッシェンドは段階を見て、音程差を感じて表すのがポイント。

クレッシェンドのバランスをとってみよう

ファリャ「火祭りの踊り」から
ファリャ「火祭りの踊り」から

上の画像では、メゾフォルテから始まるクレッシェンドで、2小節後にはフォルテになっています。
右手の上声が歌=メロディ。でも右手はクレッシェンドの間、タイで伸びる音。
ヘ音記号部(下段)の和音は右手でとります。
そしてベースラインがある。
さぁ、クレッシェンドときたら、どうやって音量を上げていきますか?
っ!クレッシェンドだ!
と思ってしまうと、大抵の場合、無意識のうちに内声の和音を頑張ってしまいます。
しかし、それをやると、メロディでタイで伸びている「ドーー」が、かき消されてしまいますよね。それでは勿体ない。

そこでまず、右手メロディの「ドーー」は、気持ちハッキリ打鍵してみましょう。
鍵盤の中に(奥に)指が入っていくように、そして手は落とさず上げて行くように。
そして、ベースラインでクレッシェンドしてあげるのです。
「ラ・ミ・ラ」と上がっていくので、ここでクレッシェンドしてあげるのは、とてもわかりやすいですよ♪

ピアニシモからフォルテシモになる時のポイント

ファリャ「火祭りの踊り」から
ファリャ「火祭りの踊り」から

この画像、フォルテシモの前はピアニシモです。
クレッシェンドなしの、突然のフォルテシモの指示ですよ。
こんな所では、何を気をつけたらイイでしょうか?

それはね、「呼吸」です。
フレージング、言い換えれば「スラーのつき方」でも一目瞭然ですね。
スラーの終わりに始まりは、呼吸を改めるトコロですよ。
さぁ、あなたはどんな呼吸をしますか?

フレーズの捉え方や、そこにふさわしい呼吸法に身体の使い方を、レッスンでは主に指導しております。

フォルテシモからのクレッシェンドはどうする?

リスト「森のざわめき」から
リスト「森のざわめき」から

フォルテシモから、さらにクレッシェンドをかけて、フォルテシシモ(トリプル・フォルテ)へ。
さて、どうやって音量を上げる?
そもそも、ここまでへも、クレッシェンドしてきてるわけです。
既にフォルテシモなんですよ。
それなのに、さらにパワーアップしていくって一体どんだけ〜?

自分の音量の幅を知っておく事も大事です。
あなたが自分の音量の幅(ピアニシモからフォルテシモまでの幅など)を知らずにいると、
「もうこれ以上、大きくできないのにぃ…」って事になっちゃいますよね。

さぁ、まずはあなたの音量の幅を耳で・頭で・打鍵する身体の動きで覚えておきましょう。

その上で、フォルテシモになっているところからのクレッシェンドは、一度ピアノに落とす。
そしてクレッシェンドをかけていくと、わかりやすい・伝わりやすい演奏になりますよ。

クレッシェンドの方向性を示そう

ランゲ「荒野のバラ」から
ランゲ「荒野のバラ」から

クレッシェンドもデクレッシェンドも、記号で書かれていると見てわかりやすいですよね。
だけど、「cresc.」「decresc.」「dim.」などと言葉で書かれると、見落としやすいもの。文字も小さいしね。
だけど、これらを見落とさないようにしたい。

さて、画像1小節目でクレッシェンド、次の小節でデクレッシェンドというものも、表情としてはわかりやすいでしょう。
だけど、右手は弾きにくい(表しにくい)かもしれません。
何故なら、音が徐々に上がっていくなら、クレッシェンドしやすいんです。それが自然だから。
それなのに、「ラファミレ」と、いきなり「ラ」から「ファ」へ「6度」上がります。そして音階で下る。
下って行くのにクレッシェンド?って、ちょっと違和感が。

まずは「ラ」から「ファ」への、「6度の開き」を感じてみましょう。
6度も音が上がるというのは、ただ事じゃないの。
もしも声を出して歌うなら、6度上の音をとるのは、やさしい事ではありませんよ。
想像してみて?いや、歌ってみて?

だからね、「ラ→ファ」は、空間というか距離があるのを感じてみると、どうでしょう?わかりいやすいのではないでしょうか。

それに対して左手の和音は、「ファラレ」から「ソレファ」へと、和音を構成する全ての音が、上がっています。
(その上、和音の下の音と上の音との音程が、6度から7度へと開く。)
これは、クレッシェンドしやすいですね。気持ちが大きくなる感じ。
「ファラレ」の和音は、ピアノは弾いたら音が減衰してしまうけれど、もしも弦楽器が演奏しているとしたら?と想像してみて?
伸ばす音でのクレッシェンドでも、出来るでしょ?

では、右手に戻りましょう。
「ラ→ファ」を大事にとりました。
そしたらね~、そのあとは「ミレドシ」と「ラシ|レーー」に、グループ分けしてみましょうか。

それがヒントですよ。考えてね。

今日のピアノ動画*ファリャ「火祭りの踊り」

ティブレイクはファリャ作曲の「恋は魔術師」から”火祭りの踊り”をお送りします。

これは香港在住の、音楽を愛する人達で集っての演奏会を開催した時のもの。私は演奏会を仕切る裏方だったので、1番手で演奏して、後は裏で走り回っていました。

香港島の上環にあるCIVIC CENTREのTHEATRE HALLにて。

まとめ

  • スタッカート・クレッシェンドは打鍵の瞬発力でコントロールする
  • 伸ばす音でのクレッシェンドは呼吸を止めず、重い荷物を持ち上げていくように
  • クレッシェンドが続く時は、段階を見て音量を上げていくのがポイント
  • 伸ばす音のクレッシェンドは打鍵を気持ち強めにして動きのある音で段階を上げよう
  • ピアニシモからフォルテシモへの動きは呼吸でコントロールする
  • フォルテシモからのクレッシェンドは、一度ピアノに落としてから始める
  • クレッシェンドはどこに向かっていくのかを教えてあげよう

音楽用語もたくさんありますが、お勉強として端的に覚えたままだと、実践するのはやや難しいもの。
本当の意味はどういうこと?実際に音楽的に表すにはどうしたらいい?って、考える癖を付けましょうね。

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