ピアノでの打鍵について考える。音色の違いはどうやったら出せるのか?

ピアノは鍵盤を押せば、音が鳴ります。
調律さえしていれば、音程も正しく鳴りますよね。打鍵時に、他の楽器のように音程に敏感にならなくてもいいのがピアノ。

でも。だからと言って、ピアノから出てくる音色は一つじゃありません。

同じピアノでも、別の人が弾くとその人の音色が出てきて驚いた経験はありませんか?
なんで私が出す音と違うんだろう?って。

良いピアノ・コンディションの良いピアノなら、いい響きの音が出るのは当然です。
でも、腕の良いピアニストなら、コンディションが最悪の乾いた音しか出ないようなピアノでさえ、多種の音色を操ることができる。

いきなり「多種の音色を操る」のは魔法使いじゃないんだから無理かもしれません。
でもね、今あなたが持っている(出せる)音色+αなら、挑戦できるんじゃない?

そのためには、どうやって弾いたらどんな音が出るのか?どんな風に音は響いていくのか?を知る必要があります。
今、あなたがどうやって弾いているのか?もね。

今日はまず、そこを詰めていきましょうか。

打鍵のポジションをどこで感じるのか?

例えば、

  • 速い細かいパッセージが弾きにくい
  • うまく打鍵しきれない

と言う時には、打鍵する高さや方向などのポジションを少し変えるだけで、ビックリするほど弾きやすくなります。

しかし、そのフレーズによって(和音で速いパッセージなのか?単音で速いパッセージなのか?同音連打なのか?などの違いによって)どの部位を、どう変えれば良いか?
更には、実際に打鍵する指や甲の高さなどの他に、意識をどこに置くのか?

それによっても、随分と変わります。

だから、打鍵のポジションは一つじゃない、いろんな可能性があると思って、思いつく限りいろいろ試してみましょう。

弾いている自分は自分の手を上から見下ろしていますよね。
自分では「こう弾いているつもり」でも、横から見ると、ものすごく鍵盤に執着していたり腕が落ちていたりします。

自分がどう弾いているか?を知るために、ピアノの横に鏡を置いたり、スマホで録画する事もオススメ!

かめはめ波で弾くのがコツ

てのひらからエネルギーが出るイメージ
てのひらからエネルギーが出るイメージ

漫画好きじゃない方には、伝わらなかったらごめんなさい。
「ドラゴンボール」に出てくる「かめはめ波」と言うのが、あります。
両手首を合わせて、ボール型にした「てのひら」から波動が出て攻撃する技が「かめはめ波」。

気功やレイキなどをされる方は、その感じが実体験をもって理解出来ると思います。
わからない方は、両手を合わせてこすってみましょう。
すると、てのひらが、じわじわと温かく(熱く)なってくるのを感じられると思います。
そんな感じなのですが。その温かさ(熱さ)が、てのひらから常にザーザー出てると、イメージしてみて下さいね。

それだけで弾けてしまうフレーズは、たくさんあります。
それを感じるだけで、要らない力を抜くことも、出来ますよ。
それを感じるだけで、あったかい音を出すことも、出来ます。
それを感じるだけで、指をバタバタと余計な動きをさせずに弾くことも、出来るように。

打鍵する、鍵盤に触れる指先ではなく、波動が出る「てのひらの中心」に意識を置いて弾いてみましょうか。

てのひらで感じるもの

筆者の手とショパンの手
筆者の手とショパンの手

これはショパン様の手形と私の手の「甲」ですが、今日のお話は「てのひら」。

香港時代の師匠、エレノア先生はこう諭しました。

指で弾くんじゃない。
てのひらには、たくさんの筋肉があるんだよ。
そのどこを、どう感じて、どこに気を集めて指先を通して鍵盤に伝えるのか?だ。

というようなことを。

弾くために動いているは、指先だけじゃありません。
でもね、指先だって「指の腹のどの面をどれだけ使って打鍵するか」というだけでも、何種類もあるんです。

しかし、問題は指だけじゃありません。
手=てのひら、手首、内肘、肩の付け根、背筋、腹筋などなど、全てが連動して打鍵に至る。
エレノア先生曰くの、全ては「ワンピース」だ。

私の楽譜には、エレノア先生による「PALM !!!」の書き込みが多い。
「てのひらを感じる」だったり「てのひらの中央で鍵盤をつかみとる」だったり、「てのひらに気を集める」だったり、「てのひらの中央だけを緊張させる」だったり、いろいろ。

「てのひらの中央」を意識すると、手の甲や手首・腕の外側などに不要な力が溜まらなくなります。
それだけで、必要なエネルギーがその音に集中して真っ直ぐに向かっていけるようになる。

ちょっと「てのひら」を感じてみませんか?

保持音があっても回転させよう

保持音で手を固定しない
保持音で手を固定しない

この画像の左手のように、拍頭の音を保持しながら続く音を弾いて行く時。
こんな時も、腕の回転を使いたいもの。

保持音の場合、「押さえておかなきゃ」と思ってしまうと、打鍵したらその手は落ちたままになりやすい。
落ちたまま=鍵盤にしがみついてしまう=無意識で引っ張ってしまう→固まってしまう。

画像に「⤴︎」の書き込みがありますが、今思うと逆ですね。手の動きは「ド」から「ミ」に向けて上げながら、そして回転で落ちながら「ソ」を弾く「⤵︎」です。

「打鍵したら上げて回して行く」。
でも、保持する音の打鍵で立ち上がって、時計回りに回転させながら弾いていくので、視覚的には「⤵︎」でしょう。

って、文章で説明するのは難しいです。ややこしくて、ごめんなさい。

どちらにせよ、打鍵で落とし切らない。動きは止めない。

腕のしなやかな回転を使って、まるでそのついでのように弾いて行くと、音も綺麗だし、腕もラクですよ。

跳ねた音の後の、伸ばす音の扱い方

エステン「人形の夢と目覚め」から
エステン「人形の夢と目覚め」から

「ミドソッ ミドソッ」と、軽快に跳ねる。
「シッレッ」も軽快。
ところが、続く「レ」は4分音符で、スタッカートはありませんね。

ここは「跳ねない」と、気をつけられるのですが、「跳ねなければ」良いのでしょうか?

それまではスタッカートで、離鍵を「上へ」と言う意識で弾いてきたので、「跳ねない」となると、「下へ」と疑わず。
無意識で弾いてしまいがちな、危険なトコロです。

こんなところは、打鍵したら「そこはトランポリンだ!」と、思ってみてね。
だから、跳ねてしまうわけじゃありません。
指先から手首から腕全体を、しなやかに立ち上がらせてみてご覧。
音を聴いて。
ほら、音が立ち上がって行ったでしょ?

聴いたら、わかるよね。忘れないでね。
どっちの音が、好き?
どっちの音が、いい?
どっちの音が、素敵?

跳ねた後に伸ばす音の、扱い方には、十分に気をつけましょう。

音を立たせるには?

シューマン「子供の情景」”おねだり”から
シューマン「子供の情景」”おねだり”から

最後までたどり着くと、ホッとしちゃう?
うん、最後にたどり着くまでに、たくさんの困難があったものね。
わかるよ。うん。

だけど、本当の最後というのは、その最後の音の「響きが消える」まで、だよ。
聴いてね。
ほら、ちゃんとその音がどんな風に響いていくか、聴いて。
どんな響きで終えたいかしら?
ストン、と落としちゃって、いい?
こんな風にしたら、どう?(立ち上げて聴かせてみる)

「わぁ〜!音が、ふわぁ〜ってなった!上がった!」
わ、わかった?すごい!良いお耳を持ってるね!
じゃあ、あなたが出す音も、どんな風に響きが動いていくか、聴けるよね?

音を立たせたいなぁって思ったらね、打鍵したら「てのひらの中心」を意識して、指先から手を立ち上げてみましょう。
体操選手が、最後の着地でポーズを取るような感じですよ。
ほら!できた!素敵な響きになったよね?
最後まで聴けたよね?
聴けたなら、もう大丈夫。忘れないでね。

欲しい音を出す方法

ベートーヴェン「悲愴ソナタ」第2楽章から
ベートーヴェン「悲愴ソナタ」第2楽章から

美しい曲は、美しくバランスをとって響かせるのは、易しい事ではないのがツラいところ。
欲しい音・聴かせたい音は、上のラインなのに、そう思って弾いているのに、聞こえてくるのは内声がドタドタと。なあぜえ?

やる事は、一つじゃありません。
でも、一度に全てをやるのは難易度上がるので、一つずつ参りましょ。

まず、聴かせたい音のラインを、音を出す前に、自分の中で強くイメージすること。
あなたの中で、響かせる。
「どんな風に響いて欲しいの?」
その響きのイメージを、明確にする。
これが1つ目にやる事です。

それが出来たら次にする事。
1つ目で描いた響きを、あなたの脳から腕を通して指先へ。
そして、指先=指の腹から鍵盤へ、鍵盤の奥底(奥深く)へと、にゅるにゅるっと浸透させるように伝えるイメージで打鍵する。
打鍵する瞬間、本当に指が鍵盤の中へ入っていくような、鍵盤と同化するようなイメージを持って弾きましょう。
それが出来ている時は、意識が指先と鍵盤に集中しています。
これが、2つ目にする事でした。

最後にやる事。
それは、「オレオレ!」って主張するんじゃなくて、「縁の下の力持ち」で居て欲しい「内声」さんの打鍵への意識改革。

「オレオレ!」と主張しているように、音が飛び出してきているとしたら、ちょっとその指の動きを見つめて見て下さい。

まるで「行進する」ように、運動会の入場行進の足の動きのように、「ハキハキ」と、指が「上がって降りて」の打鍵をしていないでしょうか?
もし、そうなっていたら、「そんなに頑張るのを止める」。それだけです。

行進するように足をしっかり上げ下げしなくても、「歩くこと」は出来ますよね。
それと同じ感覚です。
内声を弾く指先は、なるべく鍵盤から離れないように。
鍵盤から離れて打鍵するという事は、それだけ運動量を必要とします。

無駄に力を使うのは、やめときましょ。

指先の点と面で弾き分ける

「卵の形」などで弾くと、指先の「点(1点)」が鍵盤に触れるような感じだと思います。
「指を立ててねー!」などと言われると、「指先=点で弾く」状態に。

いつも、この状態で弾いている方はぜひ!「指の腹」を使って弾いてみてください。
これを、「指を寝かせて弾く」などと言うでしょうか。

ものすごーく大雑把に分けるなら、バロックや古典派は「点」で、ロマン派以降は「腹(面)」で弾く。
もちろん、この限りではありません。
バロックや古典派の作品を弾くときだって、「腹」を使う場合はあります。
ただ、大雑把に分ければ、という話ね。

「指の腹(面)」も一つではなく、どのくらい指の腹を鍵盤に触れさせるか、どんな角度で打鍵するか、
という事でも、音色は変わってきますよ。
だから、多彩な音色が出せるピアニストは、たくさんの打鍵の仕方を手の内にしている、ということでしょう。

もしあなたが、「点」でしか弾いていなかったなら、これからは、少し「腹(面)」が鍵盤に触れることを
意識してみてくださいね。

鍵盤に指紋を付けていく感じ

上の「指先の点と面で弾き分ける」を実践した生徒さんが

シャープ6個の調の曲を、指の腹で弾く→指で鍵盤をなぞっている感じですね。
指紋をつけていく感じ。ミスタッチ減っている!!

わー!嬉しいなー。ミスタッチが減ったって、物凄い効果ですよね。
目に見えるような、分かりやすい変化です。すごいわ~。

そう、「鍵盤をなぞる」と、私も言うのですが、彼女は更に指紋をつけていく感じ」と。
それはかなりの「面」を使ってる感じがしますね!

意識して面を使うわけですから、それがミスタッチ軽減につながる。良い事です。

点でも面でも良いし、いろいろありますが、「どうやって打鍵するか?」という所に意識を置いて弾けば、打鍵への準備は早くなるし、ミスタッチは減りますよ。

納豆奏法?

なんで突然 かと言いますと….
そもそも、チビ子ちゃんチビ助くん達が、「片手ずつなら出来るのに~」と言う。
両手奏になると、レガートで弾けなくなる事が多いので、あの手この手でいろいろやってきたわけです。
そうして、これが生徒さん達にヒット!したわけで。

その納豆奏法とは?至極簡単な説明ですよ。

納豆が嫌い・苦手とか、食べた事がない、という生徒でなければ話は通じます。

あのね、納豆がさ、ねばねばしちゃうみたいにね、
あなたの指先に納豆ネバネバが付いてるって思ってね!

だから、指と鍵盤はね、離れられないのよ~~!

て、それだけ!(笑)

それだけで、殆どの生徒(チビ子チビ助)たちは、レガートで弾けるようになりましたよん。
あなたも、レガートを意識してもうまく弾けてないような気がするなら、ちょっと納豆のネバネバを思い出してみてね。

まとめ

  • 打鍵のポジションをどこで感じるのか?いつもと違うところで感じてみよう
  • かめはめ波で「てのひら」の中心からエネルギーを出して弾いてみよう
  • 保持音は打鍵で落としたままにしないで回転させるのがコツ
  • 跳ねた後の伸ばす音も、落としたままにしない
  • 音を立ち上がらせるには、その響きの最後まで聴き届けること
  • 欲しい音を出すには弾く前にその音色を強くイメージする

指先の点と面、面の広さや角度を変えたり、手の動きを止めない!と意識してね。

ほんのちょっとの事で、ピアノは楽にきれいな音で弾けるようになりますよ。

エンジョイ!あなたのピアノ・ライフをもっと豊かに!
もっとラクに心と体を使ってピアノを弾くお手伝いをしています。

スポンサーリンク

心と体を楽にしてピアノを弾くヒントを月曜の朝、メールでお届け!

ブログをメールで購読

メールアドレスを記入して購読すれば、更新をメールで受信できます。

1,098人の購読者に加わりましょう