リスト「森のざわめき」の練習法・仕上げのポイント教えます!
ピアノは楽器の王様、一人で弾くオーケストラだなんて言われることもありますが、ピアノのために作られた曲は数え切れないほどありますよね。
自分の人生の中で、一体どれほどの作品と出会う事が出来るのか?って考えたら、すごく気が遠くなって悲しくなっちゃった事がありました。
そうか、じゃ私は好きな作曲家に絞って攻めていこう!なんて思ったものです。
そうは思っても、時に友人・知人が素敵な演奏をしてくれると、「私も弾きたい!弾いてみたい!」って思っちゃうのだから、いい加減ですよね(笑)。
作曲家のリスト様と言えば、多くの人が最初に憧れるのは「愛の夢第3番」だと思います。
私がリスト様の曲で最初に憧れたのは「愛の夢」ではなく、先輩が弾いていた「2つの演奏会用練習曲」第1番の”森のざわめき”でした。
当時はまだ「森のささやき」と訳されていたかと。
というわけで今日は、リスト作曲「森のざわめき」を創り上げる上での練習のポイントをお伝えします!
Contents
重心をどこに置くとラクに弾けるのか?

リスト作曲「森のざわめき」、はじめのフレーズは右手から始まります。
楽譜画像に鉛筆で丸を書き入れてあるように、出だしの6音全部で一つの和音として、弾く前に和音化して指を用意しておくこと。
そうすることで、打鍵する時に無駄な動きがなくなります。
1音1音が主張されることなく、ハーモニーとして進んでいきますよ。
さてその時、あなたは「3」の指をセンターにして(中心・支点)にして弾くのと、「5」の指側に重心を置いて手首を使って弾くのと、どっちがラクかしら?
と言うのはね、この右手はハーモニーだけれども、トップ音の「ラ♭」は聴いて欲しい音なの。
理由は2つ。
- ラ♭のところだけ和音になっている
- ラ♭がこのフレーズの中で一番高い音
だから、ハーモニーの動きの中でも「ラ♭」はちょっと特別です。
さぁ、あなたは「3」の指を支点にするのと「5」の指側に重心を置いて弾くのでは、どちらがラクかしら?
いろいろ試して弾いてみましょう。
ちなみに、これが正解というわけではありませんが、私自身は5の指側に重心を置く方がラクです。
音の方向性と拍を意識してみる

さぁ、2小節目も出だしからの右手の動きは続きますが、そこに左手のメロディが入ってきますよ。
ここは左手の音の方向性に注意してみましょう。
ここは、あなたが思っている以上に意識して音をつなげてみる。
そうしないとで、あなたが歌いたいことがよりハッキリと伝わるようになります。
そして、拍をもっと意識してみる。つまり、リズムです。
「そのリズムを生かした弾き方をする」ということ。
左手のメロディはここだけではなく皆、8分休符を経て始まります。
この8分休符は呼吸するところ。
何気なくただ拍に・右手の動きに合わせるだけで弾かないようにね。
合わせる事ではなく、8分休符を意識して呼吸すると、出てくる音が変わってきます。
意志のある動きのある音になりますよ。
大きなフレーズのラインを感じよう

あなたが思うより、もっと幸せな感じをイメージしてみましょう。
そして大きなラインで。超レガートで弾くことを意識してね。
まず、左手のラインですが、一つのメロディが結構長めです。
だから、実際はもっと細かくとらえて(グルーピングして)歌っていきましょう。
「・そーふぁれ」「ふぁみれ|し」「れどしそ」「しらそ|ふぁ」というように分けてみましょうか。
そして、そのフレーズの終わり(画像2段2小節目)の「みーーふぁっ」は、きちんと「ミー」から「ファ」へ息を静かにゆるやかに吐くように、大事に歌いましょう。
言いたいことはなんとなくわかるのに、明確に伝わってこないとしたら?
それは、あなた自身がラインをきちんと理解していないからでしょう。
なんとなくはわかっていても。
上の画像の、この[ ]が一つのラインです。そしてまた次のラインが始まる。
そしてちょっと気をつけたい事。
それはね、歌いすぎてしまうこと。
だから、cresc.はしないよう注意。
でもね、各フレーズの中の頂点の音を聴くように意識して。
機械が弾いているようには弾かないのがポイント。
肘をゆるめてね。肘が固まっていないか、外側へ出っ張っていないか確認しましょう。

の指示は、ココだけなの!しかも、poco!でしょ。忘れないでね。
変化を考える

曲のはじめのセクションでは、メロディは単旋律でした。
しかしここからは右手でオクターブのメロディに。
オクターブの動きになっても、打鍵が一音ずつにはならないように、超レガートで弾くこと、響きでレガートになっているか?あなたが出す音をよく聴きながらていねいに弾いていきましょう。
左手は16分音符で音域の幅が広がりながらの動き。
バタバタとうるさくならないように、静かに。
さぁ、ここは同じリズムで冒頭と同じようなラインですが、音色を変えて弾いてみましょう。
冒頭と同じ弾き方をしないように。
打鍵後に指が後退しないように=自分の体側に引っ張らないように。
打鍵後に、指を手前に引っ張ることはありません。
逆に、鍵盤の向こう側へ「はらう」ことはあっても。
ここは打鍵する時、やはり肘をゆるめる。
そして打鍵したら手首を開放して「引く」のではなく「向こう側へ押しあがるように」。
そしてここは「mf」メゾフォルテですよね。
強すぎない・大きくなりすぎないように。
ラインを意識する

ここもラインを意識してみましょう。
一つ目のライン[ ]は6小節あります。
その次のラインは「6小節+α=10小節」のラインに延長することを、理解した上で弾きましょう。
ラインが延長するということは、一つ目のラインより、二つ目は増殖していくということですよ。
増殖するということは、「発展していく」ということ。
それは、まだまだ先に向かっていくところがある事を意味しています。
オクターブの動き、手の使い方を考える

このオレンジ○のオクターブのフレーズに注目。
レガートを意識して、オクターブの外側(上の音)を「5-4-5」の指で弾くだけでいいかしら?
その「5-4-5」の動きは、もっとラクにサポートできますよ。
それはね、肘と手首と1の指側の手のひら筋で、サポートするんです。
この動きの時、あなたの肘と手首は外側へ広がっていくとしたら要注意。
まず、右手オクターブが上がっていくのに、オクターブの上の音を「5→4」の指で弾くということは、その動きに無理があります。だから、それを助けるために肘は内側へ緩める。その時、肩もリラックスさせてね。
そして、手首も内側に寄せて持ち上げるように。
1の指の手のひら筋を5と4の指に向かって緊張させて指を動かしていきましょう。
向かいどころを知っておく

右手のライン、スラーの始まりがどこからなのか、もう一度理解しておきましょう。
そのスラーの付き方の通りに、音は各小節最後の8分音符から→次の小節の頭の音に向かっていきます。
だから、ここは絶対に「次に向かう」事を意識して、つなげていきましょうね。
左手の細かい動きの練習法

こちらの左手は、8分音符一つ分ずつ(青○ごと)、コード(和音)でつかむ練習をするのが有効です。
その時、ただコード(和音)にして弾けばいいというわけではありません。
ここで出す音=聴かせたい動きの音はベース。
だから、ベース音(8分音符の音)を弾く指を意識するんですよ。
親指でベースを弾く指の打鍵を助けてあげる気持ちで。
つまり、ベースを弾く指は指先に緊張感を持つんです。
親指の付け根の動きは、ベース音を弾く指(主に4か5)を助ける動き=打鍵後すぐにベースを弾く指の方へ手のひらを膨らますように(手のひらに風船が入っているように)バウンスさせる要領でね。
リズムが変わった時に気をつけること

それまでは良かったのに、オクターブ・フレーズが3連符になった途端、落とし穴が!
このように音価が変わると、一音ずつぶったぎり打鍵になりやすいんです。
だから、こんな時は3連符を「たたた」ではなく、「たぁ~た~た」と、1音目をテヌート気味に弾いてみましょう。
左右で受け渡す動きの弾き方

ここは、あまりさらさらと弾かないように気をつけましょう。
この1フレーズの中にも、細かい動きがありますよ。
「始まり」と「終わり」がね、たくさんある。
青のラインと赤のライン、ラインの終わりの音と、次のラインの始まりの音(和音)は同じです。
ラインの「終わりの音」であることを伝える弾き方と、同時に次のラインの始まりの音であることをも伝わってくる音の出し方(タッチ)が必要になります。
この点は、文章だけで説明するのは難しいので省かせていただきますね。ごめんなさい。
ここはまず、それぞれのラインを意識するために、コード化弾きしてみましょう。
そうしたら次は、ライン一つずつの弾き方を練習。
このようにして、ラインの終わりの音を感じるタッチを習得していきます。
次に、その終わりの音は始まりの音でもあるということを踏まえてのタッチ練習をする。
このような練習を繰り返すことで、ここで必要な弾き方を身につけられますよ。
二声ラインの弾き分け方

ここの右手は二声になっています。
だから、左手のラインと右手のラインは、同じタッチで弾いてはダメですよ。
右手の小指は、突き刺すように打鍵。突き刺して瞬時に突き放す。
それは、指先だけでやらないように。
あなたの小指の骨は、肩まで伸びているのだと意識してみましょう。
あなたの小指が肩まで伸びてる、伸びてる、伸びてる、と意識。
ほら、そうすると、肩が自由にりますよ。
右手に対して左手をもっとレガートに弾くために…

そのフレーズの音に、前もって指を用意しておきましょう。上の写真のように。
昔の私は「次の音の用意」だけしていて、そのまた次の音には指が用意し切れていませんでした。
ここでは「ドミラシ」まで指かえなしに一息に弾けますから、始めの時点で全ての指を用意しておくのがポイントですよ。
てのひらに氣を集める

このフレーズ、右手は二声になっています。
このフレーズを弾くためには、あなたの「てのひら」の中心に「氣」を集めるような感覚を持って弾きましょう=「てのひらの中心部を感じる」。
左手のラインの取り方、前と同じように「・しーらふぁ」「そみれ|ど」と、とらえるのがポイント。
タッチを考える

ここの左手は、「だーんだーんだーんだーん」と、ぶつけるように弾かないでね。
打鍵と同時に素早く離鍵するのがポイントです。
やっぱり、そこもラインを意識しましょう。
そして画像に赤のラインで示したように、このラインの始めの音が、それぞれのラインでの「High Note(高い音)」となっていますよね。
そこを強調する(意識を持つ)んですよ。
そして右手のタッチは、「んタタんタタんタタ~~」をレガートで弾かないようにしましょう。
ノン・レガートでね。
そして、「んタたんタた~」ではなく、「んタタんタタ~」。
ポイントは、いつもそのフレーズでのHigh Note(高い音)を意識することですよ。

ここも素早くね。
フォルテの出し方・つなげ方を考える
肘をね、打鍵後に外に出して緩めるのではなく、体の内側に緩めていくことを意識してみましょう。
この場合は「内側へ」がポイント。
(手が内側に動いていく音型の場合です。右手なら下降、左手なら上昇する時。)
跳躍フレーズの練習法

ココはね、めちゃくちゃ速弾きして、バンバン弾いてるだけで汚くなっちゃう人が多いので、気をつけましょうね。
ここの左手は、リズム練習をする事をオススメします。
- タタッ タタッ タタッ タタッ
- タン タタン タタン タタン タ
というような逆のリズムでね。
この時、指はいつもベース音の鍵盤に、できるだけ近づけておくようにしましょう。
ココで大事なのはね、左手の跳躍したところの和音ですよ。
跳躍の仕方はそれぞれ違うし、跳躍先の和音の形もそれぞれ違います。
それでもね、一つだけ共通点が。それは和音の中の音。
これはほとんど「2」で取るでしょ。1と2の指の間を広げるのが一番自然な形です。
だから跳躍する時に、この和音の一番上の音にうまく着地することを考えずに「2の指でとる」。
そして、和音の中の音のところに、2の指がきちんと行くことを意識するのがポイントですよ。
そうすれば、まず、この和音はちゃんと取れます。
右手、(画像2小節目の)4分音符「ラ」に向かってクレッシェンドしますが、その次の8分音符「ソ」は抜く!
その後またクレッシェンドしていくんですよ。

ここは三回同じ事が繰り返されて三回目で発展していきます。
ということは、全て同じに弾かない。変えて弾くのがあなたの演奏力を上げるポイントですよ。
さぁ、考えましょう。どうやって変えるのか?
どのように変えて弾くと、表現を変えられるのか?
トレモロは小太鼓を叩くように

このトレモロ・フレーズは、小太鼓を叩いているようにね。
想像して。小太鼓は、指先だけでは叩けませんよ。
必要なのは、上半身をしっかり安定させて、肩を広げるということ。
ここの練習は、ピアノなしでやるといいですよ。
あなたの日常生活の中で、肩を広げる動きを見つけて意識するのがポインtのです。
つながっている事を忘れない

この終わりで止まらないでそのまま次へ(下画像)突入!

そしてこの小節の終わりで求まらず次の小節の頭に突入!

ここ、さらさらさらさらって弾かないでね。
そして、「タタタタタタタタタ・・・」なんて簡単そうに弾いたらダメですよ。
16分音符3音ずつの動きの、2つ目がトップの音なのだから、そこを意識しましょう。
このフレーズの終わりは下の画像の通りです。

このフレーズの本当の終わりの音は、画像2小節目の最初の音ですよね。
だから、ココで軽くフェルマータできちんと終わってから次へいくのがポイントですよ。きちんと終わってね。
今日のピアノ動画*リスト「森のざわめき」
ティブレイクは、お題のリスト作曲「2つの演奏会用練習曲」第1番”森のざわめき”をお送りします。
私が初めてこの曲に向き合った頃は、「森のささやき」と言われていました。
「ささやき」という響きが気に入っていたのですが、「ざわめき」という訳し方がピッタリだなぁと思います。
リスト「森のざわめき」練習ポイントのまとめ
- 曲の構造を把握、全体を見て、練っていく
- 拍を感じること
※この曲は、8分休符の後に始まるテーマと、1拍目から流れていくフレーズの二つの絡みで出来ています。
だから、片方だけにとらわれてはいけません。 - 肘の使い方
- 打鍵の仕方
※指先の使い方は、フレーズによってタッチを変える。 - ロマン派のタッチ&指の形
もっとフラットにね。
年代にもよるでしょうけれど、ある程度の年代の人達は、ピアノ学習を始めた頃、
手指の形を「ネコの手のように」とか「卵の形で」などと言われたり、
手の甲に消しゴムとかコインを乗せられて練習させられたり、
1音1音ハッキリと!マルカートでしっかり弾きなさい!
などと言われた育てられた人が多いんです。
これは、大雑把に言うと「バロックや古典派を弾く時」の手の形。
さぁ、昔の教えの呪縛から解き放たちましょう。
ピアノを弾く時の、あなたの指はもっと寝かせてね。
参考にしたらいいのは、ホロヴィッツの演奏映像。ホロヴィッツのように、もっとあなたの指を寝かせて打鍵してみましょう。
そしてね、もう一つ意識したら良いポイントは、一生懸命弾くあまり、マーチ(行進曲)になってしまわないように、客観視してみましょうね。
最後に、私が香港滞在中に教えを頂いたエレノア・ウォン教授の言葉をここに残します。
全ての打鍵の仕方・肘の使い方・脱力の仕方は、ピアノなしでできること。
ピアノを使わないで意識した方が、それらは習得しやすいよ。
日常の家事をしながら、電車に乗りながら、全部できるよ。
肘の開放なんか、掃除機かけてるときに出来るから!
指の打鍵の仕方の色々も、電車に乗ってるとき、待ってる時、
テレビを見てるとき、それから、マッサージをする時、いつでもできる。
肩の開放や使い方は、水泳で体得できる。
そうした日常生活での動作と意識を大事にしてね。
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