ドイツのロマン派の作曲家と言えば、ロベルト・シューマン(1810-1856)でしょう。

ドイツの作曲家ロベルト・シューマン

今日は、そのシューマン様のピアノ曲である「幻想小曲集」作品12についてお話しますよ。ピアノが好きなあなたには、シューマンの「幻想小曲集」の事を知って欲しい!そして弾いて欲しいです。

シューマン作曲「幻想小曲集」Op.12とは?

シューマンが生み出したピアノのための「幻想小曲集」は、タイトルが付けられた8曲と一つの遺作から成ります。(遺作は収録されていない版もあります。)

この「幻想小曲集」は、この中の一曲だけを取り上げて演奏されることも多いですね。例えば第2曲の「飛翔」、そして第5曲の「夜に」。この二曲は一番人気があるようです。 4期(バロック・古典・ロマン派・近現代)のいろいろな作品が収録されているような曲集(楽譜)ですと、第7曲「夢のもつれ」が入っていることもありますよ。

さて、シューマンのピアノ曲「幻想小曲集」は1837年春から1838年の始めにかけて作られました。1838年2月に、ドイツのブライトコプフ社から出版されています。 それぞれの曲に展開されるファンタジーの幅広さや対比は見事で、シューマン自身のこの曲に対する評価も、また他者による当時もその後現在に至るまでの評価も、常に高いものがあるようですね。

フランスの評論家マルセル・ブリヨン氏(1895-1984)は、この作品に「夢たち—–音楽になったところの—-」と名付けたそうです。そう、「幻想小曲集」は、まさに夢の世界!

シューマンの作品は夢・空想・幻想、そして現実が交錯します。この作品を生み出した頃のシューマンはと言えば、 クララとの結婚を熱望していた頃。しかしシューマンの恩師でもあったクララの父から反対されており、裁判まで起こしました。

そうやって、クララとの結婚を勝ち取るために戦っている最中に描かれた作品がこの「幻想小曲集」です。ですからクララへの想いや結婚への夢、期待、反対され続けることに対して芽生える絶望感などが詰まっている小曲集なのですね。

シューマン「幻想小曲集」第1曲”夕べに” 

シューマン「幻想小曲集」第1曲”夕べに”から

シューマンのピアノ曲「幻想小曲集」第1曲である”夕べに”は、変ニ長調8分の2拍子。まさに夕暮れが静かにせまる時を想わせる、甘く美しく、そして恋が故、胸に少し痛みを覚えるような、そんな切なさすら併せ持っています。

シューマンによる指示は、「きわめて内面的に演奏する事」。”夕べに”は2拍子でありながら、右手ソプラノにある8分音符のメロディが3拍子になっており、シューマンお得意のポリリズムがいきなり現れています。

静かに、静かに夕暮れがせまってくる・・・ さぁ、そろそろ夜会が始まりますよ。 みなさん、美しい庭園にお集まりくださいな。

シューマン「幻想小曲集」第2曲”飛翔”

シューマン「幻想小曲集」第2曲”飛翔”

シューマン「幻想小曲集」第2曲の”飛翔”は、ヘ短調8分の6拍子。第1曲「夕べに」とは対照的です。「幻想小曲集」の中で1番人気で、この”飛翔”だけで演奏される事の多い作品です。

こちら”飛翔”は「きわめて急速に」という指示がシューマンから。 非常に力強く、大きく羽ばたいていこうとする「飛翔」というタイトルが非常に相応しい一曲です。

シューマン「幻想小曲集」第2曲”飛翔”から

”飛翔”は、非常に自由に音が空を舞って・飛んでいく様です。

なかなか進展しない二人の結婚問題の渦中で、クララとシューマンの想いがかみ合わない事もあっただろうと思わせるような、左右でかみ合わないリズムが追いかけて出てくる。それが激情へと変わっていき・・・と、想像してしまいますね。

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シューマン「幻想小曲集」第3曲”なぜに”

シューマン「幻想小曲集」第3曲”なぜに”から

シューマン「幻想小曲集」の第3曲”なぜに”は、変ニ長調で4分の2拍子。シューマンからの指示は「ゆっくりと繊細に」というもの。

穏やかに問いが投げかけられています。そしてその問いに答えているのがこちら。

シューマン「幻想小曲集」第3曲”なぜに”から

問に答えているというのか、疑問に同調しているようにも感じられます。そして疑問は残ったまま終わりに向かうよう。

シューマン「幻想小曲集」第3曲”なぜに”から

しかし、次のような解釈はどうかしら?

どうして?どうして結婚を認めてもらえないのか?全身から力が抜けてしまったよ・・・どうしたらいいんだ?と。

椅子から崩れ落ちるように座っているシューマンの姿が思い浮かぶよう・・・

シューマン「幻想小曲集」第4曲”気まぐれ”

シューマン「幻想小曲集」第4曲”気まぐれ”から

シューマン「幻想小曲集」第4曲の”気まぐれ”は、変ニ長調4分の3拍子。この”気まぐれ”は、「ユーモアをもって」という指示がシューマンから出されています。

「気まぐれ」というと、カプリースやカプリッチョへ繋がりますが、この曲の場合はカプリースやカプリッチョより、もっと夢のよう。本当に気まぐれに変わっていきます。

シューマン「幻想小曲集」第4曲”気まぐれ”から

シューマン「幻想小曲集」第4曲”気まぐれ”から

そして中間部では変ト短調へ転調し、物思いに沈みます。

シューマン「幻想小曲集」第4曲”気まぐれ”から

そして再現部になり(元の調に戻り)、何かを決意するように第4曲”気まぐれ”は終わります。

シューマン「幻想小曲集」第5曲”夜に”

シューマン「幻想小曲集」第5曲”夜に”から

シューマン様の「幻想小曲集」第5曲”夜に”も人気があり、単体で演奏されることの多い1曲です。この”夜に”はヘ短調4分の2拍子。シューマンからは「激情と興奮を持って」という指示。

何か闇にまぎれ、常に動いている・蠢いている、うねるように進んで行くような熱を帯びたような、そんな曲ですね。シューマンは1838年4月12日、クララに次のような手紙を書きました。

この曲を書き終わってから、ヘロとレアンダーの話を見出して喜びました。知っているでしょう?レアンダーは、毎晩海を泳いで愛する人の待つ灯台までゆくのです。愛する人は松明をかかげて待っているのです。

古く美しくロマンティックな伝説です。”夜に”を弾く時、このイメージが忘れられないのです。まず、彼が海に飛び込む。彼女が呼ぶ。彼が答える。彼が海を泳ぎきり陸へ上がる。そして、抱擁の歌。

そして去りがたい別れのとき。ついに夜が全てを闇に包んでしまう。

貴女も、このイメージが合っていると思えるか、教えてください。

と。このように手紙が残っているのも嬉しいですね。シューマンとクララとの関係性や、この作品に対する想いをより近い所で想像することが出来ます。

あなたはどんな情景を思い浮かべますか?

シューマン「幻想小曲集」第6曲”寓話”

シューマン「幻想小曲集」第6曲”寓話”から

シューマン「幻想小曲集」の第6曲”寓話”はハ長調4分の2拍子。

ゆったりとした序奏で始まる”寓話”。その序奏はやはり夢を見ているようで、同じシューマン様の作品「謝肉祭」Op.9の中の”オイゼビウス”のようでもあり、また「子供の情景」Op.15の中の”トロイメライ”のようでもあり、或はそれらを連想させるものがあります。

しかし、夢はあっという間に寓話の世界へ。眠りにつくと、家にあるオモチャの人形や兵隊たちが遊び(動き)出す、というお話がありますが、そんな感じです。そして中間部は

シューマン「幻想小曲集」第6曲”寓話”から

まるで、オモチャの兵隊さんたちと、大きなぬいぐるみたちが戦争を始めたかのようです。ゆるやかなフレーズと、生き生きとしたフレーズが混ざり、いつしかワクワクした寓話の世界にどっぷりはまってしまうのでしょうか。

そうして・・・夢はもつれていくのです。

シューマン「幻想小曲集」第7曲”夢のもつれ”

シューマン「幻想小曲集」第7曲”夢のもつれ”から

「幻想小曲集」の第7曲”夢のもつれ”はヘ長調4分の2拍子。シューマンからの指示は「非常に生き生きと」。

夢の世界と仮面舞踏会の世界が交錯して大騒ぎ! という感じのヘ長調の明るい主題は、その後に変ニ長調の深い世界へはまっていきます。そして変ト長調へと転じる。まるで昇華していくような広がりを見せて、またヘ長調の明るい夢が再現されます。

そして夢はどんどんもつれ、もつれあったままに光が放たれて覚醒します。

シューマン「幻想小曲集」第8曲”歌の終わり”

シューマン「幻想小曲集」第8曲”歌の終わり”から

シューマン様の「幻想小曲集」終曲”歌の終わり”は、ヘ長調4分の4拍子。「よいユーモアを持って」「上機嫌で」という指示がシューマンから出ています。

堂々とした、まるで行進曲を思わせるような序奏。しかし、何と詩的なタイトルでしょう。それまでの7曲は、それぞれに夢を持った世界・幻想の世界であり、情景が浮かぶような描写でしたね。しかしフィナーレは「歌の終わり」なのです。

シューマンは、クララにこのフィナーレについて「そこで思ったのは、終わりには全てが楽しい結婚式へ溶け込むということでした。しかし終わりには再び、貴女を想う胸の痛みが蘇り、婚礼の鐘と挙式の鐘とが入り交じって聴こえてくるのでした。」と書き送っています。

シューマン「幻想小曲集」遺作

シューマン「幻想小曲集」の”遺作”から

シューマン様の「幻想小曲集」は全8曲からなるのですが、ヘンレ版にはもう1曲”遺作”が収録されています。しかし、曲風からすると、この「幻想小曲集」の第9曲として位置されるものではないであろうと。

さぁ、あなたもシューマン様の「幻想小曲集」に触れてみませんか?通して弾くもよし、どれか1曲を取り上げるもよし。

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