ロマン派音楽を代表する作曲家の一人、ドイツのロベルト・シューマン様のピアノ曲を紹介しています。

ドイツの作曲家ロベルト・シューマン

シューマン作品紹介第二弾は、作品番号2の「パピヨン(蝶々)」についてお送りしますよ。シューマン様のピアノ曲に親しんでもらえたら嬉しいです!

シューマンのピアノ曲「パピヨン」Op.2とは?

シューマンのピアノ曲「パピヨン」は、シューマンの作品1である「アベッグ変奏曲」と同じ頃に着手されました。ちなみに作品1の「アベッグ変奏曲」は1829-30年、作品2の「パピヨン」は1829-31年にかけて作られています。

作品2の「パピヨン」は、テレーゼ、ロザーリエ、エミーリエというシューマンの二人の義姉と一人の実姉に献呈されました。

ドイツ人のシューマンが曲のタイトルにフランス語を用いたのは、当時の流行に影響されたようです。「パピヨン」とは、フランス語で「papillon」と書きますが、「蝶」や「蛾」を表す言葉。

さてシューマンの「パピヨン」は、性格小品曲集としてまとめられています。詩的なイメージ、まるで「さなぎ」から変態する不可思議現象を音楽の変奏に表しているかのよう。「さなぎ」は後に美しい羽根を持つ蝶となり、舞って行く。

シューマンのピアノ曲「パピヨン」の一曲一曲は短いですが、その詩的イメージは統一性を持ち、聴いている者たちに豊かな想像力をもたらします。

シューマンは、ジャン・パウルの小説「生意気ざかり」から影響を受けてこの「パピヨン」を書いたとか。

この記事中、引用で書かれている部分は、ジャン・パウルの小説「生意気ざかり」にロベルト・シューマンがアンダーラインを引いた部分であり、それらがこの曲「パピヨン」に盛り込まれているところを表しています。

シューマン「パピヨン」序奏〜第1曲について

シューマン「パピヨン」序奏〜第1曲から

ジャン・パウル作「生意気ざかり」の第4章63節を表しています。

小さな自分の部屋から出る時、彼は神の恩寵が再び幸運をもたらしてくれるよう祈った。
彼には自分が栄光を、つまり彼の最初の闘いを渇望しているヒーローのように思えたのだ。

ドアを開けると、何か新しい事が始まるような、明るい世界が待っているような、そんな序奏でシューマンの「パピヨン」は始まります。まるで、憧れの人が表れる舞踏会の会場に足を踏み入れた時のような気持ち。

そして序奏から続く第1曲は、この曲の主題。シューマンの作品9である「謝肉祭」にも、この主題が出てきます。ちょっと夢見るような、うっとりしてしまうような、そんな素敵な時間。

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シューマン「パピヨン」第2曲について

シューマン「パピヨン」第2曲から

甘く素敵な時間を過ごしていたのに、突如稲妻が走ったかのような出だしの第2曲の始まり。

生来、不器用な彼は、舞踏会場と間違えて、ポンス酒の部屋に入ってしまう。
そこで彼は誰も見つけられない。
やっと隣の広間に辿り着いたら、そこも誰もいない。
そしてようやく音が鳴り響き、光きらめく、たくさんの人影で
いっぱいの本当の会場に辿り着いた。
そこで天空は北極光に満ち、ひしめき合った人間たちが
ジグザグ模様のようにもみくちゃになっている。

「パピヨン」第2曲の出だしの、騒々しいアルペジオと相反するように降りてくる左右交互のオクターブ。そして続く歓喜の表現。

シューマン「パピヨン」第2曲から

これがパピヨン(蝶々)の動き。このパピヨンと同じ動きが、「謝肉祭」の中の”パピヨン”でも出てきますよ。

シューマン「パピヨン」第3曲について

シューマン「パピヨン」第3曲から

この「パピヨン」第3曲に、ジャン・パウルの着想があると言われています。

長靴である。
あちこちさまよい歩くこの長靴には人がすっぽりと入っているのだ。

つまり、巨大な長靴だというわけですね。その巨大な長靴に自分自身を置いて(履いて?)いるようです。

この「パピヨン」第3曲の冒頭低音部のオクターブ・フレーズは、巨大な靴が闊歩していることを想像させませんか?短調で始まる巨大な長靴は3回繰り返され、2回目は長調へと転じます。

どっしりとした足取りでどんどん進むの。その3回目ではやや攻撃的に。でも、これはやがて遠ざかっていくのです。

シューマン「パピヨン」第4曲について

シューマン「パピヨン」第4曲から

「パピヨン」第4曲は、第3曲とは対照的です。第3曲は「自分自身を履いて旋回する長靴」というイメージでしたね。しかし第4曲は「乙女の姿をした希望がこちらにふりむく」という着想があったそうです。

”希望”は急に振り向いた。
仮面を付けた羊飼いがその場を横切ると、次いで黒の半仮面を付けた尼僧(ヴィーナ)がほのかに匂う桜草の束を持って通り過ぎた。

シューマンと親交のあったドイツのピアニスト、クノル氏は注釈で「アルルカン」を加えています。(アルルカンとは道化師を表し、下の画像のような衣装を着ています。)

アルルカン

通り過ぎる際に娘たちをからかうアルルカンを加えた、ということです。

シューマン「パピヨン」第5曲について

シューマン「パピヨン」第5曲から

「パピヨン」第5曲は、ポロネーズのリズムに乗るロマンティックで優雅なメロディが印象的。

物静かな処女がすぐそばに立っている事に気づいた。
新たな魅力を見せるバラ色で白百合のような顔が黒仮面から現れている。
遠く離れた世界の両端からやってきた二人の外人が見つめ合うように、二人は日食中の二つの星のように黒い仮面に隠されているお互いの姿を見つめて、二つの魂の間の計り知れぬ距離を推し量ろうとするのだ。

がしかし!事態は急変します。

シューマン「パピヨン」第5曲から

「パピヨン」第5曲の9小節目、二度目のゼクエンツでオクターブの跳躍があり、荒々しい和音を鳴らしシンコペーションを強調します。これは二人のまなざしが突然恐れおののくのか?といった感じ。でも、すぐに主題の反復に吸い込まれます。

シューマン「パピヨン」第6曲について

シューマン「パピヨン」第6曲から

「パピヨン」第6曲は、舞踏会の再開です。

悪い知らせを気にする事はない。
君のワルツはホール中を駆け巡っている。
ある時は荷馬車の御者のように直立し、ある時は、つるはしを持った鉱夫になって水平にといったフィギュアで。
(パウルの小説に出てくるヴァルトの仮装は鉱夫と御者を背中合わせにしたもの)

実際、このワルツは鋭角で垂直な小さなテーマ(画像2段目)から始まり、ちょっと居心地悪そう(実際、弾く際にも気持ちがもやもやします)で、ちょっと堅苦しい。

ところが第二のテーマでは

シューマン「パピヨン」第6曲から

なめらかな、憧れのワルツとなります。

シューマン「パピヨン」第7曲について

シューマン「パピヨン」第7曲から

画像2段目にあるように「パピヨン」第7曲は、16分音符と8分音符の二つのリズム・二つのフレーズ(二声)によって成立。パウルの小説に出てくるヴルトとヴァルトという人物が、仮装を交換してしまったのです。

ヴルトは黒仮面を投げ捨てた。
彼の表情や言葉の端々に熱を帯びた砂漠の焼け付くような乾きが横切った。
ヴルトは女物の仮装を脱ぎ、花輪をはずしながら。

「もしお前が本当に僕を愛していれば、僕のどんな小さな願いも汲み取ってくれるなら、僕の願いの一つをかなえてやる準備がお前にできているなら・・・」
※「 」の中の文章はシューマンによるもの。
 シューマンはここで文章を中断している、その魂の状態がシューマンには重要なものだ、ということ)

怯えや甘美や欲望が渦巻いている作品です。

シューマン「パピヨン」第8曲について 

シューマン「パピヨン」第8曲から

「パピヨン」第8曲は、幸せを振りまいているような華美なワルツ。

ヴァルトはそっとヴィーナの背に触れた。
ヴィーナはパピヨンの羽?
それとも花粉をまき散らす花?

ヴァルトはヴィーナから遠ざかり、この生命を発する若い娘の表情をじっと見つめた。
まさに収穫そのものの踊りだ。
愛の陶酔を表す きらめく炎の車輪があれば、御者ヴァルトは今度はそのどちらも手に入れるだろう。

シューマン「パピヨン」第9曲について

シューマン「パピヨン」ダオ9曲から

「パピヨン」第9曲は、ためらいを感じさせる始まり。左手のリズムがそれに追い打ちをかけるかのよう。

ヴァルトは少し答えをためらい・・・

「君には何も言えないよ。喜びで一杯で!
 さぁ、急いで!
 何も考えずにヴルトに言っておやり!」

そしてその後、幸せに満ちていくの。溢れる歓喜を抑えられないような8分音符のスタッカート・フレーズがそれをよく表しています。

シューマン「パピヨン」第10曲について

シューマン「パピヨン」第10曲から

まるで「フィナーレ」といった趣の序奏で始まるのは「パピヨン」第10曲。

画像の2段目はまるでファンファーレです。そして3段目からは、何か厳かなことが始まっている。4段目では、また甘美な空気の中へ溺れて行く。

ホールに戻ったヴァルトは、この「交換」を世界中の誰もが気付いているように感じた。
何人かの女たちは「希望」が今や金髪になり、足取りも小さく、希望にふさわしく、以前より女性的になったことに目を留めた。

しかしヴァルトはそんな懸念もホールも自分のことすら忘れてしまった。
今や御者となったヴルトは若木ヴィーナを有無を言わさずアングレーゼの先頭(画像3段目)に連れ出したからだ。
ヴィーナを連れたヴルトは満ち足りた様子で、画家が足で描くように装飾的にデッサンしてみせた。(画像4段目から始まるフレーズのゼクエンツ)

ダンスの終わり近くになってようやくヴルトはいくつかの「フィギュア」のために手をすばやく伸ばしたり、交差させたり、あるいは飛ぶように上下させて、何とかポーランド語の響きから逃れようとした。
それは、遥か彼方の島から大洋に吹き飛ばされた迷子の蝶々にも似たため息。
真夏の夜のひばりのノクターンのような奇妙な歌にも似た言葉をヴルトが話そうとしたのをヴィーナは聞いた。

シューマン「パピヨン」第11曲について

シューマン「パピヨン」第11曲から

「パピヨン」第11曲では主題の原調、ニ長調に戻ります。これは壮大で華麗なポロネーズ。このポロネーズはヴィーナを象徴しているそう。時に「夢を見ているような」フレーズが現れます。

シューマン「パピヨン」第12曲フィナーレについて

シューマン「パピヨン」第12曲から

「パピヨン」第12曲は、フィナーレらしく荘重なファンファーレで始まります。しかしすぐに一転して「夜明けの角笛」を思わせる軽快なフレーズ(画像2段目)。そしてまたフィナーレを経て、「パピヨン」の主題が再現されます。

この主題は、ここから展開して

シューマン「パピヨン」第12曲から

このように主題が減衰していく変奏へ。舞踏会の終わりが近づいていますよ。

「ラ」がキーワードならぬキーノート、重要な音となっています。輝ける夢の頂点を表す音。そして最後は・・・

シューマン「パピヨン」の終わり

シューマンのピアノ曲「アベッグ変奏曲」作品1と同じ手法をとっています。

舞踏会が終わる頃、夜空にきらめく星たちが宇宙に吸い込まれて行くかのように、音が一つずつ、闇に消えて行く・・・それらの音は、登場人物・弾き手・聴き手の心の中に響きが残って行くことでしょう。

シューマンのピアノ曲「パピヨン」Op.2紹介のまとめ

  • シューマンのピアノ曲「パピヨン」はジャン・パウルの小説「生意気ざかり」の影響を受けて生み出された!
  • シューマンの「パピヨン」は、序奏と12の性格的小品から成っている!
  • 様々な情景をイメージしたり表現力を養うのにシューマンの「パピヨン」は最適だ!

あなたもシューマンの「パピヨン」を弾いてみませんか?短い曲の集まりですから、集中してピアノに向かう時間をとるのが難しい人でも、少しずつ楽しんで味わう事が出来ますよ♪オススメ!

シューマンの作品に「謝肉祭」というのは重要な位置を占めているのだなぁと思います。「謝肉祭」のことはまたいずれ別記事で。

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シューマン「アベッグ変奏曲」Op.1について

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